2011年7月上旬。
周りのスーパーの野菜がにわかに茨城県産で占められるようになったらしい。選択の余地はなく、結局何も買えないまま帰ってくる相方。311後、急に跳ね上がった各野菜の放射線量基準値。現在の農家の生産補償は勿論、恐らく将来の放射能被害の補償を避けるために、あらゆる放射線値は「ただちに健康に被害は及ぼさない」と表現され、出荷制限も穴だらけ、勿論農家には何の補償もされない場合もザラにある、という、地獄絵図のような光景が我が国で展開されている。
日本という国が、国民の命よりもお金を選んだ。
(そういうもんだよ、当たり前じゃない。と言うなら、そういうしたり顔の物言いこそが今の日本を作った諸悪の根源だ)
2011年の日本国政府の対応が、後にどれだけ私達の恥部となり、子孫の命を脅かすのだろう。
福島県産の野菜を買って、被災地を支援しよう、というキャンペーンがスーパーで行われる。本来は全量を東電(と原発を推進した県と国)が買い取るべきものだ。そういった補償がないから、我々も声高に「それはおかしい」と言えない。現状ではそれらを作った農家を救済する策がない。すべてを飲み込んだ上で、自分の年齢では影響ないから、と割り切って買う人も多いだろう。それより遥かに多くの、大多数の人が、野菜に含まれるかもしれない放射性物質の危険を知らないか、知りたくないと思っている。
今朝の新聞の一面のニュースは、大量にセシウムが探知された牛肉が、日本全国に出荷され、もはや消費されてしまったという話題。それを市内の某ホテル(匿名)が買い、200余名のお客にサーロインステーキとして出したというニュースだった。
当たり前だ。牧草云々の話題が表に出ている時点で完全な補償と出荷制限をかけていないのだから。当初から牧草をすべて輸入産に変更し、このような事態にならないよう注意を払った畜産家も多いと聞く。
だけどもう、それらを区別することができるのだろうか。肉は加工用として出所もはっきりしないままどんどん店頭に並んでいく。つまり福島の善良な畜産農家どころか、全国の、すべての畜産農家が、この初期施策の失敗で大きな被害をこうむる。最初に補償を渋ったために、国の産業が、国がどんどん滅んでいく。
魚類に関してはもっと深刻だ。魚が魚に食べられる過程で「濃縮」がどれだけの量・範囲で見られるの分からない。周遊するのでもちろん地域も限定できない。もう、子供にできるだけ与えない他は、防ぎようがない甚大な被害が発生している。甚大すぎて補償しようがない。よかったね東電さん。
幼稚園では園長先生が朝日新聞の放射性物質飛散地図を挙げて(ヨウ素だろうか?)「新潟は絶対に大丈夫だと私は思っているが、一部のお母さん方が心配されているようなので、県に空間線量と土壌調査を調依頼することにしました。」とのたまった。その前、お便りに自分たちの意見で「放射線が心配されているようなので調査をする予定です」と掲載した時は、その書き方が「不安を掻き立てられてビックリした」と言われたそうだ。これは未だに意味が分からない。心配ないなら調査の結果も問題ないはずでしょ。まぁそれだけ格差があるということだ。この1ヶ月ほどで、「話ができる人」と「まったく通じない人」がきっぱり分かれた。それはそれでよいことだろう。
身の回りの多くの奥さん方は、日常の放射線の心配があっても、旦那が相手にしてくれないようだ。「大丈夫だから、心配するな」「神経質になりすぎだ」等々。そんな状況では、より「安全だ」と言ってくれる意見や発表に頼ってしまうのも、仕方ないかも知れない。
原発は金になる。地方は金がないとやっていけない。これまで通りのモノが、これまで以上に売れ続けないと、私達は幸せになれない。だから万が一程度の原発地震リスクなど我慢しなさい。もうあんな地震と津波は起こらないから。お金がないよりマシです。日本の1/3が住めない?冗談じゃない。住みなさいよ。住めないなんて嘘です。その変わり原発を続けもんじゅを稼働させて、必ず経済復興を果たしますから。電気がじゃぶじゃぶあれば、きっとモノをいっぱい作って、輸出してもうかるはず。第1次産業がなくなる?そんなんじゃお金儲けられないから無駄。やるとしても大規模・省コストで競争力をつけなさい。もしくはブランド化。そしたら買ってもらえますから。
誰が買うかっての。この4ヶ月で「日本産」がどれだけ信用を落としたか。
なにより私達の信用をなくした。乳児のことを考えたら、東北産のもの、出所が分からないものを買うくらなら、外国産を買うか、もしくはなから諦めるかだ。(信用できる基準や調査がないために)外国産と知って安心するという、これまで国内の心ある農家が一生懸命積み上げてきた価値を根底からひっくり返されるという、許しがたい事態に陥っている。食べ物だけは自国で保護してきちんとしたものを作り続けるべきだったのに、それがそもそも難しくなっている。国がどんどん滅んでいく。
このままで進んでいいはずがない。
と思った時点で、市井の我々が何か表明するか、署名やデモなどの行動を起こすか、購買行動で示すか、できることから、何がしか動くしかない。恐らくそれをちゃんとやるかどうかが、他国と日本との違い。あるときは日本の美点になり、新しい世界を作るときにはマイナスに働く、日本人の特徴。