映画『グリーンブック』感想

『グリーンブック』をユナイテッド・シネマで。

小学生後半なら一緒に観ても大丈夫。素晴らしいエンターテインメント作。『ドリーム』が好きな人には特にお薦めしたい。できればクリスマスに観ると最高。

最初に企画を聞いてからこの日まで期待していた内容を、見事にすべて100%以上で返してくれた。満足しかない。デブまっちょなイタリア系チンピラのトニー(ヴィゴ・モーテンセン)と、知的でおぼっちゃん育ちの黒人天才ピアニスト・シャーリー(マハーシャラ・アリ)の珍道中。と聞いただけで、そりゃ絶対面白いでしょ。

流行りの実話ベースで、脚本はヴィゴ演じるトニー・リップの実の息子と監督が、共同で書いている。パンフレットにある、実際のトニーの家族と、この映画の深い関わり(実際の親戚が役者で出ていたり)を読めば映画のあのシーンが思い出されてニヤニヤすること請け合い。パンフのボリュームはそれ程ないけど、どの記事もぐっとくるのでお薦め。

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黒人差別が法的に許されていた最後の時代、60年代初期の南部をコンサートツアーで廻る訳だから、メインテーマは黒人差別。いや黒人に限らず「差別は無意識化で行われる」という『ドリーム』のあのテーマ。世界的に有名なピアニストが、コンサートでは白人富裕層にちやほやされながら、「いや黒人はここでは食事ができないんです。ほんとすんません」と同じ会場で食事をすることさえ拒まれる。

エグゼクティブ・プロデューサー陣には、あのオクタヴィア・スペンサーが名を連ねている。脚本を企画初期の段階から関わり、彼女独自の差別に対する考察がとても貴重だったと監督コメントにあった。

ずっと押し黙り反暴力で貫くシャーリー(アリ)と、ついつい口や手が出るトニー(ヴィゴ)のやり取りを通じて、異なる環境の人間同士の繋がりと理解について、セリフではなく脚本とその演技・表情で観客に考えさせる。しかも基本はギャグだ。

ここまではまだ想像できたけど、本作はすばらしい音楽映画でもある!シャーリーの演奏シーンがどれもこれもいい。しかもすべて違う曲ってのがポイント。いくら良い曲でも映画の中で被ることで「またこの曲?」って少し冷めちゃうことあるじゃない(『アリースター誕生』はそれでちょっと残念だった)。

家に帰ってから実際のシャーリーの曲聞いたけど、格好良かったなぁ。でも映画全体を貫くBGMはこのシャーリーの曲じゃなくて、60年代ならこれでしょ!なリズム&ブルース。このミクスチャがすごく気持ちいい。当時、黒人の曲は大好きなクセに自然体で人種差別している白人達。そのリアルな様子を音楽が浮かび上がらせている。

すべてのアクションが対になっているかのような構成力にも、ほんと褒めるところしかない。最初から最後までずっと好き。本当のエンターテインメントってこういうやつ。

以下ネタバレ含むかも━−━−━−━−━−━−━−━

大体トニー・リップ(ヴィゴ)のキャラクターがもうズル過ぎる。誰だって好きにならずにいられない。
イタリア系のバーのボディガード、腕っ節も強いが口先だけで人を動かせる「リップ」の異名も持つ、お喋り。妻と息子達を溺愛していて、道中苦手な手紙をずっと書いているけど、最後は必ず「息子達にキスを」。粗雑だけど、シャーリー(アリ)の心の微妙な変化に気付く繊細さも持っている。演奏を1回聴いただけでファンになる音楽への造詣(クラブで培われたのだろう)。「寂しい時は自分から動かなきゃ」←こんなセリフをデブまっちょなヴィゴが隣のベッドのアリに吐く訳ですよ。これが最後に繋がって…ああもう。

●冒頭でホットドッグ食い競争の賞金をそのまま妻に渡すところ。ここでもう完全に信じられるし、トニーの本質的な部分を描いてていて見事。

●ヴィゴの腹を冒頭でわざと強調してるの、笑ったなー。馳夫があんなになっちゃうんだから、そりゃ俺だって太るわ。(という反動で映画を観た直後に吞み食い過ぎた)

●新潟人なら誰でも「ノーマルタイヤでその雪の中を走るのか!」というところでめっちゃ驚く筈!

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他にもいろいろ、書き切れない。吞みながら話したいよ〜!

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