新井英樹『キーチ!(8)』いやースゲかった。いよいよ佳境、なんだろうか。それともまだまだコレから話がデカくなってくんだろうか。『ザ・ワールド・イズ・マイン』のちょっとフカサク映画の中のような、現実離れした気違い沙汰とは違い、より今風にリアルな気違い沙汰。新作のたびにどんどん新しいタブーを暴いていく新井英樹。よくも悪くもまず読んでおけ、と周り中に言いたい気分。
読んだあとはしばらくショック状態で、そんじょそこらの漫画なぞちゃんちゃらオカしくて読む気がおこらないのだが、獸木野生『パーム』だけは別。いついかなる時だって最高なのだ。なんとまぁ知らぬ間に新刊が出ていた。28巻、『午前の光II』。セブンアンドワイの新刊予定マイページにはひっかからなかったぞ!獸木でも獣木でもだ!どうなってんだ!
相変わらず楽しませてもらったのだけど、どうしても気になるのが、新シリーズ『午前の光』からどうやら製版方法が変わってしまったらしいこと。細いペンの線にまでいちいち網点(?ジャギー?)が入ってしまい、まったくもってシャープさに欠ける。
漫画の単行本でコレに近いケースは良く見られるんだけど、それは雑誌掲載時にカラーだった場合。単行本でモノクロにする時に網点が入って読みにくい仕上がりになってしまう(4色ー→1色に分解する関係でしょうがない)。しかし『午前の光』は元原稿も普通にモノクロのはず。ひょっとして完全デジタル入校に変更したのかな?マンガの印刷方法に関しては専門じゃないんで良く分からないんだけど。
●「製版」とは、オフセット印刷に使う「版」を作る作業、とでも言えば良いのか。通常4版の透明なフィルムをアルミ版に光で焼き付けて原板とする。最近はフィルムを省略し、出力機から直接アルミ版(刷版:さっぱん)を出すことが殆ど。モノクロからカラーのさまざまな原稿を取り込んで、オフセット世界での「カラー(4色)」もしくは「モノクロ(1色)」に落とし込み、版を出力する作業が、まぁ大雑把に言えば「製版」だ。
何万色もある原稿をたった4つとか1つの色にするワケだから当然さまざまな方法がある。さらに漫画の場合は、通常は製版段階で発生させる「網点」が最初から入ってる(スクリーントーン)という特殊な原稿のため、オレの知ってる10年前くらいの時点では殆どがアナログ作業だった気がする。つまり漫画家の描いた原稿をネガに焼き、ネームの写植をネガに焼き、重ね焼きして一枚のポジフィルムにまとめるとゆう作業だ。この作業ではスクリーントーン以外に網点の発生することはなかった。
※ちなみに最近は、パソコンで作った原稿がそのまま1〜4版に分かれて出力機から出てくる、フルデジタル方式。
※「網点」というのはオフセット印刷において色の中間調(グラデーション)を表現するための、文字通り網のように見える点の集合。この点の大きさや密度の違いで色の濃さを表現する。なのでスクリーントーンのことを「網点」と呼ぶのは厳密に言うと違う。
まぁいずれにしても『愛でなく』までは通常の漫画と同じ製版だった。スミベタの部分は、髪の毛のような細かい線まで、ジャギーも入らずキレイに表現されていた。作中にはスクリーントーンとCG制作による網・グラデ表現が混在していた気がする。そのCGの割合がどんどん多くなっていき、結局『午前の光』からフルデジタル入校になったんじゃないかな?で、その入校の仕方に改善の余地があるんじゃないだろうか。いずれにしても髪の毛なんかの細い線にジャギーが入るのはとってもスッキリしないですよ先生。何とか改善された方が宜しいかと思いますが、如何に。