小山宙哉『宇宙兄弟(原作漫画)』の一番の魅力は、劇中に出てくる問題解決策の見事さだ、と以前書いた。「漫画の中」ということを差し置いて、普通に朝刊に大きな記事で出てきそうな凄いアイデアがどんどん出てくる。
今月、TBSラジオ『荻上チキのSession-22』内のNEC WISDOM Squareというコーナーに、『バガボンド』や『宇宙兄弟』の担当編集者:佐渡島庸平氏がゲストで出ていて、宇宙兄弟のとあるエピソードを語っていた。
ローバーのアイデアが漫画に掲載された後、JAXAから問合せが来たそうだ。
「これどうやって取材したんですか?JAXAの一部だけが知っている、今考えているアイデアですよ?」
別に取材でスッパ抜いた訳ではなく、純粋に作者・小山宙哉氏が考えたアイデアだそうだ。小山さんは文系だけど技術者の気持ちになることも上手で、佐渡島氏曰く「ぐーーーーっと」主人公の気持ち、ムッタの気持ちになって、その場で彼ならどうするかをひたすらに考えて考え抜くと、ああゆうすごいアイデアが出てくるんだそうな。
他にも小山氏の新人(当時)とは思えない大物ぶりなどが語られている。(佐渡島氏曰く)まだヒット作を1つも出せていないのに、まるで井上雄彦氏ばりのこだわりと風格だったんだって。なんか想像してた小山氏像と全然違ってて面白い。
こんなエピソードも。
佐渡島氏は「よりメジャーな漫画になるにはフリーハンドではなく定規を使わなくちゃダメ」という助言を小山氏にする。小山氏はすぐに採り入れて定規を使い始めた。だけどそのままじゃなくて、定規にカッターで微細な傷を彫って、気に入るようなラインを自分で探っていた。
「普通はそのまま言う通りに定規を使い始めるか、断固として断るかの、どちらかだと思う。」と佐渡島氏。小山氏はそのどちらも採らずに(いやどちらも採って?)、自分の納得いくやり方を見つけた。そういうところが大物だ。というような意味でラジオで紹介されてた。
だけどこれって、
何だかムッタのエピソードを聞いてるみたいだなぁって思った。