ユナイテッド・シネマ新潟で。
アンソニー・ホプキンス&オリヴィア・コールマン出演。
戯曲家フローリアン・ゼレールの初長編監督作。
認知症の老人「アンソニー」から見た、娘との暮らしを描く。
アンソニーの目を通した世界、といっても主観視点ではないので、これは現実なのか、妄想なのか。これは誰なのか、ここはどこなのか、さえ確信が持てず物語は進む。
日本版のポスターを見て「末期老人と娘の関係を描いたハートウォーミングもの」とか勘違いする人もいそうだけど、まったく違う。
映画自体はサイコスリラーの面白さもある位。舞台の殆どが一つのフラット(階段のない共同住宅)内で進む。同じ部屋…のように見えるのに「??…なんか違う?」とか、ドアの向こうは…ええ?とか、驚くような使い方。
映画的な仕組みがそんな風にとっても優れていることに加えて、アンソニー・ホプキンスとオリヴィア・コールマンですよ。圧倒的演技。アンソニーは自分の今までの印象とはかなり違っていた。主演男優賞も当然。オリヴィア・コールマン(『女王陛下のお気に入り』のクイーン)も目立たないけど、これだって助演女優賞ものじゃん。
いつも冷静なアンソニー・ホプキンスが、今作だけは(自分の父親を思い出し)感極まって撮影を少し中断したことがあるそうだ。(パンフレット町山さんの解説より)
全体を通して説明は一切ないけど、こだわった背景と、登場人物の表情だけでも、すごく情報量が多い。
認知症が中後期にさしかかった自分の父のことを思った。だけどそれ以上に、自分自身をアンソニーに反映させて考えてしまう。容易に想像がつく。
で、最後はすべてが無に帰す。当たり前のことが、リアルに、しかし美しく語られる。
スクリーンを出た瞬間から何故か涙が溢れた映画。今までにない体験。
※写真の女性は、オリヴィア・「ウィリアムズ」の方。こちらも大変に重要な役。なにしろ俳優が全部で6人しか出てない。