鈴木るみこ『フランスの椅子』(四月と十月文庫)読了。

盟友である牧野伊三夫氏が本書を完成させるまでの気持ちを、あとがき「るみちゃんへ」に綴っている。
筆者の訃報は本当にショックだった。
『クウネル』が大好きだった。他の大勢の人と同じく「自分のための雑誌が出た」と思った。そのうち「鈴木るみこ」さんの書く記事が特に好きだということに気付いた。

本書を読んで自分の『クウネル』棚を見返した人は多いだろうと思う。自分もそうだ。「anan増刷」の0号から1冊も欠かさず家にある。


この0号の最初の特集は「ロンドン郊外・オルニー村のパンケーキの日」という鈴木さんの署名記事で、読み返すとまさにこういう雑誌を出しますよ、という宣言のような記事になっていた。そう、この感じ。まだまだ雑誌隆盛の時代とは言え、ブランドもファッションも物欲も知識マウントとも無縁なこんな記事、こんなに気持ちいい記事は未体験だった。夢中になった。
「あの」名作記事たちを書いた方が、普段どのようなことを考え、大切にし、生きていったのか、本書の端々から感じられる。「編集者・筆者」ではない、鈴木るみこさんを初めて知ったように思う。
最後を知っているから、だから読み終わるのが悲しくて、しばらく置いたままだったが、読後感も素晴らしい。彼女の文章のファンとして、心から御礼を言いたいです。 ありがとうございました。

コメント