『銀の匙(8)』

こういう漫画は、滅多に読めるもんじゃない。

(以下ネタバレ)
8巻は、丸ごと「農家の借金」の話。イヤ酪農家か。これまでは『もやしもん』初期的なふんわり農業大学漫画だったのが。いきなりコレだ。主人公ハチの仲良しで一心に甲子園を目指していた友人:駒場が、家(酪農家)の借金のために野球も諦め高校も中退し、姉妹の為に働きはじめる。
安易な逃げも、努力と根性によるごり押しハッピーエンドもない。駒場の家は、借金のカタに農場をとられる。その借金の保証人になっていたヒロイン・御影の家庭(こちらも酪農家)は、祖父が何より大切にしていた馬を全て売る決断をする。そんな中で御影は初めて、家業の酪農を継がずに馬に関係する職業に就きたいという夢を、ハチに見守られながら親に告げる…

良く考えりゃ『北の国から』なみにディープな話題を、これまでの『銀の匙』ペースをくずすことなく暗くなり過ぎずに描く。
ハチたち大学生は、やはり何もできない。あがくだけ。だけどそんな大変な状況の中にいる、酪農家の大人たちが何ともカッコよく写る。実はこれも『北の国から』に通じているところを感じてしまって。アキラメの心とでもいうのか。いざという時の潔さ。腐らず将来の為のベストを割り切って探すその姿に、この道一筋に進んできた大人の稔侍が現れる。そう、8巻のハイライトはこの大人たちの生き方と、それを見てあがきながら、あくまでも自分の道を進んでいこうとする主人公ハチの決意。自分にできることを悩みながら探し、ヒロイン御影の受験勉強を手伝うハチ。周りを固める学生たちも実に好感キャラばかりで…。

ああ素晴らしかった。やっぱこの作家さんの別作品、読んでみようかしら。

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1999年のWEB日記時代から始めた個人サイト。ブログ移行にあたって過去記事も抜粋してアーカイブしています。
(HTMLサイト→SereneBachブログ→WORDPRESSブログと転移)

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