『フロリダ・プロジェクト』感想


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フロリダ・ディズニーワールドの隣の安モーテルで暮らす若いシングルマザー・ヘイリーと5歳の娘ムーニー。毎月の家賃も払えず、母親はディズニーに来た観光客相手にパチモンの化粧品を売ったり体を売ったりして暮らしている。厳しく抜け出せない貧困層のリアル。

主人公母子も、周りの住民達の暮らしぶりも、子供やママ友とのやりとりりも、客観的に観たら相当なろくでなし。モラル的にアウト!なこと連発。悲惨に描こうと思えばいくらでもできるシチュエーション。

そんな底辺の暮らしを、この映画は子供の目線からユートピアのように描く。子供の目から見た、カラフルでワクワクに満ちた世界。遊びの基地となる何棟ものモーテルや廃屋、パンケーキの貰えるダイナー、観光客を騙して小銭を稼ぎ、仲間と舐め合うソフトクリーム、雨の後の虹、向こうの世界で上がっている美しい花火。

母ヘイリーはロクデナシだけど、娘を間違いなく愛していて、常に優しく、子供の目線で一緒になって遊ぶ。こちらからの「カワイソウ」なんて目線はどこ吹く風、常に笑顔の絶えない、本当に愛おしい日々。

だけどそんな生活はいつまでも続かず、終焉が刻々と近づいていく。

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●ムーニーを演じる子役がとんでもなく素晴らしい。町山智浩さんが『ギフテッド』の主役の子と並べていたけど納得。きっとこれからどんどん有名になるだろう。吐く言葉はろくでもないけど、あまりのキュートさと愛くるしさ、だからこその最後のある瞬間の表情に、胸を裂かれた。

●美人の母親ヘイリーを演じたブリア・ヴィネイトはきっと名のある女優なんだろうと思っていたけど、監督がインスタで発掘したデザイナーだそう。この映画の演技が認められて、次々と大作出演が決まっているようだ。

●この母子2人のシーンはどれもすごく幸せで、やってることは褒められたもんじゃないのに、できればこのまま続いて欲しいのになぁと自然と願っている自分に気付く。苦しく抜け出せない貧困暮らしで、周りからみたら相当に大変な状況だとしても、徹底的に「ジャッジしない目線((C)宇多丸)」で描くというこのやり方自体が、この映画の最大のメッセージだと思う。

●描かれているものと、描かれていない(ように見える)もの、その構造が巧み。最初観た時は普通の1シーンが、あとで考えると、胸が苦しくなるような破滅の予兆だったり。

●母子を見つめる、ウィリアム・デフォー演じるモーテル管理人の渋い演技もいい。一見何でもない場面に見えるけど、彼の動きを通じて、実はいつも危険と隣り合わせだということを思い出させたり。ここの演出すごい。

●射貫かれるような一瞬の「目」の演技が何回かあって、強烈に印象に残った。

●最初観た時には呆然となったラストシーン。でも観終わった直後に思い出しただけで打ち震える。これは歴代ベスト5くらいに入りそうなラスト。それまでまったく見えなかったアレが、最後の最後で初めて急に姿を見せる。まわりに居る観光客達が、主人公2人に比べなんと空虚に見えることか。

●全編通して圧倒的なビジュアルセンス!

まだ書きたいことはあるけど、とても自分の語彙では表現できない。あちこち見事!な一作だった。また見直したいな。『ギフテッド』とこの2本、最強・天才・カワイイ子役映画。

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