『雲のむこう、約束の場所』感想

新海誠『雲のむこう、約束の場所(→公式サイト)』をDVDで観た。むーーー、期待ハズレ。
簡単に言って、カタルシスを感じない。グっとくる場面がない。登場人物の行動や設定で「なぜ?どうして?」が多いのは前作『ほしのこえ』と一緒だし、それら沸き上る疑問に対して「まぁオタクルール的にはオッケーかな」と感じちゃうのも大体は一緒。 だけど…。

前作から何となく思っていたのは、このカントクはストーリー構成で見せるよりも、グっとくる場面をカッコ良く繋ぐ「プロモーションビデオ的ウマさ」のヒトだと思っていたので、短い前作なら「持ってた」けど、変に長くなっちゃった今作ではちょっと構成のユルさが目立っちゃったとゆうか(最初のパイロットフィルムの方が断然良かったし)。イヤでも雰囲気イイのだけどね。印象に残る場面だっていくつかある。だけど「グっとくる」までの場面は、ないのだよなぁ。

主人公のオンナノコのアニメ声が最後まで許せなかった。よく聞けば別にヘタなヒトじゃないんだけど、あの声質を「普通」として聞けるのはさー、萌えアニメ界だけではないの?偏見?前作もそうだけどカントクの趣味わりーなーってカンジ。さらにキャラクター自体も全然魅力を感じない薄っぺらな作り。藤沢を好きになる理由もさっぱり分からない。我が夫婦内では通称「ゆうこりん」。

オトコノコ二人の声優は良かった。特に萩原聖人がイイ。吉岡秀隆はあのマンマ。だけど最初から吉岡を想定して書いたというだけあってピッタリだった。

以下ネタバレ

●カタルシスとか「グっとくる」という視点で言えば、最初のパイロットフィルムが一番良かった(後の「予告編」はイマイチ)。あそこに入ってて、本編で削られちゃった

「もう来ないで。私、藤沢クンの考えてること、全部見えるの」
とか
「サユリの病気と、ユニオンのやろうとしているコトは関係があるのかも知れない」

とかのセリフには、随分と想像力を掻き立てられたのに。で、本編を観た今となっても、最初のセリフは平行宇宙と人間の夢の関係を説明するのに、後者のセリフは最後まで正体不明の(まるでエヴァの使徒だ)「ユニオン」に少しでも具体性を与えるのに役立ったのでは、と思えるのだが。

●最初出てきた学校のチャイムが聞きなれない音階で、後の夢で出てくる学校のチャイムがお馴染の音になっていたので、コレはひょっとして映画の中の宇宙から、我々の宇宙を垣間見てるってコト?と思ったのだけど。深読みしすぎかしら。でもせっかく「パラレルワールドを科学的に出現させる」っちうオモロい設定があるのだからさー、そおゆう「ちょっと違う宇宙での自分たち」みたいな、従来SFでお馴染のやり方があっても良かったなぁー。

最初にパラレルワールド(平行宇宙)の設定を聞いた時、スンゴい期待しちゃうワケよ。だけどその期待に反し、最後まで出てくるのは暗ぁ〜い雰囲気の塔の群れと魅力のないカワイイだけの女の子。この作品での「平行宇宙」はただのブラックホールみたいな印象で、最後までストーリーには直接関係してこない。残念。

こおゆう、何でもない日常の中にイキナリSF要素が入ってくるのってオレ好きなんだけど、ソレにしてもちょっと唐突で説明不足で、この部分でもう離れてっちゃうヒトはいそうだな〜と思った。

●サユリにこれっぽっちも魅力がな〜い。心理的にも意味不明。あの流れなら絶対白川の方を好きな筈でしょ?少女漫画的には(笑)。初めて二人ッきりになった時に「おお!告るのか!」と思ったもん。ソレがさぁ…。最後で「藤沢くんのコトをどんなに好きだったか伝えたい」って…。好きになった理由もさっぱり。ワケわからん。

サユリの声や動きもそうだけど、趣味的にエエ〜?って感じる、気になる部分もいくつか。声優たちにセリフをカブらせる(同時に喋らせる)のも、そのひとつ。しつこいんだもん。

●背景は文句なしにキレイでした。新海さんは今後美術監督だけでもやっていったら如何かと思った。

●印象に残ったシーンは、大きな廃駅と塔の内部。あの塔だけで色々と想像するに余り有る物語が作れそうだけど、ソレがメインストーリーに全然絡んでないトコロがまた無念。

●今後の期待。もっと色んな脚本家やアニメーターと組んで、せっかくのアイデアをもう少し上手に脚色してエンターテインメントSFを作って欲しいです。こおゆうSF志向(タイムパラドックスとか平行宇宙とか)を持ったアニメ作家ってそんなにいないじゃない?

●DVDに収録されている最初のパイロットフィルム。最後が「2004年公開予定」になってるのにはワロタ。オレの持ってる同じパイロットフィルムは「2003年公開予定」となってるぞい。どれだけ待たされたと思ってるんだ?あ??

ちなみに一緒に観た相方は、開始三十分ほどで熟睡してました。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

  1. NO IMAGE
  2. NO IMAGE
  3. NO IMAGE
  4. NO IMAGE
  5. NO IMAGE
  6. NO IMAGE

RECENT ENTRIES

ABOUT

1999年のWEB日記時代から始めた個人サイト。ブログ移行にあたって過去記事も抜粋してアーカイブしています。
(HTMLサイト→SereneBachブログ→WORDPRESSブログと転移)

好きな漫画(2014年版)はこの記事の最後に。

最近は(インスタ)でアップしているTV・映画感想の投稿を、半年に1回くらい一気に転載しています。

LOG