映画『線は、僕を描く』感想

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監督:小泉徳宏(『ちはやふる』3部作など)
主演:横浜流星、清原果耶

(あらすじ)大学生の霜介(横浜)が水墨画の世界に目覚め、やがて自分の心の問題とも向き合っていく。

すごく良かった。『ちはやふる』3部作までに思い入れは及ばないけれど、主役2人の心の機微を深く静かに描く演出が好み。

三浦友和演じる大先生と、孫で水墨画の新進作家・清原果耶の関係を縦軸に、主人公・横浜流星と家族の悲劇・友人との関わりが横軸になって、物語が進んでいく。そのバランスがいい。

撮影の迫力と劇伴とのマッチング!「饒舌な劇伴」とはおよそ揶揄する時に使っているけど、今作では要所に絞られ、クライマックスを盛り上げている。
(しかしいきなり歌が流れるあの箇所には戸惑った。ちょっと勿体ない)

説明セリフや説明カットが殆ど無いのもいい。「ここであの思い出カットが入るかな…」と心配しても、まず入らない。思い切りがいい。

『ちはやふる』3部作からの既視感(アングル、照明、音楽)はあらゆる処にあって、それは題材が日本伝統のものだったりするからなおさらなんだろうけど、でも自分はその既視感はまったくマイナスにはならなかった。何度もぐっときてしまう。

横浜流星が素晴らしい(彼の他の作品を観たことは殆どない)。

今作のファーストシーンは、彼の顔のアップがずーっと続くだけ。
ただ何かを観て感動しているその表情。その後、観ていたものが何なのか分かるのだけど、この最初のシーンが、後でいくつものストーリーと噛み合い説得力を増していく。

江口洋介もいい。ハマってる。清原果耶の演技も文句無しに素晴らしかったけど、完全に個人的な問題で『モネ』を完走した後だとさすがにダブり感がある。まったく違う女優だったらもっと集中できたのかも…とは思った。

『ケイコ、目を澄ませて』に続く三浦友和師匠。すっかり重鎮だな。これも自分的には三浦友和感を100%拭いきれず10%くらい残っているのだけど、でも良かった。

富田靖子の初登場カットがまったくそれと分からない位上流階級おばちゃん感満点で驚いた。

そして何より、最後まで主人公2人に恋愛感情のカケラも発生しないのがいい。最高。これが出ちゃうと急に凡百。

そもそもの水墨画の魅力に気付かせてくれる内容でもあるし、『ちはやふる』じゃないけどこの映画きっかけで水墨画をやってみたいと思う若者も結構出てくるんじゃないか。水墨画の描写がとても効果的だった。なんでもコロナの延期もあって、横浜流星は計1年ほども練習して臨んだそうだ。

この映画、入りはどうだったんだろう…残念ながら自分の知る限りでは然程話題にはなってなかったようだけど。#アトロク で宇多丸さんがかなり褒めていて気になっての鑑賞でした。

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1999年のWEB日記時代から始めた個人サイト。ブログ移行にあたって過去記事も抜粋してアーカイブしています。
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