TBSラジオ『Dig』のレーティング週間ゲストで倉本聰氏が出ていた。『北の国から』が今年30周年ということで、大根仁氏、BOSE氏(いずれも『北の国から』フリーク)が倉本氏に質問する形式。
氏が東京を離れ単身(本当に単身、妻も置いて)いじけてw札幌に出てきた時の話、北海道の数々のエピソード、北島三郎氏の付き人をしていたこと、当時のテレビ業界のことなど盛りだくさんで一秒も聞き逃せない面白さだったのだけど、その中で「北の国からは今?」という質問が出た。
その質問に、倉本氏は少しも言いよどむことなく、『北の国から2011 震災←こんなこと言ってない』を話し始めた。
蛍と正吉は結婚した後いわき市に住んでいて、震災に遭う。漁師をしていた正吉は津波で流されて死んでしまう。
蛍は看護師として被災地で救護を続け、息子・カイ(中学生)を富良野の五郎に預ける。五郎は嬉々として孫と暮らす。だが五郎は基本的に税金を払わず現金を持たない人なので国のお役人が怖い。
一方純は、奥さん(内田有紀)と別れ(笑)埼玉でごみ収集をしていたが、震災後は思い立って東北に行き、瓦礫処理をはじめる…
アタマの中でもう、ビジュアルが浮かんでくるじゃないですか。ようするに、あのひと達は今もやっぱり生きているし、そう信じ込ませるだけのドラマだった。それもそのはず、倉本さんはあの五郎さんのすさまじい体験一つ一つとっても、殆どが自分自身経験していたことだ、と話している。NHKと喧嘩別れし、一人誰も知りあいのいない北海道に逃げ、飲み屋街のさまざまな労働者達に助けられる(反体制派に優しい札幌)北海道生活。やがて富良野に移住し、現地の人と土地と廃屋にさまざまなことを教わる。
サブちゃんのコンサートに行くと(殆どは体育館)、前半は自分の歌を歌い、後半はリクエスト大会なんだそうだ。あの人は「2000曲歌える」そうで地元のお客さんのリクエストが殺到する。それをこなす会場の様子の、あまりにも「平等な」様子にショックを受ける倉本氏。学があるひともない人も、農家も漁師も先生もサブちゃんも、何も上下がない。そこで自分の隠されていたエリート意識のようなものに気付かされる。自分は何のためにシナリオを書いていたのか。どこか「評論家に受けよう」「人気を出そう」的な考えはなかったか。
サブちゃんのコンサート以降、自分のドラマを居間でこたつに入りながら見る、あの人達がアタマに浮かぶ。あの人達が見て恥ずかしくないものにしたい。確実にリアルな視聴者たちを想像して、書くようになったそうな(かなり意訳ですがすみません)。
タマに自分が経験していないことを脚本に書いてしまって、それはやっぱり失敗したという実例を面白おかしく話すその様子も、いちいち貫録ある。
もう一つエピソードを。
『北の国』からのロケに入る数年前に、個人的に餌付けしていたゴルフ場のキタキツネが、ある日トラ鋏に足を挟まれ、その杭を引きずって大きな声で鳴きながら現れた。もう手からは餌を食べない。結局そのまま吹雪の中に消えていった。てっきり死んだと思っていた。
そのキツネが『北の国から』のロケ中にふと現れた。もしやと思い餌をあげると手から食べる。純と蛍にもやらせてみる(「るーるるるる…」は倉本氏の餌付けのやり方)。この二人からも餌を食べた。
この瞬間、倉本氏の頭にラストシーンが浮かんだそうだ。東京に行って、いろいろあって、最後に帰ってきた純の手から、キタキツネが餌を食べる。
もちろんシナリオなどないから、その場で役者に口で説明し、ラストシーンを撮影した。
だけどそれからロケ終了までの1年間で、二人は10センチほど背が伸びてしまっている。服装は合わせて撮っているんだけど、実はその最後のシーンに来ると、二人の背がしゅっと縮まっているんだそうだ(笑)。
書いてるとキリがないけど、MCの二人も絶賛していた、今年発売の倉本氏の新刊『獨白(文教堂)』には、これまでの著作にもあまり書かれなかったようなTVシリーズ当時のエピソードが載っているそうだ。文教堂書店以外では取り寄せもできないようです。→ココから通販で買えますよ。
MCの二人が「連続シリーズ(スペシャルでない、最初のTV番組)」の完璧さ(シリーズ通しての起承転結など)をあまりに言い立てるもんだからもう自分の中ではすごいブームが起ってしまって、今すぐにでも連続シリーズを見直してたくてうずうずしています。
二人のフリーク曰く、子供の頃から見ているけども、その時の自分の歳によって純の気持ちになったり、草太の気持ちになったり、そして五郎の気持ちになり。見る時によって思い入れの対象が変わりいつも新しい発見があるそう。
二人を連れて北海道に戻り、『北の国から』が始まったあの時の五郎の歳に、自分はどんどん近くなってきた。
見終わったら、また書くかも。
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『Dig』のポッドキャストは既に配信停止しているので、ニコ動にあったのを貼り付け。全部は入ってないかも知れませんけど。
(ちなみに内田有紀さんはプライベートで「もし『北の国から』の続編があったら?」と聞かれた際に、「先生(倉本氏)に頼んで別れたことにしてもらいます」と言っていたそうだ。BOSEさんだったかな?ラジオの中で話しています。何が現実で何がドラマなんだか)