映画『ウナイ 透明な闇 PFAS汚染に立ち向かう』感想

映画『ウナイ 透明な闇 PFAS汚染に立ち向かう』をシネ・ウインドで。
監督:平良いずみ

【あらすじ】
すべては2016年に沖縄県が開いた会見から始まった。「県民45万人に供給する水道の水に化学物質PFASが含まれていた」ー  との発表を受けて、 多くの人々の反応は「PFASって何?」というもの。 すぐに関心が高まったわけではなかった。 やがて立ち上がる女性たちも当初は他人事だった。しかし、米国ではすでに、がん、低体重出生など‥健康影響が確認されていた。その深刻さに女性たちは気づいていく。「他のお母さんたちにも知らせなきゃ」と、彼女たちは街頭で涙ながらに訴え、調査や浄化を求める。しかし、沖縄では汚染発覚から9年経ってなお、汚染源の特定すら出来ない。なぜか!?汚染源とみられる基地への立ち入り調査を米軍が拒み続けるから。それでも、子どもたちのために諦めるわけにはいかないと徒手空拳の闘いを続ける女性たちは国連を目指す。一方、米国や欧州ではPFASの毒性を重くみて規制の波が押し寄せる。その波を起こしたのは女性たちだった。こうした国の人々は、彼女たちの声に耳を傾け、現実を変えてきた。日本人は何をしてきたか?

【感想】
時にブチ上がり、時に泣き、時に歯ぎしりするほどの悔しさを感じ、それでも何かできる筈、繋がれる筈と希望を持てる映画。『SHE SAID』とかを観た後の気持ちに似てる。

健康な生活にあたって1番大切な「水」の問題だからこそ、皆に観て欲しいなどと思ってしまうが、それ以前にまずドキュメンタリー映画としても面白い。シネ・ウインドの上映期間を見逃さないで。口コミでシネコンにも広まったらなぁと思う。

公害の問題だけではない。何故ここには男性が出てこないのか。軍事と経済に関わる男女比、家父長制、子育て、さまざまな構造問題がイヤでも頭に浮かんでくる。
だからこそ、そんな中で
「敵わない相手でも声を上げた」とある女性が、
やがて連帯を生み、社会を変えていく姿に心を打たれる。

タイトルの『ウナイ』は沖縄で「姉妹」やシスターフッド的な関係を示すそう。

映画全体で沖縄のことが描かれるのは、実は半分位。他は日本の別の地域や、海外のケースを追っている。
※PFAS問題は世界のさまざまな地域で告発されている。その結果製造が中止され、莫大な慰謝料が支払われ、制度が作られている。

この海外との違いには、先日吉田恵里香さんが講演で言ってた日本(女性)の「連帯のしづらさ」や、そもそもの人権意識の低さからくる社会運動への冷笑、女性の発言への冷笑などに繋がっていて、愕然とはなるが、それだけではない。他で出来ているんだから自分達にもできるはず、という希望をちゃんと持たせてくれる作品になっている。何より沖縄のウナイ達が挙げた声が日本中のPFAS告発の後推しをしてきたと海外でも評価されているそう。

圧倒的に敵わない理不尽に蹂躙された時、NOを言えるかどうか。

女性の社会運動を追ったドキュメンタリー、では収まらない。
映画は「お前はどう生きるのだ?」と問うた上で、精一杯エンパワメントしてくれる。
だからこそ、こんなに感動するのだろう。
一人で始めるのが難しいのは当たり前。だからせめて、連帯しようよ。

PFASについては書いても書いても収まらない。Podcast「沖映社」の128回でめちゃくちゃ詳しく知れるのでぜひ聴いて欲しい。問題は今もまったく解決していない。映画を観て改めて知ったのは、横田基地の「下流」で高い汚染のある多摩地区に住んでいた自分も当事者だったこと。それでも今後罹患する癌などの病気との因果関係はまず明らかにできない。「PFAS病」という特定の病気はないからだ。だからこそ、元を絶たないと駄目なのに。

観た人と話したくなります。主人公は活動家でも何でも無く、誰も話を聴いてくれず変わらないので仕方なくマイクをとり、連帯し、圧倒的な壁に立ち向かった世界中の女性達。

シネ・ウインドでの残り上映は11/21〜28(23除)、
上越・高田世界館でも11/23より上映予定です。

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(HTMLサイト→SereneBachブログ→WORDPRESSブログと転移)

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最近は(インスタ)でアップしているTV・映画感想の投稿を、半年に1回くらい一気に転載しています。

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