『空飛ぶ広報室』感想

『空飛ぶ広報室』全11話をhuluで。
野木亜紀子ドラマ『フェイクニュース』『獣になれない私たち』までの「野木つなぎ」として見始めたんだけど、何だこの傑作。2013年。

途中で調べたら、演出・制作を土井裕泰氏が手掛けていた。『コウノドリ』『重版出来!』『逃げるは恥だが役に立つ』『カルテット』『この世界の片隅に』ここ数年ハマったドラマの殆どを手掛けているTBSの演出家。こないだ書いた『ビリギャル』の監督もこの人。そりゃ、面白い訳だ。

ドラマの後味は『重版出来!』に似ている。その共通点を挙げると

  1. 業界に対する深いリスペクトと理解。上っ面な「取材しましたネタ」に終わらせず、その世界の人達が大切にしている想いが血肉となり脚本の芯を貫いている。
  2. アテ書きをしたかのようなセリフのリアリティ。ドラマでシラける時の大きな要因「この人はこんな言い方しないよ…」という違和感がない。
  3. 脇役がいない。すべてのキャラが生きていて、どこかでちゃんと温かい目線でスポットが当てられる。だから出てくるキャラが皆好きになる。
  4. 毎回必ず、どっかで泣かせられる。
  5. ムロツヨシがいい。重版出来と同じような役で、しかも同じように「ドラマ通してナンバーワン感動シーン」を持っていく。今回は震災時に子供達の相手をしていた体験をガッキーに話す場面。最初は笑っていたのが、ふといきなり、聞こえないような小声になる。最初笑顔のまま。ここからの演技、ほんの1〜2分でしかないんだけど、思い出すだけで泣けてしまう。
  6. 恋愛要素はあれど、決してメインテーマではない。あくまで仕事のことが中心に描かれている「仕事ドラマ」であって、そういう意味で自分的には「ハチクロ」感もある。たとえばガッキーが綾野剛との関わりで後悔して泣くシーンは、「男と女」の悲しみの涙ではなく、自分の局社員としての力量不足で彼をフォローできなかった、悔しさの涙だ。メインテーマ「なりたいものになれなかったとしても、そこから始められる」という説得力も見事。時事性も含め、野木さんココがほんとすごい。

このドラマ自体が本物の空自広報の力で作られた「成果物」だ。実在の広報とTVディレクターが作り上げたもの。そのメタ構造がいい(原作小説は空自広報の働きかけによって書かれ、広報部の実際の人物がモデルにされている)。
だから今作で、綾野剛(空井・空自広報)やガッキー(稲葉・TV局ディレクター)が空自をロケ先に撮影しているだろうその雰囲気だって、ドラマを観ていれば想像できるし、裏にいる本当の空井や稲葉の存在、実在の彼らが何をして、何を大事に思っているかが良く分かる。このドラマを広報室で観て、俺たちの知らない本当の広報部の皆がハイタッチしている姿さえ目に見えるようだ。

「自衛隊の広報番組」としての役割も十二分に果たしている。自衛隊がどういう時に出動できるのか。何故こういう時に出動できないのか。人殺しのために訓練している、などと言われることに対して、序盤から主役の綾野剛をはじめドラマ全体で答えを伝えようとしている。パイロットや広報だけでなく、廻りで支えるさまざまな部署の仕事が細かく描かれていて、自衛隊のプロモーションとしてバッチリだ。勿論出てくる飛行機のカッコいいことと言ったら!
さらには自衛隊の広報を超えて、そもそも「広報」という職種がいったい何なのかが、とても良く分かる仕組みになっている。

難点もいくつかあるが、一番は劇伴のしつこさかな。安室奈美恵の書き下ろし主題歌「Contrail」は本当に素晴らしい曲だけど、ちょっと使いすぎだ。あと演出がたまに「?」になるとこあった。

女性広報・柚木のエピソードとかとても好きだし細かくは書き切れないけど、今言っておきたいのはガッキーの演技力だ。今作で改めて彼女が演技上手いなぁ〜って実感した。演技の巧さって、役柄の幅広さで「演技派」と認識され広まっていくような過程が普通で、分かりやすい。だけどガッキーには幅広い役のオファーが余りない?から、これまでちょっと分かりにくかった。今や彼女が出ていればドラマの質は2割増し間違いなしだと思ってる。(同じ格言を以前は深津絵里で言ってた。「彼女がドラマに出たら2割増し」)

今度の野木ドラマ「獣になれない私たち」は、主役がガッキーに松田龍平、その他が春たんこと田中圭に黒木華に菊地凛子に「この世界…」の伊藤沙莉に…ともう期待しかないラインナップ。やばいよこれ。超楽しみ!

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