マイケル・ムーアの『華氏9/11』を観た。町田氏の日記や他のブログなんかで読んで、その内容は事前に殆ど知っていたのだけど、それにも関わらず「コレは観て良かったぁ〜」と素直に思えました。まずフツーに、エンターテインメントとしてオモロい。
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『ボウリング・フォー・コロンバイン』とはレベルが違うカンジ(作り方も違うけど)。アメリカがイラクに進軍した時の、あの「何じゃそりゃ〜!!」気分をそのままバサっと端的に表現してくれて、溜飲が下がります。という事はつまり、あの時のムカつきも(巧みな編集によりさらに倍増されて)蘇ってくるワケで、この映画がアメリカで大規模公開されたという事実に改めて驚愕せずにはいられないでしょう。すっげぇなホント。全部が嘘だと思ってるのかしら。
知りあい皆に言っておきたい。とりあえず今観ておけ。1ミリも世界情勢や政治に興味の無いヒトはしょーがない。だけど自分の身の回りには、ソコまでのヒトっていない筈だよね。
『ボウリング・…』はちょっと勘違いしちゃうと「ドキュメンタリー」って捉えかねないような作りだったけど、今作は違います。「デブのマイケル」がアメリカ人に対して訴えかけたい事を、一番ストレートに伝わるよう、色んな材料を恣意的に編集した、1本のエンターテインメント番組です。
この映画が針小棒大に誇張してる部分も、大袈裟に言ってる部分も、テケトーにチャカしてる部分も、フツーに世の中のメディアに接してるヒトなら殆ど分かった上で観れると思う。ちうかワザとそういう作りにしてるんじゃないかと思っちゃう。で、その奥にある大事なコト。ブッシュが何をやらかして、何をやっていないかがちゃんと整理されて思い出されるという、この映画の役割。ちゃんと伝わりましたよ。少なくともオレには。
僕が映画制作をスタートする段階で最初に考えることは、自分自身が金曜の夜に観に行きたくなるようなものを作りたいということ。家のソファーにごろんと横になってビールでも飲みながらテレビを見るのではなく、恋人同士や夫婦でポップコーンを食べながら映画館の暗闇でみんなと楽しい時間を過ごす。笑ったり泣いたり考えたりしてね。映画館を出た後、そしてその何時間後、何日後、何週間後もその映画の話をしてくれるような楽しい映画を作りたいんだ。この映画についても、9.11以降のアメリカ、いったいどのようにして今の状況に辿り着いたのかということを語ってみせたかった。世界を違った視点から眺めることで人々を動かす、僕が自分なりの方法で小さな貢献ができるとしたら、それは自分の魂に良いことをしたっていうことだよね。それをやり遂げたと思いたいね。
映画パンフレット/パルムドール受賞後のマイケル・ムーア記者会見より
あとね。監督得意のアポなし突撃インタビューは、今作では最後のほんの数分しかないのだけど、TVやなんかで紹介される時はこのシーンばっかり取り上げられてた気がするんだよなー。イカにも「マイケル・ムーアがまたやっちゃいました〜」的なカンジでね。事前情報をざかざか入れてたオレでさえ『ボウリング・…』と同じ作りだと思ってた位だし。今回はちょっとちゃいますよ。
最後に。町田氏の初見時の感想へリンク。全部ネタバレだけど、良くも悪くも「観る前に必読」だとオレは思いマス。