『弾劾可決の日を歩く “私たちはいつもここにいた”(タバブックス)』

岡本有佳・編『弾劾可決の日を歩く “私たちはいつもここにいた”(タバブックス)』読了。

待ってました。あの裏側がとにかく読みたかった。
(きっとこれも映画になるよね、と映画部会で話してたっけ)

昨年末の韓国非常戒厳令発令から、大統領弾劾まで、特に若い女性達がどう動き、何を発していたのか。現地での臨場感溢れるレポート、その後のトークやインタビューをまとめたZINE。65Pで¥1,000。2/26初版発行。タバブックス通販サイトで買えます

そもそも知らないことがどんどん出て来て、すごく勉強になる。というかもう最初から最後まで感情を動かされっぱなし。これを「感動」と言っちゃうと、自分が彼ら彼女らの気持ちを消費しているようで(実際そういう面もあるのだろう)恥ずかしいのだけど、もうこれは、人が動くという感動以外何モノでもない。凄まじい感動でした。

知らなかったこと。
●尹錫悦元大統領の言論弾圧の実際の酷さ。女性政策を何十年も後退させるかのような前時代的な改革の数々。そしてかの大統領の横暴を、日本のTV局がほとんど報道してこなかったこと。

●デモに参加できない人が、デモ周辺の飲食店に前払いをしてデモ参加の若者達への無料の食事をサポートする仕組み。サイトで「あと何食」と見えるようになってる。この仕組みを、IUなど多くの著名人が寄付でサポートしている。

独立メディア「ニュース打破」:朴槿恵政権までの言論弾圧で公共放送を解雇・辞職した記者等が非営利で調査報道をするメディア。広告は取らずに市民からの支援金のみで運営されている。尹錫悦の言論弾圧でも1番ターゲットになった。

●メディア監視の「民主言論市民連合」:軍事政権下で解雇されたジャーナリスト達により1984年創立。

今韓国ではYouTubeで多くの独立系メディアが立ち上がっており、それらが、戒厳が発令されてからの国会での市民の動きを刻一刻と伝えてきたおかげで、素早い戒厳令の解除と弾劾裁判をサポートしてきたようだ。一方で尹錫悦が乗っ取ったメディアもあり、双方は全く違う様相なのだとか。
日本との違い、良い所も悪いところも。

K-POPを中心に、歌と共にあるデモの様子。討論の場づくりの様子。デモをやらざるを得ない状況は苦しいけども、でもその連帯が、とても羨ましくもある。

12月、あの迅速で素早く、そして大きな動きの裏にあるのは、韓国の近代史における人権弾圧の歴史はもちろんのこと、セウォル号事件やイテオン雑踏事件の惨事を未だリアルに体験している世代だっからこそ、と言われている。

「苦痛を直視しようとする心、他人の空腹と寒さから目を背けない心、差別と排除の苦痛を共にしようとする心が人間の心であり、人間の村に咲く花だと思った。私はこれらの顔からセウォル号の子どもたちを見た。セウォル号の子どもたちがその場に来たと固く信じた。死者が生者の道を開けてくれたと信じた。セウォル号以前と以後の世界は違わねばならないという意志が、人々の胸のなかに怒りの花を咲かせたと思った」
(12月南泰嶺の農民デモ後、関係者のFacebookより)

また韓国におけるジェンダー平等は、日本のそれよりもかなり遠い話で、これらのデモで話される言葉にも、その実感がにじみ出ている。
ここで勝っても終わりではない、弱者への関心を失わないで。その関心こそが皆を生かしてしていく唯一の道なのだから、と。

我が国が本当にどうしようもなくなっていく今この時、読んで良かったと思える一冊だった。

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