先週、待ち時間ツブし用に何の気なしに借りた『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(ペイTVの26話シリーズモノ)』のDVDがエラく良い出来で、TSUTAYAの100円セールをよいコトに3〜4枚ブッ続けに観てみた。 基本的には刑事ドラマ。ストーリーの練り込みと演出が、イイ。
例えば犯罪モノの映画で、犯人が刑事達の追跡をからくも逃げ切ったとしよう。そこで「何でこっちで待ち伏せしないんだよ、時間も十分あったじゃん」「何でそこで撃たねぇんだよ!プロだろオマエ!」ってな内心ツッコみ、言ってみれば余計なストレスね、コレが多い映画ってかなりの減点モノなんだけど(演出で「許せる」ようにするテクはあるのだが)、士郎正宗のマンガの良さって、このツッコみドコロが全然無いトコだと思うんだよね。
それでも出てきちゃうツッコみには、作者が全部、欄外の書き込みで答えてるのだ。
要するに「プロ」の美学。余計な説明無しにストレートに表現する美学。プロとして為さなければならない任務は全うしつつ、ソレでも裏をかいてくる犯罪者、政治家、あるいは身内の警察官。それらがゴッタ煮に絡まりあって進行する複雑なドラマ。今のマスコミで言われる間違った言葉使いの「正義」とは全然違う意味で、ブツかりあう個人の正義、組織の正義、社会の正義に、時には葛藤し悩みつつも「プロらしく」任務を全うしようとする、個性的で魅力溢れる登場人物たち。
こういった原作の魅力が、TVシリーズではちゃんと感じられるんだ。アニメ化と「説明的なセリフ」ってどうしても切り離せないモノなのだけど、『STAND ALONE…』は見事に(一見サンを)切り捨てている(笑)。
あの原作の膨大な情報量は(リズムを崩すテロップ無しに)全部セリフに入れられ、当然のコトながらかなり説明不足。ちょっと一回観ただけじゃ到底全部は理解しきれない。けど、この(セリフに入れるという)作戦は「士郎正宗のアニメ化」としては大成功だと思う(原作のマンガも一度読んだだけじゃ分かんない)。TVってゆうよりはDVD向きだけどな。
さらに、だ。まだ3〜4枚しか見てないんだけど、こりゃもう原作を越えてるぜってゆうような、感心しちゃうアイデアも盛り込まれてたりして(STORY0005の「笑い男」がスゴい)。しかもアニメ(動画)ならではのメリットをちゃんと生かして演出されてたりして。1枚目がスゴいクオリティで、2枚目以降、絵のレベルがコロっと落ちちゃうのはちょっとインチキ臭いけど(笑)、でもそのレベルダウンを補って余り有るストーリー・演出の良さ。つか士郎氏がプロット原案を作ってるらしいんで、「原作を越えた」ってのも何だかアレなんだけど。
コレで草薙さえマシならなー(後述)。管野よう子の音楽も『ビバップ』ばりにセンス良し!
言うまでもなく、あの押井の映画よりも断然オモロいです。早く続きが観たくてしゃあない。あ、一応書いておくけど、基本的にオタク向けのアニメですから。士郎正宗を読んだコト無いヒトにはおすすめしません。
最後に悪いトコを。
●OP&EDのビジュアルセンス最悪。特に「こないだやっとCGソフト覚えたんですぅーこんなん作ったの見て見てーーねぇーー(はーと)」的オープニング。何だありゃ。音楽の良さも全て台無し。
●主人公・草薙素子の衣裳デザイン・顔・そして声優がサイアク。感情入れ過ぎで「プロ」としてのクールな魅力が全然出てない。ヒドい。演出家も口出しできない位大御所なの?彼女は。違うよな。回を進めるウチに慣れて変わっていけばなーと思うんだけど。ムリか。
イヤほんとにもう、32歳にもなってこんなに純粋に、続きを楽しみにできるアニメが出来たっちうコトが。嬉しいですよ。キングゲイナーも盛り上がってきたし、『二つの塔』はまだまだ何時間もあるし、もーー観るのがいっぱいあって嬉しい限り。