『柳政利さんのいた新潟』

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柳政利さんは2014年末に亡くなられたデザイナー。70年代から今に至るまで、新潟の草の根的な演劇・映画・音楽シーンを影から見守りデザインでサポートしてきた方。という知識だけで自分は面識がない。
その存在を意識するようになったのは、亡くなってからその界隈で困った困った…という声をあちこちから聞くようになったからだ。ほんの一部だけど彼の仕事を引き継いだケースもある。

噂でしか知らなかった柳さんの生き様を知ることができた貴重な冊子。新潟の「界隈」の方々が「勢揃い」といっても良い位、錚々たるメンバーで柳さんの在りし日を語る対談が半分、あと半分は柳さんが反画工房の名前で発行されていたフリーペーパー「サブ」の再録。

彼の無骨だけど必ずその場に「居て」時には写真を撮り見守っていた様子が色んな方の口から語られている。このような面識もない自分が柳さんの足跡を見ることができること自体すごいことで、書き起こしもフリーペーパーの収集も、大変なお手間の中実現されたスタッフの皆さんには本当に頭が下がるし感謝したい。お疲れさまでした。ありがとうございます。新潟すごい。

※これは一般売りしている書籍ではなく、元々制作費を寄付していただいた方に配布し、残部が出たので、その分だけ(寄付していただいた方に)譲る、というシステムのようです。私は新潟絵屋で入手しました。

ミシマ社『ちゃぶ台 vol.2』

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ミシマ社初めての雑誌『ちゃぶ台』の2号。今まさに読みたい「農」の事情が満載です。「最初から最後まで読みたくなる雑誌を」との目標通りにすべて順番通り読んでしまった。概して自分のような問題意識を持っている人間には「うんうんそうそう!」と賛同できる心地良い意見が並ぶんだけど、その反面「雑」誌っぽさには欠けるとも思った。少し違う意見を差し込むと、もともとの本題が更に生きてきたり記憶に残るのかも?どうなんだろう。

MARUU『うさぎのまんが』

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獸木野生『パーム』オフ会でお会いしたことのある、MARUUさんのコミック新刊『うさぎのまんが』をやっと入手。半分はタイとインドネシアへの旅エッセイ、あと半分が猫エッセイとその他。私のあたり(このニュアンス)のヒトには皆オススメしたい。普段思っていて他にはあまり話せないような気持ちも沢山詰まっていて、同意を声高に叫ぶのではなくゆっくりと頷きながらお茶を呑む。決してプラスの感情ばかりではない1冊ですけど、充実した時間を過ごせました。きっと時折読み直したくなるんだろうな。

冒頭まえがきの

「私は今
望んでいた
しあわせの中に
いる」

という台詞はパーム読者的にもぐっとクる所。
(吉本ばななさんの巻末コラムで知ったのだけど)大変な思いもされてきた作者だからこそ、皆が健康で笑っていられる「奇跡みたいな瞬間」の大切さが伝わってくる。そしてこれを「実感」することこそがワタクシの人生のポリシーなのです。

最後まで(読み逃していたらすみませんが)男なのか女なのか分からないままだった、旅のパートナー「かおちゃん」の存在がイイ。コズフィッシュさんのデザインと造本もイイ。真ん中に色紙ページが入ってて、中身とのマッチングが素晴らしい。

吉田秋生『櫻の園』藤田貴美『ご主人様に甘いりんごのお菓子』再読

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久しぶりに吉田秋生『櫻の園』再読。『吉祥天女』や『河よりも長くゆるやかに』と合わせ高校時代本当に好きだった作品。時代感というか「恋愛観」の違いが気になって、最初は正直「あれ?」という感じだったのだけど中盤からその違和感も消えた。思うに吉田さんは男性の描写はものすごくリアルなくせに(最初は男性作家さんだと思ってた位)、女性の描写って時にファンタジー、というかお花畑なところがあって、そこがぐっと来たりするんだけども、こんな風に後から読むと気になる時もあるんだろうな。前半のヤる・ヤらないの話が終わり演劇部の部長の話になった辺りからはあの頃と同じ気持ちに戻っていた。やっぱり傑作や。

再読したのは、最近とあるBLをオススメされ読んで、自分は「恋愛が中心の物語は、ジャンルを問わず読まない」と思っていたんだけど、果たして本当にそうなのか、と疑問に思ったから。この大好きな『櫻の園』は(ヘテロも同性もあれど)普通に「恋愛が中心の物語」だろうに、何故?そんなことを再確認してみようと思って。で、なんとなく分かったのは「恋愛を『目的にしている』人」の物語に興味がないんだな、ということだった。何をしていようが否応なく割り込んでくる避けがたい感情、そういうものを描いた話は好きだけど、そこを目的にしている人達のお話には、興味が湧かない。ま、どーでもいいことなんですけど。

並んでいる藤田貴美の短編集『ご主人様に甘いりんごのお菓子(1)』。これ、分かってくれる人にはすぐ分かるんだけど(というかこないだTwitterでフォローしている人がこのこと書いててめちゃ嬉しくなった)、最後に女学校の社交ダンス部(演劇部だと思ってたら違った)を舞台にしためっちゃ好きな短編があるんですよ。ホント恋愛の話でしかない。だけどすべてのコマが愛おしい。櫻の園とルックは全然違うけど、櫻の園を読んだ後に読みたくなる作品です。改めて読むと足の描写がすごくて、作者もあとがきで「作ってても描いてても楽しかったですね。特に足」と呟いてた。藤田貴美の描く顔や身体のラインがすごく好き。と話がとめどなくなるのでこの辺で。

PKOと「駆けつけ警護」について。session-22より

2016年11月3日放送、TBSラジオ「session-22」
伊勢崎賢治×木村草太×荻上チキ「新たな任務『駆けつけ警護』を検討、南スーダンでの自衛隊のPKO活動を考える」よりメモ書きです。
全然知らなかったこともあって、驚きました。

※以下はブログ主によるメモです。細かい語彙やまとめ方などで間違いや誤解を招く恐れがあるのでくれぐれもご注意ください。↑が削除されたら再度検索してアーカイブを聞いていただくことをお勧めします。

●「駆けつけ警護」を表す言葉はない。

●PKOに参加するということは国連の指揮下に入ること。日本から命令できる訳ではない。日本政府の言う、PKOで自衛隊が海外NGOの邦人を救うなんて考え方はありえないし、不謹慎。他国人でも国連の命令で日本人を助けなければいけないし。そもそも自衛隊は私設軍隊のためにその任を負えない。

目的は一つ、地域の住民を守ること。そもそも自衛隊は歩兵の役割を負うことはないのだが、問題は敵が向こうから来た場合。スーダンの場合であれば、例えば自衛隊の管理する場所に反大統領派が逃げ込むとする。それを大統領側の軍が一般住民を偽装して襲ってくる。住民を守るためなら戦闘しなければならない。そこで何か間違いが(一般住民を殺害など)あった場合の責任の方法が問われる。自衛隊は軍法がないので責任が取れない。

●戦争上で間違いがあった場合(戦争過失)、「軍法」で裁かれその国が責任を負う。軍には軍法が必要。自衛隊にはない。

●国連軍に軍法はない。国連が未だ世界政府と認められていないため。

●軍法のないPKOは、何かあった場合に各国の軍法で責任を取るようになっている。自衛隊は軍法がないので個人責任になってしまう。こういう軍は国連にとってもお荷物。

●PKOは多国籍軍なのでどうしてもモチベーションの問題が生じる。そのような中でどうして自衛隊のような「使いにくい」軍を入れるのかといえば日本ならODAがあるということ。だったらODAだけでイイじゃん、となるがそれは建前上すべての国に均等負担してもらいたい。

●国連はルワンダがあってから紛争へ当事者として参加するというように方向性を変えた。PKOに参加するというのは紛争の当事者になるということ。そこに自衛隊を派遣するのはそもそも憲法違反。

●国連のオペレーションは先進国の軍参加を前提としていない。基本的に派兵として参加するのは外貨の欲しい途上国か、自身に関係のある周辺国。先進国は実際に参加していないし、アメリカは文民警察を派遣して軍は派遣していない。軍参加以外にもPKO参加の方法は多々あり、先進国はそのような参加の仕方を採っている。

●このように誰も望んでいない自衛隊のPKO参加を何故日本政府が進めるのか。それは9条改憲のため。PKO中に自衛隊が望まれた動きができない場合「それは9条のせいだ」という流れを狙っている。自民党はずっとこれが悲願だったが、自衛隊はことごとくその期待を裏切ってきた。世界一勤勉で優秀で自己完結度の高い自衛隊は、この30年間一度も発砲していない。よその軍であればかならず発砲もするし摩擦も問題も起こす。自衛隊だったから問題も起きず「9条の縛りのせいで」という論法が使えなかった。

一箱古本市発の雑誌『ヒトハコ』創刊

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先週届いた一箱古本市発信の新雑誌『ヒトハコ』読了。
前半は「一箱古本市」という、今やすっかり定着した、新しい憩いの場を作り出す喜びやワクワクが詰まっている。といってその楽しいふわふわだけじゃなく、後半では熊本の震災と本屋さんとのレポートだったり、Book!Book!Sendaiが昨年で終了するに至った経緯を、同年高松でブックイベントを始めた方との書簡であらわにしたり、とシビアで読み応えある記事もあって。
すごくバランス良く、しかも「雑」誌感もあって、期待以上の好き好き雑誌になっている!

石井ゆかりさんの、一箱古本市についての鋭い視点。おざわようこさんの驚異的な密度・完成度の「ブックバレーうおぬま」イラストMAP!火星の庭・前野さんの社会に対する想いと努力。東北で移動図書館を走らせる国際NGOの女性と南陀楼綾繁さんの対談から見える「震災」と「本」。お恥ずかしながらこれを読んで初めて「そうか、プライベートが確保できない時に、本を読むことでその代替になり得るんだ」ということをやっと想像できた次第。でもその合間を埋める細かいコラムや小記事も楽しくて…。

長く続けることが苦手な自分は、この企画が上がった時に(企画者の)南陀楼綾繁さんに「なんで単発じゃなく『雑誌』なんですか?」と聞いたことがある。その答えはちゃんと覚えていない。でも、そもそも雑誌がやりかたったので何いまさらその質問、的なかんじだった気がする。完成品を読んで納得しました。今や毎週末日本のどこかで開催されている本読み達の新しい憩いの場、「一箱古本市」。これだけ沢山1年中続いているイベントなんだから、いくらだってネタはあるし、専門の雑誌があったっておかしくないよね全然。なんか普通に思えてきましたよ。新潟では北書店や今週末のアカミチフルホンイチで買えます。お勧め!

昔の『kate paper』

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本棚の整理をしていたら見つかった2009年の『kate paper vol.3』。
冒頭は桑原茂一と石橋毅史のロングインタビュー。

めっちゃ読み応えあるし、今読むとなお、示唆に富んでいる。石橋氏は新潟に来るようになる前の頃かな。『新文化』編集長の頃だけど、しかし何時でも辞めそうな気配マンマンなインタビュー。フリーペーパーなんだけど何処で入手したか全く覚えていない。他の号も欲しい。

今の日本で、1週間後に徴兵されて「朝鮮に戦争しに行ってもらいますから。人を殺しに行ってもらいますから」となれば、もしかしたら、はたと気がついて「自由なメディアが欲しい」とフリーペーパーを作る人がいるかも知れない。だから清くとればまずは反抗ですよ。必要に迫られてというか、背に腹はかえられないというか、やまれぬ気持ちでdictionaryを始めたんです。」
kate paper vol.3 2009 桑原茂一インタビューより

『スタートレック BEYOND』

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シネコンで2D字幕。

リブート前2作と比べてかなりユルい出来。でもこれ初代スタトレのあの感じを思い出して悪くない。なの古参ファンは観て損ないと思う…なぁ。

オマージュ色々で楽しかったし、前2作であまりにも只のバカだったカーク船長がちょっとだけカーク船長ぽかったり、ガーディアンズぽかったり色々楽しめたけど、ニモイに捧げるなら2作目の方にしてくれよ!と思ってしまう(2作目はカークめっちゃカッコ良かった)。あの昔の写真はさすがにあざといなぁと思いながらでも少しぐっときちゃった。しかしエンタープライズが全然出てこないとかちょっと。

フライヤーの裏のアオリ、「本物の車を使用したリアルなカークラッシュ」って…どこ?

今作はDr.マッコイとスールーがカッコ良かったな。
スールー(加藤)の彼氏が出てきたのは色んな意味でカンドー!←一番ポイントかも。

ピーター・バラカン『ラジオのこちら側で』

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風邪で会社を休んだ一日に、ゆっくりと堪能した。
バラカン氏が来日した1974年から現在までを語り下ろしでまとめたもの。ラジオは勿論日本の洋楽音楽業界の歴史書籍としても面白い。ラジオメディアの技術的な進化についても、そのうち否応なく語らざるを得なくなった時々の社会問題との関係も、日本独特の事情と合わせ淡々と語られている。

10年ごとに「その10年を代表する10曲」が彼のセレクトと文章で紹介されているんだけど、今はAppleMusicやYouTubeでその場で聴きながら読めるという、とんでもない良環境にある訳で。色々と困ったことの多い日本の音楽・ラジオ業界だけど、これだけは素直に喜ぼう。藤島晃一、マリのトゥマニ・ジャバテやRokia Traoréなんかはすぐリスト入りした。幼稚園から帰った次女がメイシオ・パーカーのLiveを延々と見続けている姿が妙に嬉しかった。

今は確かに欲しいものはすぐその場で手に入る環境は揃っているけど

そもそもどんなものがあるのかを知らなければ探し出すこともできない。何を観ればいいのか、聴けばよいのか、その手がかりになる名画座のような存在。そういうメディアが必要です(同書)

だけど読んで思った。今の時代であれば(これらのオンラインメディアを使い)書籍で、充分名画座メディアは作れるんだ。この本はまさにそうだった。本だけどラジオのようなものだ。

書籍とAppleMusicやYouTubeを繋ぐもう少しの工夫さえあれば、紙媒体の位置づけも更に変われるんじゃないか。そんなことをうつらうつらと考えていたら、まさかの人間がアメリカの大統領になった。

『アイアムアヒーロー』

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シネコンで鑑賞。
すごく良く出来ていると思うけど「え、そこで終わり?」が大きすぎ。有村架純の存在意義全然分かんないじゃん。ゾンビ初登場シーンとか確かにすごいんだけど、原作もあすこは余りにショッキングでね。原作知ってるとやっぱりハードル高い。ハードルと言えば高飛び君の再現度半端なくて痺れた。でもやっぱり原作のインパクトあり過ぎて所詮「再現度」なんだよな。原作を大きく超える実写映画ならではのナニか、はなかった。

ただきっとこの予算でやるべきことじゃないし、そこでできる中では本当に奇跡のような出来なんだろうと思う。同じスタッフ・キャストで中国出資ビッグバジェットで是非続編をやって欲しい。原作は既にガンツみたいな規模になってきちゃってるので。

『リンダリンダリンダ』再見

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長女が熱で外出できず家で何の映画を観るのか相談していた。
あまたあるピクサー、ディズニー、イルミネーション、ジブリ作品や名作日本アニメを差し置いて10歳と5歳の娘が選んだのは山下敦弘『リンダリンダリンダ』(笑)。こいつら観るのはもう4回目くらいじゃないか。しかもそんなに観ているくせに、未だ一瞬たりとも目が離せない俺自身に驚く。観れば観るほどいい作品だなぁ。

ペ・ドゥナ!彼女のキャリアや噂からするに、これきっとナチュラルとかじゃないんだよね。香椎由宇の奇跡的な美形ぶり。団地住まいの部屋のリアル。高校生の徹夜明けのあのかんじ(俺は麻雀)。この映画(の魅力)を紹介するのにいつも困る。ひとを観ているだけで飽きない映画ってすごい。

『コンスタンティン』再見

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huluに『コンスタンティン』が入ってる!
何度観ても、イヤ観れば観るほど好きになる。語られているテーマにはさして興味ないけど、ルックが最高。黒スーツキアヌとレイチェル・ワイズとティルダ・スウィントンだけで何杯もおかわりできる。

ところでこのガブリエル登場シーンを観ると士郎正宗ORIONのスサノオ降臨の見開きをいつも思い出す。実際はそんなに似てないのに。って話はもう何度も書いたな。分かる奴だけ分かればいいんだ!(花巻さん)

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この頃のレイチェル・ワイズは本当に良い。

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ティルダ•スウィントンも最高。

『Sunny』再見

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映画『Sunny』観るの3回目かな?毎回ちょっとづつ違うとこ気づいて、やっぱ感動して。学生のグループ仲間モノってもちろんリアルには全然共感しないけど、コレはもう湘南爆走族レディース版って域で大傑作。あと最後の弁護士いいとこ持って行き過ぎ。その後の皆が描かれたエンディングも目が離せない。

権利料のせいで訳詞がテロップで流れない最近の傾向はホントダメだな。JASRACクソビッチ!(←映画に合わせ)
あそこでTime after timeの歌詞が出たらもうどんだけ号泣だっての。他にもそういう映画沢山あるよね。シメたろか(←映画に合わせ)

『君の名は。Another Side:Earthbound』加納新太

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映画本編とほぼ同じタイムライン上で、脇の登場人物の目線を借り、語られなかったストーリーを掘り下げて本編を補完する小説。面白かった!

映画と同じで前半はコメディタッチ。三葉に移った瀧と友人2人などを通して、入れ替わり劇を本人と周りがどのように受け入れていったかが分かる。途中、妹の四葉目線になったあたりから急展開。本編では何となくだった宮水の巫女の歴史についてぐっと深く掘り下げ、四葉のとある体験が語られる。これがまた泣ける。FSSでいうとトコの「代々の記憶を受け継ぐアトールの巫女」ですよ。あの感動(分かる人だけ分かって)。

そして本題は、何とお父さんが主役です。死んでしまったお母さん二葉、彼女との出会いから別れまでの話。この物語が本編の足りなかったピースをぱちぱちと埋めていく。彼がどうして宮水に婿入りしたのか。二葉がどんな人で、糸守町にとってどんな存在だったか。死後町長になるまでの話。そして映画のクライマックス、語られなかったあのシーン。どうして彼は三葉の話を呑んで住民を避難させたのか…。

映画には殆ど出てこない二葉という女性が、実はこの物語の根底にすべて深く深く関わっていることが、良く分かる。改めてぐっときたー!▼友達の三上氏以外のラノベ、初めて買ったかも知れない。軽い表紙の印象とは違い、特に後半の重厚さにも大満足の一冊でした。

『ゲットダウン』

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Netflixオリジナルドラマ『ゲットダウン』の全13話中の5話までを観た。1話60分。

70年代のサウスブロンクスを舞台に、ヒップホップ創世記の若者達を描く。物語自体はちゃんちゃら可笑しい、リアリティーライン低めのギャグドラマといった体なんだけど、美術、音楽の使い方がすごくて、特に毎回地下鉄のグラフィティでサブタイトルを出したりするの、アレは一体どういう仕組みなんですか。70年代のブロンクスってほんとひどいのね。街が廃虚。そのへんのビジュアルだけでも必見。

音楽モノ・バンドモノ特有のあの「音楽が生まれる瞬間」のカタルシスが時折ガツーン!とやってきて、その期待だけで観続けられる。主役彼女がやっているゴスペルソングと主役彼氏がやっているラップが別シーンなのにシンクロしたりするの、ホント鳥肌。3話から完全にのめり込んでしまった。

今のところ流行としてのディスコサウンドがメインだけど、カーティスはじめ今後はアレサやJB、スライ、もしくはそれらのイメージしたアーティストや曲がもっともっと出ないかな〜と期待も…。

唯一にして最大の弊害はタイトルから広瀬香美の「揺れる廻る振れる切ない気持ち〜」が脳内リピートして消えないことなのです。まじ勘弁して。

『リップヴァンウィンクルの花嫁』

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『リップヴァンウィンクルの花嫁』をiTunesレンタルで。
開始一時間くらいまで本当にケッタクソ悪くて観るのをやめようかどうしようか迷う程だったけど、ある場面から物語は急展開し、それまで溜めた分を吐き出す爽快感も大変に気持ち良くて、基本的にはそのままエンディングまでつっぱしる3時間。しかし最初の1時間、長くね?

残りの2時間は久しぶりに良い岩井長編を見たという印象。彼は脚本家としてテレビ30分枠が一番合っているのでは(『FRIED DRAGON FISH』をはじめとする『La Cuisine』枠の傑作群やIfもしも等)という持論があるのだけど、最近は短編を作る様子もなく、とても残念。
大好きな岩井テイスト(の押し付け)は少し薄まった?感じでこれはひょっとして新海誠のセカイ系ファンが『君の名は。』を観ている気分なのかもw

岩井ビジュアルでの華ちゃんはどうしても蒼井優に見えてしまって困る。最後まで「これは黒木華、黒木華」と言い聞かせていた。クライマックスで初めて笑った時『重版出来!』のココロが垣間見える。coccoと黒木華の相性は最高すぎるな。最初に2人が出逢う時の多幸感がこの映画のクライマックスかも知れない。

岩井監督も「最近アキラメ」グループ入りだったのに、これだったら次回作も観に行きますよ。

岩井俊二と言えばバレエ。お迎えの待ち時間にこの感想文を書いた後、少し見ない間に随分上手になった長女のレッスン風景と、映画から抜け出したかのような少女たちを見て岩井過去作を思い出し胸キュンの日曜日。

★★★☆☆

『ストレンジャー・シングス』

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Netflixオリジナルドラマ『ストレンジャー・シングス』を数週間前に観終わった。

E.T.やあの時代のSF作品を色々混ぜ合わせてリスペクトたっぷりに蘇らせた連続ドラマという触れ込みだけど、自分的には「そこそこ当たりだったキング原作のドラマシリーズ」という印象がまず強い。←悪い意味ばかりじゃない。

特筆すべきは役者たちの「顔」の濃さ。とても現代の人達に見えない。アクが強過ぎて、この表情だけでも観続ける一つのモチベーションになっている位。特に主人公姉弟がいい。姉の眉間のシワが気になってしょうがない。

「大人」「高校生」「小学生」の3世代の主役たちの物語が同時に一つの解決に向かって並行に進んでいく脚本は見事で、ツボも押さえられている。HBOやら最近のとんでもないクオリティの海外ドラマのような期待をしてはいけないし、それらに比べたら「微笑ましいレベル」だけど、でもTVドラマってこういう楽しみ方だったよね。全話観終わっての満足感もまぁまぁ。

★★★☆☆

『君の名は。』

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新海誠『君の名は。』を娘二人と劇場で。

新海監督、大化け。これまでにない、分かりやすく行き届いたエンターテインメント大作(だから嫌いな人にはまったくオススメしない)。今のところ今年ナンバーワンかも知れない。泣いて泣いてしょうがなかった。勿論長女も泣いてた。

同監督作はデビュー当時から観ていたけど最近はどれ観ても印象が一緒で。今作も発表時は「劇場に行くほどでは…」と思ってた。「うん、もう分かったから…」って気持ちになっちゃうんだよね。長女の希望により素晴らしい体験ができ、感謝。

十何年の時を越え別ベクトルからかなーり遅れて細田守エリアに入り、今作である意味さらっと抜いてったことも感慨深い。『時をかける少女』にモヤっとしたり、特に『サマーウォーズ』にイラッとする人にはオススメしたい。俺だけど。細田監督は『おおかみこども…』や『バケモノの子』の路線があるので良いのだ。

良く考えれば従来の新海誠テイストは殆ど入ってるのに、「新海誠作品」という単語の意味をすべてひっくり返した今作。今後の彼の活躍がすごく楽しみになった。

匂い立つような田舎の光景にため息が出る。観賞後の帰り道、車の中から見える自分の町の光景がまるで映画の1シーンのように美しく見えるのもやっぱり劇場鑑賞ならではと思うので、レンタル待ちなどせずぜひ足を運ぶべき。

男女入れ替えを演ずる神木キュンと上白石萌音の二人の名演技ったらない。女性の方の名前には覚えがなく「誰?」と思ったらなんと『ちはやふる』のカナちゃんか!!この二人が演ってると思えばそりゃぐっとクるのも当然。

全編に流れるRADWIMPSの日本語歌詞の歌も内容にマッチして盛り上げる。そういう意味でも希有な作品。

そして一番の感動は「時間」である。という持論をまた一つ補強してくれる作品に出会いました。ありがとう。

最後にTwitterで見つけた名言を。


★★★★1/2

暑い夏がはじまった

今朝も、朝から30度。ここ1週間ほどは結構な暑さ。お盆休みは越後妻有に泊まったが、あちらも結構なものだった。
7月の過ごしやすさと併せて、まぁまぁ標準的な夏なのかな。

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1999年のWEB日記時代から始めた個人サイト。ブログ移行にあたって過去記事も抜粋してアーカイブしています。
(HTMLサイト→SereneBachブログ→WORDPRESSブログと転移)

好きな漫画(2014年版)はこの記事の最後に。

最近は(インスタ)でアップしているTV・映画感想の投稿を、半年に1回くらい一気に転載しています。

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