私の反省

(中略)以前、原発を取材した折(『からくり民主主義』)、耐震設計や老朽化という点で原発は非常に危険だと知り、その日常性について書かせていただきました。しかしすでに原発はあり、稼働している。一基あれば二基、三基あるものも同じことという論理で次々と増設されていく。地元で反対運動などがあっても、それは「住民は不安を抱えている」というアリバイとして機能し、むしろ誘致を支える安全弁のような役割を果たしていました。人間は既成事実に弱い。私もそうでしたが、そこに「ある」ものは日常として受け入れてしまう。今回の事故はその弱さが露呈した大惨事で、これから必要なのは「生きる」ということに対する知性だと思います。被災された方々に「頑張れ」と言うのではなく、被災をまぬがれた人間が頑張らなくてはいけない。

高橋秀実「アンケート 作家たちの『あの時』と『今、思うこと』」en-taxi vol.32

二次災害というべき原発事故について、原発をめぐる政財官の癒着構造や東電の隠蔽体質、手抜き工事、データ改竄、原発ジプシーと呼ばれる下請け労働者の存在など、現在指摘されている原発にまつわる問題の多くを、私を含めた多くの人が以前から知っていたはずだ。だが二項対立的な反対運動に身を投じることにはためらいを覚え、その危うい電力に依拠した都市生活を享受してきた。東電や政府を非難する前に、私はまずこの事実を恥じ、謝罪したい。
失われたコミュニティ、さらに未来の世代に至るまで払い続けなければならない代償はあまりにも大きいが、死者から与えられた「日本社会のあり方を根本的に変える機会」を無駄にしないことが、唯一の償いだと考えている。

※改行:shiro
橋本麻里「アンケート 作家たちの『あの時』と『今、思うこと』」en-taxi vol.32

まったく同感です。自分はいつも言葉に救われて、言葉によって方向性を見い出し、生きる明るさと拠り所を得る人間です。今後も震災に関して「いつでも見直せるようにしておきたい」言葉を引用させていただきます。

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