カテゴリー: TV・映画感想

無題

TBSドラマ『ライオンの隠れ家』をNetflixで観了。
柳楽優弥が主演で外す訳はないと思っていたけど、想像の何倍も素晴らしいドラマだった。
すごく、好き。

「柳楽優弥のおちょぼ口」な!!

【あらすじ】
両親を事故で失い、二人で暮らしている兄ひろと(柳楽優弥)と、ASDの弟みっくん(坂東龍汰)。そこにある日、6歳の「ライオン」を名乗る男の子(佐藤大空)が迷いこんでくる。どうやらライオンは、二人の異母姉の子供のようなのだが…

【感想】
子役含めた3人が全員、神がかってる位に上手い。

ライオン役佐藤大空くんのなんとナチュラルな愛らしさ。気まずさゼロ。
坂東龍汰に至ってはあまりにASDの演技が自然(に見えて)、その凄さが後半は実感できない位に普通化しちゃってて、とにかく凄い。

でもやっぱり柳楽優弥。彼はこの役の特徴を「おちょぼ口」に見いだしたようで、とにかくおちょぼ口が多発する笑。でもそれが性格や考えてることを言わずとも感じさせていて、素晴らしい発明だったと思う。身体全体から「ひろと」の人生を感じさせるこれぞ名演技でした。最高。ありがとう。

この3人の名演技があまりにあまりで、尾野真千子まで霞んでしまうくらい。

桜井ユキは彼女らしい役回りで相変わらず好き!(何度でも書くがNHK『だから私は推しました』観て!おれはこれで桜井ユキ推しになった)でんでん、岡山天音など安定の巧さに加え、ひろとの同僚の岡崎体育と齋藤飛鳥も良かった〜

このドラマ、全11話なんだけど、普通だったら大きな事件が解決した10話で終わるのが殆どだと思う。そこで「あと1話?え?何?」て思っていると、主人公:ひろとの人生の話が最後に始まる。これが最高。
主人公達3人に向けられる「目線」が、あくまで優しく愛おしい。

途中結構ハードな事件があったりするんだけど、ウェルメイドって言葉、こういうドラマに使いたい。全体通して相当大好きなドラマです。良かった!

NHKドラマ『その街のこども』が期間限定公開!

2010年のNHKドラマ『その街のこども』が、NHKプラスで1/20昼まで期間限定公開されています。
あと2日半しかないので、見逃しなく!

【あらすじ】
2010年1月16日、新神戸駅で偶然知り合った勇治(森山未來)と美夏(佐藤江梨子)。ふたりには、誰にも言えず、抱え続けてきた震災の記憶があった…。震災15年目の朝を迎えるまでの一晩の神戸を舞台に“語れずにいた想い”が不器用にあふれだす。脚本は映画「ジョゼと虎と魚たち」の渡辺あや。神戸で学生時代を過ごした渡辺、子どものころに震災を体験した森山未來と佐藤江梨子が、リアルな感情で挑む。(NHK公式)

【スタッフ】
脚本:渡辺あや(カーネーション、ワンダーウォール、エルピス)
演出:井上剛(あまちゃん、クライマーズ・ハイ、64)
音楽:大友良英(あまちゃん、花束みたいな恋をした)
出演:森山未來、佐藤江梨子、津田寛治

【感想】
また忘れられないドラマになりそう。感情をがっつり揺さぶられた。最後の方はもう号泣。
なんなのこれ。ストーリーも出来事も殆どない。ただ2人で夜の神戸を歩き、想い出話を語るだけ。

撮影も演出も、ほぼドキュメンタリーのようなつくりで、これは2人の本当の話?かと勘違いしてしまう位。実際に主演2人の実体験もかなりセリフに反映されているらしい。

2人のどちらも感情移入するようなキャラクターじゃ全然無いので、最初の吸引力は正直弱い。
だけど、ドキュメンタリーだかドラマだか分からない感情のまま、2人の夜散歩に付き合っていって、最後の方には何故かもう、あちこちの人が皆愛おしくなる。

クライマックスで感じる、この表現できないうゎーて感情は、覚えがある!同じく渡辺あや脚本のNHK『ワンダーウォール』(NHK)だ。あのラストの「うゎー」って感じと、そっくりだ。(スタッフ全然違うのに…と思ったら撮影が同じ松宮拓という方だった)。
世の中、いかんともしがたい。でも我々は、そこでやっていくしかないんだ。その無情感と愛おしさの合い混じった気持ち。元気が出るのとは少し違うけど、生きていこうとちょっと思える。渡辺あやの脚本もすごいが、やっぱり演出だろう。

旅行先の電車で出会い、一晩歩いて話して、再会を約束し連絡先も交わさず別れる男女。そう、『ビフォア・サンライズ』みがある。全然あんなにロマンチックじゃないし、神戸案内にもなってないのだけど、でもあの感じ。途中思い出しちゃった。

このドラマは2010年制作。
2011年に『カーネーション』で脚本家の渡辺あやを知り、2013年の『あまちゃん』で井上監督や大友良英さんを知り、
『あまちゃん』制作の大きなきっかけになったのが『その街のこども』だとあちこちで読んでいた自分としては、ずっとずっと観たかった作品。(あまちゃんの座組の多くはこの番組からスライドされた筈)

何故かオンデマンドに入っていないし、NHKプラスの検索でも引っかからない。再編集した劇場版も翌年作られているが、それも配信で見つからない。劇場版は宇多丸さんのシネマハスラーで過去絶賛されていた。

ストーリーズにNHKプラスのリンクを入れたので、興味ある方はこの機会にぜひ!

映画『ポトフ 美食家と料理人』感想

『ポトフ 美食家と料理人』をAmazonレンタルで。
監督:トラン・アン・ユン。

【あらすじ】
19世紀末のフランス郊外で暮らす美食家のドダンと、彼のアイデアを実践し時に凌駕する腕を持った料理人のウージェニーは、結婚はしないながらもパートナーとして一緒に生活してた。ある日、屋敷の使用人が連れてきた親戚の少女ポーリーヌが天性の舌と感性を持っていることに気付き、2人で料理人に育て上げたいと考える。その矢先にウージェニーが病に倒れ…。

【感想】
ずっと写されているキッチン、光と影が見たことないくらいに超絶美しい。フェルメールみたい。
全編通して、ほぼ料理を作っているだけのストーリー。しかし最初から魅入られたままであっという間に終わった。ストーリーはシンプルだけど染み入ってくる。

湯気と音、手技の美しさ、食材の色気がダダ漏れ状態。料理も衣装も美術も完璧。
フランス料理はそもそも食べた経験が少ないし興味もなかったけど、さすが!と思わせる説得力だった。

ドダンの美食仲間たちの、他人との距離感、ウージェニーとの関係も、時代は感じさせつつ、それでも心地良い。

劇伴が無かったと後で知ったが、え?マジで?と疑った。始終流れていたような記憶がある。つまり料理のSEがみな音楽に感じられるような作りだったのだろうか。

主演2人はもちろん、天才美少女ポーリーヌの演技も見事。この3人の姿をもっと見ていたかった。ちなみにドダンとウージェニー役の2人はプライベートでもパートナーだそう。

悔しい…絶対に映画館で観たかった作品だなぁ。再上映あったら逃さないようにしないと。

※カンヌの監督賞受賞作だそうです。

映画『ソウルの春』感想

『ソウルの春』をAmazonプライムで。
監督:キム・ソンス

【あらすじ】
1979年に韓国で起きた「12・12粛軍クーデター」の経緯を初めて映画化。
役名は少し変えているが、殆どの出演者には実在のモデルがいる。

【感想】
昨年観ていたらベスト1にしていたと思う。
圧倒的なエンターテインメントにして、ラストには忘れられない悔しさを味わう。

このクーデターが成功し、その後10年以上も軍事独裁政権が続くという歴史を知りながら尚、こんなにハラハラさせられるなんて。

クーデター当日の両勢力の駆け引き、秒単位の情報戦のやり取りは言葉通り「息をするのを忘れる」すさまじい緊迫感。単なるアクション映画としてもトップクラスの面白さ。
(大好きな『クライマーズ・ハイ』のクライマックスを思い出す。ああゆうプロ対プロのやり取りが好きな人に全オススメ)

全斗煥に対抗する、実直で正義感の固まりのような首都警備司令官チャン・テワン(役名イ・テシン)を、『監視者たち』の最高悪役にしてトム・クルーズ似のチョン・ウソンが演じる。
映画のあらすじだけ読むとキツい内容に思ってしまうが、劇中の爽快カタルシスは彼が担当してくれるから大丈夫!

このチョン・ウソンと悪役の権化のような全斗煥(役名チョン・ドゥグァン)を演じる名優ファン・ジョンミンのおかげで、ただでさえ見事な脚本・演出が超1級のアクションエンタメになってる。

「12・12クーデター」がその後2023年まで映画化されなかった理由として、首謀者の何人もがその後も韓国社会の重要な位置に居たからではないかと監督は語っている。彼は高3の時にこの事件を実体験し、翌日の新聞はじめその後の事件隠匿を肌で感じたことで映画化を決意したそうだ。

自分の年齢に当てはめてみると
「12・12」とその後の全斗煥による戒厳令〜光州事件(タクシー運転手)が起きた1979-80年、自分は10歳。
ヤマトやガンダムに夢中になっていた頃。

その後長く続いた軍事独裁政権が終わるきっかけとなる『1987、ある闘いの真実』の年に、高校2年生。
少女マンガオタク期。世は夕ニャンとおニャン子ととんねるずの時代。

「12・12」の罪を問われ全斗煥と盧泰愚が拘束・起訴され一応の解決を見る1995年に、自分は大学を卒業。
阪神大震災とオウム事件、Windows95、金融機関の財政破綻、バブルの完全崩壊。

自分が韓国で生まれ育っていたら。このあいだ起きたばかりの戒厳令の夜に、昨日の大統領拘束失敗に、何を思い、どう行動していたのだろうか。
 
このような作品が観られることが素直に嬉しくてありがたい。しかし観るのが遅すぎた。尻込みしてた。

傑作揃いの大人気韓国近代史シリーズ。この先もずっと語られる1作になるだろう。

我が家の正月


我が家の正月は、極力家事をやらないことにしてる。

奥さんが駅伝マニアということもあるのだが…。おせちや正月料理どころか、ご飯はほぼ作らない。各自で勝手に作って食べる。だからメニューはバラバラで、うどんやカップヌードルやレトルトカレーばっかりってこともある。

今年はご飯や餅のストックが多目にあって、年末に家の余り物を全部ぶち込んだ汁(結果的に雑煮っぽくなった)を大鍋一杯作ったので、ちょっとだけ正月ぽかった。今後これを我が家の雑煮としよう。(おにぎり用の冷凍焼き鮭を入れたのが新潟ぽい)

加えて今年は長女が受験のためずっと勉強オンリー。一層バラバラ。ちなみに自分は元旦に配信映画を3本観た。(劇場で今観たいのをやっていなかったのが残念)

『チャレンジャーズ』『ソウルの春』『プロジェクト・パワー』どれも面白くてお腹いっぱい。

2日のTBS『スロウトレイン』、ロケーションは勿論テーマ的にも海街diaryに近い作品。静かな中に野木さんらしいメッセージを感じられて良かった。しかし劇伴がちょっと好みじゃなかったな…。あとこの内容で単発ドラマだと土井監督が適任なのかしら、とか。(連ドラでこのコンビは素晴らしかった)

古舘さんとリリーフランキーのBarシーンはもはやユニバース。笑える。他にも今観てる『ライオンの隠れ家』とたまに世界がごっちゃになってしまい困った。多部ちゃんの韓国人の彼氏、裏切らなくて良かった。
何にせよ、オリジナル脚本でこれだけの作品を正月にぶつけてくれることの大切さ!ありがとうございます!

2日のお昼は毎年マクドナルドに行くことにしている。今日はベーコンレタスバーガーをチョイス。思ったよりお店は空いてた。明日はキムチチゲが食べたくなったので俺がつくる予定。

11月から続く寝違いのような首の痛みはずっと相変わらずで慢性化しつつあり、ここから来る頭痛はもう毎日のことで、いいかげん慣れてしまった。

こんな風に少しずつ不調が日常化して、重ね着のように増えていって…。そりゃ動作も口調もゆっくりになりますよ。元気かどうとかというより、怖くて早く動けないんだもん。また1歩、天国への階段を上りました。

お休みくらい毎日お酒が呑みたくても、頭痛のせいで遠慮がち。東西いろいろ通院して試したが、原因も治癒もさっぱりだ。共テ終わる頃までに、何かの運とかきっかけで直ってたりするといいなぁ。

NHK『あたらしいテレビ』感想

元旦恒例のNHK『あたらしいテレビ』。

NHK、民放、映画、配信、出版、ネット界隈に関わらずさまざまな業界人を集め2024年のコンテンツを1時間に渡って振り返る番組。

今年は吉田恵里香、山中瑤子監督が入っておお〜と思ったが、内容的には去年おととしのような、すげー!というとこまではいかなかったかな。でも面白いから興味ある方はプラスでやっている間にぜひ。

YouTube界隈の話はまったく知らない世界ばかりで、その人の肩書きや業界がどうのということでもなく、もう皆が知ってる共通の話題なんてあり得ないんだ、ということが改めて分かる番組だった。かろうじてテレビが少し繋ぎ止めている、という位で。

だから自分にとってアトロクがどんなに貴重なのかってことなんだよな…。

●NHK『舟を編む』の脚本家、蛭田直美さんが2025推しに選ばれていたのが嬉しかった。『海に眠るダイヤモンド』でエライザさんいいじゃん、とちょっとでも思った人には『舟を編む』絶対観て欲しいなぁ。2024ドラマのベスト。エライザさんが凄まじく、良いです。

●フジテレビの田中良樹D(『新しいカギ』など)が言ってた「テレビは5〜6年前にあせって上の層(年輩)ばかりを狙っていた時期があって、今はそこからリカバっている最中」的なこと言っててへぇー。

●高石あかりちゃんの2024レコメンドのラインナップがなんか良かった。XGいいよね…

●インティマシーコーディネーターについての高嶋政伸コラムを挙げたドラマ批評家の方がいて、かなりの時間を割いてICについて当事者が説明していた。確かにそうで、こういうNHKの番組で挙げてもらったのは絶対良かったのだけど、あのコラムはあれであまりにもメンタル面をすべてICに?という誤解も生みそうで、IC入れればOKって話でもないというまた次のステップの話があって、とかあるよね。あとふてほどのあの回の酷さに言及はなく…当たり前か。そう言えばふてほどを挙げている人はいなかったな。

●吉田恵里香さんの推しマンガ『君と宇宙をあるくために』買うぞ。

2024年に見た映画ベスト

2024年に観た映画&ドラマのベスト。

過去の年間ベスト記事は▼
歴代年間ベスト映画の記事

2024年に観た映画は50本、うち劇場鑑賞は9本。
多くはないがまぁそこそこという数。コロナ前は劇場鑑賞がだいたい20本以上あったらしい。今年は特に娘達の送迎が入って、ナイト上映に行きにくくなったのが大きな理由だろう。

映画は、この1本!という今年を代表するものは思い当たらないけど、傑作はやっぱり何本もあった。そもそも「観ていない話題作が多い」ことが結構気になっていて、それらを観ていたらまた結果はかなり変わるのかも。

劇場体験のナンバーワンは『侍タイムスリッパ–』。劇場で観る意味のある特別な作品で、これを逃さなかったのが今年一番を自分を褒めてやりたい案件。
たった1館上映で始まった自主制作映画が、評判が評判を呼びどんどん全国に広がっていったサクセスストーリーはカメ止めを思い出す。いやあの時以上の痛快さ。ZINEのようなパンフも素晴らしい。日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞の3冠、主演男優賞も本当に嬉しい。おめでとうございます!

『DUNE2』はいつものSFびいきは勿論だけど、やっぱりIMAXが新潟にできたことが大きい。
『帰れない山』は原作も素晴らしかった。自分の幼少期の思い出や出自に関わるような「しっくり感」というか生理的な相性が妙に良かった作品。

感想アップが間に合わなかったのは『夜明けのすべて』『ホールドオーバーズ』。どちらもめちゃくちゃ好きな映画。こんなに優しい(それぞれ意味は違うが)映画が2本もあった2024年は素晴らしいと思える。

ドラマはまー傑作揃い!『虎に翼』『舟を編む』『アンメット』が同じ年に!

ここに入ってない作品含め全体を通してNHKが強い印象。

待望の野木亜紀子新作『海に眠るダイヤモンド』はこれまでの作品とは舞台が大きく変わった大作で、まだ消化しきれないくらい。『JIN』や『この世界の片隅に』もそうだけど、(東芝)日曜劇場が今でも地デジドラマにおける役割をしっかりと果たしていることがありがたいし誇らしい。

今晩は年末恒例のお楽しみ、映画部忘年会。良き映画もそうだけど、これはアカンかった…というSNSにはあまり載せられない話ができるのも楽しみ。

多分鑑賞記録でもメモし忘れているのが何作かはあるんだろうな。気付いたら直します。

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今年、インスタのハッシュタグのフォローができなくなった仕様変更のタイミングで、ハッシュタグごとに過去記事を全部チェックできるアプリ「4K Stogram」が使えなくなった。これを使って過去記事をまとめたりnoteに移行していたりしたのが、今後はできなくなる。同機能の代替アプリが見つかる確率は低い。今後インスタの過去記事は検索もチェックも引用もできない、アーカイブとすら呼べないデータの堆積、になってしまいそう。インスタとのおつき合いも今後どうなるのか。

年末恒例の映画部呑み会(2024末)

恒例の映画部忘年会。

今年はぱっとした1本が無かったな〜、というのは共通意見だった。
『侍タイムスリッパー』を劇場で観られた喜びを存分に話せて、すごくスッキリ。

こんな会をいつまでも続けていられることが、私の望みです。

話したこと、覚えてる限りメモ。

●侍タイムスリッパーを劇場で観れたことの喜び。賞取れてよかったね

●PERFECT DAYSについてのアレコレも話せて盛り上がってすっきり

●インターステラーIMAXを逃したのがマジで悔しい

●旧作を劇場で観ることの新鮮味、IMAXが出来て嬉しい。ノーラン作品をIMAXでどんどんリバイバルして欲しい

●去年のTARとか前のTENETとか、なんかめっちゃ話したくなる作品が今年はなかった。オッペンハイマーは、ちょっと違うね…

●わたくしどもは。の話。つなぎが気になる映画は初めてだった

●ラストマイル、間違いなく面白い作品なんだけど、映画か?映画であるべきか?というのが皆共通してた

●藤井監督、やっぱ合わない…

●落下の解剖学は犬と子供がめっちゃ良かった

●ブルーピリオドは始終泣いてる位に良かった。

●フュリオサは勿論良かったけど、なんか凄く話したくなる、って作品じゃなかったかな。

●ドラマは傑作が多かった!直近では全員が『海に眠るダイヤモンド』を観ていたのが嬉しい。あと皆NHKオンデマンドに入ったらいいのに。

■他のひとが観てなかった中でオススメ
『ザ・メニュー』◀アニャ!
『シビル・ウォー』◀赤メガネの話をしたかった!
『モキシー』◀Netflixオリジナルの学園もの。zineの話でもある
『セーヌ川の水面の下に』◀バカサメ映画を観たい時に
『雪山の絆』◀原作とセットでおすすめ
『夜明けのすべて』◀優しい社会とはこれだ

■おつまみはお馴染み菜の花キッチンさんのオードブル。今回は「揚げ春雨のタカキビソース」が衝撃でした!



『ぷらすと』がもたらしたもの

朝COBO活。7時のOPENあたりには誰一人いなかった。

今年の映画ベストをまとめはじめている。感想を書いていないものも何作品かあるけど、ちょっと年内にアップは無理そう。『ホールドーバーズ』良かったなぁ。Podcast『映画雑談』のホールドオーバーズ回は、虎に翼評も結構入ってて俺得だった。

北書店で先日買った別冊文藝『クリストファー・ノーラン』。
添野知生さんが『インターステラー』について書いていた。元々弟のジョナサンがスピルバーグに当て書きした脚本で、それにクリストファーが何を足したか。それは何故か。自分の娘のことがかなり関係しているみたい。ジョナサンの妻リサ・ジョイが女性目線で『ウエストワールド』などの傑作をものしている中、勿論分かっててあえて男性目線でSFを描き続けていること、その対比だとか。ほんとそうね。

『ぷらすと』で知って、松崎健夫さんと共にファンになったSF映画評論家の添野さん(岸政彦さん似)、近年は体調不良でYouTube番組にも出られていないので心配なんだけど、どこを見ても近況が分からない。どうか復活されますように。

『ぷらすと』が俺にもたらした影響も、終了した影響も、とっても大きい。もう何年も前のことなのに、未だにショックだ。
今終わられると恐らく立ち直れないくらいダメージを喰らうのは間違いなく『after6junction』で、終わらないように願掛けでステッカーをデザインしている。出来たら車の後部ウィンドウに貼ります。見たことないアトロクステッカーの貼ってあるVOLVO v50を見かけたら、それはワタクシ。

映画『ホールドオーバーズ』素晴らしかった。

『ホールドオーバーズ』をAmazonプライムで。
監督:アレクサンダー・ペイン(『ダウンサイズ』)

【あらすじ】
1970年代のマサチューセッツ州にある全寮制の寄宿学校。生真面目で皮肉屋で学生や同僚からも嫌われている教師ポールは、クリスマス休暇に家に帰れない学生たちの監督役を務めることに。そんなポールと、母親が再婚したために休暇の間も寄宿舎に居残ることになった学生アンガス、寄宿舎の食堂の料理長として学生たちの面倒を見る一方で、自分の息子をベトナム戦争で亡くしたメアリーという、それぞれ立場も異なり、一見すると共通点のない3人が、2週間のクリスマス休暇を疑似家族のように過ごすことになる。
(映画ドットコム)

【感想】

これぞ人間賛歌。クリスマスには特にぴったり。映画であたたかい気持ちになりたい人いたら是非。70年代のファッションやカルチャーも良き!

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みはじめて数十分のころ、やばい。これはNot for meなのでは…と思う位に、主演の3人誰もが好きになれなかった。

主演の頑固なポール先生(体臭・偏見の持ち主)、不機嫌な料理長のメアリー、お坊ちゃまでがきんちょのアンガス。

このさっぱり魅力を感じられない3人が一緒に過ごす、気まずくて暗い冬の光景を、延々見せられるのかと。しかし。

観終わる頃には、3人のことが大好きになっている、どころか「この映画サイコーじゃね?」に変わっている。

この落差。

断っておくけど、別に途中ですごい事件が起こる訳でもない。場所は変わったり、他の人物が絡んだりはしてくるけど。

何が起こるかと言えば、静かに、ゆっくりと、3人がどういう人なのかが分かっていく。それだけ。

何故頑固なのか、体臭の理由は、何故クリスマスに急に寄宿舎に残ることになったのか。どうして不機嫌なのか。すべて、背景を知ることで、その人の人生の片鱗を知っただけで、印象が変わっていく。劇中のお互いの理解も深まる。

そう、人は「知る」ことだけで全然違うんだよなぁ。という今さらのことを思い知らされる。早とちりせず、第一印象で決めつけない大切さを自分に言い聞かせた。

もちろんエンタメの世界はそれだけでは不十分。ただ背景を知るエピソードをゆっくり織り込んでいくだけで「素晴らしい作品」になることはない。入念な脚本と、セリフで説明しない演出、滲み出る演技力、その他諸々がすべて合致するという奇跡があってこそ、こんな傑作が生まれうるんだ。

前の映画会でも話していた「駄作になったかも知れない分岐点」のこと。当作はそんなプロットばかりだ。よくこんなに良い作品になったものだと思う。

主人公3人はどれもめちゃくちゃ素晴らしい俳優だと思うのだが、学生のアンガスはなんと、ロケ地になった学校の演劇部の生徒がオーディションで選ばれたそうだ。まだ素人。信じられない。全然信じられない。

ずっと忘れられない、大切な作品になりました。

岡室美奈子『テレビドラマは時代を映す』

岡室美奈子『テレビドラマは時代を映す』(ハヤカワ新書)読了。

著者は早稲田大学教授、テレビドラマ論/現代演劇論が専門。60年代頃から現代までをいくつかに区切り、それぞれの時代のテレビドラマが、どのように世相を盛り込んできたかを描く、毎日新聞連載のコラムを新書化。

1コマが2P程度と短く読みやすい。またドラマに限らず時にバラエティ、ノンフィクション、紅白などの音楽番組までも取り上げていて、ドラマを語るというよりも「テレビを通じてその時々を語っていく時事エッセイ」の気分。

大まかな時代背景もそうだが、忘れかけていた個々の事件やムーブメントについてドラマを通して思い出すことができるのが楽しい。残念ながら『虎に翼』の直前までなのだが、かの作品が描いたジェンダーギャップやマイノリティ差別の歴史、見え方の変化についても本書で追いかけることができる。
(出版後に岡室さんはあちこちのラジオでとらつばを激推ししてた。入れられなかったのは残念だったでしょうね…)

現代で自分などが追いかける野木亜紀子、渡辺あや、坂元裕二、安達奈緒子などなどの作家は勿論、自分が産まれたころからの作家論・プロデューサー論をざざーっと読めるのもすごい。この後読んだ倉本聰の自伝もちょうど60年代から現代までのテレビが舞台になっており、御大が一方的にテレビドラマ界の衰退を嘆くのと一緒に読めたのは笑ラッキーだった。あと『海に眠るダイヤモンド』が終わったばかりだけど、本書でも倉本の著作でも、炭鉱の事故や閉山という事実が世間的にどれだけ大きなニュースだったかが、見て取れる。あと東芝日曜劇場(現『日曜劇場』)の偉大さとか。こういう風に立体的に繋がるの、嬉しい。

ラジオでいつもお聞きしている岡室先生の著作をやっと読みました。これからも楽しみにしてます!

映画『ブルーピリオド』は「こうなっちゃったらOUT」の道を一つも踏み外さなかった傑作

『ブルーピリオド』実写映画版をAmazonレンタルで。
監督は萩原健太郎(『サヨナラまでの30分』)
原作は連載開始当時からのファン。

【あらすじ】
高校生の矢口八虎は成績優秀で周囲からの人望も厚いが、空気を読んで生きる毎日に物足りなさを感じていた。苦手な美術の授業で「私の好きな風景」という課題を出された彼は、悩んだ末に、一番好きな「明け方の青い渋谷」を描いてみる。絵を通じて初めて本当の自分をさらけ出せたような気がした八虎は、美術に興味を抱くようになり、またたく間にのめりこんでいく。そして、国内最難関の美術大学への受験を決意するが……。(映画.com)

【感想】
大傑作の実写化だと思います。
原作は大好きだけど、その魅力を実写化によって更に引き出していると思う。同じ座組で続編を作ってほしい。
ほとんどケチのつけようがない位。
原作好きで躊躇しているところあったけど、原作未読の @9falcon9 が良かったと言ってたおかげで、遅まきながら観ることができた。ありがとう〜!

キャストの素晴らしさ

眞栄田郷敦を使ったのがまず大勝利。正解のない、自分自身の中に奥深く潜りこむことだけで腕を磨いていく世界。その深みを、暗部を、彼の目つきや身体の動きからしみじみと感じる。すごい説得力。(メインキャストは相当絵の特訓したらしいし、エキストラは皆美大生か予備校生)ちゃんと「暗い」映画になってる。

最近あまりにひっぱりだこでやや「またか…」感のある薬師丸ひろ子。本作では冒頭からその説得力で泣かせる。一瞬で美大受験の世界に入り込めたのは、彼女の力がでかい。

主人公が絵画にのめりこむきっかけになる森先輩(桜田ひより)さんの、間のかんじ。あーこういう人いそう。見事。

一番実写化が難しいと思ってて(実写化を怪しんでいた要因でもある)主人公の幼馴染みで女装の男子、ユカちゃん(高橋文哉)も見事にハマってた。これは、連載当時から時間が経って、高校で女装の男子という存在に、当時ほど違和感がなくなったこともあるかもね。そういう感覚の移り変わりって早い。よくもまぁこんな演技ができたもんだ。
世田介くん(板垣李光人)も原作そのまんま。

新潟地元パイセンのあの有名な美術家さんも先生役で一瞬出ます笑

「本物」を使う凄み

原作マンガでは、実際に美大生や生徒や作家が描いた絵画を作中人物の作品として使っていて、だから説得力があったのだけど、これが実写化になって更に凄みを増しているのが凄い。こうゆう「作中作品」のリアリティってめちゃくちゃ大事で、ここで「薄目で観ないと耐えられん!」て作品は山ほどある訳で。
(原作ファンだと「あの絵じゃん…泣」ってなるよ。同じ作家にもう一度描いてもらったそうです)

石膏デッサンが並んで実力の違いが分かるところなんかも凄いし、武蔵美や藝大その他がおかしな変名を使わずにすべてそのまま描かれているのって、入り込む要素としてめちゃくちゃ大事だと思う。

美術もすばらしいし、衣装や部屋や小道具のルック、こういうところで「ひっかからない」つまり「気にならない」ことが傑作の条件だし、それって実は奇跡みたいなことだと思う。

映像の美しさと劇伴

カメラアングルが、この映画の主題に合わせ全体に絵画的。グレーディング美しい!自分はもう「原作無しのオリジナル映画」として今作を観ることはできないんだけど、普通にすごいクオリティの邦画じゃね?と思う。

劇伴。YOSASOBIの『群青』使わないの?って予告時点で思ったけど、観ると全然納得。この映画は、もっと重い。

原作の良さがそのまま出てる

男女色恋沙汰がないこと/進行のために悪者を安易に出してこない/など、原作の良さがちゃんとそのまま維持されている。
(映画向けにちょっと色恋を…なんてことしたらもうOUT。そんな失敗例も山ほどある)

苦言

少しテンポがゆっくりなので、これは映画館向きの映画だと思う。

幼馴染みユカちゃんとの関係や、彼の苦悩については、もう少し掘り下げられても…と思う。原作ファンは脳内補完であまり問題はないのだけど。

これから

原作者は今作を受験マンガに留まらず、藝大マンガ、その後のプロの世界も描いていくつもりらしい。本連載は今、藝大生活からプロの片鱗が見えているところ。
繰り返すが、同じ座組で藝大編・プロ編が観られたら自分は本当に嬉しいです。

友人とのやり取りとか、お母さんをスケッチするシーンとか、名シーンが山ほどありました。

正直冒頭から、クオリティの高さが嬉しくてずっと涙ぐんでいたし、何なら半分位涙ぐんで観ていたような気もする。おれはちょっと極端。

山ほどあった「こうなっちゃったらOUT」の道を一つも踏み外さす、実写ならではの魅力を加えた、原作への深い理解と愛情を感じる、とっても良い作品でした。原作者もきっと嬉しいんじゃないかな。

『クィア・アイ』のありがたみ

今は『クィア・アイ』が存在するのが当たり前になった世界線なのだけど…。

この番組がどれだけ衝撃で、どれだけ助けてもらったかを思い出しました。メンバー1人が入れ替わって(なんと!)season9が始まったこと。入れ替わってむしろ盛り上がってる、という話が「もちよりRadio」で語られていました。おお!楽しみ!

クィア・アイを観はじめた時、間違いなく世界が変わったことを覚えています。あの頃は「いつも心にファヴ5を!」って言ってたよね。

最近元気がない、辛いっていうあなた。未体験だったらぜひ。ドラマが「○○に効く」なんて、人によりあまりに違うので普通は言えないけど、『クィア・アイ』は言えるんじゃないかな。

人を褒めることの力強さ、人の本来の魅力を見つけ指摘してあげることの大切さを思います。

あと我が家では、家族全員が盛り上がって観ることのできる、稀有なバラエティ番組だな。

映画『シビル・ウォー』感想

早くもAmazonプライム入りした話題作『シビル・ウォー』鑑賞。
監督はアレックス・ガーランド(『エクス・マキナ』)

【あらすじ】
連邦政府から19の州が離脱したアメリカでは、テキサス州とカリフォルニア州の同盟からなる「西部勢力」と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。就任3期目に突入した権威主義的な大統領は勝利が近いことをテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。戦場カメラマンのリーをはじめとする4人のジャーナリストは、14カ月にわたって一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うべく、ニューヨークからホワイトハウスを目指して旅に出る。彼らは戦場と化した道を進むなかで、内戦の恐怖と狂気を目の当たりにしていく。

【感想】
近未来のアメリカ内戦の様子、と聞くと何やら政治色強めな事前印象だったが、実際は男女4人のジャーナリストが内戦中にホワイトハウスに向かう数日間を追うディストピア・ロードムービー。実に俺好みな内容。あっという間に終わる。109分。

主役のベテランカメラマン:リーを演じるのが大好きなキルステン・ダンスト(数々の名演が蘇る)。彼女と新人カメラマンのジェシーとの関係だけで最後まで持つ。

国内は内戦状態で敵も味方も中立も良く分からない中、大統領インタビューを目指し、男女4人が車に乗り込みD.C.を目指す。ゾンビものっぽいワクワク感もあり、ユルいシーンと緊張するシーンのバランスがとても良くできている。映画上手すぎ!

緊張のクライマックスは最後ではなく、途中で、大量の死体を始末している途中に彼らを捕まえる「赤メガネ」ジェシー・プレモンスとのシーンだ。ライフルを構え、いつ気まぐれで殺されるか分からないおかしな彼との問答。舞台はまったくそこいらにあるアメリカの田舎町。しかし映画館で観ていたら俺、小便漏らしていたかも、というくらいのヤバさ。解決までの顛末も本当に凄くて。

忘れられない名シーンがいくつもあるデイモン似のジェシー・プレモンスだが、今作の、この1シーンだけでも2024年の映画史に残ると思う。
実はキルステン・ダンストの旦那。元々の役者が出演できなくなった所に、ダンストが推薦したのだとか。

ベテランでもう走ることもままならないがこのツアーに同行しているスティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン演じるベテラン記者サミーがまたいい。佇まいだけで100点。

内戦の背景についてもいろいろ考察したい内容はテンコ盛りだし、この後に聞く『映画雑談』の再聴をめっちゃ楽しみにしている…のだが、そんなの全部すっ飛ばしても、純粋にアクション映画として、出来が良すぎる。

12月にして来たね。すごい奴。アマプラですよ。ぜひ。

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まともに感想が書けてないのは重々承知だが、年末に映画部会が決まってめちゃ嬉しいので、とにかくアップしていきたい。他にも書いてない作品が最近たまってた…。
『夜明けのすべて』『ツイスターズ』『翼の生えた虎』『ザ・メニュー』とか。

『GALAC』12月号で虎に翼の記事を読む

テレビとラジオの批評誌『GALAC』12月号

初めて買った。編集発行は「NPO放送批評懇談会」。

たしか岡室美奈子さんのXで知った「朝ドラ『虎に翼』が開いた扉」特集が素晴らしい。全20P。

冒頭の座談会、脚本の吉田さん制作統括の尾崎さんまでは良く見るとしても、梛川善郎チーフ演出、石澤かおるPまで加わった4人はなかなか読めない。その後の寄稿も、どれも素晴らしかった。

そもそもの企画の発端と、その後尾崎さんがこの人達を座組として選んだ理由が、詳しく語られている。また、『家庭裁判所物語』という著作があるNHKの清水聡・解説主幹もキーマン。彼は「歴史司法」戦前戦後の司法を専門にした記者だが、これらの本はNHKの取材ではなく個人で時間をとって調べ上げ書いたそう。この清水氏が制作チームの一員として考証に入っている。NHKで脚本作業をしていた吉田さんが「普通は脚本家が直接会うことの少ない」考証の人とNHKの食堂で気軽に会えることの大切さを語っている。現場のこんな話、なかなか聞けない。清水さんは同誌別ページで考証の寄稿もされている。

『虎に翼』は現代の問題を盛り込み「今過ぎるのでは」という声も聞こえた中、それが単なる場所借りではなく、調査や検討により「昔もそうだった」という推測に至った話とか。

痺れたのは撮影のこと。
「今作はマスターショットがうまい。従来朝ドラのようにマルチカメラスイッチングでバンバン繋いでいくのではなく、アングルを決めてそこの中で芝居をするというショットが多用されている」そうで。

配信ドラマはもちろんNHKのドラマも軒並み映像のクオリティが上がっている中「朝ドラだから映像はそこそこで仕方ない」とは言えない。朝ドラにありがちな「小さなセットを写すためのワイドレンズでルーズな俯瞰」という画になった瞬間、途端に醒めてしまうから、できるだけ長い玉(レンズ)でひいて撮るようにしている。全部にピンが合うワイドレンズでどこを見たらよいか分からない映像よりも、1枚の画で役者の芝居と世界観が表現できるようにしたいと考えた。この撮り方は美術にも影響を及ぼしつつ、従来の朝ドラとは違う撮影が実現できた。

あの印象的なカットの数々は、こういう名監督の元で生まれたのだな。

前に「とらつばナイト」で書いた、女学校の先生のカット。これは脚本ではなく梛川演出によるものらしい。座談会でわざわざ取り上げられていて、感激。

同じ方向を向いたさまざまなスタッフがお互いに意見を出し合いそれを採り入れていく現場。
「撮影現場でも、年齢も性別も違うメンバーが、とりあえずこのシーンをどうするかについて相談するときだけは、誰もがフラットに想ったことをしゃべれるという空気を一番大事にしていました。それは『虎に翼』の芯にある憲法14条の精神みたいなことで、このドラマを撮っている以上、そうでなきゃいけないだろうと。」という梛川さんの言葉に痺れた。

仕事としてではなく、個人として、経験談を話したり議論が起こるような撮影現場だったそう。
「例えば女性の照明スタッフが、寅子が再婚して苗字をどうするかというエピソードの撮影時には、自分はどうするんだろうと真剣に考えてしまったという話をしてくれたり、彼女と伊藤沙莉が撮影後にそんな話をしていたり」

以前『虎に翼』は歴代朝ドラの中でNo.1とか、そういうベスト枠には嵌められない、別枠だ。ということを書いたけど、この特集を読んでやっと分かった気がする。

今作は、受け取った人がその中身を自分事にしてしまう力を持っている。別世界のドラマではなく自分のこととして語り出し、つないでいくバトンを確かに手渡したのだ。だからロスどころか、これから引き継いで、続けていく物語なのだと思う。

『虎に翼』以前との違いは、何が正しいのかわからなくなったとき、憲法第14条が、そしてこのドラマが、私たちを等しく照らし出す『灯台であり続けるということだ。
それは朝ドラの未来への1つの希望に違いない。
(批評の目「朝ドラの現在地と『虎に翼』が紡いだ未来」岡室美奈子 同誌より)

『侍タイムスリッパー』最高映画だ!

『侍タイムスリッパー』をTジョイ新潟万代で。
監督・脚本・撮影・照明・編集・車輌他:安田淳一

【あらすじ】
幕末の京都。長州藩士を討つために身を潜めていた会津藩士:高坂新左衛門は、斬り合いの際に落雷を受け、現在の時代劇撮影村にタイムスリップする。
町のポスターで江戸幕府が140年前に滅んだと知り一度は自死を考えるが、親切なお寺の人に助けられ元気を取り戻していく中、偶然TVで時代劇を観て大感動する高坂。「我が身を立てられるのはこれのみ」と刀を握り締め、「斬られ役」として生きていくため撮影所の門を叩く。

【感想】
信頼してるネット知り合いの皆さんが激推ししている上に、タイムリープものとあっては見逃す訳にはいかぬ!やっと鑑賞。

ツッコミどころは色々あれど、そんなの忘れて笑った!泣いた!息を呑んだ!
(久しぶりに映画館で声をあげて笑った)
まー終わった後に拍手したくなる娯楽傑作映画でした。そして映画を扱った映画なので、劇場で観るのが断然向いてると思う。間に合って良かった…

主人公でタイムスリップする会津藩士:高坂を演じる山口馬木也氏がもう、すごい。顔ヂカラ最強。最初から最後まで本当にずっと、彼に夢中。最後の方では、(あれ?この俳優さん、有名な人だよね?名前なんだっけ?)と勘違いしてしまう位にハマってる。敵役の風見恭一郎:冨家ノリマサ氏もそう。

こんな風に、映画が終盤に行くにつれて
「この俳優さん、有名な人だよね。この落ち着きとか迫力とか。観た憶えあるもん」
と思ってしまうような勘違い(本当は初見)、今までなかった体験でした。

実際、知ってる俳優さんは皆無だったのだけど、皆好きになっちゃう。

照明も、時代劇ならこう!というカッキリライトでハマってるし、小学校の頃夕方の再放送で見てた暴れん坊とか水戸黄門の楽しさを思い出したな…。

あと殺陣ね。この話は「殺陣」を中心に廻る。

殺陣の先生役:峰嵐太郎は、初登場で、そこらにジーンズ姿で立っているだけでそれと分かる佇まい、姿勢。これ剣道やってた人なら共感してもらえると思うんだけど、刀の取扱いや姿勢ってごまかしがきかなくて。にわかで憶えた人は分かってしまう(と思う)。全編通し殺陣のリアリティがすごい。この先生役を巡るエピソードがまた泣けます。(エンドロールで献辞されている)

編集のテンポとか節々にツッコミ処や気になるところはあれど、見せ場になるとそれらを一気に忘れる演技と迫力。クライマックスはマジ劇場中で固唾を呑む様が伝わってきた。本当に斬り合いをしているのか?と思ってしまう。

高坂が会津藩の行く末を知るあのシーン、泣かずにはおれんよね…(修学旅行が会津若松だった世代)。高坂を助けるお寺の老夫婦もすごく良かったし、斬られ役仲間達も皆温かくて意地悪も全然なくてそうゆうとこ凄く好き。


時代劇愛と映画愛に包まれた気持ちの良い傑作です。そして本作は、ほぼ自主制作の映画(監督の肩書きをご覧あれ)もともと自主制作で始めたものを、ロケ地である東映京都撮影所の人が脚本を気に入り(充分ではないにしろ)お金を出してもらい制作。試写からどんどん噂が広がってシネコンの人に注目され上映が広がって…という(カメ止めを彷彿とさせる)サクセスストーリーの様子が、パンフレットでも読めます。今もおそらく、そのストーリーの真っ只中。

そう、パンフレット。1200円でこの薄さ?と最初思うのだけど…。

内容も恐らく自主制作。つまりZINEですよ。『侍タイムスリッパ–』という映画のために監督が作った、もしくはファンが作ったZINEのような、手作り感満載のルック。なんか文章の主語が不思議(笑)。役者紹介も今まであまり読んだことのないテイスト。たとえば…

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山本優子役「沙倉ゆうの」

劇中で助監督優子役を演じつつ、実際の撮影での助監督、制作、美術、小道具などスタッフとしても八面六臂の大活躍。
直前までスタッフとして働きつつ、いざ出番が来ると汗だくのまま満足にメイクも直せずカメラの前に立ち、今度は役者としてひたむきに助監督優子を演じきった(後略)
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え?誰目線?みたいな。こういう文章は普通ライターさんは書かないでしょう。でも役者紹介って、通り一遍のプロフィールだったり、映画を白々しく推してる本人コメントが多くて、正直映画パンフレットのガッカリポイントなことが多くない?
『侍…』の役者紹介は、どれを読んでも面白いよ。

公開当初はまだパンフレットは作ってなかったみたい。
他にも撮影裏話満載で、これは買う価値ありますぜ!
やー観れて良かった〜


「とらつばナイト」レポート

「とらつばナイト」無事終了しました。衆院選投開票日の夜でした。それも感慨深い!

大人数はちょっとどうだろう…と思ったので告知は最小限、お知りあい経由の方達が集まりました。総勢6人(1人体調不良で欠席残念!)。半分の方は2時間半位で帰宅。あと半数は4時間くらいの開催時間。

予想通り、時間はぜんぜん足りませんでした。ぜひこれは二回目でも、何度でも、開催していきたいなぁ。というより「虎に翼」を冠にしたトークイベントや呑み会を定期的に開催したいくらい、ドラマを超えて大切なムーブメントだったように思います。

ドラマの感想ではあるのだけど、皆さんの日々考えていること、これまでの「はて?」が滲み出ているような感じがたまらなくグっと来てしまう。虎に翼ならでは。

(ネットで拾った)全話を一言でダイジェストした一覧表を配布したのですが、とらつばは1話に結構な内容を盛り込んでいるので、短いダイジェストではどの話か分からないのが多かった。1話の中にあまりにも色々内容が詰め込まれているので、インスタでは感想が追いつかずThreadsに書いていたのだから。

人数が半分に減ってからは、このThreadsの感想を追っていって色々思い出し、話すことができてすっきり。書いておくもんだな。

ちなみに今自分は「自主朝ドラ(オンデマンドで朝勝手に観る)」でとらつば2周目絶賛放映中なので、ロスどころかとらつばブーム真っ最中。

全話通して一番のシーンはどこかと聴かれたら、高等試験に合格した後、金屏風の前の演説。
あの内容。あの口調。あの表情。何回観ても(ノД`)・゜・。

昨晩は、そのセリフが書かれたzineを持ってきた人がいたので、自分と同じくあの金屏風のシーンを挙げた女性に、朗読してもらったんです。それがまた、いい。

そして今朝の自主朝ドラは期せずして(本当に!)その金屏風の回でした。まぁビックリ。

改めて観ていると、あの演説までの「タメ」がすごい。あんなに苦労して、働きながら死ぬ気で勉強し、友人達と悲しい別れを経験し、口述試験当日はなんと生理になって、帰ってきて悔し泣き。耐えに耐えてやっと勝ち取った景色は、思っていたものと、全然違っていました…(尾野真千子)。今回を最後に諦める優三。落ちたよねの来訪。彼女が試験で言われた侮蔑的な言葉。よねからの最後の「おめでとう」。それらをタメにタメて、浜辺を思い出しながらの、あの祝賀会。あの言葉。あの口調。
最高のシーンです。

自分はお兄さん(直道)の死は予想外に、ことのほか堪えた話、戦争がイヤだと本心から実感できる凄さとか、そういう話ができたのも嬉しかった。

もちろん名シーンのことはあれもこれも話したのだけど、人数が少なくなった後に、寅子の大学進学について相談する3者面談での女教師のことを話してくれた人がいて。寅とお父さんが帰った後、あの先生が教室で一人、ただ立っているシーンが差し込まれていたのが、再見時に自分も印象的だった。彼女はあの時代で女性教師になることのバックボーンについて思いを至らせていて。こういう話ができるの、いい。

そうなの、思ったことは話した方が、いい!(直道)というのがやっぱりドラマを通じての1つのテーマのように思っていて。これって『スキップとローファー』も同じだよな。
自分が感動するエンタメの共通点なのか。

また曜日や時間を変えて開催したいのですが、1か月少しは長女の受験で動けなくなりそう。その後でも、話したい、参加したいという人がいればぜひお声掛けください。とらつばだけじゃない色んな話が、これをきっかけにできると思う。

昨日もやっぱり、昭和男の内面化(おれ)、選挙、仕事での話などが、参加した皆さんの立場それぞれから聴けたし、そういう話が聞ける機会ってだけで嬉し過ぎる。

大画面で、一緒に観る虎に翼はまた格別。
最初に開催を推してくれた発起人ruth_blackett_をはじめ、参加してくれた皆さん、ありがとうございます〜!!

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写真はまったく撮っていなくて、この1枚は最後に連絡先を交換しているところ。
今回はIryさんのオードブルとKiyoワインのシュワッとしたやつ、弥彦ビールなどをいただいてました。美味しかった…

NHK『宙わたる教室』3話で号泣

『宙わたる教室』3話。号泣回。

どうしても教室に入れなくて保健室の常連になっている佳純(伊東蒼)。
保健室の先生以外誰も見ていない「来室ノート」に、保健室のことを「ハブ」日付のことを「ソル」外に出ることを「EVA」とか、
『火星の人』のワトニーになぞらえて書いていることに気付き、おれぁもう泣いてる。

このドラマ、1話の冒頭を少し見ただけで「あ、これいつものすごいNHKドラマだ」とすぐに分かる奴。撮影・照明・グレーディングなどのルックも、静かな演出も劇伴もすごくいい。

主演の窪田正孝、同僚の田中哲司は最高の演技だが、他はちょっと……(個人的見解)というところを演出のセンスで上手く見せている。

そして3話はいよいよ名優:#伊東蒼 の登場だ。NHKではおかえりモネ、ユーミンストーリーズなど不思議な存在感で記憶に残る彼女。

(自分は密かに「蒔田彩珠枠」と呼んでいる子役からの名優、白鳥玉季、伊東蒼、毎田暖乃、このあたりの層、今とっても厚くて、アツい!)


3話は最後まで「火星」がテーマ。3か月寿命想定で作られた探査機オポチュニティーが15年活躍したこと。その最期のエピソードをひいて「孤独のように見えてそうではなかった」と藤竹先生(窪田)が語るシーンがあまりに良すぎて(ノД`)・゜・。

細かく言えばいろいろあるけども、これは必ず最後まで追っかけると思う。というか今調べて知ったけど、これ実話ベースなんだ。え?最後そうなるんだ!うわー楽しみ。

ところで窪田正孝の前髪に隠れた三白眼、すごいよね。

『虎に翼』が終わった。大感謝。

NHK朝ドラ『虎に翼』が9月末に終わった。

この半年、本当に楽しかった。これまで何度も書いているけど、NHK朝ドラの出来というのは日本全体のメンタル景気を左右すると思ってる。それ位大切なコンテンツ。おかげさまで幾度ゴミのような気分の朝に救われてきたことか。

とてつもなく多くの人に、それも老若男女・主義主張関係無く、問答無用でまずは観てもらえるという超・特殊なTVドラマ枠、「連続テレビ小説」通称朝ドラ。

だからこそ少し変な風潮や常識やタブーがまかり通り、一見制約だらけのように見えた、その枠に。

ジェンダー問題・法律問題をはじめあらゆる社会問題をブッ込み、エンタメとして成立させ、どころかすべての登場人物が愛おしく、心から愛せる物語を書き上げた脚本家・吉田恵里香。その脚本を至上の映像に創り上げた製作陣、期待に応えきった俳優達に、心からのリスペクトと感謝を捧げます。ありがとうございました。

直近では『らんまん』が大好きで、かなりインスタでも感想を上げていたのだけど、とらつばはもう毎日が見どころ満載で、とても画像付きのインスタでは追いつかずThreadsでしか書けなかった。

今週末には「とらつばナイト」がいよいよ開催なのだが、そのために全エピソードダイジェスト(各話一言紹介)を見直していると、1話に対していくつも話したいポイントがあって、とても追いつかない。まず時間内では皆さん話しきれないんだろうなーと思う。
そうなったらまたお茶会でもなんでもやろうよ。いつまでだって話して、いい!

さて面白い朝ドラが放映されるとおよそ「歴代朝ドラベストはなに?」的な話題が盛り上がるのだけど、自分は『虎に翼』が自分内ランキングのどこにも収まらないと思ってる。それ位異質だよね。もしとらつばで初めて朝ドラに触れた人がいたらお伝えしたいけど「こんな朝ドラは金輪際なかった」のです。これからも、期待するのは厳しいように思う。

ちなみにとらつば以外の自分ランキング

1)カーネーション、あまちゃん、おかえりモネ
2)ひよっこ、あさが来た、スカーレット
3)おちょやん、べっぴんさん、らんまん

そもそも朝ドラを観るようになったのは『カーネーション』がきっかけ。それから今までは全部の朝ドラを、最低2週間は見るようにしている。(という自分ルールを初めて破ったのが『おむすび』だった…)上に挙がっていない作品は多くが、どこかで離れてしまった。

NHKオンデマンドがはじまってからというもの、リアルタイム放映の朝ドラがNot for meな場合に、毎朝同じ時間からオンデマンドでお気に入りだった朝ドラを観直すという「自主朝ドラ」を始めた。これでメンタルの平穏をなんとか保っている。昨年は『おかえりモネ』『あまちゃん』を終えた。どちらの作品も、もう1度見直しても良い位傑作だと思う。

だから『虎に翼』が終わって、今ロス?かと言うとまったくそんなことなくて、今は自主朝ドラで絶賛放映中なのです。今日は直言の無罪が決まり、ヒャンちゃんのお兄ちゃんが連行された。今リアルタイムでめちゃ盛り上がってますすみません。

今回とらつばナイトに事情で参加できなかったとらつば好きの皆さんがいたら、いつでも付き合うのでお茶しましょう。
ではでは、週末。

映画『ルックバック』感想

『ルックバック』をTジョイ新潟万代で。監督:押山清高。1時間弱の中編。

原作はちょっとトラウマになる位だったが、映画の評判があまりに良いのでたまらず行ってみた。結果、原作よりかなり明るく、希望を持てる…というとアレだけど、やや前向きな気分で終われる作品になってた。

【あらすじ】小学4年生、学生新聞に4コマ漫画を連載し周りから褒められている藤野。ある時に隣クラスの不登校児・京本の画力に圧倒され、本気で絵の勉強をはじめる。将来コンビで漫画を描くことになる2人だったが…。

【感想】良く知られた衝撃の結末は、おいといても。冒頭からずっと、全編通して「手描きで動くアニメーション」のヨロコビに溢れている!その昔、金田伊功のアクションを見ていた時の楽しさを、少し思いだした。

手で描き続けることの大切さが根底にある原作をアニメ化するにあたって、アニメーターでもある押山監督は、従来の「多数のスタッフでキャラクターを統一するための線の均一化」をやめ、原画の描線をダイレクトに映像にしているそう(パンフより)。だから直しは紙の原画を直しているそうだ(ジブリ『熱風』監督インタビューより)原画マンによってテイストが変わっても仕方ない。それだけ手描きを大切にしたいと。しかも監督は自ら半数近くカットで原画を担当しているというのだから…!FIRST SLAMDUNKと井上先生のあの入れ込みようを思い出すエピソード。

カット毎に結構驚きの工夫(というか手描きならではの衝撃)があって、まぁこれで2時間やるのはキツいだろーな、と思う。そこまで延ばす必要も全然無いし。しかし何故か統一入場金額1700円がナイト上映にも適用されてて、これはちょっと?だった。パンフレットも、上記のさまざまが書かれている藤本タツキ×監督対談は読み応えあるが、全体として1500円の手応えは…なかった。

haruka nakamuraなのにハリウッド映画なみに押しの強い劇伴。原作ファンには賛否分かれるかも。

原作を補填する数々のナチュラルなエピソードと、この劇伴効果で、漫画よりもずっとエモい仕上がりになっている。自分にとって原作はちょっとトラウマチックで、あまり読み返せない作品なのだけど。映画の印象は違う。原作よりかなり希望に溢れた印象だ。

とにかく作画がすごいです。この画を観るだけでも映画館に行く価値アリアリ!

ABOUT

1999年のWEB日記時代から始めた個人サイト。ブログ移行にあたって過去記事も抜粋してアーカイブしています。
(HTMLサイト→SereneBachブログ→WORDPRESSブログと転移)

好きな漫画(2014年版)はこの記事の最後に。

最近は(インスタ)でアップしているTV・映画感想の投稿を、半年に1回くらい一気に転載しています。