雑誌『mürren』を発行されている方がエッセイ集を出すと聞いて、すごく気になっていたのだけど忘れちゃってて。こないだ佐久間裕美子さんのトークで北書店に行った時に座った時、ちょうど目の前にあったのです。これは!と即買い。
これは「生理的に相性の良い文章」とでも言うのかな。山登りのエッセイ、でも自分は山登りはしませんが、すべてがすんなりと入ってきて、まるで自分が立山に登っているかのような臨場感。山に登る人の気持ちがとても良く分かった気がします。印象深いのは、たとえばこんな一文。
(山にでも行かないか、と誘うことについて)お互い山には行っていても、ふだんから山行をともにしていない相手に、たまには行こうかというときは、それは特別な意味をもつ。
下界ではもうどうしようもないこと、行き詰まっていること、そこから抜け出せないことも、山に行って歩くだけで変わることもあるし、山に行けば話す気になることもあるだろう。もし何も話さなかったとしても、それはそれで、一緒に山に行って歩いたということだけでいい。ただ一緒に「山に行く」という行為が、すでにもう話をしているのと同じ意味をもっている。そのことは、山に行く者同士言わずとも分かっていることである。山仲間というのはそういうものである。
(こないだ『クライマーズ・ハイ』観直して再ブーム中なこともあるしね…)
山登りは…いつか家族と行動をあまり共にしなくなった時にでも始めるのかもな。相方はまずやりそうにないし。
内容がとっても良いのは勿論、装幀も組みも章末に入るイラストも、すべてが心地良い。今年ベストの1冊かも知れない。ちなみにタイトルは『mürren』誌のキャッチコピー。
若菜晃子『街と山のあいだ(アノニマ・スタジオ)』