Netflix『アドレセンス』感想

話題沸騰中のNetflix『アドレセンス』全4話完走。

同級生の女の子を殺した容疑で、ある日いきなり逮捕される主人公・ジェイミー(13歳)とその家族を中心に、事件の真相を追う刑事や心理学者、学生たちの姿を描く群像劇。


各話50分程度の話が、なんとすべてワンカットで撮影されている。その特殊な撮影による緊張感が凄いのだけど、この事前情報が邪魔して、最初はもう
「これ、紅白歌合戦のけん玉のごっついヤバい奴やん!俳優のプレッシャー半端ないで!」
とか思って笑、気になってしょうがなかった。

舞台演劇は確かに、1時間2時間ぶっつづけに演技し続けるしね、て最初思うけど…違う違う。
演劇は、たとえミスったとしても舞台は続く。

ワンカットドラマは、ミスるとNGになって、関係者全員が、最初からやり直しになる。その責任をそれぞれ一人一人が背負ってることになる。

結局、各話10テイクくらい撮ってるそう(ひえ〜)。考えただけで苦しい。

部屋から部屋の移動、車での移動、空からのショット、小路を走って逃げる子供、すべてを1カメで追いかける。会話シーンではお互いを交互に写し、回り込む。まぁ凄い。凄すぎて最初はカメラワークが少し雑音になってしまうが、2話の頃にはもう気にならなくなってしまった。

こういったワンカット撮影の技術面の話は、確かにとんでもないし近年見たことのないレベルなんだけど…
実は『アドレセンス』の肝ではない。

今の13歳の子供と家族、学校をリアルに描き、説明セリフもナレーションも一切なしに、じわじわと、殺人事件の真相を明らかにしていく脚本・演出の巧さこそがこのドラマの核心だ。

明確な説明はない。だけど観ているコチラは、4話を重ね気付かざるをえない。この狂気を、切なさを。ワンカット撮影のまるで現場をそのまま覗き見ているような効果と相まって、すべての演技が、心に刺さる。

特に思春期の子を持つ親にとっては、恐ろしい悪夢、でもすぐ隣にある悪夢なのだ。しんどい。

救いなのは、ジェイミーの家族が、この辛い時期を乗り越えようとお互い歩み寄っている様子だ。これがなかったら自分的には相当キツかった。

以下ネタバレあります。

ジェイミー役のオーウェン・クーパーが圧巻。特に3話、彼と心理療法士の2人だけのシーンがとんでもない。オーディションで選ばれ、俳優自体が初めての彼。そしてなんと最初に撮ったのが3話だと言うのだから…。今後どうなるのやら。


お父さん役のスティーブン・グレアム(プロデューサーでもある)をはじめ彼の家族も皆長回し演技をやってて、イヤとんでもないですね。圧巻で声も出ない。


2話の学校。先生たちの振る舞いが、怒鳴り声が…辛い。ジェイミーを囲んでいた環境をさりげなく、じわじわと描写していって。お父さんの短気ぶりもそう。

SNSの怖さはもちろん、ミソジニーや今まさに自分が書籍で読んでいた女性嫌悪の問題が根深く関わってきていて、今観るにもタイムリーな作品だった。

多分静かな環境で、没入感マシマシで観ることをお薦めします。
技術的には、初めて『ゼロ・グラビティ』を観た時のような感動を覚えました。
「あ、新しいやつ、来た。」と実感できる作品。
Netflixすげえ!

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