『人生フルーツ』


シネ・ウィンドで。

先週末に神保町のバルで、浴びるほどワインを吞みつつ「多分DVD化されないから、絶対見逃さない方が良いって!」と強くプッシュしてくれたのが、このポスターの写真を撮ったT女史。彼女はいくつかの書籍で津端夫妻と時間を共にしていた。その時は『PALM』のオフ会で大盛り上がりだったので、それ以上詳しくは聴かなかったのだけど。

観てみて、その理由が分かった。ずっと続くことなんて何処にもない。ここには、もう戻らない時間が凝縮されていた。今観た方がいい。
近著のタイトルでもある「ときをためる」暮らし。「時間を、降り積もるように少しずつ、ゆっくり、ためていくことはできないのかーー(パンフレットより)」それをまさに実践している暮らしがここにある。だけど本当のことは結局映画を観ているだけの自分には「見えて」いない。一つ一つ、自分で手をかけ、つくり、積み重ねてきた人にしか分からないのだろうと思う。

上映は17(金)まで。パンフレットも読み応えあってお薦め。藤森照信、重松清、鈴木敏夫なども寄稿している。TBSラジオクラウドの『東京ポッド許可局』でもこの映画を採り上げ絶賛している回があります。クライマックスは勿論なんだけど、孫の要望に応えて修一氏が作ったシルバニアファミリーのドールハウス、その素晴らしさを観ただけで泣けてしまう。あと全体の構成ね。こうきたか!と唸らされた。

検索してみると東海テレビ製作のドキュメンタリー映画(当作品などは最初テレビ番組として製作、その後劇場公開する)は、以前のものも含めて基本的にパッケージ化はされないようだ。「何度でもみんなで観て欲しいからDVD化はしない」と、あるページにあった。以前『ヤクザと憲法』を観逃したのがめちゃめちゃ悔やまれるなぁ…。

『ハドソン川の奇跡』


シネコンで2D字幕。

一言でいって最高だ。
そしてトムの中のトムだ。最高トム。

2009年に実際に起きた、NYハドソン川へのUSエアウェイズ航空機不時着水事故をモデルにした映画。

「不時着水」というのは地面の不時着に比べ、極端に難しいらしい。なぜなら左右の翼のどちらかが少しでも先に着水してしまうと、そこを支点に高速の状態で機体が回転して激突してしまうからだ(町山智浩さんのたまむすび解説より)。よって完全に水平な状態での進入が必須となる。実際に劇中の航空管制官の一人は、機長がハドソン川を選んだ時点で完全に全員死亡だと絶望していた位(これもホントの話)。

生還の可能性が高い近くの空港に向かわず、それだけ難しいハドソン川着水を選んだ機長の判断は、果たして正しかったのか?ということが事故後に検証される。仮に間違っていたら、今はアメリカ一の英雄の機長も、一気に年金無し退職の道に追い込まれる。

このNTSB(国家運輸安全委員会)の検証を巡る一種法廷劇的な流れで話が進んでいく。果たして判断は正しかったのか。容赦ない追求と、コンピュータで発覚した機長に不利なデータ。そうして、為に溜め込んだあとのクライマックス。大・大迫力の回想シーンを含め最高のカタルシス。思わず膝や机を叩いてしまう程に気持ちいい。気持ち良さを求めている人は絶対観れ!!

とはいえイーストウッドですよ。全体にクールで淡々。決して派手じゃない。必要なことだけが、気持ち良く最小限に進められていく。為すべきことを的確に為すひとびと。これがいい。そして鑑賞後に実際の事件のことを調べてみると…結構な細部に至るまで映画の通りであったことを知るのでした。嗚呼。

余談だけど実際の機長も副機長もこの俳優二人に結構似てる。そして機長は「奇跡」「英雄」と呼ばれるのをいつも嫌っていたそうだ。何故なら奇跡は滅多に起こらないことだから。そうじゃなく、為すべき事を皆が為した結果だったということ。ちなみに映画の原題は機長の名前『Sully』である。

三砂ちづる『おせっかい宣言』内澤旬子『漂うままに島に着き』


三砂ちづる『女たちが、なにか、おかしい おせっかい宣言』読了。
ミシマガジンの連載でいつも楽しみに読んでいるので(WEBマガジンは馴染めず紙版オンリー)改めて再読、ということになるのだけど、書籍化に際して付けられたサブタイトル「女たちが、なにか、おかしい」はちょっとなぁ、初めて見た時ええ〜と思いました。このタイトルに惑わされず読んで欲しいというか。

特に自分は、彼女の海外体験の話が大好き。各種NPOなどの活動で滞在する諸外国(第三世界ばかり)で、すごく活き活きと描写される現地の人達や他国からやってくるスタッフ達の様子。国のありかた。幸せのありかた。彼女の目線が好き。中でもキューバにめっちゃ行きたくなる。機会があればぜひ!と思うようになった。

逆に作者が今どき主婦達の事情を分析するとき、その中身にはちょっと馴染まないところがあって。身近にいる妻やその回りを見ていてもちょっとそれ違うんじゃない、ということが色々ある。このあたりたしかに「おせっかい宣言」ではあるのだけど「おかしい」かどうかは…なぁ。でも全体的にホントお奨め本です。

写真は挟まれていたミシマ社の書籍情報なのだけど、これがいつも「読みたくなる」丁寧な構成なの。あらゆる出版社の書籍情報しおりでミシマ社が一番好きだし、実際効果が上がってると思うなぁ。読者目線が感じられて好き。

ところで自分はミシマ社サポーターに入っているので紙版が読めるけど、元々のWEBマガジンには未だに全然馴染めない。スマホ、タブレット、PC、どのデバイスであっても、どこかのWEBマガジンを定期的に見るという習慣が身につかない。どの出版社も素晴らしい内容のWEBマガジンを維持していて、ガンガン読みたいとは思っているのに…。定期的に紹介メールが来るcakesくらいかなぁ。今自分的に「これならイケる」WEBマガメソッドというのは。定期的に紹介の来るcakesをたまに見る位。この「WEBマガジン読まない問題」をぜひ世間の皆さんと語ってみたい。いやそうでもない。


内澤旬子『漂うままに島に着き』読了。
ミシマ社の雑誌『ちゃぶ台』のコラムでも少し書かれていた、作者本人による東京→小豆島への移住記。引越の過程、現地での家探しなどかなり細部まで、さらさらと万遍なく書かれているので使いでが良く満足度も高い一冊。

独身女性の移住問題について、50代の彼女ならではの実感と、その世代から見た今どき女性たちへの目線が面白かった。同意するところも、そうでないところも。最後は結婚問題、結局そうなるのかなぁ。あとがきで書かれた、「その後」の顛末が切ない。作者は新潟ではもうお馴染みになったNさんの元奧様。

東京ではまったくやらなかった「差し入れ」が、島では全然変わってくるという話の一節。
「(特に出版の世界で、これはもう一つの文化か思うほど盛んな、展覧会などで沢山いただく「お持たせ」について)ありがたいし、本当に美味しいものばかり。どこそこのアレ。ここまで美味しければ、材料費も高かろうし、手間もかかっているのだろう。高額であることも間違いない。嬉しいのだけれど…。美味しくてお洒落で珍しい「お持たせ」をどれだけ知っているかが、働く女性としての評価も高めるようにも思え、申し訳ないのだけれど、どうにもこうにも、気が重くなる。そこまでしなくちゃダメなのかしら」
おみやげ苦手クラスタとしても「分かる〜(新潟弁)」

岩本ナオ『町でうわさの…』『スケルトン イン ザ クローゼット』田中圭一『うつヌケ』

岩本ナオ『町でうわさの天狗の子』全12巻読了。
半分以上はダラダラふわふわな高校生の恋愛物語。それが後半になって一気にファンタジーアクション大作へ。しかもクライマックスにあのネタまであるとは。恐れ入りました。先に読み終えてた長女に「11、12巻が凄すぎる」と聞いていたんだけど、本当に泣ける展開だった。大満足のラスト。
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『スティーブ・ジョブズ(2015年公開の方)』感想


映画『スティーブ・ジョブズ』をAmazonプライムでやっと観れた。同じような名前の映画は数あれど、これは2015年公開・ダニー・ボイル監督、マイケル・ファスベンダー主演(ぜんぜん似てない)の作品。1984年のMac、1988年のNeXT、1998年のiMac、3回のジョブズのプレゼン。その直前何十分かの舞台裏「だけ」を描いたすごく特殊な作品。

すごく面白く観れた。本当に舞台裏「だけ」なのには驚くけども、ぜんぜん飽きさせない。ジョブズの父親としてのダメっぷりがこれでもかと存分に繰り出される。やっぱりどうしたって好きにはなれないんだよなー、この人。(ヤマザキマリさんが伝記をコミック化した作品は、読んでもまったく好きになれないどころか興味がぜんぜん持てず、1巻で挫折した思い出も。)

自分は1996年頃のLCが初めての出会いで、それ以来はずっとMacユーザーなんだけど、「AppleやMacファン的に嬉しいデザインやコンピューターのおはなし」はあまり出てこないので期待しない方が良いです。ジョン・スカリーやウォズとの内輪揉めとかそうゆうのは存分に楽しめるw

分かりやすく言えばひたすらに口喧嘩、言い争いのドラマ。ジョブズの元カノが娘を連れて何故かいつもプレゼンの直前に訪れます。そして毎回毎回プレゼンが始まるまで大揉めに揉める。これどこまでホントなんだろう。大切な大切なプレゼンの20分前とかに次から次へと湧き出てくるトラブルメーカーな人達。口喧嘩好きな人たち。最後にはもう笑っちゃうしかないドン詰まりな舞台裏。

そう言えばNeXTとかも当時「これ絶対失敗だろ」と誰もが思っていて、まさにその通りに大失敗したのとかうっすらした記憶がいろいろ蘇る。さすがに最後のiMacは普通に覚えていて、あの時感じた自分の衝撃とシンクロして実に良かったです。ただ肝心のプレゼン本番は一切出てきませんよ。エンディングが「あの」フォントになっているのもにやり。

ジョブズにまったく似ていないマイケル・ファスベンダーも、冒頭すぐに気にならなくなるのはすごい。ケイト・ウィンスレット演じる仕事妻?があまりに都合良いオンナでこれどうなんと。でもジョブズのようなカリスマの脇には、常にこういう全受けな付き人がいたのかも知れないな。

『駆込み女と駆出し男』再見

原田眞人『駆込み女と駆出し男』をhuluで再見。
一度目に見た時よりも更に、本当に好きになってしまった。なんて格好いい女たち!男!

セリフがシン・ゴジラばりに早口で当時の言葉?も盛り込まれていて聞き取れない所もたくさんあったり、そもそも原田監督作品なので状況説明は一切ないしで、そういう意味では全然視聴者に優しくない映画の筈なのに…なぜか。すべてが優しい。出てくる人たちが皆愛おしくなる。

満島ひかりの独特な風体とセリフ回し(妻曰く「演技上手いのか下手なのか分からない」)が、この映画では120%のリアリティを生み出している。はまり役過ぎ。お歯黒がすごく魅力的だったり。

鉄練りのじょご(戸田恵梨香)と女侍のゆう(内山理名)のバディ感が最高にアガる。戸田恵梨香?内山理名?なんて名前だけ聞いたら良く知らないくせに鼻くそほじってふ〜ん?てなっちゃいそうだけど、どちらもとんでもなく格好いい!再見で新たに好きになったのが駆け込み寺のボス、法秀尼(陽月華)。突っ込み漫才みたいなやり取りも楽しくて、色気もあって…

樹木希林もめちゃくちゃ格好いい。駆け込み寺のアシストを担う柏屋(宿)には樹木希林をトップとする気持ち良いやつらが集まっていて、ココでの日常シーンが一々良い。とか書いているとキリがない。写真は柏屋の夜、昔虐待されたせいでトラウマがよみがえったお種(真ん中)をなぐさめる、じょごと柏屋のお勝(キムラ緑子)。大好きなシーン。

で、やっぱり大泉洋ね。ベスト大泉洋の一つになりました。見せ所も沢山。あんた本当にすごい。
(余談だけどチンピラの下っ端が洋ちゃんの口八丁手八丁で追い返される時に「生まれ変わったらアンタの手下になる!」と捨てセリフを吐いていくのだけど、これが音尾琢真君(TEAM NACS)。笑うわ。)

なんかもうBD欲しくなってきちゃったなぁ。う〜ん。

2017年1月の雪

1月11日頃までは「まるで…春?」と思うような暖かい日が続いた。当然雪の気配などなし。
それが14(土)の週末から数日で一気にドカ雪。明けた今日は会社の雪かきで朝1時間ちょっとかかった。でもこの土日が平日だったらと思うと全然マシだったと思う。仕事じゃない日の大雪は最高だ。子供とも遊べたし、家の中でぬっくぬくの冬も満喫した。

これだけは覚えておきたい

こゆこと書いておける場所がないからね。家でつけてる日記もあれど、そっちは家族皆で書いているものだから…。

2016年後半は、近年珍しく自分で主催するイベントが殆どなかった。
それでしみじみと思ったのは…

「自分(家族)のことだけやっているのは、なんてラクチンで楽しいんだ!」

ということ。毎週末は殆ど家族と一緒で、大してお出かけもせず家のことをして過ごした。小4長女はやはりぶつかることも多いのだけど、とことん話して(長い時は2〜3時間てのもあった…)最後はちゃんとわかり合えたと思う。だからこそ、その後一緒に何かするのも一層楽しい。5歳の次女は中身は3歳くらいの感じで、これはもう何をしていてもすべて笑えるし、楽しいし、カワイ過ぎる。常に前向きで明るく笑い声が絶えない。この2人の10歳、5歳という歳は家族で共通の話題を(例えば映画やテレビやバレエやタレントやディズニーやゲームや色んなこと)してもちゃんと皆が面白がれて会話ができる年頃であって、それが本当に嬉しい。

毎週末が、どれだけ楽しかったことか。
こんな時間がいつまで続くか分からないから、記録に残しておきます。

くらもちふさこ『花に染む』完結

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くらもちふさこ『花に染む(8)』10年の時を経て完結。高校の弓道部をメインにしたこのタイトルだけじゃなく『駅から5分』や短編も含めたさまざまなストーリーが同じ街を舞台に展開していくという、大掛かりな設定。

10年以上も経つと正直覚えていられないので後で全部読み直さないと全部が頭の中で繋がらない。しかしくらもちふさこさんも、吉田秋生さんも、あの歳になって中高生の心の機微をこれだけ繊細に書けるのは呆れる程だし、これが少女漫画家を追っかける醍醐味だとも思う。

80年代に読んでた別マでくらもちさんは正直好きではなかった。紡木たくやいくえみ綾の全盛期で、絵柄のイケてなさもあったと思うけど、何よりその描かれていることの「普遍性」が、自分が別マに求めていたものと違っていたんだろうなぁ。その後の『天然コケッコー』でまずガツンとやられ、それ以降のくらもち作品はすべて大ファンだ。『夜叉』で一回離れてしまった吉田秋生さんに、『ラヴァーズ・キス』や今ナンバーワンとも言える大傑作『海街diary』で再び虜になってしまった経緯と似ている。くらもちさん、次回作にも大期待です。

『BOOK5』最終号

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大好きだった雑誌『BOOK5』の(定期刊行)最終号(定期的に刊行されていたのでしたか!)。
正直アンケート号よりも普段の特集が好きなので、これまで印象に残った特集を記録のためにメモ。順不同。リンクは公式サイトの紹介ページへ。

しばったりつつんだり(本縛り)
はたらくくるま(ハイエース他バンと本屋業界)
本屋道具図鑑(手作り什器)
All That’s 学参(学参の編集、販売、『進学レーダー』の話、子供の進学の実際等)
女の30代
医学書の面白さ
トリビュート ディストリビューター(取次と卸)

特集もそうだけど雑誌の面白さはレギュラーコラムにありで、こちらも粒ぞろい。一つも飛ばさずに読む雑誌なんて(そもそもボリュームの少なさはあれど)他にそうそう無かった。

どんなに好きな雑誌でも、なくなった後はやはり忘れられるばかり。よほどのきっかけがないと思い出せない。そういう時のためにハッシュタグやブログのカテゴリが少しでも有効なんかなって思った訳です。

『逃げるは恥だが役に立つ』終了!

最高楽しませてもらいました!今年の民放ドラマは『重版出来!』とこの『逃げるは恥だが役に立つ』が最高だった。どっちも野木亜紀子脚本!マンガのドラマ化アレンジ演出では今敵なし断トツで素晴らしい。

●ガッキーの演技に脱帽。あれだけ馬鹿らしい設定でシラけさせないようにするのは、凡百のアイドルタレントじゃ到底無理。
●星野源の演技に以下同。
●脚本が素晴らしい。おちゃらけたルックの裏で、社会の「こうあれ」プレッシャーと地味に闘い続ける人々を描く。細かいセリフ一つ一つとってもそのあたりが泣かせるんだよなぁ。
●結婚そのものが抱える根本的な問題に対して鋭く切り込んでいる。誰もが一度は思うこと(主婦の家事労働と一般の労働の換算など)であり、考えさせられることを、一見くらだなくあり得ない「契約結婚」というトンデモ設定が、いつの間にか普遍的な問題をえぐり出すカギになっていて感心。
●源とガッキーが毎回死ぬほどカワイイ。
●恋ダンス(ED)が見事に踊りたくなる。

とは言え、あまりに少女マンガマンガしていてとても万人ウケするとは思えないドラマなんだけど…恐らく今年世間で一番話題になったドラマに大化けした。視聴率は常に右肩上がりで最終回まで下がることがなかった、らしい。

視聴率は、初回から10.2%→ 12.1%→ 12.5%→ 13.0%→ 13.3%→ 13.6%→ 13.6%→ 16.1→ 16.9%→ 17.1%と好調に推移。これまで一度も視聴率を落としたことはなく、劇中のパロディシーンやエンディングではキャストがキュートに踊る「恋ダンス」が話題を呼んだ。

オリコンスタイル12/21より

家では地デジが見れないので、『重版出来!』も『逃げ恥』も会社のテレビで見ていた(あと見逃し1週間は「TVer」というサイトで観れた)。こんなに毎週楽しみにしたドラマは久しぶり。特に『重版出来!』は自分内歴代ベストの『王様のレストラン』『JIN』に迫るイキオイだった。後でアップするけど2016年は映画もドラマも大豊作!幸せな1年でした。
 

岩本ナオ『金の国 水の国』『町でうわさの天狗の子』

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先日の映画部忘年会で一推しされてた一冊。すげえ。今年出会ったコミックではNo.1かも。見事なエンターテインメントです。戦争や統治とか難しいテーマについて巧みに織り込まれたファンタジーなのに、もう最後逃げ恥かよ!て位に甘いシーンもあって。この人の過去作全部買おうと決心した。以前から『町でうわさの天狗の子』を色んな人に勧められていたのに!今まで忘れていたことをホントに後悔したよ!年末休みの楽しみが増えたな〜。
(後日「このマンガがすごい!」オンナ編第一位を獲得してました)

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後日、岩本ナオ『町でうわさの天狗の子』全12巻読了。
半分以上はダラダラふわふわな高校生の恋愛物語。それが後半になって一気にファンタジーアクション大作へ。しかもクライマックスにあのネタまであるとは。恐れ入りました。先に読み終えてた長女に「11、12巻が凄すぎる」と聞いていたんだけど、本当に泣ける展開だった。大満足のラスト。

マンガの善し悪しに画の「上手さ」は関係ないという良いテキストにもなると思う。この作家さんはアクションの描き方も決して上手ではない。だけど、見せゴマのレイアウトと外連味溢れるネーム運びがとても「上手い」。クライマックスの大感動はこうして練り込まれた構成で生まれてくるのだと思う。

次は『雨無村役場産業課兼観光係』を読み始めた。地方の公務員が主役というこれも面白い設定だけど、ちょっと食い足りなかったなぁ。

『柳政利さんのいた新潟』

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柳政利さんは2014年末に亡くなられたデザイナー。70年代から今に至るまで、新潟の草の根的な演劇・映画・音楽シーンを影から見守りデザインでサポートしてきた方。という知識だけで自分は面識がない。
その存在を意識するようになったのは、亡くなってからその界隈で困った困った…という声をあちこちから聞くようになったからだ。ほんの一部だけど彼の仕事を引き継いだケースもある。

噂でしか知らなかった柳さんの生き様を知ることができた貴重な冊子。新潟の「界隈」の方々が「勢揃い」といっても良い位、錚々たるメンバーで柳さんの在りし日を語る対談が半分、あと半分は柳さんが反画工房の名前で発行されていたフリーペーパー「サブ」の再録。

彼の無骨だけど必ずその場に「居て」時には写真を撮り見守っていた様子が色んな方の口から語られている。このような面識もない自分が柳さんの足跡を見ることができること自体すごいことで、書き起こしもフリーペーパーの収集も、大変なお手間の中実現されたスタッフの皆さんには本当に頭が下がるし感謝したい。お疲れさまでした。ありがとうございます。新潟すごい。

※これは一般売りしている書籍ではなく、元々制作費を寄付していただいた方に配布し、残部が出たので、その分だけ(寄付していただいた方に)譲る、というシステムのようです。私は新潟絵屋で入手しました。

ミシマ社『ちゃぶ台 vol.2』

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ミシマ社初めての雑誌『ちゃぶ台』の2号。今まさに読みたい「農」の事情が満載です。「最初から最後まで読みたくなる雑誌を」との目標通りにすべて順番通り読んでしまった。概して自分のような問題意識を持っている人間には「うんうんそうそう!」と賛同できる心地良い意見が並ぶんだけど、その反面「雑」誌っぽさには欠けるとも思った。少し違う意見を差し込むと、もともとの本題が更に生きてきたり記憶に残るのかも?どうなんだろう。

MARUU『うさぎのまんが』

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獸木野生『パーム』オフ会でお会いしたことのある、MARUUさんのコミック新刊『うさぎのまんが』をやっと入手。半分はタイとインドネシアへの旅エッセイ、あと半分が猫エッセイとその他。私のあたり(このニュアンス)のヒトには皆オススメしたい。普段思っていて他にはあまり話せないような気持ちも沢山詰まっていて、同意を声高に叫ぶのではなくゆっくりと頷きながらお茶を呑む。決してプラスの感情ばかりではない1冊ですけど、充実した時間を過ごせました。きっと時折読み直したくなるんだろうな。

冒頭まえがきの

「私は今
望んでいた
しあわせの中に
いる」

という台詞はパーム読者的にもぐっとクる所。
(吉本ばななさんの巻末コラムで知ったのだけど)大変な思いもされてきた作者だからこそ、皆が健康で笑っていられる「奇跡みたいな瞬間」の大切さが伝わってくる。そしてこれを「実感」することこそがワタクシの人生のポリシーなのです。

最後まで(読み逃していたらすみませんが)男なのか女なのか分からないままだった、旅のパートナー「かおちゃん」の存在がイイ。コズフィッシュさんのデザインと造本もイイ。真ん中に色紙ページが入ってて、中身とのマッチングが素晴らしい。

吉田秋生『櫻の園』藤田貴美『ご主人様に甘いりんごのお菓子』再読

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久しぶりに吉田秋生『櫻の園』再読。『吉祥天女』や『河よりも長くゆるやかに』と合わせ高校時代本当に好きだった作品。時代感というか「恋愛観」の違いが気になって、最初は正直「あれ?」という感じだったのだけど中盤からその違和感も消えた。思うに吉田さんは男性の描写はものすごくリアルなくせに(最初は男性作家さんだと思ってた位)、女性の描写って時にファンタジー、というかお花畑なところがあって、そこがぐっと来たりするんだけども、こんな風に後から読むと気になる時もあるんだろうな。前半のヤる・ヤらないの話が終わり演劇部の部長の話になった辺りからはあの頃と同じ気持ちに戻っていた。やっぱり傑作や。

再読したのは、最近とあるBLをオススメされ読んで、自分は「恋愛が中心の物語は、ジャンルを問わず読まない」と思っていたんだけど、果たして本当にそうなのか、と疑問に思ったから。この大好きな『櫻の園』は(ヘテロも同性もあれど)普通に「恋愛が中心の物語」だろうに、何故?そんなことを再確認してみようと思って。で、なんとなく分かったのは「恋愛を『目的にしている』人」の物語に興味がないんだな、ということだった。何をしていようが否応なく割り込んでくる避けがたい感情、そういうものを描いた話は好きだけど、そこを目的にしている人達のお話には、興味が湧かない。ま、どーでもいいことなんですけど。

並んでいる藤田貴美の短編集『ご主人様に甘いりんごのお菓子(1)』。これ、分かってくれる人にはすぐ分かるんだけど(というかこないだTwitterでフォローしている人がこのこと書いててめちゃ嬉しくなった)、最後に女学校の社交ダンス部(演劇部だと思ってたら違った)を舞台にしためっちゃ好きな短編があるんですよ。ホント恋愛の話でしかない。だけどすべてのコマが愛おしい。櫻の園とルックは全然違うけど、櫻の園を読んだ後に読みたくなる作品です。改めて読むと足の描写がすごくて、作者もあとがきで「作ってても描いてても楽しかったですね。特に足」と呟いてた。藤田貴美の描く顔や身体のラインがすごく好き。と話がとめどなくなるのでこの辺で。

PKOと「駆けつけ警護」について。session-22より

2016年11月3日放送、TBSラジオ「session-22」
伊勢崎賢治×木村草太×荻上チキ「新たな任務『駆けつけ警護』を検討、南スーダンでの自衛隊のPKO活動を考える」よりメモ書きです。
全然知らなかったこともあって、驚きました。

※以下はブログ主によるメモです。細かい語彙やまとめ方などで間違いや誤解を招く恐れがあるのでくれぐれもご注意ください。↑が削除されたら再度検索してアーカイブを聞いていただくことをお勧めします。

●「駆けつけ警護」を表す言葉はない。

●PKOに参加するということは国連の指揮下に入ること。日本から命令できる訳ではない。日本政府の言う、PKOで自衛隊が海外NGOの邦人を救うなんて考え方はありえないし、不謹慎。他国人でも国連の命令で日本人を助けなければいけないし。そもそも自衛隊は私設軍隊のためにその任を負えない。

目的は一つ、地域の住民を守ること。そもそも自衛隊は歩兵の役割を負うことはないのだが、問題は敵が向こうから来た場合。スーダンの場合であれば、例えば自衛隊の管理する場所に反大統領派が逃げ込むとする。それを大統領側の軍が一般住民を偽装して襲ってくる。住民を守るためなら戦闘しなければならない。そこで何か間違いが(一般住民を殺害など)あった場合の責任の方法が問われる。自衛隊は軍法がないので責任が取れない。

●戦争上で間違いがあった場合(戦争過失)、「軍法」で裁かれその国が責任を負う。軍には軍法が必要。自衛隊にはない。

●国連軍に軍法はない。国連が未だ世界政府と認められていないため。

●軍法のないPKOは、何かあった場合に各国の軍法で責任を取るようになっている。自衛隊は軍法がないので個人責任になってしまう。こういう軍は国連にとってもお荷物。

●PKOは多国籍軍なのでどうしてもモチベーションの問題が生じる。そのような中でどうして自衛隊のような「使いにくい」軍を入れるのかといえば日本ならODAがあるということ。だったらODAだけでイイじゃん、となるがそれは建前上すべての国に均等負担してもらいたい。

●国連はルワンダがあってから紛争へ当事者として参加するというように方向性を変えた。PKOに参加するというのは紛争の当事者になるということ。そこに自衛隊を派遣するのはそもそも憲法違反。

●国連のオペレーションは先進国の軍参加を前提としていない。基本的に派兵として参加するのは外貨の欲しい途上国か、自身に関係のある周辺国。先進国は実際に参加していないし、アメリカは文民警察を派遣して軍は派遣していない。軍参加以外にもPKO参加の方法は多々あり、先進国はそのような参加の仕方を採っている。

●このように誰も望んでいない自衛隊のPKO参加を何故日本政府が進めるのか。それは9条改憲のため。PKO中に自衛隊が望まれた動きができない場合「それは9条のせいだ」という流れを狙っている。自民党はずっとこれが悲願だったが、自衛隊はことごとくその期待を裏切ってきた。世界一勤勉で優秀で自己完結度の高い自衛隊は、この30年間一度も発砲していない。よその軍であればかならず発砲もするし摩擦も問題も起こす。自衛隊だったから問題も起きず「9条の縛りのせいで」という論法が使えなかった。

一箱古本市発の雑誌『ヒトハコ』創刊

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先週届いた一箱古本市発信の新雑誌『ヒトハコ』読了。
前半は「一箱古本市」という、今やすっかり定着した、新しい憩いの場を作り出す喜びやワクワクが詰まっている。といってその楽しいふわふわだけじゃなく、後半では熊本の震災と本屋さんとのレポートだったり、Book!Book!Sendaiが昨年で終了するに至った経緯を、同年高松でブックイベントを始めた方との書簡であらわにしたり、とシビアで読み応えある記事もあって。
すごくバランス良く、しかも「雑」誌感もあって、期待以上の好き好き雑誌になっている!

石井ゆかりさんの、一箱古本市についての鋭い視点。おざわようこさんの驚異的な密度・完成度の「ブックバレーうおぬま」イラストMAP!火星の庭・前野さんの社会に対する想いと努力。東北で移動図書館を走らせる国際NGOの女性と南陀楼綾繁さんの対談から見える「震災」と「本」。お恥ずかしながらこれを読んで初めて「そうか、プライベートが確保できない時に、本を読むことでその代替になり得るんだ」ということをやっと想像できた次第。でもその合間を埋める細かいコラムや小記事も楽しくて…。

長く続けることが苦手な自分は、この企画が上がった時に(企画者の)南陀楼綾繁さんに「なんで単発じゃなく『雑誌』なんですか?」と聞いたことがある。その答えはちゃんと覚えていない。でも、そもそも雑誌がやりかたったので何いまさらその質問、的なかんじだった気がする。完成品を読んで納得しました。今や毎週末日本のどこかで開催されている本読み達の新しい憩いの場、「一箱古本市」。これだけ沢山1年中続いているイベントなんだから、いくらだってネタはあるし、専門の雑誌があったっておかしくないよね全然。なんか普通に思えてきましたよ。新潟では北書店や今週末のアカミチフルホンイチで買えます。お勧め!

昔の『kate paper』

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本棚の整理をしていたら見つかった2009年の『kate paper vol.3』。
冒頭は桑原茂一と石橋毅史のロングインタビュー。

めっちゃ読み応えあるし、今読むとなお、示唆に富んでいる。石橋氏は新潟に来るようになる前の頃かな。『新文化』編集長の頃だけど、しかし何時でも辞めそうな気配マンマンなインタビュー。フリーペーパーなんだけど何処で入手したか全く覚えていない。他の号も欲しい。

今の日本で、1週間後に徴兵されて「朝鮮に戦争しに行ってもらいますから。人を殺しに行ってもらいますから」となれば、もしかしたら、はたと気がついて「自由なメディアが欲しい」とフリーペーパーを作る人がいるかも知れない。だから清くとればまずは反抗ですよ。必要に迫られてというか、背に腹はかえられないというか、やまれぬ気持ちでdictionaryを始めたんです。」
kate paper vol.3 2009 桑原茂一インタビューより

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