『度胸星』山田芳裕

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【あらすじ】
NASAによる火星遠征隊からの交信が途絶え、救出隊を編成するために全世界でクルーの募集が始まる。トラック運転手である主人公・三河度胸は壮絶な試験を切り抜け選抜への道を進んでいく。一方火星で1人生き残ったスチュアートは理解できない物体と壮絶な戦いを繰り広げる。

同郷・新潟出身で同じ中学の2年先輩・山田芳裕の打ち切り未完にして最高傑作。ちなみにその3年上には会田誠もいる。残念ながら自分は講談社による復刊から知ったが、もうこれで4〜5回目の再読。

火星で1人残された宇宙飛行士が地球との通信手段を確立するために過去の探査機跡をローバーで回ったり、救出に先立って無人貨物を先に送ったりと、『オデッセイ』との共通点は驚くほど多いが、こちらの連載は平成12年、つまり14年前にはじまっている。非常にアクの強い絵柄のせいで内容まで誇張されていると思われがちだが、選抜試験の内容なども実際はかなり現実に忠実。
(どこかで『宇宙兄弟』を描いた小山宙哉もこの作品へのリスペクトを表明していると読んだが、担当の名物編集者・佐渡島庸平氏のブログによれば、宇宙兄弟でJAXAの取材をすればするほど今作に似てしまう問題が懸念され、その対策として『度胸星』は編集者だけが読むようにして小山氏には敢えて読まないようにしてもらったとある。)

「くそ」真面目な主人公・度胸のキャラクターと彼を取り巻く個性豊かな候補生達が、試験を通じやがて団結を高め個々の能力を遺憾なく発揮していく過程が物語の縦軸なら、横軸は火星に取り残された飛行士スチュワートが対峙する未確認物体テセラックの「見たことのない異様さ」。コミックだからこその表現、とも言っちゃいがちだけど、この異様さは、山田以前は小説でしか表現できなかった領域なのではと思う。テセラックは超ひも理論に基づく高次元の存在なのだが、それをこれだけ説得力あるビジュアルとしてアウトプットできたのは、山田芳裕の「異様な」画力あってこそ。コミックだから、ではないのだ。

未完が実に悔やまれるが、山田氏は続編を描く意思はまったくないようだ。Wikiによれば当時の反応も薄かったそうで、今考えてもこの内容はヤンサンというよりだんぜん講談社向き。再版も講談社からというね。山田氏はこの後講談社で自身最長の連載『へうげもの』をはじめることになる。

宇宙モノの傑作として挙がることが本当に少なくて、自分はことあるごとにプッシュしている本作。『宇宙兄弟』ファンは勿論、『11人いる!』や『プラネテス』『インターステラー』が好きな人にも是非オススメしたい。ちなみに奥さんからは「なんでこんなに続きが気になる作品を(未完なのに)オススメしたの!」と激怒されました。
#readinglist_dsm

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