カテゴリー: TV・映画感想

『キックアス ジャスティス・フォーエバー』

DVDで。大ヒット作『キック・アス』の続編。予定では全3部になるそうな。
ストーリー、演出、アクションの見せ方、盛り上がりやカタルシス、いずれも前作には及ばない。父親というキャラクターの不在を埋める「何か」がこの2にはなかったし、最後もあまり盛り上がらないまま(というか前作があまりにすごかったのだけど)終わってしまう。

しかし、しかしですよ。それらを超越して余りあるクロエ・モレッツの美少女ぶり。
前作までは正直「ちょっとクセのある顔立ちの幼女」というイメージしかなかったし、クロエ好きで騒いでいる人達の気持ちも全然分からなかったんですけど。
この「2」でいきなり、急に、彼女の美しさに気づいてしまった。
(「いきなり」ってのはこの「1」と「2」の間の出演作をほとんど観ていないからなんですけど)
逆のケースは良くあるんだけどね。ああーもうかわいさがなくなっちゃったよ。的なアレ。クロエは違った。

他にもキックアス役の彼、前作から良かったけどこの「2」ではさらに好きになったな。クロエとの間に恋愛話がまったくないのもすごく気持ちがいい。

迷彩服の大佐的な人、てっきり後で悪役に変身するんだろうなーと思って観てたのに、あっさり→ネタバレ殺されちゃって、ええ?ってオモタ。

クロエの可愛さ、それだけで観る価値あります。といって納得してくれる人にだけ、オススメ。

☆☆★★★

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『スノーピアサー』『もらとりあむタマ子』『ばしゃ馬さんとビッグマウス』

すべてDVDで。『スノーピアサー』は、列車内外のディストピア描写が印象に残る位で全体に印象薄いわ〜。よく出来てるSFだとは思うし、シチュエーションも好物が多いのだけど、ほんと何も残らないな。主人公に何の魅力も感じることができなかったのも、大きいかも。
☆☆1/2★★

『もらとりあむタマ子』のほうがよほど「残る」映画だった。というか娘との関係が自分の未来を観ているようで、イヤ全体的には違うことばかりだけど、あちこちに「あーこれあるあるー」ってのがあって、ダブってしょうがなかった。最後は「ええここで〜?」ってかんじで終わるけど、でも全体通すとこれもアリなんだなと納得できる。また観たくなりそう。父親にとって娘ってのはとにかく可愛いものなんだよ。どんな駄目な状態であっても一緒にいれるのならそれはきっと幸せなんだろうなーとは思う。

アクセサリー教室で、父親の恋人になりそうな女性と二人になって、タマ子が父親の文句をさんざん言って、それを聞いてる女性のカットのとこ、なんかこみ上げてきて泣けてしまった。

しかし食事しながらのシーンとっても多い気がしたんだけど、これ撮影大変だったろうなぁ。絵が良かったです。お父さんはとても俳優とは思えない普通ぶりがすごい。坊主の中学生も良かった。良い映画でした。
☆☆☆★★

『ばしゃ馬さんとビッグマウス』
ばしゃ馬さん(麻生久美子)のほうはよくある話だけど設定がかなりリアルでそこそこ引き込まれる。彼女の書いた脚本を見た他人の評価を聞くだけで何となく「あ〜きっとあんな脚本なんだ」「あ〜そういう人か〜」って思わせちゃう。すごい。

だけどビッグマウスの方の男の子があまりにもひどくて、すみません最後まで観れませんでした。一時間は観れたかな。この後どんなどんでん返しがあって、この男の子が実はどんなにすごい子だったかって展開になったとしても、この序盤の表現だけでそんなのどうでも良くなる。この男の子がどんなに素敵に魅力的に変わったとしても、到底それを良しとすることは絶対にできないと決断させる序盤の展開。ただの馬鹿。本当に何の魅力も味もない、ただの馬鹿。いや、この後実力を発揮して、後からトータルで見たら最初のアレもまぁしょうがなねーなーってこともあるのかも知れないけど。実力発揮がどうとか以前に人として魅力ゼロ。関わりたくないどころか、こういう人のことを考えたり我慢することに自分の人生の数分を使うのが本当にもったいないと思った。だから観るのをやめました。麻生久美子のキャラ作りは結構好きだったよ。
☆????

『青天の霹靂』

映画館で。いろいろ惜しいところはあれど、愛しげな映画でした。劇団ひとり、初の監督作。

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柴咲コウが大好きです。だから観に行ったようなところもあります。イヤ、大泉洋も好きです。使われ方で残念な時も多かれど良い役者さんで、今回の映画は特に、というか今まで観た中では最高にすばらしい洋ちゃんだったかも。劇団ひとりもすばらしかった。大泉洋の年齢も、生まれた年も設定も近く、それだけでとっても親近感があります。

大好きな『異人たちとの夏』のように、主人公が過去にタイムスリップし自分の両親と会う物語。柴崎コウが美しき母親で、小さい頃息子を捨てて出て行ったと聞かされていたのに、実は出生にまつわる別の事情があって…。

タイムスリップして自分の母親に逢い、そうとは知らずに口説こうとする。的な話ってこれに限らず結構ありますね。実はずっとずっと母親が苦手な自分も、1970年当時にタイムスリップしたら、そこで自分の母親に逢ったら、あるいはそうなってしまうかも、とはこの映画を観て初めて思った。両親達の70年代の写真を見ているからね。たとえば今の妻を例に挙げるまでもなく、女性の20年前、30年前ってもう別人だったりする。そして自分は個人的に70年代の女性って大好きなの。ファッションとか見た目が。だから70年代の柴崎コウなんってたらもうね…たまんないですよ。

洋ちゃんとひとりがコンビを組んで舞台に立つところは普通に大笑いしちゃうし、洋ちゃんの本気マジック(カット割り無しのガチ)もすごいし、美術は気合い入ってて全然安っぽさもないし、演出も冒頭の現代シーンがちょっとわざとらしい他は、いい。気にならない。舞台の後の居酒屋シーンはうらやましくてしょうがない。タイムスリップしてからは、シヤワセ感満載の映画です。

【以下ネタバレ感想】

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『モンスターズ・ユニバーシティ』

DVDで2回目の鑑賞。ネタバレ感想です。

そもそも『モンスターズ』シリーズを観た順番が

10年位前の『モンスターズ・インク』
  ↓↓
2013年末の『モンスターズ・ユニバーシティ』
年間中年始で『モンスターズ・インク』×2回
今回『モンスターズ・ユニバーシティ』

というかんじで、つまり一回目に本作を観た時は『インク』の内容をぜんぜん覚えていなかった。で、『インク』を観返したらそのあまりの完璧な面白さにハマり、イキオイあまって再度『ユニバーシティ』に戻ってきたわけ。やっぱり『インク』の内容を知っていると、全然気持ちが違う。

だけど全体の構成は『インク』の方が断然好き。『ユニバーシティ』は、そもそも多くの割合を占める「こわがらせコンテスト」の意義自体が正直ビミョーでやっぱりちょっとたるむ。勿論shiroの嫌いないじめシーンもあって、別に気分悪くなるようなもんじゃないけど、これも正直中だるみ感。全体を通して「学内ヒエラルキー」がドラマの根底にあるのだけど、正直面倒くさくて、後で明らかな逆転のカタルシスがそれ程ある訳でもない。

『ユニバーシティ』のオレ的見どころは、改めてラストシーンからエンディングだと思った(ゴメンナサイ)。大学を退学させられた2人が、まずは郵便整理係で会社に就職。まったく望んでいない職場だけどクサらずに楽しんでトップを目指す。その後もいくつかのセクションを経験するんだけど、どの場にいても2人のベストを尽くし楽しんでいる様子が写真とナレーションで語られる。最後に、怖がらせやの試験に受かり、あの職場に最初に入るところで、『インク』につづく。

この気持ち良さたるや!

かかっているビッグバンド・JAZZのBGMも最高。一回目に観た直後にソッコー調べて買ったけど、この曲サントラに入っていませんよ(!)。要注意です。
MarchFourth Marching Bandの「Rise Up」というアルバムに入っている「Gospel」という曲です。

あと『インク』の直後に観ると、この10年のさすがのCG進化がよく分かります。天と地ほどに違う。『ユニバーシティ』のバスとかもう実写。マイクの皮膚はもうなんかリアルに生き物だし。だけど、『インク』の感想にも書いたけど、そういった技術的な面はストーリーの善し悪しにはイッコも関係ないのな!
サリーとマイク、このキャラクターの魅力って、ひょっとしてピクサー1かも知んない。今後も続編出るんだろうか。だとしたら楽しみです。

★★★☆☆

『モンスターズ・インク』を2回観る

9日間というながーい年末年始休暇の間、家族そろって『モンスターズ・インク』を観たのが2回。しかも一回返して、また観たくなったので再度借りてきた。きっかけは『モンスターズ・ユニバーシティ』のレンタル開始だ。娘達はモンスターズシリーズはこれが初体験。ちょうど時間の流れ的には『インク』がこの後なので次に観たら…。面白過ぎてドはまり。上映時間の間一度もダレない。見事な構成。2回観ても少しも飽きるところがなかった。CG的には『ユニバーシティ』の15年ほど前だから全然初期のクオリティなんだけど、そんなん全然関係ねぇぜ!をまさに体で表した、文句なしの傑作。

爆笑問題の田中、いい仕事し過ぎ。吹替版超オススメです。

★★★★☆

いじめは見ていて面白くないよ。

TBS・東京ポッド許可局の「ごちそうさん論」を聴く。ようはごちそうさん面白いぜ!って内容。
ごちそうさん、今までぽちぽち観てきて(週イチくらい?車のTVで)、どこかではまるきっかけないかなーと思ってたんだけど。ダメ。もうあの姑さんのいじめがダメ。許可局でも「最近の視聴者は甘やかされている。あのくらいのいじめは耐えて観なきゃ」的なことを言っていたけど、ダメ。あのいじめシーンで毎回断念。

分かりやすいので例え話で良く使うんだけど、『渡る世間は鬼ばかり』とかの嫁いびりを楽しく観れる気持ちが全然理解できない。なんでテレビの中でまで、放っといても世の中に溢れているイヤなことやイヤな人のイヤさと向き合わなければならない?それに対抗できていない人の無念さを眺めていなければならない?そんなパワーは少しでも現実世界の為に残しておきたいです。是非に。
耐性を付けるっていう意味は、あるかもね。でもそれは自分にとって「訓練」であって、決して「楽しいテレビ鑑賞」ではありません。

自分とまったく同じ気持ちの人も身の回りに結構いて、上記のようなことをよく話すんだけど、出てくる話の1つが「どこを面白がっているんだろう」ということ。いじめる方、いじめられる方、誰(どっち)に感情移入しているんだろう。とか。仕返しの時のカタルシスは確かに面白いだろうけど、仕返しを観たいがためだけにずっと耐えてるのかなぁ。そんなことはないはず。きっと気分の悪いのもいやーな感じもすべて含めて「テレビ体験」「映画体験」として消化できる、面白い体験にできる能力を、「観れる」人たちは持っているんだろう。

ごめんなさい。こんなことを書いてはいけなかった。と胆に命じていた筈なのに。面白く観れている人の方が世間では大半。こんなこと書いたって読んだ人のほとんどにとっては至極至極当たり前のこと。はぁ?というか、disられたかのように感じるだけだよな。

恐らく30を過ぎた頃から、30半ばになったらもう完全に、映画とかテレビに対して「怖いもの観たさ」とか全然なくなってしまった。エログロはまだしも、残酷系は全般にダメ。拷問、殺人とか。また特に子どもが絡んだり死んだりするものは絶対に観れない。「観れない」ってなに?と「観れる」人は思うでしょうけど、感情移入しすぎて「映画体験」から外れて自分の気持ちがガタ落ちしちゃうってこと。終って「ああ良い映画体験だった〜」なんて思えない。たとえ最後がハッピーエンドだろうが何だろうが。機会あるごとにそのシーンだけが甦り、具合が悪くなる。なんのためにお金を払って映画を観たのか分からない。

ええ、この条件で言うと世の中の話題の映画の半分以上観れないんじゃないかと思います。その通り。それで全然結構。だから何度も書いているけどタマフルの宇多丸さんとは全然趣味が合わない(彼の生涯ベスト『アポカリプト』はそういう意味では最悪だった)。レビュアーとして面白く聴いています。園しおんさんの残酷系もいっこも観る気にならない。

ああすっきりしました。このサイトのテレビ・映画レビューもこんなような特殊な感情ベースの上で書いていますので。アシカラズよろチンピク。

  

『ゼロ・グラビティ』

公開初日、映画館で3D吹替。地元では巨大なスクリーンだけど、お客さんは全部で4人だった(レイト)。ネタバレ殆どありません。
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スペースシャトルの船外作業中に、衛星爆発事故によるデブリ(宇宙ゴミ)の嵐に巻き込まれ宇宙に放り出された主人公の女性博士が、さてどうやって帰るかという話。全編通して息詰まる無重力(ゼロ・グラビティ)の宇宙空間でのあれやこれやなんだけど、覚悟して観に行ったせいもあってか、思ったほど苦しくはなかった。ストーリーと言える程のストーリーもないけれど、91分という短めの上映時間をあっという間に駆けていく(確か劇中で流れる時間とほぼ同じだって誰かが言ってた)。
特にEVAや放浪の最中で宇宙船やステーションのまわりをぐるぐる回っていくカメラ、映像のリアリティは本当にすごい!の一言。久し振りに圧倒的な映像体験です。映画館で観るべき。宇宙遊泳できるよ!

↓これをはじめ予告編は既に観た人用に。行くつもりマンマンな人は観ない方がショック大きくて良いよ。行くかどうか迷ってる人は観るべし。

投げ出され映画だと聞いて想像していたよりはずっとずっとテンポも良く、しかもその中で無情の放浪時間を巧みに挟込むことで緩急もたっぷりあって、しかもクライマックスはちょっとぐっとクる感じで。とても気持ち良く観れました。オススメです!

ここで苦言。といっても3D吹替というフォーマットに対して。
3D吹替、正直オススメしません。そもそも3Dは吹替しかないって選択肢にはいつも呆れてしまうんだけど。この映画は登場人物も極端に少なくて、おそらく劇中7割位は「すーはすーはー」の息遣いです。つまりセリフ回しよりもリアルな情感が大切な演技。これはどーしたって吹替にはそぐいません。あと大好きなジョージ・クルーニーの生声が聞けないことにイライラしてしょうがなかった。あとねー、翻訳も少しおかしいとこあったなぁ。これきっと元だと○○じゃね?的な。セリフがめちゃくちゃ少ないもんだから、余計気になりますよ。

3D鑑賞歴は、映画館で6〜7本くらいかな?イオンシネマのRealなんとか方式。これまでも正直「3Dで良かった〜」なんて思ったことはほぼ無かったけど、今回は何故だろう。特に残念な印象。イヤ、素材としては絶対に3D向きだし、これを3Dで観ずしてどうする、という御意見も良く分かります。問題は、あの「ペラペラ感」。それに尽きる。Unknown冒頭で、宇宙から見た大きな地球をずっと写していて、向こうからすこーしづつシャトルが近付いてくるんだけど、もうそれがね。何ての、あれですよ、世界初のSF映画『月世界旅行』でロケットがひゅーーって近付いてくる、あれみたい。紙切れに棒をつけて動かしてるかんじ。まー全編通して浮き上がる素材全部が「紙製」に見える。「デブリに当たって顔の真ん中に穴が空いた同僚←ネタバレ」なんてホント、まんま紙芝居みたいで笑っちゃった。3Dって普通すぐに慣れちゃって3Dってこと忘れる(そしてメガネの痛さで気付く)ものだったけど、この映画ではそのペラペラ感がずっと気になってしょうがなかった。2Dだったらこんなこと気にせず没頭できるのになぁ。でも他の3D方式だと変わるのかもね。

   ああーもう2D字幕が観たいよ!(しかし上映は1日1回夕方のみ。3D吹替は5回もやってるのに!どうなってんの!)
2D字幕を勝手にオススメします!

★★★★☆(←3D字幕のマイナス分は含まれません)

  

やっと夏本番(TED、黄金を抱いて飛べ、007スカイフォール)

お盆休みに入る数日前からやっと暑さがやってきた。ぎりぎり10(土)に初めての(そして恐らく最後の)海遊びが出来たので、まぁ良かろう。

お盆休み二日目の今日は朝から少し涼しかったので、2人で庭の草刈りをした。子供たちは一人ずつそれぞれの実家に預けている。夜中から『007 スカイフォール』『アバター(400円で購入)』を観ている。実家がどちらも近いおかげでこんな時間を持てる。ありがたい。最近同じように実家預けのおかげで『TED』や『黄金を抱いて飛べ』を観れた。すべてレンタルDVD。

『TED』★★☆☆☆
結構観る前のハードルが高すぎたかも。もともとコメディには辛いので。というか自分にとっては丁度あまり語ることのないレベル。

『黄金を抱いて飛べ』★★★☆☆
すごく良く出来た映画だと思う。本当に。だけど今の自分はまったく求めていなかった。ネタバレ→妻子を車でさっさと轢いて復讐とか、ひたすらに気分悪くなるし。普通にバイオレンス映画好きな人にはとってもお奨めだと思う。気分悪いけど良かったですよ。

『007 スカイフォール』★★★☆☆
これも観る前のハードル高すぎたかなぁ。OPからしばらくはもう恰好良すぎて大満点なんだけど、全体通して期待のアクションシーンが少なかった印象。

  

富野由悠季監督、あまちゃん褒める。

人以外あまり褒めてるの聞いたことないので新鮮。

富野新作Gレコの正式?タイトルは「Gのレコンギスタ」」より抜粋。

富野:お話だけじゃなくて、テーマ曲も、なるほどツボにはまった時はこれかよー、作り手はコワいところにくるよねー、って見事にハマってるっていう意味で、要するに、ものをつくる・作品を作るって時に一番憧れるところに今あるのが、あまちゃん。

富野:観てない人にもうちょっとお話しなくちゃいけないのは「単純に視聴者に対して元気を与えているから、朝の連ドラとして」だけではないんです。これは宮藤官九郎さんの作劇論が優れているのもあります。どういう事かと言うと、言ってしまえば360度の視点を一つの劇に集中させている作り方をしている。

富野:逆にNHKこいつら、図に乗ってるんじゃないかこいつらと思っているのは(会場笑)、ある方法があります。たった3秒1cutの為に、エキストラ20人動員してバチッ。違う場所でロケセット組んで撮るなよ! ってぐらい贅沢な撮り方をしてるんだけれども、その2、3秒の別cutの入り方含めて巧妙なんです。ってことはどういうことかと言うと、一つの目線での物語論じゃなくて、何人もの人の目線がありながら、なおかつあまちゃんの話をドーンとやってるというつくりは、かなり見事ですね。

富野:「こう来るかぁー」って意味での作りの巧妙さ。二、三重の作りこみというのが、そりゃあ見てて気持ちが良い。だから何故あれが正味12分半に入るんだろうか、というのが時々寒気がするぐらい。

塩澤:今回、能年さんの魅力って大きいかなと。
富野:それに関してはスタッフに対して敬意を表します。よくあの人を、あの子を使う気になったなと。ホントに舌を巻きます。

富野 このくらい好きな場合ってのは絶対に影響されます。イヤでも影響されます。
宇野:「ガンダム・ダイバー」とか(会場笑・殴りにいく富野)?
富野:そういうことではなくて! 例えばね、「リアリズムとフィクションの間での女性性ってのはどういうものなのかなぁー、アキちゃんだったらこうなんだけども、僕はやっぱり、ほんとはどっかでユイちゃんも好きだからこういう風に作ろうかな」とか。
塩澤:ガンダム48とか出てくるわけですか?
富野:うるせぇよ(会場笑)!
宇野:∀とか最下位なんですよね。
(へこむ富野)

  

あまちゃん第91回:ユイvsアキ

北三陸に帰省中のアキ(能年玲奈)は、ユイ(橋本愛)に呼び出される。かつて、地元アイドルとしてステージに立った思い出の海女カフェで、二人は本音をぶつけ合う。ユイはアイドルを目指し、上京を夢見ていたが、父・功(平泉成)の病と母・よしえ(八木亜希子)の失踪により北三陸に留まらざるを得なくなり、すっかり投げやりになっていた。アキに冷たい言葉をぶつけるユイ。アキはこれまで秘めてきた思いを伝えるが…。

NHKオンデマンドのあらすじより)

すごい回だ。
あまちゃん史上かつてないシリアス回。何がって、海女カフェにアキを呼びだしといて罵倒の限りをつくすユイ。ここでのアキとユイのやり取りがすごい。何段階も、これでもか、これでもかとやりつくす2人。そう、ユイちゃんの初登場シーンから実は見ている我々は気付いていた。ユイのこういう性格を。特に豹変した訳でもない。この状況(上京直前に父が倒れ、その次には母が失踪)に置かれたら、まぁこの子ならこうなっちゃうわな。言ってみれば至極真っ当な展開。

だけど、その至極真っ当な「ぐれちゃった」気持ちを、僅か4〜5分のやりとりでさくっと浮き彫りにして、しかも最後にはやっぱり素のユイちゃんの正直なところがすっと見える終わり方、にまで持ってくる脚本の素晴らしさ!

最後にアキ母・春子に泣いてすがりつくユイ。この「どーしたん?ダイジョブダイジョブ」のかんじ、娘持ちの親にはたまらんよね。
やっぱり、キョンキョンのママは最高ということ!

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しかもこのアキ×ユイのやり取りの合間には、カットバックでユイのお父さんのバーシーンが入る。ここでお父さん、実は奥さんの失踪に既に気付いていたことを、実に軽やかに気持ちよく、誰も傷つけることなく上手にさらっと告白しちゃう。瞬間のBGMの入りもいいし、役者・平泉成さんの実力も相まってこれまたぐっとくるシーンとなっている。他にもバーのいつもの面々がユイのことで悩むシーンとか、副駅長吉田の「(ユイは自分達にとって何なのだと問われ)んだ!アイドルに決まってるっぺ!」とキッパリ言うシーンとか。キョンキョンがアキのベッドに行ってお茶目に寂しかったってイチャイチャするとことか(こうゆうの分かる分かる!でもこういう状況でさくっとやれるのが良き母なのだ!)もう細々と名シーンが。くう。

 

さて、これを書いている段階ではまだ92回を見終えたところで、実は92回ではアキのドラマ登場シーンがカットされるというショックな出来事が重なり、アキはまったく救われないママ次回へ「つづく」となっている。

あまちゃん史上かつてない重重展開。さてどうなる次回!

アキ「だけどオラだって、オラだって必死に踏ん張って這い上がろうとしてるんだ。気楽な身分だなんて言われたくねぇ!」

ユイ「ふっ(笑)40位の繰り上げ当選のくせに自慢しないで!」

アキ「自慢じゃねぇ!それがオラの現実だ!

アキ「ダサいなんてそんなの……自分が一番分かってるよ。

アキ「どんだけ不幸か知らねえが、ここで過ごした想い出まで否定されたら、オラぁやってらんねぇ!!!(叫ぶ)」

カフェを走って出て行くアキ。

  

あまちゃん第83回メモ。

ユイ(橋本愛)は、万引きしようとしたところを春子(小泉今日子)に目撃され、そのまま喫茶リアスに連れてこられる。春子は、投げやりなユイを厳しくたしなめる。そのころ、アキ(能年玲奈)は鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)の付き人として、忙しい毎日を送っていた。「昔の自分と似ている」と話す鈴鹿との間で、奇妙な関係を築き始めるアキ。そして、事務所の社長・太巻(古田新太)が、アキの運命を左右する重大発表を…。
(NHKオンデマンドのあらすじより)

冒頭からこんだけシリアスモードで始まる回もなかったんじゃないだろうか。またまた名シーン続出。
ぐれちゃったユイちゃんを叱る春子も勿論なんだけど、おれがぐっとくるのは東京の方の、アキと鈴鹿ひろ美の会話。なまりが話題になった時に

アキ「ひとりくらいなまってたっていいべ?テレビだからって、みんながみんな、おんなじ言葉しゃべんなくたって、いいべ?」
このセリフを、アキの顔じゃなくてアキなめの鈴鹿ひろ美の顔で見せてるんだけど、この鈴鹿の表情がね、なんか泣けるんすよ。色々思うわけじゃないすか。普通なようでいて、このセリフって。深い。

アキ「それに、おらが標準語喋ってるの、夏ばっぱや、海女クラブの人達が聞いたら、残念な気ぃすっべ?」

鈴鹿「あんた、おばあちゃんや海女さんのために女優やんの?」

アキ「そしたら鈴鹿さんは、何のために女優やんだ?」

鈴鹿「(…間…)(作り笑顔で)わがんね」

アキ「(嬉しそうに笑う)」

2人の顔演技と、演出の「間」が素晴らしい。
ぐっときました。

前回の82回の最後で、アメ横のどっかの屋上で種市センパイとアキが話しているシーンがあって。ここでは種市がユイの悪い噂を話しているんだけど、カメラはずっとアキの顔を追ってる。セリフはないのだけど、この、ユイの噂を聞いている間のアキの顔演技もすばらしい。既に夏や誰かから噂は聞いているであろうこと、そのことについてアキはそれなりに考え、既に自分なりの対応や気持ちを固めていること。アキの芯の通った性格。もろもろがその表情から見て取れる。

昨日の「たまむすび」でピエール瀧さんが言ってたけど、だいたい3カメくらいで撮ってるから、編集でいかようにもできるらしい。それだけアキの演技が良かったという判断なのだろう。スイッチせず長回しで見せる見せる。

回を重ねる度に、ベテラン俳優達の演技には勿論感心するんだけど、アキの演技力に知らずと惹きこまれている自分に気付く。この子、底知れない。というか、周りのパワーも吸収しながら、どんどん育っているのかも知れない。

ナレーションがアキに変わる前もスタッフは「出来るのか…?」とかなり心配だったらしい。それがあまりにも出来るので驚いたと。ずぶんも驚いた。というかアキのナレーションは今やあまちゃんの大事な柱になっている感さえある。どこまで楽しませてくれるんだ能年ちゃん。

(で、最後はちゃんと明るい希望を持たせて終わるのもイイ。これぞ連ドラだよ)

  

あまちゃん第79回:だめんずになった種市先輩

あまちゃんメモ。
第79回は、安部ちゃんのお店でアキと種市先輩が初めて逢い、一緒に寿司を食べに行く会。

2人でユイの話をした後に沈黙して、
「まだ付きあってんのが…」から始まるアキのふてくされセリフがなんともカワいくて笑える。

アキ「そーがそーが、遠距離恋愛続行中か!(キレ気味)

アキ「先輩も、なまってる方でねぐてカワイイ方がこれば良かったのにって思ってるクチだな!

アキ「そーがいそーがい。すいませんした」

種市「別にそんなこと言ってねーじゃん」

アキ「『言ってねーじゃん!』はーいづの間にやら標準語かー!

あぐらをかくアキ

アキ「かっこいいなー!『って南部ダイバーじゃん』?」

種市「天野!(怒鳴る)」
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あまちゃん屈指のアキ方言名シーンであった。

一方ウチの妻は、この後に種市が告白する内容を聴いて、呆れていた。
空港建設で海底作業をする筈が、工期の遅れでスカイツリーの現場に回された種市。そこで自分の高所恐怖症に気付き、耐え切れずに仕事をやめてしまう。「地元に戻り南部ダイバーの指導者になるか」「ユイも東京には来ないし」「仕事さねぇのに東京さいてもしょうがねぇ」と話す先輩を見て(先輩は変わってしまった)と思うアキ。

妻「はーよくいるんだよねぇこうゆうの。だいっ嫌い。仕事でちょっと何かあるとコロッと変わるヤツね。うんうん。だめ男あるあるだね。はーーーーーーーはーーーーーーー」
「(寿司をおごったことに対して)仕事してないくせに社会人風吹かせてんじゃないっての」

と、キョンキョンばりの早口で言い捨ててた。
妻の中で、種市先輩が一気にだめんずに墜落した。

まぁでも高所恐怖症ならしゃあないでしょ?という気も。それよりも、アキと種市先輩の間の、こうゆう気のおけない会話?みたいのが見れた方が嬉しかったなぁ。ちなみに妻は、アキのふてくされシーンは全く琴線に触れなかったようで、男女の見方の違いが分かりますね。
ちなみにこの回での妻のハイライトは副駅長・吉田君の
「(高い声で)おいおいやめろよ。彼女イヤがっているじゃないか」
だそうです。

さてさて、この後種市ちゃんはどのような復活を遂げるのでしょうかね。それともだめんずのママなのか。まさかそれはないでしょう?

  

あまちゃん第72回。旗振りシーンは連続で撮影した。

前回書いた夏ばっぱの旗振り見送りシーンの撮影裏話が公式サイトにアップされていました。引用します。

実は、「春子のために旗を振る」シーンと「アキのために旗を振る」シーンは同じ日に撮影しました。春子とアキを送り出す気持ちは同じですが、時代設定は25年前と現在なので衣装もヘアメイクも違います。

私は最初、母親としての思いを大漁旗に込めて春子のために精いっぱい振りました。普通ならそこで1度ロケバスまで戻って衣装チェンジとヘアメイクをするのですが、ロケをしていた海岸からロケバスまでかなりの距離を歩かなくてはなりません。撮影時間も限られていたし、春子のために旗を振ったときの気持ちを断ち切ることなく、同じ思いとテンションでアキのために旗を振りたかったので、その場で衣装チェンジとヘアメイクをしたいとスタッフの方に言いました。そこからが大変でした(笑)。大急ぎで簡単な目隠しを作ってもらって、男性スタッフの方には「あっち向いていてくださいね」ってお願いして、海岸で大急ぎで着替えたんです(笑)。

これは、そうやって出来上がったシーンです。そして私は、このシーンが大好きです。母が旅立つ娘のために、そして孫のために大漁旗を振るってすてきですよね。どんな言葉より、母や祖母の思いが詰まっていると思います。

あの演技の裏側には、やはり強い思いがあったんだねぇ。

あまちゃん第72回。岩手編最終回。

久し振りに「マイブーム」カテゴリに「あまちゃん」を追加。
『カーネーション』も本当にすごかったけど、この『あまちゃん』の毎回のテンション・濃密度・書き込み度たるや本当にとんでもないレベル。毎回2〜3回観てもその度に細かい発見があって。何より明るいのがいい。日本中があまちゃんのおかげできっと従来比5%位は平和になっている筈だ。

さてさて折り返し地点、岩手編の最終回:第72回についてメモしておきたい。これまでクライマックスは何回もあれど、これがやはり一応の区切りだろうか。神回と呼ぶにふさわしい。

●あ、その前に71回の最後。出発の朝に夏ばっぱがワカメを採りに家から出るところ。それを探しにアキが外を見にいくところ。あすこにいきなり入るスローモーション。あれ勘弁してよ。悲しい予感でもう胸がはちきれんばかりになる。ついつい忘れがち、いや忘れたくなるけど、この別れは…何かの意味を持つものなんだろうか。いやだ。

【第72回】

15分の中でなんと4回もクライマックスが訪れる

1)北鉄に乗ったアキを見送る春子のセリフ。「あんたは変わっていない。だけどみんなに好かれたね。みんなに好かれた。あんたじゃなくて、皆が変わったんだよ。自信を持ちなさい。それはね、案外すごいことなんだからね!」あの表情。あの顔。お母さんなんだよ。完全に。そしてキョンキョンの、あの凄さをもった、実在している、アキのお母さん。決意を持って、娘を見送るあの表情。その気持ちを思って号泣。

2)25年前の、春子の出発シーンの回想。北鉄の開通日。浜で大漁旗を振って春子を送る夏ばっぱ。大吉に電車の中で語りかけられたせいで、それを見ることがなかった春子。25年間恨み続けたそのことを、今勉さんの告白によって知る。

同じシーンを何回も流して、その度に新しい意味が加わって、同じシーンなのにどんどん意味が違って見えてくるという手法を『あまちゃん』では本当に上手に使ってるが。中でもこのシーンが一番多く流れていると思う。その都度裏の意味が見えて来るんだけど、今回ついに…
春子を見送る夏の思いを、25年たって初めて知る春子。旗を振って「ばんざーい!」と叫んでいた若い夏さん。最高の演技。
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3)現在。また車掌に話しかけられてあやうく同じことの繰り返しになりそうなところを、他の乗客に救われる。今度は夏ばっぱの見送りをちゃんと見届けることができたアキ。春子の思いも、春子ができなかったことも、1つ1つ実現していくアキ。25年前と同じく、また大漁旗を振る、ばあちゃんになった夏ばっぱ。同じく「ばんざーい!」で見送るばっぱ。海女のてぬぐいで応えるアキ。そこにかぶさる、オープニングのメインテーマ曲。岩手を去ることになり観ている人がどうしても寂しくなりがちな岩手編の最後を、期待とともに新たなスタートを切ることになる、いわば東京編のオープニングでもある。満面の笑顔で旗を振って見送る夏ばっぱの表情。観てるこっちは笑い泣き。
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4)間髪入れず、ユイの父が倒れ一緒に行けないという衝撃の展開。観ているこっちの気持ちはもう大波のように揺れています。ココは本当に前もってストーリーを知らなくて良かった。「じぇじぇじぇーー!」だったよ。心の底から。
自分も東京行きをやめるというアキを、泣きながら説得するユイ。
2人を隔てる北鉄のドア。たたみかける哀愁のBGM。絶叫しながら電車にすがりつき見送るユイ。呆然として見るアキ。電車はアキ一人だけを乗せて、出発する。

そして次回。東京編へ「つづく」。

これが15分ですよ。なんだなんだもう。すごすぎる。

そして駄目押しに次週予告。これまで宮本信子が担当していたナレーションが、アキちゃんに代わる。
東京でのイキナリの厳しい状況をダイジェストで伝えるその口調も探偵物語やら山田太一風やらこれまた色んなパロディと思われ…。
また最後に笑わせるというこの緩急具合!

「上京したアキは、初日から過酷な試練を受けまくります。
帰りたい。不意打ちの自己紹介。揺るぎない階級制度。
キレイな劇場。奈落と呼ばれる吹き溜まり。
自己紹介、自己紹介に次ぐ自己紹介。
ユイちゃん、大事件です。以上。」

東京編についてはまたメモを書こうと思います。
とにか目が離せない。あまちゃん。以上。

  

『シュガー・ラッシュ』

映画館で(2D吹替)。評判通りの快作。
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ゲームセンター閉店後にはじまる、人間たちの知らない「ゲームの裏の世界」。そこでは「仕事」を終えたゲーム・キャラクターたちが、それぞれに交流しながら生活していた。
アクションゲームの悪役「ラルフ」の願いは、皆に愛されるヒーローになること。ある日我慢ができなくなり飛び出したラルフが入り込んだのはお菓子の国のレースゲーム『シュガー・ラッシュ』。そこで出会った少女ヴァネロペは不良プログラムと呼ばれ、レースにも出れず孤独な生活を送る、でもとっても元気でカワイイ女の子。彼女がレースに出るのを手伝い、自分も「ヒーロー」になるためのメダルを得ようとするラルフ。しかしヴァベロペがレースで優勝すると彼女の存在が消滅してしまうと『シュガー・ラッシュ』の王様から聞き苦悩する。また、逃げ出したラルフのせいでゲーム世界全体に危機が訪れていた。ラルフを追うアクションゲームの主役フェリックスと3Dゲームの主役カルホーン。ヴァネロペに隠されていた秘密とは…そしてゲーム界の危機を救うことはできるのか?

冒頭10分くらいの説明ブロックが少しダレ気味なんだけど、その後はラストに至るまでずっと笑い・涙・笑い・涙…盛り上がりっぱなしの最高エンターテインメント作でした。70年代の8bitゲームから現在のリアル3Dゲームまでが、何故かシームレスに同居する、これだけで夢のようなゲームセンターが舞台。現実世界では既には消滅してしまった、オレら世代のユートピア。

いやいや、そんなところが主題じゃなくて…。この映画はレトロゲーム世代向けにニヤニヤするポイントがあちこちにあって勿論とってもオススメなのだけど、そういう思い入れのまったくない、ゲーム自体殆どやったことのない人でもさほど問題なく楽しめる、少女とおっさんの物語です。shiroは特に自分の長女と重なってしまってしょうがなかった。小さい女の子の小生意気でイキイキとした姿がよく映し出されている。子供と観るのもオススメします。早くDVD買って一緒に観たい。

以下お気に入りポイント。ネタバレ含みます。
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『クラウド アトラス』

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映画館で、2度目の鑑賞を終えた。映画館で2度観るなんてことは数年に一度くらいしかないと思う。しかも今は『シュガー・ラッシュ』やら『ジャンゴ』やら他にも未だ観たいものが控えている中で、敢えての再見だから。

何しろ一回目は、中盤位まで話全体の構成がさっぱり分からず、でも一つ一つのエピソードは結構吸引力があって、つか好みなので、映画を観ている途中ですでに「これは2回目必ず観たい。ちゃんと理解した上でまた楽しみたい」と決心しての再見。結論は、やっぱり観に行って良かった。

映画は、時代を超えた6つの物語が同時進行し、それぞれが相互に影響しあって、それぞれに結末を迎えるというもの。すべてが折り重なった一つの壮大なオチがある訳ではないけど、でも編集の妙で6つの物語がそれぞれにクライマックスに向かう様が見事に絡み合っていて、ある程度のカタルシスを感じることができる。

6つの物語(6つの時代)の主要人物をキャストが一人何役もこなしていて(最高6役!)魂の輪廻転生的なテーマを暗示させる展開なんだけど、その「一人何役」が特殊メイクにより人種はもちろん男女さえも超えながら演じられているので、最初説明無しに観ちゃうとさっぱり気付かないところも多い(←再見を心に決めた大きな理由)。

1回目もそうだったけど、2回目を観てもやっぱりそうだ。輪廻転生の物語と言ってしまうと、特に我々日本人には食い足りない話になってしまう。どちらかというとパラレルワールド的な楽しみの方が強い。2回目鑑賞は直前にアンチョコ観てまで「誰と誰が同じ役者か」を頭に叩き込んで臨んだのだけど、正直そっち(答え合せ)の方が気になって、時にはストーリーを楽しむ邪魔をしちゃう程だった。

輪廻転生的にぐっとくることはあまりない。つまり「魂が引き継がれる故にぐっとくる」というプロットが殆どない。そういう意味でのカタルシスや感動は生まれない。

複数のパラレルワールドが相互に干渉しあい、でもその中で主人公達は基本、「良きもの」に向かおうと努力をする。その努力の結果はやっぱり報われる(といいなぁ)。でも、そうでもないこともやっぱりあるのかなぁ。そういう話。世界とは何ぞや?セカイ系?
時代を超えて同じように体制に立ち向かっていくレジスタンスの姿にぐっときます。1つ1つの物語もいい。お気に入りの物語を選ぼうとしたけど、ありゃりゃ。全部好きだってことに気がついた!

「アダム・ユーイングの太平洋航海記」
主人公がなんってもキュート。
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「セデルゲムからの手紙」
主人公がなんってもキュート。
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「半減記 ルイサ・レイ最初の事件」
老齢のシックススミスとレイとの、冒頭のエレベーターでのやり取りがたまらない。
「ティモシー・キャヴェンデッシュのおぞましい試練」
老人ホームからの脱出劇。まったく他の物語とはトーンが違うこの話が難なく溶け込んでいる、この編集の妙!
「ソンミ451のオリゾン」
チャンがなんってもキュート。ペ・ドゥナは言うまでもなく最高。
「ノルーシャの渡しとその後のすべて」
トム・ハンクスの安定感。人食い族のおぞましさ。蓮の花アンテナのカッコ良さ。

こうやって振り返ると、オトコノコがキュートな映画だったようだね。腐女子あつまれ!!

★★★★☆
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↓↓この人物相関図(同じ役者が演じている登場人物が線で繋がれている)はアンチョコとして一番役に立ちます。初見前に見るのかどうかはおまかせしますが。おれは事前予習しておいてもイイと思うけどなぁ。そうしなければ一度観ただけではさっぱり分からないのは確かです。元画像は「人物相関図」で検索するとすぐ見つかります。

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↓↓この予告編、本編未見の人は観ない方が良いですよ。めっちゃネタバレしてる。

ABOUT

1999年のWEB日記時代から始めた個人サイト。ブログ移行にあたって過去記事も抜粋してアーカイブしています。
(HTMLサイト→SereneBachブログ→WORDPRESSブログと転移)

好きな漫画(2014年版)はこの記事の最後に。

最近は(インスタ)でアップしているTV・映画感想の投稿を、半年に1回くらい一気に転載しています。