映画『国宝』感想

『国宝』をユナイテッド・シネマで。
監督:李相日(『69 sixty nine』『フラガール』)


【あらすじ】
任侠の一門に生まれながら、女形としての才能を見出され歌舞伎役者の家に引取られた喜久雄。彼はやがて、その家の御曹司と切磋琢磨し芸に青春を捧げていく。(Google AI)

【感想】
映像と劇伴がとにかく素晴らしい。(撮影はチュニジアのソフィア・エル・ファニという方)
歌舞伎の劇場にそのまま客として座っているような錯覚を味わえるので、これは絶対に劇場で観るべき映画だ。叶うならIMAXでどっぷり使って観てみたいなぁ。

美しい。人も衣装も小物も建物も、すべてが美しい。美術は種田陽平!舞台は京都。
Netflix『舞妓さんちのまかないさん』好きの自分としてはもうたまらん、隅から隅まで愛せる。

企画時から当て書きされたという主演の吉沢亮の演技は終始凄まじく、生涯の代表作になるだろうと思う。若い頃からお祖父ちゃんに至るまでの変化も良かった。(お祖父ちゃんメイクは全然駄目だったが)

全然関係ないけど、歌舞伎周りで永野護『The Five Star Stories』の巨大ロボットの「見栄」を思い出すシーンがいくつかあった。なるほど然り。

クライマックス、舞台上の物語が主役2人の人生と交錯するに至りもう号泣。
演出・演技の細部までが隙無くツッコミ処なく完璧な説得力。

観逃さなくて、良かった。

長女と観に行ったのだが、彼女は自分以上にハマったようで
「観終わった後にすぐもう一度観たくなった。あっという間だった」←上映時間3時間
らしい。

観に行った夜はずっと
あそこが良かった。あの音楽、このシーンが良かったと話していて、家族とこんな時間が持てるのは嬉しいなぁ。

一方で、女性描写については手放しで良かった!とは、とても言えない。
劇中での女性の扱いがとにかく酷い。特に吉沢亮演じる喜久雄は女性のことをまったく見ていない。彼の義父も、義兄弟も、業界全体が「女性は男性の小間使いと家政婦。都合の良い時だけ「家庭を守る役」」とされている。

加えて2人の主要女性キャラ、高畑充希と森七菜は立場的な説明も不足していて、大切な役どころなのに、脚本としてもどこか中途半端。

女性だけでなく子供や自分自身さえも含め「すべてを犠牲にしないと『国宝』にはなれない」と、それが当たり前のように描かれていて、それはそうかも知れないけど、それを美しいこと、とだけ捉えるのはやっぱ違和感。「こういうもんだよな…」と途中までは思ってたけど…イヤイヤ、どんだけ美化したって、さすがにすべては納得いきません。ホントなの?とも思うし。

というような話は長女もそう感じていたらしく、感じるのは我々だけではないと思う。こんな言葉はあまり好きじゃないけど、「反フェミ映画」でもあります。

その上で、すごい作品でした。劇場で一見の価値あり。

関連記事

  1. 2025.05.21

    『あんぱん』

コメント

コメントをお待ちしております

HTMLタグはご利用いただけません。

日本語が含まれない投稿、リンクが2つ以上入った投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

RECENT ENTRIES

ABOUT

1999年のWEB日記時代から始めた個人サイト。ブログ移行にあたって過去記事も抜粋してアーカイブしています。
(HTMLサイト→SereneBachブログ→WORDPRESSブログと転移)

好きな漫画(2014年版)はこの記事の最後に。

最近は(インスタ)でアップしているTV・映画感想の投稿を、半年に1回くらい一気に転載しています。

LOG