アスペクト (2006/03/23)
以前からヴィレッジバンガードなんかで見て気になってた大阪の家具屋『TRUCK』の本。WEBサイトはこちら。同時に少年マガジンほどもある分厚いカタログも取り寄せてみた。
家具は古道具や骨董の中にあってもすんなり馴染む見事なデザイン、ぐっとくる素材感。細部まで気の配られたカタログ(夫妻は二泊三日で印刷の立ち会いをしたそうだ。写真もほとんど二人で撮影したらしい)。余裕のあるレイアウトで、素敵な部屋にコーディネイトされた家具の写真が並ぶ。その写真の中には実に良いタイミングでゴールデンやかわいい雑種のぶち猫が登場し、そのくつろいだ様子に思わずニヤついてしまう。夫妻は犬4匹、猫8匹を飼っていて、このカタログの中にも頻繁に登場するのだ。
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そのわんにゃんたちの所在が実に愛らしくてまた家具の存在感を一層高めてるんだけど、別にこれは意図的とゆうよりも撮影が自宅なので「放っておいてもわんにゃんが入ってきてしまう」んだそうな。そのわんにゃん達のプロフィールはカタログにも『MAKING TRUCK』にも載っていて(後者ではより一層詳しい経緯が分かる)、そのプロフィールページがまた実にかわいい。
『MAKING TRUCK』で語られる二人の生い立ちと出会い、お店の成り立ちなんかを読んでるとまさに「そうそう、分かる分かる」の連続なのね。普段オレがが思っているコト、特にモノの好みや趣味なんかが、相方以外なかなか分かち合える人がいなくて、それはもうしゃあねいやとゆうアキラメの境地だったりするんだけど、でもタマに、こおゆう本に出会えたりして、「ああ同じ人いるじゃん」みたいな。そこでぐっと救われたり嬉しくなるワケなんです。
で、ココで、やっぱり作ってるモノが今イチであればソレまでなんですよ。だけど違った。二人の作る家具や雑貨のセンスは、やっぱりどんぴしゃで好みだったんですよ。北陸の片隅でまともなお店もない中暮らしているせいか、もう我々は一生新品の家具屋さんで買うことはないだろうな、と心に決めかけていたんだけど、TRUCKを見たら、気持ちも変わったね。
ただし値段はちょっとやそっとのアレではないです。一生モノ的な値段(一生モノって「一生買えないモノ」かも)。だけど欲しー。うれしいほどに色んな趣味の合う、この夫妻の話を読んじゃったら、また一層欲しくなるー。やっぱしモノを売るには背景やストーリーが重要だよなー。理屈じゃ分かっていてもこうやって自分の体験があると皮膚感覚で分かるよね。全然関係ないけど、今回この『MAKING TRUCK』を買うきっかけになった雑誌『DESIGN QUARTERLY VOL.3』からの引用。
例えば、ちょっとひんやりしてて、表面が赤くて、かじると中が白くて、甘くて、コンピューターのロゴマークになってたりとか、日本だと青森が原産で、僕は風邪をひくと母親にすりつぶしてもらって食べた記憶がある。さてなんでしょう?そう、リンゴです。
結局、モノを語るときは、キーワードにしかすぎなくて、その向こうにあるものを語る必要はあると思う。母親にすりつぶしてもらった経験からくる感覚みたいなもの。そういうものやと思うんです。
赤白というのは表装の部分で、すりつぶしてくれたっていうのは、母親がいて、そのときのしんどかった気持ちとか、情景までを思い浮かべて、そん時の甘くて美味しいリンゴのすりつぶされた状況とかも出てくる。語るとすれば、そういう物語だと思う。
これはどうして生まれてきたかっていうことを語れたら、そのモノの価値や見方も変わる。語る必要がないのは、見た目一発でOK、フォルムでOKであって、モノのストーリーや背景はモノとしての価値以上に、人の関心にフィットする入り口になるんですね。
〜「graf・服部滋樹さんに聞く」より〜
えと、古道具・古民具好きな人、木の飴色と使い古した皮の質感が好きな人、そんな同志の方に何かしら応えてくれるモノが、このカタログにはあるんじゃないかと思います。ぜひ一度立ち読みもしくはお買い求めを。
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