『ラ・ラ・ランド』

『ラ・ラ・ランド』字幕を公開初日の夜にシネコンで鑑賞。6〜7割は入ってたかな?

圧倒的に絶賛されてる前評判のことを思い出すと「え?これってそんな作品?」と思っちゃうけど、フラットな気分で観れば純粋に「ああ!いい映画だった!」という感想。

ベタな恋愛ストーリーにこれまたベタなミュージカルシーンを乗せてる映画なので、「ミュージカル?ちょっとなぁ…」という人はどうかと思う。だけど、そのベタの内容が、クオリティが、演技が歌が踊りが衣装が作曲が素晴らしい。メインテーマと劇伴全体で使われる共通の旋律が二つあるんだけど、それがどちらもほんと良くて、何回も何回もサントラを聴き直しちゃう(映画に行った帰り道にサントラが聴けるのがAppleMusicの素晴らしいところ)。

撮影は35ミリフィルム(冒頭でシネマスコープの表示が出るところの仕組み最高!)。CGは極力使わず、長回しで魅せるミュージカルシークエンス。そのいくつかはアフレコではなく同録を使っていて、より「自然」な演技を指向している。ということを知らないと、普通に「どうせこれCGなんだろうな…」と思いがちで勿体ないかも知れない。

でも一方で思う。たとえこういった面倒なアナログ手法や同録のことを知らなくとも、それらの苦労は映画全体の基礎力というか地の力というか、そういった地盤へと確実に染み渡り、一種の魔法のように我々の気分に作用して、高揚させているんじゃないかと。

監督の夢は古き佳きミュージカル映画の復興。脚本や演出は現代に合わせブラッシュアップさせつつ、技法は原点回帰。この方法と絶妙なバランス感覚によって、確かにこのジャンルに何の思い入れもない俺でも、「ミュージカル、すごいじゃん」と思わせられてしまった。

エマ・ストーンの、時にCLARA Cを思わせるハスキーボイスがとてもいい。ライアン・ゴズリングは歌はまぁアレだけど、ジャズピアノの吹き替えを拒み3ヶ月の猛特訓で自ら弾いたという話は驚愕。俳優は時にこうゆう奇跡を起こすね。

ところで。
「これは良さそう」と思う映画は、できる限り早く観に行けるように今後も努力しようと思う。ネタバレを気にする期間も極力短くなるし、行きそびれた挙げ句、周りで盛り上がり過ぎて行きづらくなるなんてこともない。とにかく最初に観ちゃった方がスッキリする。

以下ネタバレ&言いたいことなど。
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『悲しみの秘義』『コンビニ人間』 『ビニール傘』

若松英輔『悲しみの秘義』読了。
文章としてはおそらく1〜2時間程度で読め終える量なんだけど、本当に読むには随分と時間のかかる本だった。いちいち咀嚼に時間をかけたくなるので、一気に読み切ることができない。しかも途中どこかに行方不明になっていて(私あるある)、結局ここまで1ヶ月くらい経った。途中北書店で上越出身の作者による読書会もあったが、恐れ多くて行けなかった。

作家が自分と2歳しか違わないと知った時も驚きだったが、終盤に衝撃の事実が判明。その瞬間に、作家がこの連載を物した理由を理解し、打ちのめされる。「書く」ことと「想い」の関係を痛烈に、しかし直接的でなく、優しく伝えてくれた一冊。


村田沙耶香『コンビニ人間』読了。
きっとこの本は一箱古本市でYさん(「本と雑談ラジオ」好き)が出すだろうから待っておこう。と思ってたら本当に出してたのでまんまとゲット。となりの『ちくま』は、ラジオで紹介されていた村田さんのおかしなコラムが掲載されている号。至れり尽くせりだ!

『コンビニ人間』についてはぜひ枡野浩一&古泉智浩「本と雑談ラジオ」第14回を聞いて欲しい!ポッドキャスト配信もやってます。すごく読みたくなるよ。本も面白いけど、これ読むとラジオが一層面白く聴ける。とあるおかしな男女の行動を通じて、「おかしくない」はずの、その他大勢の我々のふるまいのおかしさを見事に!あぶり出していく。その表現のオリジナリティときたら!

ちくまのコラムも面白かった。高校時代に同級生2人と先生3人の見分けがつかなかったとか、仲良くなりたいと思っていた女の子が、実は別のクラスだったことにある日気付くとか。怖い物見たさも含めながら村田さん、もっと知りたくなる。ラジオにでも出てるらしいので今度探してみよう。

『コンビニ人間』は大体二時間ほどで読めます。


岸政彦さんが小説を出していたなんて知らなかった。
うん、期待通りといえば期待通り。かなり入ってくるものがあったし忘れられないし、岸さんでしかできないような組立だと思うし、すごく映画的。でももう一つ、欲しかったなぁ。

『ユリイカ臨時増刊号 東村アキコ』

ユリイカ東村アキコさん臨時増刊号。知っている書き手さんやインタビュー、トークを先に読了。めちゃくちゃ面白い。名言のオンパレードで、自分は本の気になる所、後で見返したいところのページの、下の端を折る癖があるのだけど、この本のインタビューや対談はほぼ全部のページが折られてしまって、役に立たない。「ええ!」て驚く所も、笑えるところも、泣けるところも沢山あって、とても全部覚えていない。

以下メモ。

『雪虎』の最初の取材で一泊二日の上越旅行に行く。その翌日の夜にはもうネームが60ページできていた。普通はプロットもできていないだろう。(各出版社の編集担当座談会で、お互いの「打ち合わせ」のことについて聞いた時のエピソード。基本的に長い打ち合わせがない)

ネームに迷いがない。なにか他のことを話していても仕事がめちゃくちゃ早い。その上直しにも柔軟に即対応する。

普通の漫画家であれば一度に指示できるアシスタントはせいぜい4〜5人。東村アキコは10人以上を扱い定時に仕事を終わらせる。原稿は決して送らせない。徹夜はありえない。素早く的確で気配りのある指示。とにかく褒めて育てる。まずい所を直す場合の言い方の気遣い。見事。

アシスタント達が姉御肌の彼女のことを描くエピソード、いちいち泣ける。ここだけの読みものとしても『ユリイカ』買う価値あり。

アキコさんはユートピアが好き。原風景は宮崎の高校時代。ヤンキーも、オタクっぽい子も、渋谷系のお洒落な子も、みんな共存して仲が良かった。それがすごく好きだった。ヤンキーがオタクを馬鹿にするようなこともなく「アイツんち、マンガがいっぱいあるらしいから借りに行こうぜ」くらいの感じで。

作者本人をして『「私はこの作品を描くために漫画家になったんだな」と思った』と語らせる『BARAKURA』、ソッコー注文しました。

WEBラジオ「身も蓋もナイト」聞かなきゃ。

「ファンにやって欲しいこと」と聞かれた答えも、彼女ならでは。

表紙のおばちゃん絵はアキコさんご本人によるもの。必見。

引用:(「オタク女子の初恋」「アラサー女の恋愛」など)大きなテーマにしか興味を示さない読者の数は想像以上に多くて…。特に地方にその傾向が強く、7:3くらいの割合だと実感しています。物語を二重構造にしないと、作品自体が残らなくなってしまっているのがマンガ業界の現状です。

しかし思うんだ。彼女の活躍見て西原理恵子さんが一番焦ってるんじゃないかと。西原さんは良く漫画中で○○がにくい〜!羨ましい〜!とネタで描くけど、彼女が開拓し切り開いたその道を、きらびやかなオープンカーに多くの業界人をぎゅうぎゅうに載せ「いやいやいや…」と謙遜しながら今まさに通らんとしているのが、東村アキコその人だとおれは思う。人生相談のキレの良さ(しかも好感度高い)とかもね〜。

アキコさんが『ぶ〜け』育ちで、中でも逢坂みえこさんが大好きというエピソードを聞くのがいつもすっごく嬉しくて。おれ大好きな作家さん(『永遠の野原』当時はナンバーワンだったかも)だけど、周りにファンがあまりいないから。『かくかくしかじか』で、まだ見ぬ東京の担当さんが、いちいちぶ〜けの登場キャラになって出てくるところは爆笑した。『ぶ〜け』は一冊通しての世界観が他にはない居心地の良さだった。掛け替えがないとはあのこと。

アキコさんの作品はごっちゃんとかくしかが頂点であまり熱心なファンとは言えなかったけど、ユリイカを参考に過去作も読んでみようと思いました。

砂田麻美『一瞬の雲の切れ間に』

映画『エンディングノート』の監督が書いた小説、2作目。彼女の映画の作り方と、世界の捉え方がずっと気になっていた。
「喪失」が大きなテーマで、子供も絡むので自分にとっては正直辛い気持ちにもなったけど、期待に応えてくれた一冊。スタイルとしては木皿泉『昨日のカレー、明日のパン』に似ているけど、当然空気感も読後感もかなり違う。

交通事故で子供を失った家族、その加害者となった家族、両家族に関わる男女の物語が別々に語られる。ある事象を通じた双方のまったく違う心境を交互に読む訳だけど、そこから感じる作者の人間観に恐れ入った。傑作です。少々つらいけど、お奨め。

本と関係ない話。自分はこれまで本当に薄情者で、肉親含めこの世で失って困るものなど何もないと思っていた。だけど結婚して相方と一緒になり、子供も生まれ、初めて「絶対に失いたくないもの」ができた。もし失ったら、自分が存在しえるとは思えない。すると今度はそこから喪失の恐怖がはじまった。忘れたようでいても、その恐怖は常に静かにつきまとっている。

何か大きな災害や事故で大切な人を失ったとする。人は「その事故の前の瞬間に戻れるものなら、何でもする。悪魔にだって魂を売ってやる。戻れるものなら、何でも」と思う。でも戻れない。1秒前であっても。0.5秒前であっても。彼や彼女が存在していた「あの時」には決して戻れない。

いま自分は、
「事件後の世界」から見た、
「すべてのものを捧げても戻りたい、魂を売ってでも戻りたい、『あの頃』」
に、生きているんだと思う。そう自分に言い聞かせている訳ではない。自然と感じる。時にどこか夢のように思う。いや、毎日毎日が夢のようだ。

  

アンテナを見捨てRSSリーダーやっと導入。最近更新している理由。

日中スタジオに籠もりっきりで非常に時間があったので、昔のアンテナを見直してRSSリーダーを導入した。
以前、「feedly」を使いかけていたんだけど何故かiPhoneで機能しなかったので、今回は「inoreader」を。ブラウザでもアプリでも今のところ問題なく使えている。

さて、数年ぶりにはてなアンテナにはいっていたサイトを片っ端から見直してみたけど、まぁ半分以上はなくなってましたね。もしくは最終更新日がずっと前とか。残念。そんな中で自分、良くやってるじゃんと褒めたい気持ちです。

なんで最近こんなに更新しているかってと、ひとえにinstagramのおかげ。インスタで読書記録や映画感想をアップし、自分の検索用にオリジナルのタグを付けています(インスタもタグ一覧表示が時系列じゃないので、自分で検索する時以外にはあまり役に立たないのだけど)。後で細部を修正しながら、WORDPRESSにコピペしつつアップ。画像は変えることがほとんど。

何故かインスタだと更新のモチベーションがぐんと上がるのです。なんでだろう。写真必須だから?それはブログ記事でも一緒だしね。すぐに「いいね!」がつくから?そんな意識はないけども、きっとそうなんだろう。うわーだとしたら、なんだかイヤらしい理由。

まぁいいです。これだけSNS全盛の時に、ブログを更新できる方法を見つけたのだから。ちょっと前にやってた、インスタをそのまま貼り込む方法はやめました。読みにくいし、外部に頼ってWORDPRESSのアーカイブにリスクが及ぶのも何だか気持ちが悪いし。インスタから少し書き直すのも、それはそれで気持ち良い作業だったりします。

さていつまで続くかな〜。

『白暮のクロニクル(10)』『でぃす×こみ(2)』

ゆうきまさみの新刊二冊が同時発売!

『白暮のクロニクル』は最終巻前のクライマックス。ゆうきまさみ史上最も?ハードな描写だと思うけど、最低限の安心感はキープ。地味〜に重ねてきた連続殺人犯の謎も殆ど明らかになり、ノリもいい。よくある、謎が謎を呼んで尻も拭かずに興味の持続だけで話を続けていくタイプのアレとは違いますよ。そう、ゆうき作品の大切なポイントとして「ちゃんと尻を拭く」「確実に風呂敷をたたむ」が挙げられると思う。そこの誠実さってすごく重視します自分は。

『でぃす×こみ』は未だ先が見えないけど、これも地味〜にマンガ家あるあるな制作のプロセスをおっかけていて、その細部の見せ方がすごく上手。ゆうき作品の最大の好きポイント「淡々とした日常を描写できる」スキルあってこそだと思う。一冊の中でこれぞ!という盛り上がりがないのも、それでいてちゃんと読ませるのもすごい。ゆうき作品のクライマックスは単行本数冊に一カ所だから。連載よりも単行本で読むのがお薦め。

いずれにしてもこの地味さと淡々とした展開、だけどじっくりと丁寧に進む物語の魅力は、どちらかといえば特殊な気がして、だからゆうき作品って知らない人にはとってもお薦めしずらい。マンガ部を発足させたらこのゆうき作品を紹介することにもチャレンジしてみようと思う。お奨めは『じゃじゃ馬グルーミン UP! >当ブログの感想』。あと『鉄腕バーディー>当ブログの感想』も素晴らしいよ。

  

『サバイバルファミリー』感想


シネコンで。

矢口史靖監督は『WOOD JOB!』が素晴らしくてもはや自分の中でブランド化しかけており、今回も設定聞いただけでコレは!と思い速攻行きました。お奨めです。なのに…レイトで行ったら貸切だったよ…皆観た方がいいって…。

ある日東京で、すべての電化製品が突如動かなくなる。原因は分からない。車もバッテリーが動かない。電池も不可。他の地域がどうなっているかも、勿論分からない。超不自由生活に加えどんどん食べ物がなくなる中、小日向文世の一家は、自転車で西へ向かうことを決意する…。

矢口監督の新作、という期待感で行くと結構シリアスなディザスタームービーなので驚くかも。笑えるところも勿論あるけど、サバイバル能力に決定的に欠ける劇中のお父さんを観て、親父たちは我が身を省みて笑うに笑えなかったりです。その頃合いが最高。

お父さんに限らずファミリーあるあるが詰め込まれているので、どんな立場の人でも自分ちに照らし合わせて楽しむことができると思う。どきどきが続くけど、最後には気持ち良い気分で帰れること保証します。ちなみに妻は5歳次女と観に行ったけど最後まで飽きずに楽しめたそうだ。観た後妻ともめっちゃ話が盛り上がった。

兄妹2人の演技がとても良い!お母さん役の深津絵里はもう言わずもがな。「深津絵里が出ていたら2割増し」というのは私の昔からの持論です。途中で出てくる時任三郎や藤原紀香のイライラっぷり、でもぐうの音も出ないところとか、ほんとイイ。

あと矢口監督って女性をすごく魅力的に撮る。化粧して美しくて、じゃなく本質を映し出すような綺麗さ。今回もそうだし、『WOODJJOB!』の長澤まさみもすごく良かった。

ラジオで監督が撮影裏話をしていたのだけど、実際に自分達で歩いて体験したことからエピソードを組立ているそうです。
以下はちょっとネタバレ含みますのでアレな人は読まないで。

【ネタバレ】
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池辺葵『雑草たちよ大志を抱け』

『プリンセスメゾン』作者が田舎の地味な女子高生を描いた新作。まだ年のはじめなのに、今年を代表する一冊になりそうな予感ビンビン。大好きです。

それとは別に思うのは、今作や『3月のライオン』のような話が、ちゃんと中高生に届いていて欲しいな、ということ。こういう物語を切実に欲している誰かに。救われるかもしれないひとたちに。自分はマンガがあれば大丈夫だったから。

  

『DOCTOR STRANGE』感想

とびますっ とびますっ!

シネコンで2D字幕。
最初に、私は「マーベル映画は満点で80点」タイプで、あまりアメコミと相性の合わない人であることをお断りしておきます。あ、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーは別格かな。

予告編を観てもどんな話かさっぱり分からないし、衣裳は妙ちきりんだし普通なら自分が行くような要素はないが、ひとえにカンバーバッチとティルダ・スウィントン目当て。で、その欲求はちゃんと満たされたのでOKです。

カンバーバッチは髭を生やすと途端に普通の人っぽくなってしまうので、髭は絶対に剃るべきだと思った。金輪際剃るべき。冒頭10分くらいの、彼が優秀な外科医をやってるERドラマがあまりに魅力的で、これをずっと観ていたい!という気持ちに。タキシードでスーパーカーをぶっ飛ばすのとかもう最高だし。そんなことずっと考えてたので正直本編のストーリーはどうでも良かったですごめんなさい。

ティルダ・スウィントンは何をやってもやっぱり魅力的なのだなぁ。彼女が三蔵法師やってマーベル西遊記とかいいと思う。ちょっと非•人間的なところとかぴったり。

悪役の背景描写とかほんとテキトーだし「暗黒異次元」の世界感のチャチさもアレだし所々挟まれるギャグシーンも(苦笑)ってかんじだし色々と惜しいかんじなんだけど、全然憎めない映画でした。しかしカンバーバッチがアベンジャーズに出るのを想像するのはちょっと厳しいなー。

『TRIBUTE TO OTOMO』

V.A.『TRIBUTE TO OTOMO』が届いた。大友克洋を尊敬する作家が寄せた、大友作品モチーフのイラスト集。31×25センチの大判で良い紙使って束感たっぷりだけど、掲載アーティストの殆どは知らないバンド・デシネ作家。もっと日本の作家さんが沢山載っているかと勘違いしていました。半分がイラスト、残り半分が作家のプロフィール紹介です。うーん。コレクターズアイテム…

士郎正宗があの頃から30年も経っているのに相変わらず欄外にウンチクと言い訳を書き連ねているのに笑っちゃって、同時にちょっと安心。ひと目で好きになったのがこの貞本義行さんのイラスト。この目が離れてる女の子、分かってるなぁ〜!!一気にあの頃の気分(てもリアルタイムじゃないけど)に戻ることができました。それだけでもありがとう。

津端修一さんのドールハウスに感激

『人生フルーツ』の主人公・津端修一さんが、孫娘の要望に応え自分で作ったシルバニアファミリー用の一軒家ドールハウスがあまりに素晴らしくて泣けるほどだったのだけど、そういえば自分も学生時代部屋の一角にドールハウス的な部屋を作るのが好きだったなぁ…と思い出し、帰ってから早速物置の奥に眠っていたのを引っ張りだしてみた。

見えにくいけどテーブル上の食事だけは自分で作ったもの(一皿が爪の大きさ位)。我ながら頑張ってた。他は殆ど国立にあったRedBarrowでこつこつと買い集めたと思う。こういうのやルクルーゼの鍋、ウィリアムズソノマに並んでいる調理器具、紀伊國屋の海外の調味料なんかにバイト代をつぎ込みひたすら「魔女のキッチン」を作ることに入れ込んでた大学時代だったなー。思い出してきた。だけど今は妻と趣味が合わないのでその辺極力こだわらないようにしていますよ。平和が一番。

『人生フルーツ』


シネ・ウィンドで。

先週末に神保町のバルで、浴びるほどワインを吞みつつ「多分DVD化されないから、絶対見逃さない方が良いって!」と強くプッシュしてくれたのが、このポスターの写真を撮ったT女史。彼女はいくつかの書籍で津端夫妻と時間を共にしていた。その時は『PALM』のオフ会で大盛り上がりだったので、それ以上詳しくは聴かなかったのだけど。

観てみて、その理由が分かった。ずっと続くことなんて何処にもない。ここには、もう戻らない時間が凝縮されていた。今観た方がいい。
近著のタイトルでもある「ときをためる」暮らし。「時間を、降り積もるように少しずつ、ゆっくり、ためていくことはできないのかーー(パンフレットより)」それをまさに実践している暮らしがここにある。だけど本当のことは結局映画を観ているだけの自分には「見えて」いない。一つ一つ、自分で手をかけ、つくり、積み重ねてきた人にしか分からないのだろうと思う。

上映は17(金)まで。パンフレットも読み応えあってお薦め。藤森照信、重松清、鈴木敏夫なども寄稿している。TBSラジオクラウドの『東京ポッド許可局』でもこの映画を採り上げ絶賛している回があります。クライマックスは勿論なんだけど、孫の要望に応えて修一氏が作ったシルバニアファミリーのドールハウス、その素晴らしさを観ただけで泣けてしまう。あと全体の構成ね。こうきたか!と唸らされた。

検索してみると東海テレビ製作のドキュメンタリー映画(当作品などは最初テレビ番組として製作、その後劇場公開する)は、以前のものも含めて基本的にパッケージ化はされないようだ。「何度でもみんなで観て欲しいからDVD化はしない」と、あるページにあった。以前『ヤクザと憲法』を観逃したのがめちゃめちゃ悔やまれるなぁ…。

『ハドソン川の奇跡』


シネコンで2D字幕。

一言でいって最高だ。
そしてトムの中のトムだ。最高トム。

2009年に実際に起きた、NYハドソン川へのUSエアウェイズ航空機不時着水事故をモデルにした映画。

「不時着水」というのは地面の不時着に比べ、極端に難しいらしい。なぜなら左右の翼のどちらかが少しでも先に着水してしまうと、そこを支点に高速の状態で機体が回転して激突してしまうからだ(町山智浩さんのたまむすび解説より)。よって完全に水平な状態での進入が必須となる。実際に劇中の航空管制官の一人は、機長がハドソン川を選んだ時点で完全に全員死亡だと絶望していた位(これもホントの話)。

生還の可能性が高い近くの空港に向かわず、それだけ難しいハドソン川着水を選んだ機長の判断は、果たして正しかったのか?ということが事故後に検証される。仮に間違っていたら、今はアメリカ一の英雄の機長も、一気に年金無し退職の道に追い込まれる。

このNTSB(国家運輸安全委員会)の検証を巡る一種法廷劇的な流れで話が進んでいく。果たして判断は正しかったのか。容赦ない追求と、コンピュータで発覚した機長に不利なデータ。そうして、為に溜め込んだあとのクライマックス。大・大迫力の回想シーンを含め最高のカタルシス。思わず膝や机を叩いてしまう程に気持ちいい。気持ち良さを求めている人は絶対観れ!!

とはいえイーストウッドですよ。全体にクールで淡々。決して派手じゃない。必要なことだけが、気持ち良く最小限に進められていく。為すべきことを的確に為すひとびと。これがいい。そして鑑賞後に実際の事件のことを調べてみると…結構な細部に至るまで映画の通りであったことを知るのでした。嗚呼。

余談だけど実際の機長も副機長もこの俳優二人に結構似てる。そして機長は「奇跡」「英雄」と呼ばれるのをいつも嫌っていたそうだ。何故なら奇跡は滅多に起こらないことだから。そうじゃなく、為すべき事を皆が為した結果だったということ。ちなみに映画の原題は機長の名前『Sully』である。

三砂ちづる『おせっかい宣言』内澤旬子『漂うままに島に着き』


三砂ちづる『女たちが、なにか、おかしい おせっかい宣言』読了。
ミシマガジンの連載でいつも楽しみに読んでいるので(WEBマガジンは馴染めず紙版オンリー)改めて再読、ということになるのだけど、書籍化に際して付けられたサブタイトル「女たちが、なにか、おかしい」はちょっとなぁ、初めて見た時ええ〜と思いました。このタイトルに惑わされず読んで欲しいというか。

特に自分は、彼女の海外体験の話が大好き。各種NPOなどの活動で滞在する諸外国(第三世界ばかり)で、すごく活き活きと描写される現地の人達や他国からやってくるスタッフ達の様子。国のありかた。幸せのありかた。彼女の目線が好き。中でもキューバにめっちゃ行きたくなる。機会があればぜひ!と思うようになった。

逆に作者が今どき主婦達の事情を分析するとき、その中身にはちょっと馴染まないところがあって。身近にいる妻やその回りを見ていてもちょっとそれ違うんじゃない、ということが色々ある。このあたりたしかに「おせっかい宣言」ではあるのだけど「おかしい」かどうかは…なぁ。でも全体的にホントお奨め本です。

写真は挟まれていたミシマ社の書籍情報なのだけど、これがいつも「読みたくなる」丁寧な構成なの。あらゆる出版社の書籍情報しおりでミシマ社が一番好きだし、実際効果が上がってると思うなぁ。読者目線が感じられて好き。

ところで自分はミシマ社サポーターに入っているので紙版が読めるけど、元々のWEBマガジンには未だに全然馴染めない。スマホ、タブレット、PC、どのデバイスであっても、どこかのWEBマガジンを定期的に見るという習慣が身につかない。どの出版社も素晴らしい内容のWEBマガジンを維持していて、ガンガン読みたいとは思っているのに…。定期的に紹介メールが来るcakesくらいかなぁ。今自分的に「これならイケる」WEBマガメソッドというのは。定期的に紹介の来るcakesをたまに見る位。この「WEBマガジン読まない問題」をぜひ世間の皆さんと語ってみたい。いやそうでもない。


内澤旬子『漂うままに島に着き』読了。
ミシマ社の雑誌『ちゃぶ台』のコラムでも少し書かれていた、作者本人による東京→小豆島への移住記。引越の過程、現地での家探しなどかなり細部まで、さらさらと万遍なく書かれているので使いでが良く満足度も高い一冊。

独身女性の移住問題について、50代の彼女ならではの実感と、その世代から見た今どき女性たちへの目線が面白かった。同意するところも、そうでないところも。最後は結婚問題、結局そうなるのかなぁ。あとがきで書かれた、「その後」の顛末が切ない。作者は新潟ではもうお馴染みになったNさんの元奧様。

東京ではまったくやらなかった「差し入れ」が、島では全然変わってくるという話の一節。
「(特に出版の世界で、これはもう一つの文化か思うほど盛んな、展覧会などで沢山いただく「お持たせ」について)ありがたいし、本当に美味しいものばかり。どこそこのアレ。ここまで美味しければ、材料費も高かろうし、手間もかかっているのだろう。高額であることも間違いない。嬉しいのだけれど…。美味しくてお洒落で珍しい「お持たせ」をどれだけ知っているかが、働く女性としての評価も高めるようにも思え、申し訳ないのだけれど、どうにもこうにも、気が重くなる。そこまでしなくちゃダメなのかしら」
おみやげ苦手クラスタとしても「分かる〜(新潟弁)」

岩本ナオ『町でうわさの…』『スケルトン イン ザ クローゼット』田中圭一『うつヌケ』

岩本ナオ『町でうわさの天狗の子』全12巻読了。
半分以上はダラダラふわふわな高校生の恋愛物語。それが後半になって一気にファンタジーアクション大作へ。しかもクライマックスにあのネタまであるとは。恐れ入りました。先に読み終えてた長女に「11、12巻が凄すぎる」と聞いていたんだけど、本当に泣ける展開だった。大満足のラスト。
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『スティーブ・ジョブズ(2015年公開の方)』感想


映画『スティーブ・ジョブズ』をAmazonプライムでやっと観れた。同じような名前の映画は数あれど、これは2015年公開・ダニー・ボイル監督、マイケル・ファスベンダー主演(ぜんぜん似てない)の作品。1984年のMac、1988年のNeXT、1998年のiMac、3回のジョブズのプレゼン。その直前何十分かの舞台裏「だけ」を描いたすごく特殊な作品。

すごく面白く観れた。本当に舞台裏「だけ」なのには驚くけども、ぜんぜん飽きさせない。ジョブズの父親としてのダメっぷりがこれでもかと存分に繰り出される。やっぱりどうしたって好きにはなれないんだよなー、この人。(ヤマザキマリさんが伝記をコミック化した作品は、読んでもまったく好きになれないどころか興味がぜんぜん持てず、1巻で挫折した思い出も。)

自分は1996年頃のLCが初めての出会いで、それ以来はずっとMacユーザーなんだけど、「AppleやMacファン的に嬉しいデザインやコンピューターのおはなし」はあまり出てこないので期待しない方が良いです。ジョン・スカリーやウォズとの内輪揉めとかそうゆうのは存分に楽しめるw

分かりやすく言えばひたすらに口喧嘩、言い争いのドラマ。ジョブズの元カノが娘を連れて何故かいつもプレゼンの直前に訪れます。そして毎回毎回プレゼンが始まるまで大揉めに揉める。これどこまでホントなんだろう。大切な大切なプレゼンの20分前とかに次から次へと湧き出てくるトラブルメーカーな人達。口喧嘩好きな人たち。最後にはもう笑っちゃうしかないドン詰まりな舞台裏。

そう言えばNeXTとかも当時「これ絶対失敗だろ」と誰もが思っていて、まさにその通りに大失敗したのとかうっすらした記憶がいろいろ蘇る。さすがに最後のiMacは普通に覚えていて、あの時感じた自分の衝撃とシンクロして実に良かったです。ただ肝心のプレゼン本番は一切出てきませんよ。エンディングが「あの」フォントになっているのもにやり。

ジョブズにまったく似ていないマイケル・ファスベンダーも、冒頭すぐに気にならなくなるのはすごい。ケイト・ウィンスレット演じる仕事妻?があまりに都合良いオンナでこれどうなんと。でもジョブズのようなカリスマの脇には、常にこういう全受けな付き人がいたのかも知れないな。

『駆込み女と駆出し男』再見

原田眞人『駆込み女と駆出し男』をhuluで再見。
一度目に見た時よりも更に、本当に好きになってしまった。なんて格好いい女たち!男!

セリフがシン・ゴジラばりに早口で当時の言葉?も盛り込まれていて聞き取れない所もたくさんあったり、そもそも原田監督作品なので状況説明は一切ないしで、そういう意味では全然視聴者に優しくない映画の筈なのに…なぜか。すべてが優しい。出てくる人たちが皆愛おしくなる。

満島ひかりの独特な風体とセリフ回し(妻曰く「演技上手いのか下手なのか分からない」)が、この映画では120%のリアリティを生み出している。はまり役過ぎ。お歯黒がすごく魅力的だったり。

鉄練りのじょご(戸田恵梨香)と女侍のゆう(内山理名)のバディ感が最高にアガる。戸田恵梨香?内山理名?なんて名前だけ聞いたら良く知らないくせに鼻くそほじってふ〜ん?てなっちゃいそうだけど、どちらもとんでもなく格好いい!再見で新たに好きになったのが駆け込み寺のボス、法秀尼(陽月華)。突っ込み漫才みたいなやり取りも楽しくて、色気もあって…

樹木希林もめちゃくちゃ格好いい。駆け込み寺のアシストを担う柏屋(宿)には樹木希林をトップとする気持ち良いやつらが集まっていて、ココでの日常シーンが一々良い。とか書いているとキリがない。写真は柏屋の夜、昔虐待されたせいでトラウマがよみがえったお種(真ん中)をなぐさめる、じょごと柏屋のお勝(キムラ緑子)。大好きなシーン。

で、やっぱり大泉洋ね。ベスト大泉洋の一つになりました。見せ所も沢山。あんた本当にすごい。
(余談だけどチンピラの下っ端が洋ちゃんの口八丁手八丁で追い返される時に「生まれ変わったらアンタの手下になる!」と捨てセリフを吐いていくのだけど、これが音尾琢真君(TEAM NACS)。笑うわ。)

なんかもうBD欲しくなってきちゃったなぁ。う〜ん。

2017年1月の雪

1月11日頃までは「まるで…春?」と思うような暖かい日が続いた。当然雪の気配などなし。
それが14(土)の週末から数日で一気にドカ雪。明けた今日は会社の雪かきで朝1時間ちょっとかかった。でもこの土日が平日だったらと思うと全然マシだったと思う。仕事じゃない日の大雪は最高だ。子供とも遊べたし、家の中でぬっくぬくの冬も満喫した。

これだけは覚えておきたい

こゆこと書いておける場所がないからね。家でつけてる日記もあれど、そっちは家族皆で書いているものだから…。

2016年後半は、近年珍しく自分で主催するイベントが殆どなかった。
それでしみじみと思ったのは…

「自分(家族)のことだけやっているのは、なんてラクチンで楽しいんだ!」

ということ。毎週末は殆ど家族と一緒で、大してお出かけもせず家のことをして過ごした。小4長女はやはりぶつかることも多いのだけど、とことん話して(長い時は2〜3時間てのもあった…)最後はちゃんとわかり合えたと思う。だからこそ、その後一緒に何かするのも一層楽しい。5歳の次女は中身は3歳くらいの感じで、これはもう何をしていてもすべて笑えるし、楽しいし、カワイ過ぎる。常に前向きで明るく笑い声が絶えない。この2人の10歳、5歳という歳は家族で共通の話題を(例えば映画やテレビやバレエやタレントやディズニーやゲームや色んなこと)してもちゃんと皆が面白がれて会話ができる年頃であって、それが本当に嬉しい。

毎週末が、どれだけ楽しかったことか。
こんな時間がいつまで続くか分からないから、記録に残しておきます。

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