カテゴリー: TV・映画感想

『ハーフ・オブ・イット』吹替で再見

Netflix『ハーフ・オブ・イット』吹替で家族全員で観た。ネタバレ感想。

いやー改めて最高だ。吹替も悪くなかったよ。初見時はクライマックスが台詞で皆語られるので、その内容をちゃんと飲み込めていなかったのだけど、二回目でちゃんと入ってきたし、成る程と思わせる。

初見時の感想はこちら

Netflix映画『ハーフ・オブ・イット』感想

でも、1本通して素晴らしい映画だけど、あの教会のシーンだけはもっと他に映像で魅せる何かが欲しかったように思う。TV映画で列車の脇を走ってるのを見て「バカじゃん」て言ってるシーンでもううるっと来てるもんなぁ。そして改めてお父さん最高。

娘達、細部のどこまで意味が分かっているかは不明だけど、好評だった。チャイニーズ差別の言葉とか、説明が必要なところは適宜解説しながら。子供と一緒でもオススメですよ。

地元FM局「FM PORT」が停波

新潟の独立系FM局「FM PORT」が昨晩停波した。

総務省によると県内全域を対象とするラジオ局としては、全国初の廃局となる。(Wikipedia

その歴史20年。最終的にはスポンサー不足による経営悪化が原因なのだけど、地元に愛され周りでもファンが多い。最終日6月30日のタイムラインは悲しみと感謝の言葉で埋まっていた。

最後、電波が止まる直前は、人気アナ遠藤麻理さんともう一人で、コールサインと感謝の言葉を交互に話し、最後に「ありがとうございました。」で終わった…。というのは後で確かめたことで、radikoだと途中で急に切れて、画面に「放送終了」の文字が現れた。多分タイムラグのせいなんだろう。タイムフリー配信も同時刻で切れて、その後は聴けない。

多分誰もが思っていたけど、想像よりずっとずっとショックで切ない瞬間だった。
この規模と歴史を持つ媒体が「終わる」瞬間に居合わせることは、あまりないだろうから。
できるならもう体験したくないね。

媒体を維持するための収支の在り方。今後なんとか新しい道を見つけて欲しい。

停波直後のradiko。

30日の新潟日報朝刊記事。

30日の新潟日報に掲載された全15段の連合広告

Netflix映画『Da 5 Bloods』感想

スパイク・リー監督の新作、Netflixオリジナル映画『Da 5 Bloods』ネタバレ感想。

今年今までに観た映画の中でナンバーワンかな…。賞を総ナメしそうな予感。
BLM運動と共に表現したいことがあり監督は作ったのだろうけど、公開のタイミングでここまで世界を巻き込んで大変なことになっているとは誰も予想していないなかった筈。
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圧倒的な「生」「怒り」のパワーがみなぎる2時間半。映像的に新たな手法も採り入れられていて、いや〜、スパイク・リー。お見事。
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【あらすじ】
アフリカ系ベトナム帰還兵の4人は、自分達のリーダーだったノーマンの遺骨と戦時中に隠した埋蔵金を回収するため、ベトナムに集まる。

おじいちゃんのスタンド・バイ・ミー+地獄の黙示録オマージュといったルックで話は進み、途中までは楽しい同窓旅行の体でもあったのだけど… そもそも最初から、ベトナムの元娼婦、若いベトナム人男性ガイド、ジャン・レノ演じる仏人ヤバ系ブローカー、同じくフランス人だけど富豪の娘で贖罪のため地雷除去会社を立ち上げた若い女性など…まわりがすべてあの頃を引きずり、今もあの最悪の戦後を生きていることがじわりと伝わってくる。それが中盤以降に爆発する。

ベトナム戦争(劇中では「アメリカ戦争」)とは、いや戦争とは黒人にとって一体何だったのか。何と戦っていたのか。それはベトコンではなくて黒人の権利を回復すべくアメリカや(戦争の原因となった)フランスの白人至上主義と戦っていたことが、旅の中でプレイバックされていく。

自分にとってはやっぱり衝撃だし、BLMに繋がる「いつまで同じことが続くんだ…」地獄をイヤでも実感させられるんだけど、映画自体が素晴らしくて、基本的に楽しいところもいっぱいあって、その結果のクライマックスの気の乗り方たるや半端ない。最後の金塊の分け前が、ある黒人達の集まるオフィスに寄付されて、彼らの服に「BlackLivesMatter」と書かれているのを観た時はむせび泣きだった。

中でもやはりトランプ主義者のポールが最初から最後まで切ない…。彼のような自ら分断を招く立場の人間を通し語ることで、人種主義問題の難しさ・根深さの伝わり方が重層的になっている。んでチャドウィック・ボーズマンのカリスマ感な。
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『ブラッククランズマン』で、ドキュメント映像を被せるアレはお馴染みになってた。この映画にもちょいちょい挟まれる史実映像もスムーズだったし、編集もずっとグレードアップしていると思う(というか前作はあの違和感が大切だったんだよな)。でもやっぱり最後「ええ?」ってカットがあって心に残る。

まだなんとも気持ちを表現できないけど、とにかく2時間半、心を動かされっぱなしでした。邦題『ザ・ファイブ・ブラッズ』オススメです。
Netflixヤバいな。毎年こんなの作っていくのかな。 .
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…今回ちょっと調べてて気づいたけど、俺のベトナム戦争感って、70年代大友克洋漫画の影響大きいな〜。改めて。

映画『ボーダー 二つの世界』感想

『ボーダー 二つの世界』をAmazonレンタルで。万人にはオススメしないけど素晴らしい作品だ!
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【あらすじ】
醜い容姿のせいで孤独と疎外感を抱える税関職員ティーナには、違法な物を持ち込む人間を嗅ぎ分けるという特殊能力があった。ある日、彼女は勤務中に奇妙な旅行者ボーレと出会う。ボーレに対し本能的に何かを感じたティーナは彼を自宅に招き、離れを宿泊先として提供する。次第にボーレに惹かれていくティーナだったが、ボーレにはティーナの出生にも関わる大きな秘密があった。(映画.com)

想像していた内容の、ずっとずっと上をいくクオリティで終始圧倒される。

「人」と「人外」の境界線上をゆらめき、
めくるめく歓喜、そして絶望を、主人公ティーナと共に体験した。
これだけ没入できるのは素晴らしいクオリティの映像とサウンドデザインあってこそ。
自分が自分じゃないような気持ちになる、最高の映画体験だった。ぜひ大音量で。

Netflix映画『ハーフ・オブ・イット』感想

基本はベタベタのラブコメなのに、なんでよ。
出てくる皆が愛おしい。
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【あらすじ】
お父さんと貧しい2人暮らしをしている中国系移民の女子高生、エリーは頭脳明晰で、同級生のレポート代行でお小遣いを稼いでいる。ある日筋肉バカだが憎めないアメフト部のポールから、美女アスターへのラブレター代筆を頼まれる。しかしアスターはエリーにとっても心に想う大切な存在だった。誰とも話が通じない文学や映画の話を、ポールのふりをしながらアスターとやり取りするエリー。一方で代筆を通し男女の友情を深めるエリーとポール。代筆ラブレターやメールのおかげでポールとアスターが近づいていくのだが…
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いわゆるNetflixクオリティでスクールラブなお話だけど、最初から最後までもう好き過ぎて…。登場人物の愛らしさなんだろうな。お父さんや先生などの脇役までみんな好き。全体に軽くさらっとしている所がかえって価値を高めてる。ちなみに「The half of it」は前世で1人だったが今生で分かれてしまった自分の片割れのこと。運命のパートナーを指すような言葉らしいが、この映画は題名そのままの物語ではない。ああ大好き。


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※観たきっかけは町山さんの『たまむすび』情報だったけど、彼の微妙なミスディレクションはちょっとな…ていつも思う。その代わりただ観ただけでは分からない情報も得られるし良いのですけど。特に今回は文学や映画からの引用が多くて、その意味を知っていると更に楽しめる。
あと字幕訳がちょっと…な気がしたのでできればあの場面だけでも英文字幕で見直したい。


最初から最後まで泣きすぎて脱水症状になりそうだ。

2019年に観た映画、ドラマベスト

歴代ベスト映画の記事は→こちら

2019年「に観た」映画・ドラマのベスト記事です。
以前から順位はあってないようなものだったので、今回は3グループに分けました。
映画館で観た映画は17本。家で観た映画は66本。劇場鑑賞が少なかった…。

※( )内は旧作の作品公開年
リンク先は、当ブログ内の感想ページへ飛びます。

【最高!】

ROMA
若おかみは小学生(2018)
フロリダ・プロジェクト(2018)
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

【めっちゃ良い!】

15時17分、パリ行き(2018)
ライオン 25年目のただいま(2017)
恋は雨上がりのように(2018)
クレイジー・リッチ!(2018)
マリッジ・ストーリー
JOKER
ファースト・マン

【良い!】

ONCE ダブリンの街角で(2007)
ビフォア・サンライズ/サンセット/ミッドナイト(1995〜2014)
はじまりへの旅(2017)
スパイダーマン・スパイダーバース
スモールフット(2018)
道蜂と遠雷(→原作との比較
キャプテン・マーベル
アベンジャーズエンドゲーム
グリーンブック

【これはないよ!映画】

モータルエンジン
台風家族

【ドラマ】

だから私は推しました(感想→12→3)
いだてん
The Boys
THE CHEF SHOW(感想→12
スカーレット
クィア・アイin Japan

映画『A Ghost Story』感想

『A Ghost Story』をAmazonレンタルで。

たしかぷらすとで松崎健夫さんかタツオさんが激推ししていてずっと気になっていた。A24製作。すごく静かで、相当変わった映画だけど、好きだわ〜。

仲の良い夫婦(ケイシー・アフレックとルーニー・マーラ)のうち、旦那がいきなり冒頭で死亡。直後にシーツを被った幽霊になって、妻を見守っていく…という話なのだが、後で結構予想もつかない展開になる。見終わった後の解釈も観客それぞれだろう。SFではないけどSF好きなら尚オススメしたい。すごく美しくて忘れられない夢、のような映画だった。

個人的にルーニー・マーラは勿論ケイシーも大好きで二人の魅力も存分に味わえる。

ずっと出ている幽霊のシルエットが本当に美しい。冒頭少ししか出ていなかった夫ケイシーの人柄が、その後少しずつ分かっていく構成も好み。

特に前半はカットが異常に長くて、好き嫌いは別れそうだけど、何か気になる要素が必ず画面の中にある。夫を亡くしたルーニーがただパイを食っているだけの超長い(多分10分位?)1カットがあるのだけど、ルーニーの様子は勿論、とある光の変化がずっと気になってたり、とか。たまたまだったのかも知れないけど自分はまったく飽きずに観れた。映画館だと尚良かったかも。最後も印象的で記憶に残りそう。

NHK『みをつくし料理帖スペシャル』感想

NHK『みをつくし料理帖スペシャル』前後編合わせて140分強、オンデマンドで観ました!

期待をまったく裏切らない素晴らしい出来…。音楽はゆうに及ばず、改めて感じたのは照明監督の凄さ。ちょっと前の大傑作『眩(くらら)〜北斎の娘〜』も凄かったけどアレは撮影も独特だったしね。今回は撮影はオーソドックスだけど、ライティングで自然光に見せる技術の高さに驚いた。

前後編でまったく違う話を盛り込んだのも凄い。前編テーマが「仕事(生き甲斐)と結婚(色恋)」、後編が美味しんぼばりのグルメバトル(バトルではないけど)、それぞれに傑作で、この満足感たるや!!! ※あと前編は「エンドクレジット入るタイミングが鳥肌モノに格好いいオブザイヤー」を差し上げたい。
↓ここ!

今年のベストドラマは『だから私は推しました』『いだてん』『昨日なに食べた?』『みをつくし料理帖』『スカーレット』かな。

『スカーレット』父ちゃん逝く

子供に対してはホントにクソ野郎だったけど、間違いなく愛情は山盛りあったとうちゃん。毎日泣かされているけど今日はもう号泣メーン…。
喜美子はホントすごかったな。よくこの父ちゃん相手にさ。
これからの展開も楽しみ。喜美子はどう変わるんだろう。
とうちゃん、安らかに。

映画『マリッジ・ストーリー』感想

Netflixオリジナル映画『マリッジ・ストーリー』鑑賞。
スカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーの倦怠夫婦離婚もの。実際に女優との結婚&離婚体験を持つノア・バームバックが監督。

裁判や親権争いのリアルさが本当に辛く、途中で「無理…」と思い挫折しかける。が、最後まで観て良かった。大傑作だと思う。ROMAのように、「ネトフリ映画クオリティ」を超えている一本。脚本が素晴らし過ぎるし、それに合わせたシーンの設定、カメラアングルも巧みで、苦しみながらその皮肉に笑ったり唐突に泣かされたり、まー忙しい。

これはもはや夫婦のアルアル話を通り過ぎて、普段の生活に入り込み殆どの人が気付けないもしくは気付かないふりをしている、根本的な男女「差別」の問題だと思う。無意識に差別している側と差別されている側では、そもそも理屈が咬み合う訳がない。それを作中で妻側の弁護士が20秒ほどのセリフで切って捨てていて、溜飲の下がる名場面だ。
(キリスト教とユダヤ教下では、女性は完璧な聖母マリアと比べられる。神は男性。妻の行動には完璧を求められるが、男性はどうでもい。悲しいがこれが現実)

差別に気付かないダメ夫に「何故ダメなのか」「妻も一人の人間であること」「根底に差別があること」を気付かせるには、妻が大変な犠牲と勇気と言語化能力を持ってしかも何度も夫に申し入れないと気付いてもらえない(それでも多くは気付かれない)のだけど、ほとんどの女性はこれまでの生い立ちや環境から、そんなことはできないのだ。この不条理。

だから弁護士が代弁する。弁護士に言われ今までの事実に初めて気付かされそうになった夫は、その(自分が差別していた)事実を認めることができず、力に力で反抗し、殴り合いの裁判沙汰になる。

夫アダム・ドライバー側の数あまたある問題に比べ、妻スカヨハ側に問題があまりない、という不公平感は指摘しようと思えばできると思うが、そもそも差別を明らかにしようとするこの場合に「公平」は必要ないだろう。

ただし観ているのは本当につらい。自分も何度も何度も言われていることだらけだ。自分は幸いにして弁護士に言われる前に気付いた(気付くことと直せることは別だが)。 ただ、すべての妻がこのようなことを気付かせてくれる訳ではない。ほとんどは言わずに、もしくは言語化することができず(当たり前だと思う)、限界を超えて噴出する

だから結婚した男性はこの映画を観た方がいい。感想を聴くのも自分にはちょっと恐いのだが…(男同士では得てしてお互いの男女関係について本当のころを話す機会がない…少なくとも自分の周りでは)。

ただ観た後はきっとパートナーのことが何倍も大切に思えると思うし、子供とのちょっとした意思の疎通で本当に嬉しくなる。

あと辛いのが、たまに聴いているラジオ番組で、某男性歌人が自分の離婚のことを何回か話したことがあるんだけど、相手(妻側)の弁護士のことをいつも酷く言うのね。で、その指摘する内容が、この作中のアダム・ドライバーそのものなんですよ。
嗚呼、そうなってしまったのは、そこまでの経緯に理由があったからじゃないのかなと…。

いやー色んな意味で精神的に大変な映画でした。でも傑作。二人の名演技は真に迫りすぎて1回観ただけじゃ名「演技」とは思えない位のレベルです。

NHK『いだてん』終了。感謝!

ありがとう!いだてん!
ここまでちゃんと放送を守り抜いてくれた、すべての人々に感謝。
誰もが避けてきた「近代」を堂々と描く最高の「大河」で、スポーツドラマで、落語ドラマ!
最高だったよ〜!
ありがとう!ありがとう!ありがとう!

Netflix『ボクらを作った映画たち』『ダイ・ハード』回

Netflix『ボクらを作った映画たち』の『ダイ・ハード』回だけ鑑賞。なんつっても人生ナンバーワン映画ですから。
MADムービーのようなチープな映像と当時のさまざまな作品とのコラージュが楽しいドキュメントバラエティで、終始笑かせてくれる。30年経った今初めて聞く裏話もいくつかあり、同作ファンは絶対観た方がいい。
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そしてアラン…。最高だったぜチキショー! (ノД`)・゜・。

朝ドラ『スカーレット』感想

最初はほとんど期待しないで見始めた『スカーレット』だけど、子役の素晴らしさに始まって、朝ドラ定番を外しまくる地味で確かな演出、静かながら効果的な劇伴など、毎週毎週「今週は良かった!」「今週も良かった!」とずっと思い続けてる。

朝ドラの「決まり事」と言うのは「安心」ではないんだと『スカーレット』を見ていて思う。ドラマの決まり事、アルアルって実は、見るたびに心の中の気付かないところで少しずつちくっとしたりイラっとしている所もあるんだと思う。だからその「ちく、イラッ」が殆どない『スカーレット』がとても気持ち良い。

ナレーションで、セリフで説明しない。カット尻が淡泊。気持ち良い。

目下の興味は、オープニングアニメに出てくる4人目が、果たして今の十代田八郎君なのかどうか、未だに分からない(本編以外の情報以外一切見てないので)。時期的には未だじゃないか…と思っているんだけど。

信作、照子との幼馴染みどうしの会話がホントいいよなぁ。毎日「地味に」楽しみです。

映画『GUILTY』感想

Amazonレンタルで『GUILTY』を。傑作だった。

【あらすじ】
警察緊急電話(アメリカの911みたいなもの)のオペレーターであるアスガーが、ある日誘拐されている最中の女性から電話を受ける。犯人に気付かれないよう、電話から聞こえる音だけを手がかりに女性を助け出そうとするが…。2019年デンマーク映画。

90分の作品中、舞台はこの緊急電話の小さな指令室から動かない。主人公のアスガーの表情と、電話から聞こえる「音」だけで劇が進む。なのに飽きるどころか、最後までドキドキしっぱなしだ。素晴らしいラジオドラマを聞いた後のような、面白い小説を読んだ後のような、普通の映画とはちょっと違う満足感のような気がする。

これだけ舞台が変わらず、電話する表情だけで演技して、90分保たせることのできる主人公アスガー役の ヤコブ・セーダーグレンが凄い。彼のアップで映画が始まってすぐその表情に引き込まれ、あ、彼をずっと見ているんだったら保ちそうだな、と思う位に良い。

その期待は裏切らないんだけど、最初の印象は後になっていくにつれ…。脚本が良いので何の事前情報もなく観た方がいいっすよ。

小さい音が結構大事なので、ちゃんとした環境で観れない場合はヘッドフォン推奨。すべて電話越しの音声であるようだけど、実は巧みにそのフィルターを外したり入れたりして…音声でのめり込ませる手法が凄い。 「アトロク ギルティ」で検索すると最初に出てくるページ内で、この映画の特番が聴けます。最先端の音作りでアニメ制作に関わる音響監督:たなかかずや氏による『GUILTY』の音声演出の解説。すごく面白いのでこちらもぜひ。

映画『世界一キライなあなたに』感想

『世界一キライなあなたに』をAmazonプライムで。2016年公開。

ゲームオブスローンズのデナーリス(エミリア・クラーク)主演に、タイウィン・ラニスター(チャールズ・ダンス)まで出ていた!嬉しい!

あらすじ
舞台はイギリスの田舎町。ルイーザ・クラーク(エミリア・クラーク)は、お洒落をすることが大好きな26歳。ある日、働いていたカフェが閉店することになったルーが新たに得た職は、バイクの事故で車椅子生活を余儀なくされ、生きる希望を失ってしまった超ハンサムな大富豪ウィル・トレイナー(サム・クラフリン)のお世話係をする期間6ヶ月の仕事だった。最初はルーに冷たく当たるウィルだったがルーの明るさが、ウィルの頑な心を溶かしていき、やがて2人は恋に落ちていく。しかしある日ルーは知ってしまう。
ウィルが決めた「生きる時間」があとわずかだということを・・・。
(WBサイトより)

大きなジャンルで言えば「難病モノ」になるのかな。きっと良くあるパターンなのかも知れない。でもエミリアと相手役のサムの魅力がはち切れる!エミリアの妹や家族たち脇を固める俳優陣もイイ。好きだわ〜

GOTでは笑顔さえ見せないエミリアだけど、メイキングを観た人なら誰でも知ってる、あの太眉をハの字にしておでこにシワを寄せた強烈チャーミングな笑顔。あの笑顔や困った顔が全開だ。

GOTメイキングから自分が勝手に思ってた「エミリアってきっと本当はこんな子」像を、そのまんま主演にしたようなイメージだった。でもそれは演技力の賜物で、かたや王国を束ねる革命の女王、かたや明るさばっかりが取り得の貧乏女子、どちらもこんなに違和感無く演じているエミリアの底力たるや。もっと彼女の映画を観てみたくなった。

「お洒落が好きでファッションの学校に行くのが夢」のルー(エミリア)が、いつも派手で妙チキリンな格好をしているんだけど、それを自然に魅せる彼女のキャラ造形が見事。お母さんから借りた80年代スーツにも爆笑。

尊厳死がテーマになっていて、物語の行方にも考えさせられる。他色々書きたいけどネタバレになるので省略。
良かったです。チャールズ・ダンスも!

Netflix『クィア・アイ in Japan』感想

Netflix『クィア・アイ in Japan』良かった。全4話。

夫婦の在り方とか住宅環境、日本と彼の国とはあまりに違っているところが最初気になるけども、大事なのは違うところじゃない。世界中の誰もが同じように感じる大切な部分、自分を愛すること、他人を愛すること、そしてそのいずれも大切にすること。それこそが大事だとファブ5が気付かせてくれる。浮き彫りにして、優しく包んでくれる。いやーすごい。in Japanを通じて改めて驚愕しました。
(とは言え同じ日本人の我々はあちこちで「イヤ彼女が望んでいるのはそーゆーんじゃないだろー」と苦笑し突っ込んでいる訳なのだが。それはソレ)

2話と3話は娘達と観ていたのだけど、小さい子にも大受けだった(4話は一緒に観るのはちょっと気まずいので注意)。どの話も必ず最後にはぐっときてしまう…。 人選から通訳、編集、そしてあんな狭い場所での撮影と、大変な困難続きだったことは想像に難くないin Japan。突っ込み所がないとは言わないが、欧米エンタメ市場にありがちな「うーん違うんだけどなー」日本描写じゃないところが、Netflixの底力。拍手!

ま、それとは別にクィア・アイに取り上げられることは世界中でとんでもない有名人になることでもあって、「あの部屋やヘアや衣裳を維持できたのか問題」と一緒に、5年後とか「あの人は今」レポートを日本のメディアで企画して欲しいものだ。

映画『バーバラと心の巨人』感想

『バーバラと心の巨人』をiTunesレンタルで。

あらすじだけで面白いので、サントラの解説文をコピペ↓

世界が泣いたグラフィックノベル「I KILL GIANTS」待望の映像化!『ハリー・ポッター』シリーズクリス・コロンバス×アカデミー賞®受賞監督アンダース・ウォルターが描く 少女の苦悩と再生の物語。

自分の殻に閉じこもり周囲から孤立する風変わりな少女・バーバラ。だが、彼女にはある使命があった。それは、やがて襲来する巨人を倒すこと—。しかし、姉のカレンや先生、初めて友達になれた転校生のソフィアでさえも、すぐにそこまで迫る巨人の存在を信じず現実に向き合えと言うばかり。そして遂に、巨人がバーバラの目の前に現れる。果たして巨人がもたらす試練とは?

ジョー・ケリー(作)/ケン・ニイムラ(画)によるグラフィックノベル『I KILL GIANTS』を実写映画化したダーク・ファンタジー。音楽を担当するのは、日本・フランス・ベルギー合作映画『レッドタートル ある島の物語』を手がけたローラン・ペレズ・デル・マール。

主人公が森の中で、キノコの粉を採取し赤いスライム的なものに混ぜて、何かをおびき寄せている。冒頭の緻密な美術だけで引き込まれるんだけど、それがあとで切なさに変わる。

ファンタジーかと思わせて、現実のリアルな物語と密接に絡み合っている不思議なストーリー。映画の途中でとある事実が分かり、彼女の背景や家族の関係が徐々に明らかになるにつれて…
もう1回観たくなってきた。それ位ビジュアルが素晴らしいの!

巨人を殺すことが自分の使命だと信じているバーバラ、すごくカワイイ。ローラ・パーマーの小学生時代という感じ。こんなにカワイイ子がクラスで浮きまくってる設定や、映画全体の不思議な浮遊感は、彼女の演技力があるからこそだと思う。今後楽しみな女優さん。

友人役の子も、美人のお姉さんも、いじめっ子も、ガーディアンズのガモーラ(ゾーイ・サルダナ)も、みんないい。あれ?男のイメージがまったく残ってないな…。 あちこちで「大人気の」「世界が泣いた」と書かれている原作のグラフィックノベルを読んでみたい。

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【苦言】また邦題問題!「ワンダと巨像」好き狙い撃ちかよ!と思っちゃう邦題だけどw、これはひどい。本当に最悪。ダメ邦題とか以前の問題。ポスターの違いもなぁ…

Amazonプライム『Modern Love』感想

Amazonオリジナルドラマ『モダンラブ』は、3話までがジョン・カーニー監督!(シングストリートやはじまりのうた、ONCEダブリンの街角で)豪華キャストもあって早速観ましたよ3話まで。一話30分の恋愛オムニバスドラマ。原作はNYタイムズのコラム。

2話の主役は、大傑作『ライオン 25年目のただいま』のイケメン、デーヴ・パテールで、大切なシーンに『動物園から未来を変える』のブロンクス動物園が舞台になってて個人的に嬉しかった。キャサリン・キーナーとアンディ・ガルシアによる中年ひとときの逢瀬は大好きな「ビフォア」シリーズみたい。

3話の主役はアン・ハサウェイ。躁鬱病。彼女の怠惰でダメダメな演技はいつだって良いなー。堪能。

ドラマ的に相当軽いし、出来すぎ感はあるけど、少なくとも3話までは楽しめた。キャストがみんな美しくてシヤワセ…。落ち込んだ時にオススメ、かな。
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【苦言】
「今日もNYの街角で」てゆう邦題、うっせーわ!

『蜜蜂と遠雷』原作と映画、どちらを先にすべき?

『蜜蜂と遠雷』原作読了。

自分は映画→原作の順に入ったのだけど、これが正解だったように思う。

最初に何の予備知識もなく観た映画版は、とても良かった。
すぐに原作を読みたくなった。

原作は厚めの文庫で2冊のボリューム。これを2時間の映画にするのだから、相当割り切って作らなければいけないのは当然で、その割り切り方もアレンジも、今思えばとても見事だったと思う。

原作は、大袈裟に言えば別物だった。出てくるピアニスト達の心理描写も、バックボーンも、関係性も、映画ではその殆どがカットされるか、もしくは説明がされていない。何より演奏シーン。原作は「小説でしかできないことを」目指して書かれた「音楽小説」だ。

原作でも演奏シーンの割合はとても多い。普通考えたら飽きてしまいそうだけど、一気に読んでしまう。見事な構成と表現力。何度もカタルシスが訪れる。「音楽」への愛に溢れるクライマックスに何度も泣かされる。

演奏シーンは、あらゆる小説的技法を使って、恐ろしい没入度で描写されていた。背景にはそれぞれのピアニスト同士の関わりがあり、思い出と経験があり、音楽を極めるもの達だからこその精神の繋がりがあり、曲それぞれの分析があり…。その結果文章だけで驚きの「音楽」体験を実現している。

そもそもが、映像で不可能な描写によって「読者の頭の中でそれぞれの音楽が鳴る」もしくは「音楽が鳴らずとも音楽の素晴らしさを体験させる」ことを目指した小説だったのだから。
「映画化する」と言ったら「??」となるのが当たり前。そもそも矛盾している。
だけど、見事な映画化だったと今でも思う。

映画と小説の情報量は、1:10くらいじゃないだろうか。でもそれは映画から入ったせいで、原作を知った今ならきっとその比率は1:5にも1:3にもなり得る。そういう風に作られた映画だったと思う。

だけど最初に原作を読んだ人は…
自分みたいに1:10には思わないだろうけど、それが1:5だとしてもやっぱりがっかりするところはあるような気がする。短い中で人物の個性を表現するために、今思うと残念な変更も僅かにある。減点法は、加点法に比べてやっぱり寂しい。

だから自分の思う『蜜蜂と遠雷』のベストな流れは
映画→原作→映画
だ。

気になってる人はまだやっているうちに是非映画を観て!

ABOUT

1999年のWEB日記時代から始めた個人サイト。ブログ移行にあたって過去記事も抜粋してアーカイブしています。
(HTMLサイト→SereneBachブログ→WORDPRESSブログと転移)

好きな漫画(2014年版)はこの記事の最後に。

最近は(インスタ)でアップしているTV・映画感想の投稿を、半年に1回くらい一気に転載しています。

過去の投稿