『ヤング≒アダルト』

DVD、字幕版。ネタバレあり感想。

(ちなみに最初料理をしながら吹き替えで見ようと思ったらモーレツに安っぽくて耐えられずやめました)

youngadult

高校時代イケイケだった37才女性のメイビス。都会に出て売れない独身ライターとして好き放題に(だらしなく)暮らしながらも、本当の幸せを感じることのできない毎日。そんな時、高校時代の元カレ・バディから出産のお知らせが届く。奥さんからカレを奪ってやろうと意気込んで田舎に帰ってくるメイビス。元カレは本当はちっとも幸せじゃない、だから自分に招待が来たんだ、お互いあの最高にイケてた頃が忘れられないんだと勝手に思い込み、色仕掛けに走るメイビス。そこで当時いじめられていたイケてないオタク、マットと出会い…。

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主人公は一言で言ってビッチです。性格が悪い。というかちょっとオカしい。最初から最後まで全然共感できない。とは言え誰の心にもある嫉み、嫉妬心を分かりやすく代弁しているだけでもあるんだけど、見ている俺は自分のそうゆうことあまり認めたくない(というか映画でわざわざそんなとこ観たくない)。

だから何をモチベーションに見続けるかと言えば、さんざんビッチぶりをみせられたあげくに、いらいらさせられた後に、メイビスが
1)田舎の友人達にこてんぱんに罵られる
2)言われたことで彼女の中に何か変化「気づき」「反省」が起こる
こういったカタルシスだけを楽しみに見る訳です。スッキリしたい訳。

だけど…

爽快なカタルシスもなく、メイビスには表だった変化も進歩も気付きも、もちろん改心もないまま、映画は唐突に終わります。最後までメイビスは結局変わらない。エンドクレジットが流れた瞬間本当に「ええーー!!」って叫んじゃったもん。

最後までのディテール、演出、脚本、良かったと思います。最後にマットと寝るのとか、その後のこととかちょっとどうなの?と思うけど、とても丁寧に作られている映画でした。そして徹底的にリアル。汚れたiBook、ヌーブラ、ジャンクな食べ物、ペットの扱いのぞんざいさ…あと元カレと話している時のメイビスの笑い方とかもう最高。鳥肌立つわ。飽きずに最後まで観れました。そして最後の方になってくると、ビッチな彼女の唯一の武器である筈の色仕掛けがあまりにも誰にも全く通用しないのがちょっと可哀想になってくる位(あくまで「ちょっと」だけど)…。

だけどなぁ…この終わり方だけで自分内ではすべてチャラになった気分。

★★1/2☆☆

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以上、の筈だったんだけど、その後宇多丸さんやWEB上の評を読んで、新たな別の感想を持ちました。いや、改めて気づいたこと、なのかな。

自分がすっかり向こう側の人間になってしまい、想像力がどんどん欠けていってしまってること。
言ってみれば、自分はメイビスの裏返しでもあるんだなぁって、こと。

ビッチなんて書いたメイビスですが、同世代女性の共感度、かなり高いですね。それ読んでて思い出したんです。ああ、そうだった。自分も子供できる前ってそうゆう気持ちがあった。だから例えば、子供の写真だけの手紙とか絶対出すまいって心に決めていた。出来てみるとあり得ないくらい本当に愛おしい自分の子供だけど、多くの他人にとってはまったく伝わらない、伝えようもない気持ちだってことが、子供が出来たばかりの時には良く理解できていたし、ずっと忘れずにいようと思っていた。(あくまで子供だけを例にとって書いていますが…)

なのに、いつの間にか忘れかけていた自分に、この映画で気づきました。

「こちら」の言い分を語らせてもらえば。
自分みたいな環境で恋愛に価値なんて与えられない(元々そういう人間だったせいもあるけど)。必要なのは、何十年も一緒に暮らしていける人間。女性的にすごく魅力があってセクシーだったとして、だけど普段の生活で一緒にいれる繊細さや気遣いや相性の良さがなかったら、それが何?24時間×365日×60年のうち、恋愛・セックスの時間は何割だと思う?まぁ、その両方を満たす相手を選ぶというのが、普通の目標なのかも知れないけれど…そんな目標、暮らしていくうちに変わっちゃうんじゃないかな…

メイビスが元カレの送る家族優先の暮らしに対して「ヌルくて退屈な生活」と決めつけることが勘違いであるように、(妻子のいる)こちらから見てメイビスの暮らしが心の拠り所なく寂しい生活、と決めつける意味もない。人のシヤワセはそれぞれです。比較するもんではない。

ここまで思って、あのラストシーンが少し腑に落ちました。あ、そうか。こう終わるしかないんだな、って。あの夫婦達(俺)の無意識な無神経さは、自分自身では気づかない。メイビスも自分の無神経さには気づかない。お互い、裏返しでしかない。見る人によって全く見方の変わる映画。

関係ないけど、『桐島、映画やめるってよ』の中で映画部の彼が「おまった〜」って言うのを、イケてる女子が真似して笑いモノにするシーンがあって、そこで笑ってる女子高生がいるってラジオで聴いたけど。まぁふつうそれ聞いたら信じられないって思うよね。(つかなんでそんな女子が『桐島…』観に来るんだか意味わかんない)

でもそれとおんなじで、この映画を観ている映画館では、人によってまったく真逆の反応が見られるんじゃないかなと、そう思いました。リトマス試験紙ってのは確かに言い得ているのかも。

 
 

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