映画『ソウルの春』感想

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監督:キム・ソンス

【あらすじ】
1979年に韓国で起きた「12・12粛軍クーデター」の経緯を初めて映画化。
役名は少し変えているが、殆どの出演者には実在のモデルがいる。

【感想】
昨年観ていたらベスト1にしていたと思う。
圧倒的なエンターテインメントにして、ラストには忘れられない悔しさを味わう。

このクーデターが成功し、その後10年以上も軍事独裁政権が続くという歴史を知りながら尚、こんなにハラハラさせられるなんて。

クーデター当日の両勢力の駆け引き、秒単位の情報戦のやり取りは言葉通り「息をするのを忘れる」すさまじい緊迫感。単なるアクション映画としてもトップクラスの面白さ。
(大好きな『クライマーズ・ハイ』のクライマックスを思い出す。ああゆうプロ対プロのやり取りが好きな人に全オススメ)

全斗煥に対抗する、実直で正義感の固まりのような首都警備司令官チャン・テワン(役名イ・テシン)を、『監視者たち』の最高悪役にしてトム・クルーズ似のチョン・ウソンが演じる。
映画のあらすじだけ読むとキツい内容に思ってしまうが、劇中の爽快カタルシスは彼が担当してくれるから大丈夫!

このチョン・ウソンと悪役の権化のような全斗煥(役名チョン・ドゥグァン)を演じる名優ファン・ジョンミンのおかげで、ただでさえ見事な脚本・演出が超1級のアクションエンタメになってる。

「12・12クーデター」がその後2023年まで映画化されなかった理由として、首謀者の何人もがその後も韓国社会の重要な位置に居たからではないかと監督は語っている。彼は高3の時にこの事件を実体験し、翌日の新聞はじめその後の事件隠匿を肌で感じたことで映画化を決意したそうだ。

自分の年齢に当てはめてみると
「12・12」とその後の全斗煥による戒厳令〜光州事件(タクシー運転手)が起きた1979-80年、自分は10歳。
ヤマトやガンダムに夢中になっていた頃。

その後長く続いた軍事独裁政権が終わるきっかけとなる『1987、ある闘いの真実』の年に、高校2年生。
少女マンガオタク期。世は夕ニャンとおニャン子ととんねるずの時代。

「12・12」の罪を問われ全斗煥と盧泰愚が拘束・起訴され一応の解決を見る1995年に、自分は大学を卒業。
阪神大震災とオウム事件、Windows95、金融機関の財政破綻、バブルの完全崩壊。

自分が韓国で生まれ育っていたら。このあいだ起きたばかりの戒厳令の夜に、昨日の大統領拘束失敗に、何を思い、どう行動していたのだろうか。
 
このような作品が観られることが素直に嬉しくてありがたい。しかし観るのが遅すぎた。尻込みしてた。

傑作揃いの大人気韓国近代史シリーズ。この先もずっと語られる1作になるだろう。

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