『ツバメ号とアマゾン号』シリーズ

『ツバメ号とアマゾン号』は、私にとっては、命を終えるその日まで心の底で輝きつづける永遠の夏の光だ。

上橋奈穂子(作家/文化人類学教授)

岩波少年文庫で復刊された『ツバメ号とアマゾン号』シリーズ、通称「ランサム・サーガ」を全巻揃えて読み始めています。元の分厚い単行本では全12巻だったけど、文庫だとその倍の24冊。

記憶があまり定かじゃないのだけど、小学校の2〜4年生くらいのどこかで肺炎にかかり、2〜3週間学校を休まなきゃいけなくなって、その時に母が図書館から借りてきたのがこのシリーズでした。当時の自分はもう夢中になって読み続けて、最後の12巻を読むときは、もう終わってしまうのが本当に悲しくてさめざめと泣いていたことを今でもハッキリと覚えています。

これが、今読んでも驚くほどに面白い。というか普通に夢中になってしまっている、なう。
舞台は今から100年近く前のイングランド湖沼地方。夏休みを過ごしに来たウォーカー兄弟と現地のナンシー姉妹の交流から物語は始まる。子供達(おそらく殆ど小学生か、一番上で中学生くらい)は、自分たちだけで無人島にキャンプを張り、食事を毎日作り、気の向くままに冒険を続ける。移動は小さな帆船ツバメ号とアマゾン号。というと、なんだか子供の理想の世界のあまーいお話にも聞こえそうだけど、違う。彼ら彼女たちの操船、キャンプ設営、食事の作り方、火のおこし方に至るまで丁寧に描写され、そのスキルの高さがイヤでも分かるようになっている。そのあたりの描写は、徹底してリアル。そして特筆すべきは彼らの「マナー」と気持ちのまっすぐさ、真面目さ。通底する彼ら子供達の気持ち良さが、ランサム・サーガの大きな魅力ではないかと思う。

その基本があった上での、「理想の休暇」が物語り中では延々と続く。読む自分も一緒になってイングランドを冒険している。この気持ち。何と言ったらいいんだろう。初読時に12巻を迎え泣いた気持ちが、今でも良く分かる。だけど一度最後が分かってしまえばもう大丈夫。また一巻から読み直せばいいんだから!永遠に繰り返せばいいんだから!←オトナのスキル

古さがないといえば嘘になる。だけど古さが一つもマイナスに感じられない物語。理想の時代の、理想の夏休み。本当に大好きな物語。

是非こちらの感想文もどうぞ。ちなみに作者のアーサー・ランサムのファンクラブが世界で最初にできたのが日本だそうですよ。(→アーサー・ランサム・クラブ
愛しの本たち:ツバメ号シリーズ/アーサー・ランサム

週末はこの本を読みながら、娘達に遊びをせがまれて、読書が中断されて、でもそれはそれでどちらも本当に嬉しくて、こういう状態がたとえようもなく幸せだなぁと思います。

 

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1999年のWEB日記時代から始めた個人サイト。ブログ移行にあたって過去記事も抜粋してアーカイブしています。
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