川内有緒『エレベーターのボタンを全部押さないでください』(集英社)読了。
さまざまな媒体に書かれた未収録エッセイを集めた初の単行本。
川内有緒さんの本はどれもそうなのだけど、タイトルや装幀などで想像される内容からも、読み始めの印象から、いつのまにか全然違うところに連れて行かれる感がある。
ノンフィクションはもちろんだけど、まさかのエッセイ集でさえそうだった。驚き。
いくつかのエッセイでは、従来作品ではあまり触れられなかった、筆者の幼少時や家族のことが語られている。特に彼女の妹や小学校の面白先生を巡るエピソードが印象深くて、最後はちょっと信じられない展開になったり。え?トットちゃんなの?て位。
そんな家族を巡る身近なエピソードから、いきなり舞台が世界の辺境へ飛んだり、聞いたこともない民族の話になったりで、夢中になったままあっという間に読み終わってしまった。
また、川内さんが生涯で一番という位に愛し続けている本が何冊も紹介されているのだけど、そのエピソードがまた秀逸で、本読み本としても秀逸。
静かに元気をもらえる一冊でした。まったく真似はできないのだけど、自分は川内さんの考え方が大好きだ。
「生まれ変わったら冒険家になりたい」と何回か書いているが、なんの、現世から既に相当な探検家だと思いますよ。
※先日、W出版記念で佐久間裕美子さんとのクロストーク(有料)があり、大学生の川内さんと高校生の佐久間さんが友人だったこととか、当時の思い出話がめちゃ楽しかった。あれも聴いてよかった!
→書き起こし記事になってました。
ずっと筆者が双葉町や大熊町で取材を続けている「ロッコク・キッチン」の映画も書籍も楽しみにしています。
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以下は紹介文の引用。
メキシコの走る民族、飼っていた2匹の個性的な猫、大反響を巻き起こした「荒れた海で愛を叫ぶ」……。海外での驚くべき旅や出会い、日常に潜む冒険のような出来事、死生観などを綴り、読者を新しい場所へ誘う。
ユーモラスで味わい深い文章に心が揺さぶられ、温かな感情が湧き上がる。なぜか一歩を踏み出したくなる川内有緒ならではの一冊。(公式サイト)
川内さんは丸腰で荒海に飛び込んでいって、宝物のような出会いをつかみ取ってくる。
この本そのものが、冒険で、旅なのだ。――岸本佐知子(翻訳家)の帯文
並外れた行動力と筆致。見たことない球をぶんぶん投げてくる。――こだま(作家・エッセイスト)の帯文
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