『ダークタワー』感想


シネコンで2D字幕。

全部映像化したら30時間くらいになりそうな、相当に長い原作。その最初の方だけが手際良く95分にまとまっていた。お見事です。原作のことを1ミリも知らなくても、普通によくあるアクション・ファンタジー映画として楽しめると思う。西部劇+ハリポタ+指輪物語+ちょいSFといったかんじ(舞台は現代)。

マコノヒー好きには勿論外せない傑作。めちゃくちゃカッコいい。ずっと観ていたい。ローランド役の黒人イドリス・エルバのガンアクションがちゃんと「見たことないレベル」を実現している。そしてアメリカの神木隆之介君が主役である(そう見えるのだ)。キャスト紹介はいつもローランドと黒衣の男からだけど、この映画の主役は断然この神木君(トム・テイラー)だ。顔の演技力が素晴らしい。どうか彼が成長する前に、できるだけの続編を撮りためて欲しいと願う。

そして遙か昔に原作を読んでいる自分の感想はと言えば…最高だった。今年ベスト級、映画としてこれだけのモノに仕上げてくれるなんて予想外。思わず終わった後に「ありがとう!」と言いたくなった。この映画だけ観たら使い古された陳腐な設定に見えることだろうけど…それも含めて良し。とっつき易くなったことは間違いない。

だけどこれは、単に「素晴らしい原作をそのまま見事に映像化してくれてありがとう!」という気持ちとはちょっと違う。「今年ベスト級」とか言思っちゃうのも、裏側に色々な事情があってのことなんです。字義通りじゃない。

ということで以下はネタバレ含めた原作の話がダラダラ続きます。

スティーブン・キングによる暗黒の塔シリーズは30年続いた全7部の大作。まさにライフワーク的作品だが、全然読みやすくなく(とっつきにくい)、決してキングの最高傑作とも言えない。7部はそれぞれが分厚い単行本2冊くらいあり、とても長い。最初の数巻で挫折する人も多い。だけど頑張って読めば4〜5部の「魔道師と水晶球」「カーラの狼」あたりは相当に面白いし、内容的にもキング作品の中で唯一無二であるように思う。ただ最終前の6部終わりになって、なんと物語中の現実世界の住人としてS.キング本人が登場するというメタ展開になって…自分は一気に折れました。

うろ覚えだけど、作中のキングも現実と同じ「暗黒の塔」シリーズを執筆中で、それが「塔」のトラブルで中座してしまい、だから何とかして再開させなければ自分達の存在も危うい…みたいな内容だったと思う(間違えてたらごめんないさい)。自分にはついていけなかった。頑張って読み続けたこの20数年は何だったんだ。呆然とした。この時点で挫折し、暗黒の塔シリーズは最終部を残し、完読できていません。

キング他小説との関係について。
暗黒の塔は全世界の中心であり、すべての世界は塔の影響を受ける。我々が存在する現実世界も、中間世界も、あらゆるパラレルワールドも含め、すべて。
そして驚くことに、キングのこれまでの作品世界もすべて、この暗黒の塔の影響下にある(らしい)。実際、他作品にもしばしば黒衣の男や中間世界のことが登場するのだが、それだけじゃなくキング作品に出てくる「怖い」「悪い」「異形な」事象は、これすべて暗黒の塔の異常から起こっているもの、らしい。

この話を聞いて(なんて壮大な設定なんだ…)と思う人もいるらしいけど、俺は違う。キングの創作してきた沢山の傑作たち、それらを楽しんできたティーンからの20年以上を、そんなに十把一絡げにされても困る。しかも物語として欠点も少なくないこの「暗黒の塔」シリーズが、すべての大元だなんて言われてもさ。他の数多くの傑作達の評価を矮小化こそすれ、プラスには感じられない。だから俺はこの設定を、聞かなかったことにしている。もしくはうっすらとだけ理解することにした。暗黒の塔の思い出は、いいことだけではなかった。

つまり今回の映画化が嬉しかったのは、この欠点も多い複雑怪奇で長大な小説が、一般向けにリファインされて短編にまとまり、自分の忘れかけていたイヤな思い出をちょっとだけ良い記憶に書き換えてくれるような、そんな起死回生の1作だったからだ。原作最後のメタ展開ショックはそれだけ大きかった。でもあのシリーズだって最後以外は面白いところも沢山あったし、4や5は夢中だったんだ。そんなことを「美しく」思い出させてくれた。そういう映画だったのです。ありがとう。

できれば最後を大幅に改変しつつ、シリーズ化して欲しい。
そう言えば映画とは別に、ローランドの若い時代が「ウォーキング・デッド」のプロデューサーによりテレビドラマ化され、今年制作が開始されるそうだ。原作4のあたりだとか。こちらも楽しみ。

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