『美術手帖 〜女性達の美術史』

『美術手帖』2021.08
女性達の美術史
特集号
〜フェミニズム・ジェンダーの視点から見直す戦後現代美術〜

女性アーティストのみならず、女性キュレーターによるフェミニズム目線も多いに語られてる、芯のぶっとい特集。

『あなたのフェミはどこから?』発刊後のB&Bトークで安達茉莉子と話していた長島有里枝。
金沢21世紀美術館の高橋律子他2人との座談会で同館「フェミニズムズ」展の際、高橋とフェミニズムの認識の差が埋められずに二人のキュレーションを分けた経緯や、そのことの意義について語っている。

新潟を皮切りに開催された『Viva Video! 久保田成子展』を地道な調査と膨大なミーティングを重ねて実現した全国4人の女性キュレーターの座談会には、発起人である新潟近美の濱田真由美も登場。
天才ナム・ジュン・パイクを夫に持つことで不当に軽視されてきた久保田をその軛から外すための思いや、単館企画でない分担作業で、一般的な業務を超えた連携の様を読むことができて胸アツ。知り合いのパートナーであることだけは知ってた濱田さんを見つけ、買った当時驚いた記憶がある。

これに限らず先日の荒井良二トークでもキュレーターの裏話ってとっても面白くて、もっと読みたいなぁ。

他にも、1990年代のバックラッシュにより「フェミズム」「フェミニスト」というワードを右派男性がどのように利用して低レベルな「論争」とも言えない論争を起こし結果的にフォビアが醸成されその後否定的に捉えられるようになった経緯を解像度高く解説したコラムがあったり。

現代アートと女性の関係のみならず、フェミニズムそれ自体の歴史的推移や背景まで学ぶことのできる貴重な一冊。

映画『SING SING』感想

『SING SING(シンシン)』をユナイテッド・シネマで。
監督はグレッグ・クウェダー(長編初作品)

【あらすじ】
無実の罪で収監された男、ディヴァイン「G」は、刑務所内更生プログラムである「舞台演劇」のグループに所属し、収監者仲間たちと日々演劇に取り組むことで、わずかながらの生きる希望を見いだしていた。そんなある日、刑務所で一番の悪人として恐れられている男、通称ディヴァイン「アイ」ことクラレンス・マクリンが演劇グループに参加することに。そんな中で演劇グループは、次の公演に向けた新たな演目の準備に取り掛かるが……。(映画ドットコム)

【感想】
90%以上黒人のおっさんしか出てこない激シブ映画ながら、実に優しく心強く、生きてく希望を感じさせる大傑作!!
そう、みんなこうやって生きていけば楽になるんだよ。

最後も気持ちいい。気持ちいいだけではなく、刑務所や法制度について色々考えさせる。

※『SING SING』というタイトルだけど別にミュージカルではないです。舞台になっているシンシン刑務所の名前で、元は先住民族の方がつけたその土地の名の、当て字だとか。

ほぼ刑務所の中だけで物語が進む、まるで舞台劇のような、会話劇のような。
アメリカ刑務所映画には当たり前にあった暴力、イジメの話が、意図的にほとんど排除されている。
イジメがない…まずこれがとってもfor meだ。

そのことも影響しているのか、途中まではどうしても「この人たちの罪状は?」が気になっていたのだけど、そのうち自然に気にならなくなる。「「罪人」としてじゃなくて、自分達と同じようにフラットな目線でそれぞれの事情を聞くのが当たり前なんだ」と思ってる自分に気付く。


加えてこの黒人の多さ。アメリカの司法制度が大いなる階級差別と人種差別の上に立っていることは常に問題になっているし、だからこそ「どんな罪を負って」を前提にして語ってはいけないのだ、ということにもうっすら気付いていく。(それについてはパンフレットの冒頭にむちゃくちゃ秀逸な「言葉遣いの注意」が書かれている。日本の映画パンフレット文化バンザイ!)


演劇の効能については、ブレイディみかこさんの書籍で読んで、なんとか小学校中学校のカリキュラムに取り入れてもらいたいと思っていて、「いきなり本読み!」では自分もその恩恵にあずかろうとしていた気持ちも、ややある。

だから弱気な感情を出すことが「オス的に負け」となってしまう刑務所内において、「感情を出せる」という演劇の効能が、どれほど大切なことかも、とても良く分かる。
(男性性からの解放という意味では、これもある意味フェミニズムとも繋がるように思う)

「俺たちは人間に戻るために集まっている」
(演劇チームの一員のセリフより)

最後のクレジットで、「AS HIMSELF」と書かれた役者名がずらーっと並んでいることに、驚愕した。(事前情報無しで観に行った)
まさか主役の一人まで本人だなんて。観終わった後も信じられない位。

刑務所モノなのに、なんて優しい。
プロセスを大切に、という大切なメッセージが染み入る。
めちゃ好きな映画でした。「最高刑務所映画」も更新されたね。

以下ネタバレ感想と感想Podcastについてメモ。

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野口理恵『生きる力が湧いてくる』

野口理恵『生きる力が湧いてくる』(百万年書房)読了。

秀逸なタイトルだ。読み終わって改めて思いました。

出版社「rn press」を主宰する筆者の自伝的エッセイ。
母親、兄、初の担当漫画家を自死で失った経験、離婚、子育て、自らの道を歩む(はたから見たら恐らく)少し個性的な彼女の、日常を綴る。

…的な様相で前半は進むのだけど、

半ばに、明らかに筆者であろう「N」のことを語る他人目線の小文がいくつか入り、様相が変わる。彼らはNのことを「秘密がある」「人を見下す」「心を開かない」「すごく怖い」と、エピソードを交えて語る。

この文章が本当にNの知り合いが書いたのか、それとも野口による「USO」なのか文中では明らかにされない(彼女の発行する雑誌『USO』は未読だがそちらを読むと明かされているのかもしれない)。

ただ、他人の目を通した語りによって、それまで一人語りだった野口の、その人となりがいくつもの片鱗をまとい、まるで読者の周りにいる「会社同僚の鈴木さん」や「大学生の同級生佐藤さん」のような具体性のあるビジョンになってくる。

一方で、Nは決して私達の周りの鈴木さんでも佐藤さんでもない。何故なら我々はすでに文章でNの心の内を深く覗いているから。
「人を見下す」「心を開かない」「すごく怖い」のは何故か。
なぜそのように「表面上」なってしまうのかが、前段の文章からよく分かるのだ。結果、作者の姿がより立体的に見えるようになっていく。

自伝エッセイなのに筆者を批判する文章が挿入され、その後にさらに筆者の「証言」が入り反論のようなものが行われるこの落ちつかなさも、本書の魅力だ。人から見られる自分とは、ということにも改めて考えさせられる。

自分は誰も自死で亡くしていないし、両親もそこまで不仲ではなかった。妻や娘それぞれがもつ症状や自分の特性が原因で辛い思いもあったがなんとか超えようとしている。筆者とは全然違う立場にいると思う。対極と言ってもいいかも知れない。

だけど、彼女の気持ちと自分のそれがクロスする瞬間が、いくつも立ち現れる。なんというかこれぞ読書!な醍醐味を味わっているように思う。

そして、自分が何故こんなに苦しみつつ稚拙な感想文を書こうとしているのかも、良く分からない。たしかに言えるのは、時間が経った後で自分のレコメンド文を読み返すのが好きであること。そして同じものを見聞きした人と感想を交わすのがとても楽しいこと。今はこのために書いている。できるならばもっとスムーズに、楽しく文章を書いてみたいものだが。

映画『動物界』感想

『動物界』をAmazonレンタルで。
監督はトマ・カイエ(初長編作)

【あらすじ】
近未来。人類は原因不明の突然変異によって、徐々に身体が動物と化していくパンデミックに見舞われていた。”新生物”はその凶暴性ゆえに施設で隔離されており、フランソワの妻ラナもそのひとりだった。しかしある日、移送中の事故によって、彼らは野に放たれる。フランソワは16歳の息子エミールとともにラナの行方を必死に探すが、次第にエミールの身体に変化が出始める…。人間と新生物の分断が激化するなかで、親子が下した最後の決断とはーー?(公式サイト)

【感想】
結構前に観ているのだけど、今しばらくは読書モードなので感想書けなかった。

「映画館で観てたら今年No.1確定!」
という位に大好きな映画!

だからメモだけ残しておきたい。

●野生あこがれものというジャンルでは『ボーダー 二つの世界』を観た時を思い出す。

映画『ボーダー 二つの世界』感想

自分の中から沸き起こる得体の知れない自然回帰エネルギーを感じて、あっちの世界に行ってしまいそうになる。身を委ねるには少し怖いような、いいようのない魅力・快感。『ボーダー』を観た時は自分が自分でなくなるような感覚を味わったけど、これはどっちかというと親の目線もあって、もう少し客観的かな。

●親子もの(子離れもの)としても大傑作。Netflix『アドレセンス』は相当メンタル的にもキツい大傑作だったが、これは…なんというか人間の親子から、「生物の親として生まれた自分」を実感させられる。こういう気持ちを味わうのって本当に稀有で。

●子役の演技の良さもまた『アドレセンス』を思い出す。

Netflix『アドレセンス』感想

●実在する動物と、そうでない境界の生物の造形が見事。

●Podcast「映画雑談」がこの作品を扱った回は、彼らのラジオの魅力、何故彼らを信用できるのかという要素が詰まった傑作回なので映画を観た人にはぜひ聴いて欲しい。

日記:新津の荒井良二展など

昨日5/3(土)。
オープンオフィスに寄っていただいた女性2人(時に3人)と夕方から呑みはじめ、何時くらいまでだったろうか、パートナーについて、みたいな話で盛り上がってた。やっぱりこういう話は、その人がどう考えているかの部分はもちろんなのだけど、何故そう考えるに至ったか、その人の背景や人生の話を聞くのがとても興味深く、尽きることなく聞いてしまう。こんな場が持てることのなんと豊かで幸せなことか。ありがたい。

5/23(金)の医学町ビルナイト、参加お待ちしてます。DM他で私まで連絡ください。顔なじみの方もぜひご一緒したいです。

▶ウチノ食堂でちょっと読んだ光嶋裕介&青木真兵『つくる人になるために』(灯光舎)が届いた。すごく束のある本紙なので意外と早く進む。お二人のいらっしゃる5/10の津川WSまでに読了せにゃ勿体ない。これは福島コトウさんと2会場で開催される。

▶今日は新津美術館で荒井良二さんと宮本武典さんのトークへ(展示へは既に2回行ってる)。30分前に着いたのに相当な行列が出来ていて50人の定員ギリギリ。あぶなかった(後で知ったが定員は急遽100人に増やされていた)。トークの内容は宮本さんによる客観的で解像度の高い荒井さん観察記と、挟まれる荒井良二さんの名言、というスタイルで時間があっという間。筆記で質問を回収していたけど自分は相変わらず出せない。今まで質問と言われて出た試しがない。何故みんなそんなに出てくるの?

増田さんとこのひなたちゃんと荒井さんの前回のWSのエピソードを宮本さんが話していた。18年前の個展でグランドピアノがいきなり欲しくなって、学芸員・荒井直美さん(同じ荒井さんでややこしい)がなんとか見つけてきた話(すごい!)とか。隣には昨晩事務所で呑んでたyu_koさんが座ってて、荒井さんの描く夜空が好きだと言ってた。すぐ後ろには迫さん。いくつかのインタビューで彼は荒井さんの言葉にどれだけ影響を受けたかを語ってたっけ。

多くの人に影響を与え続け、なお今回のような刺激的な場を、作品を作り続けてる荒井良二さん。同時代に生きてて良かった。生の声を聴くことができる。

宮本さん、多分十数年前に迫さんがやってたイベントで会ったきりだと思うのに自分のことを憶えてらっしゃった。なんて記憶力。

居心地良くて毎回寄ってる二階のカフェで、増田さんと迫さんとアフタートーク。1人で噛み締める時間も好きだけど、知り合いとこうやって色々共有できるのもいい。

▶帰ったら奥さんと長女で晩ご飯ほとんど作ってた。当番なのにすまん。自分は長芋のチーズ焼きを。これ超簡単で旨い。またやろう。


▶明日はお客さん来るので久しぶりのBBQ予定。午前は「いちまん」で買い物。安い豚タン、豚ハツが目当て。先日弥彦よろずやの閉店でしょぼんとなっていたらここでイカメンチ発見。そしてすごく美味しい。また買いに行かなきゃ。

▶昨年からの首痛期間で身体中、特に足にガタがきていて、今は立ち上がるたびに「イタ、イタタ…」と声をあげてる。確実にじじいSTEPを一段あがった。ずっと付きあわないとなのかな…と思いかけた首痛は、「コレ効くかもよ」と平野照子が教えてくれたエクオールを試しに飲み始めて、2週間くらいでほぼ痛みが消えた。自然治癒の時期とたまたま被ったのかも知れずなんとも断言できないけど、先月頭までのあの気分から考えると夢のようになくなっていて嬉しい。そしてまた別の不調が。こんなのの繰り返しよね。

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6/7(土)は『あなたのフェミはどこから?』(平凡社)を入り口にした小さなお話会を、大好きな丘の上のおやつやさんで開催予定。公式告知は準備中ですが、今からでもって方はDMで申込いただけます。

本棚近況

会社にかなり本を移動したので、本棚は少し余裕ができた。かめかし文庫で随分借りられていって、なんだかこれを始めると一箱古本市の出店どうしよう?て悩んでる。仕入れて売れないのも困っちゃうし。うーむ。再び始まる一箱古本市のジレンマ。

最近、長女がマクドナルドでバイトをはじめ、その話を聞くのが楽しい。(自分は高校時代は寺尾店で、大学時代は小平小川町店でマネージャーまでやってた)


彼女は勉強の関係でまだモーニングしか入ってなくて、様子を聞くとやっぱり特性のせいか察したり先を読むのが難しく、ああこういうタイプの、ちょっと天然ぽいモーニング専門クルーそう言えばいたよね〜て思い出す。ピークが全然似合わないひと。武蔵美の天使みたいな現実離れしたモーニングクルーいたっけな〜とか。自分達はもっぱらクローズ寄りのいかついメンバーで、適材適所だよなーとか。そういったことを学んだのもバイトだった。

小平のバイト仲間とは30年経った今でもたまに呑んでる。新潟でも元クルー呑み会とかしてみたい。

首痛がエクオールで直…ったのか?

昨年11月からずっと続いていた首痛。

知り合いから「効くかもよ」と聞いた「エクオール」を、藁にもすがる思いで試してみた。女性の更年期障害に悩む世代では有名らしい。

飲み始めたのは4/12で、まだ2週間ほどだが…。気付くともう、ほとんど気にならないレベルで首痛がなくなった。まさか2週間ぽっちで…?とも思うし、たまたま自然治癒の時期だったのかも知れず、なんとも言えないのだが。

少なくとも4月当初までは「なんでこんなに終わらないんだろう」とずっと悩んでて、もうこれはずっと付き合っていくのか?と半分諦めモードになっていた位だから、とても嬉しい。

首痛に次ぐ首痛

買った製品は大塚製薬のイソフラボンも配合した「エクオール」。

2025花粉症

4/30

昨日からやたらくしゃみを連発。
なんだこれ…?と思っていたけど、ひょっとして早目の花粉症か?
これまでは早くてもGW明けだったのに。
様子を見よう。

(追記6/15)
それ以来ほとんどなかった。1日だけ「鼻出るな〜」って日が、2回くらい?
もうこれは、花粉症が治ったのか、対象の花粉が減ったのか(それはないと思う)
なんにしてもありがたい。

フェミニズムのトークイベントを企画しようと思っています。

昨年、ニイガタブックライト関連イベントとして内野で開催した安達茉莉子さんのトーク、そのとき会場に生まれた一体感や「出会えた」感が忘れられない。あの時間の余韻が、ずっと自分の中で続いていた気がする。

そのせいか、今年のブックライト関連イベントは自然と、フェミニズムをテーマにした内容にしたいと考えるようになっていた。

フェミニズム——この言葉だけで、強いイメージや反感、アクティビスト、一部の女性だけのもの……みたいな印象を抱く人もいるかもしれない。それくらい、歴史の中で何度も揉まれ、翻弄されてきた言葉だから。

でも今の自分の中で、フェミニズムは「世界の成り立ちを知るために欠かせないキーワード」だと感じている。もしくは「皆が生きやすい多様性を、世界に担保するために欠かせない考え方」か。

完全に内面化された家父長制の影響に気付かないまま、大人になっても中年になっても、ずっと生きづらさに苦しんでいる人たちを身近に見てきた。先輩や書籍のおかげで「自分が原因なのではなく、システムが原因だ」と気付けた後の解放も。


そう、この「解放」こそが自分にとってのフェミニズムだったし、安達さんのラジオや、あの内野での温度と、どこか繋がっているようにも感じた。だから今年のテーマも、自然にここに辿り着いたんだと思う。

そこに昨年登場したのが『虎に翼』だった。主催した「とらつばナイト」の解放感も忘れられない。自分は生来「壁をなくす」「壁が無い」状態を求めるマインドが強いのだということに、昨年少し気付き、自覚的になった。

周りにフェミニズムの話をすると、差別に「気付かせない」仕組みこそが、お互いの対立や誤解・差別感情を増幅させていることに気付く。そのせいで、フェミニズム自体が争論の対象になってしまうような、不幸な歴史も読んだ。

こういった話は、今自分達の周りで安易に行っても、人によって受け取り方が変わってくることがあるし、場合によっては対話がかえってお互いを傷つけてしまうことさえあるかも知れない。

だから、
どういうスタンスで、どういった人に向けてイベントを行うか、ということがとても大切なのだと思う。


今年の企画・方向付けについて、昨年のトークの企画者でもある @imoueeeee と、いつも関連する話題で話すことが多い @ruth_blackett_ に相談し、一緒に考えていた。取りようによってはセンシティブなテーマを、安心して話せる相手や場があるというのはどれだけ幸せなんだろうと、時間を持つたびに思う。

そんなこんなでいろいろアイデアを出していた中…
最近読んだ『あなたのフェミはどこから?』(平凡社)が、素晴らしい一冊だった。職業も立場も年齢も経験もさまざまな19人の男女が、自らがはじめて「フェミニズム」を意識し、出会った体験を語っている。どの語りもとても印象深くて、でも同時にとても個人的で、その人自身の感覚や出来事だからこそ、どうこう言う余地なんてない。これだ、と思った。どこか「医学町ビルナイト」の、(まるで生活史のような)自己紹介聞き取り体験にも似ていた。読んでいるうちに自分も語りたくなった。感想も話したい。

この本をテーマ・入り口にして話すのは、今回のイベントに良さそうだし、いくつかの懸念も払拭できそう、と昨晩2人に聞いてみた。

開催詳細はまた追って告知します。興味ある方はぜひ本も読んでみてください。書籍を買うのが少しハードルが高かったら、「ウエブ平凡」というサイトでも内容の多くが読めますので、そちらでもぜひ。

イベントは、6/7(土)日中に開催予定です。
人数は少なめになりそうですが、できるだけあたたかく、安心して言葉を交わせる時間にしたいと思っています。


Netflix『アドレセンス』感想

話題沸騰中のNetflix『アドレセンス』全4話完走。

同級生の女の子を殺した容疑で、ある日いきなり逮捕される主人公・ジェイミー(13歳)とその家族を中心に、事件の真相を追う刑事や心理学者、学生たちの姿を描く群像劇。


各話50分程度の話が、なんとすべてワンカットで撮影されている。その特殊な撮影による緊張感が凄いのだけど、この事前情報が邪魔して、最初はもう
「これ、紅白歌合戦のけん玉のごっついヤバい奴やん!俳優のプレッシャー半端ないで!」
とか思って笑、気になってしょうがなかった。

舞台演劇は確かに、1時間2時間ぶっつづけに演技し続けるしね、て最初思うけど…違う違う。
演劇は、たとえミスったとしても舞台は続く。

ワンカットドラマは、ミスるとNGになって、関係者全員が、最初からやり直しになる。その責任をそれぞれ一人一人が背負ってることになる。

結局、各話10テイクくらい撮ってるそう(ひえ〜)。考えただけで苦しい。

部屋から部屋の移動、車での移動、空からのショット、小路を走って逃げる子供、すべてを1カメで追いかける。会話シーンではお互いを交互に写し、回り込む。まぁ凄い。凄すぎて最初はカメラワークが少し雑音になってしまうが、2話の頃にはもう気にならなくなってしまった。

こういったワンカット撮影の技術面の話は、確かにとんでもないし近年見たことのないレベルなんだけど…
実は『アドレセンス』の肝ではない。

今の13歳の子供と家族、学校をリアルに描き、説明セリフもナレーションも一切なしに、じわじわと、殺人事件の真相を明らかにしていく脚本・演出の巧さこそがこのドラマの核心だ。

明確な説明はない。だけど観ているコチラは、4話を重ね気付かざるをえない。この狂気を、切なさを。ワンカット撮影のまるで現場をそのまま覗き見ているような効果と相まって、すべての演技が、心に刺さる。

特に思春期の子を持つ親にとっては、恐ろしい悪夢、でもすぐ隣にある悪夢なのだ。しんどい。

救いなのは、ジェイミーの家族が、この辛い時期を乗り越えようとお互い歩み寄っている様子だ。これがなかったら自分的には相当キツかった。

以下ネタバレあります。

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『私たちには言葉が必要だ 〜フェミニストは黙らない』

イ・ミンギョン著/すんみ・小山内園子訳
『私たちには言葉が必要だ 〜フェミニストは黙らない』(タバブックス)読了。

自分を変えるつもりのないセクシストからの「聞いてやるよ。で、おれが判断するよ」的な質問に、苦労して答える必要はない。

明らかに存在する差別を、ないものと捉え勉強しようともしない相手に対し、懇切丁寧に解説をしてあげる必要もないし、その上自分の説明を「評価してもらう」必要なんてこれっぽっちもない。誰も頼んでいない。

そのことをハッキリと明言し、
セクシストに対峙した時のあの後悔を、あの苦しみを、言えなかったり躊躇したりした悔しさを、これから少しでも減らそうと書かれた本だ。

言わない権利だけじゃなく、どう言えば会話を断ち切れるか、そのメソッドについても具体的に書かれています。

自分が特権を享受する側にいることを認識せず「よかれと思い」発せられる言葉の、そのあまりの影響力の大きさ、罪深さを許さないこと。許さないための共通言語を確立するための本。

韓国で韓国の事情により書かれているので、訳の関係もあり時には少し「これは日本では難しいかも(通用しないかも)」と思える箇所もありましたが、基本は同じだと思う。

答える必要のない相手との会話のぶった切り方はもちろん、多くは
「セクシストに対峙している)あなたに会話を続ける責任はない」
ケースについて書かれ
「あなたに答える責任はないから安心して。」
と説く本書だが、後半で「これだけはあなたの責任」と書かれた部分が印象的。

特権を持つ立場にいることを悪用したいと考えているセクシストに対しては「断固阻止のアクションを起こしましょう」。

長々とやりとりする必要はありませんし、はげしい攻撃を加えなくてもかまいませんが、そのアクションだけは、あなたに課された最低限の責任です。ことばが正しいから力を得るのではなく、権力を握っているからことばも正しいことにされる状況では、権力にものをいわせた無知がまた別の権力を増長しかねません。それは、食い止めねば。(同書P.164)

つまり、あとに被害者を増やさない、連鎖を止めようということ。
これはあらゆることに当てはまるなぁと思う。

自分に内面化されている昭和男の家父長制意識、ルッキズム、インターセクショナリティをイヤというほど認識し辟易しつつ、でも想像することは不可能じゃない。まだまだ足りないけど。と思わされる一冊でした。

かめかし文庫に入りますが、ちょっと事故があり(鞄の中でお茶にまみれた)かなりボロボロでふわふわです。それでも良ければ。

映画『ロボット・ドリームス』感想

『ロボット・ドリームス』をシネ・ウインドで。
監督:パブロ・ベルガー

【あらすじ】
マンハッタンに住むドッグは、孤独に疲れ果てていました。ある日、彼はロボットを自作し、仲間にしようと決意します。80年代のニューヨークのリズムにのせて、二人の友情は芽生え、やがて離れられない存在へと変わっていきます。
ある夏の夜、DOG は悲しみのあまり、ROBOT を浜辺に置き去りにせざるを得なくなります。 彼らはまた会うことになるのでしょうか?
(カンヌ公式サイトより)

【感想】
すべてが最高。最後は号泣。
とにかく見逃さない方が良い!
シネ・ウインドで4/18まで。

※最近ことあるごとに書いている「洋画で歌詞字幕が出ない問題」。今作は基本サイレントなのでしょうがない部分もあるかもだけど、自分は残念だった。EW&Fの『September』は鑑賞前に対訳を憶えていくと良いかも…。

小指『偶偶放浪記』

小指『偶偶(たまたま)放浪記』(白水社)読み途中。


矢萩多聞さんの「本とこラジオ」に作者の方が出ていたのがきっかけ。

めっちゃめちゃ好き!!!!
漫画7割、エッセイ3割くらい(感覚)の旅行記。と言っても観光地的な行き先はどこにもなく、ふとしたきっかけ(寝過ごしとか笑)で訪れた、なんていうことの無い町が多い。

現実なのかどうか分からない位にファンタジックで、歴史の落とし穴に入ったようなまちを探検するレポート。すべての店が閉店しているかに見えるいにしえのアーケード街、その中でちゃんと営業していた、素敵な佇まい、素敵な看板の喫茶店。しかもとっても美味しい。趣を同じくする人なら1度はこういう経験をしたことがある筈。そんな話があったり、あまりの寂しさにせつなくなって帰ってきたり。

古い商店街や、地方の素敵な佇まいの看板に心躍り、でもやっぱりとうの昔に閉店したりしてる時の、あの身勝手なガッカリ感。でもそんな中で、たまに夢のように「まだやってるんだ!」てお店があった時の、あの高揚感。所詮よそ者が1回だけ…ていう罪悪感。いろいろ入り交じった気持ち。楽しいだけじゃなく切ないも含めて、1冊に詰まってる。

古モノ好きの自分にとって隅から隅まで好みドンピシャだし、小指さんが「行きたくなる・入りたくなる気持ち」がすごく自分と共通しているから気持ちいい。なんかこういう場所を見たり体験したりして残りの人生を過ごしたいとか夢見ちゃう。

書かれてる場所にはすべて行ってみたくなるね…(もう既になくなっている場所も結構あるけど)。
書籍は1800円と高価ですがボリューム・内容ともに後悔させない充実感。

panpanyaが好きな人は、あれの実話版を想像してもらいたい。
それ位夢と現実の境界線がゆらぎます。ぞくぞく楽しい一冊。

zineを本棚でどう整理するか問題

12月の中頃に投稿した
「zineの整理どうする問題」

背表紙もなく判型も小さい大量のzineをどうやって整理する?見やすくする?
という悩み。

その時思いついた「レコードのように箱に入れて上からペラペラめくって見る」方法を
実践してみたよ。

問題は箱の調達なのだけど、(何故か我が家には)山ほどある小抽斗の抽斗を使ったらちょうど良かった。

B6にちょうど良い箱に、B6と最小のA6その他を入れて。
結構多いA5サイズにもぴったりの箱がありました。

この2つを本棚に入れて、適宜出して、上からペラペラする。
箱の高さも、ペラペラするには程よい感じ。
暫定zine棚完成!まだ結構入るよ。

他の人のzine棚も見てみたい。

野口理恵『自分のお葬式ハンドブック〜私が私らしく死ぬために』

野口理恵『自分のお葬式ハンドブック〜私が私らしく死ぬために』(rn press)読了。

葬儀への参列経験が多く、終活ライフケアプランナーの資格も持つ著者が、「自分らしい死に方を選ぶ」方法について書いているzine。(zineだということは読了後知った)

死にまつわるハウツーが端的に書かれていて便利なだけでなく、多くはエッセイで、読後感は能町みね子やメレ山メレ子に似てる。何だか分からないままに慣例で進められる葬儀のアレコレにちゃんと疑問を感じる姿が信じられるし、それでいて人の感じ方や選択の多様性を決して奪わない書き方で安心できる。あっという間に読めちゃうボリュームながら、得られるものは大きく、しかも気持ち良かった。

つまりお得で楽しくてさくっと読めて、自分の終活に対し気付きも与えてくる素晴らしい一冊。

途中で明かされるののだが著者が「葬式参列経験が多い」のは、家族を2人も自死で失っているということ。でもその壮絶な過去は作中でほぼ語られない。その上で自分の希望する死に方については淡泊に語られるところがなんとも不思議で、信頼できて、心地良い。軽やかでいて鋭い。

気になって調べたら出版社「rn press」を主宰されている方。家族の話も書かれたという新刊自伝エッセイ『生きる力が湧いてくる』(百万年書房)も気になる。


今作は冬のアカミチフルホンイチで久平文庫の兄弟にお勧めされて買った。彼らのレコメンドはいつも間違いないな…。


ちょうど併読していたカレー沢薫の『ひとりでしにたい』にも通じるところがあって(想像を超えるトンデモ傑作漫画なので後述)、あと同じく兄弟に勧められて勝った須原一秀『自死という生き方』(未読)を並べると、完全に
「死にたくてしかたのない人の本棚だね(by奥さん)」
なのだった。
(そんなことはありません)

首痛に次ぐ首痛

11月から4か月続いた首痛は先月いったん収まったのだけど、2週間ほどで別の痛みが始まった。前回は上を向いて、戻る際に「ごりっ」と痛くなるんだけど、今回は通常時に前を向いているだけでみちみちと痛い。首痛はどうしても頭痛に繋がるので結構まいってる。

11月からの数ヶ月で首痛が怖いあまりに一層身体を動かさなくなって、ただでさえ日本イチ身体の固い男が、油を差してないブリキ人形みたいに、少し動かすだけでギシギシ言うようになった。これは10月までとは明らかに違う。

知り合いのアドバイスで始めた毎日のラジオ体操1-2がちょうどいい。もうYogaとかは動かなすぎて無理感ハンパないのだ。ちゃんとやると疲れることで有名なラジオ体操は、疲れるどころか体中がギシギシ痛い。これでギリ、って感じ笑。チョコザップは再開した。

映画『MICKEY 17』感想

『MICKEY 17』をユナイテッドシネマで。
監督:ポン・ジュノ(殺人の追憶、オクジャ、パラサイト)

【あらすじ】
主人公は、人生失敗だらけの男「ミッキー」 (ロバート・パティンソン)。一発逆転のため申し込んだのは、何度でも生まれ変われる “夢の仕事 ”
のはずが ……。
よく読まずにサインした契約書は、過酷な任務で命を落としては何度も生き返る、まさにどん底の “ 死にゲー” への入口だった!現代からひとつの進化も無く、労慟が搾取される近未来の社会。だが使い捨てワーカー・ミッキーの前にある日、 手違いで自分のコピーが同時に現れ、事態は一変。予想を超えたミッキーの反撃がはじまる!(公式サイト)

【ネタバレ無し感想】

面白かった〜!

ポンジュノ映画って自分は大抵、「心から愛せる映画」ではないのだけど好き。今作も同じ。めちゃ面白いブラックコメディーSFでした。
SFとして超一流。俳優達も美術デザインも設定も、すっげー良かったなぁ。

主人公は『tenet』の謎イケメン、ロバート・パティンソン(大好き)。彼の魅力だけで全部観れる!

相方となるナオミ・アッキー、もう一人の主役とも言える悪の親玉がマーク・ラファロ(大好き)とトニ・コレット。皆が見事に適役。フランス&ルーマニア国籍のアナマリア・ヴァルトロメイもエロい名脇役でお気に入り!


【以下ちょっとネタバレあり】

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『リンダリンダリンダ オフィシャルブック』

『リンダリンダリンダ オフィシャルブック』(太田出版)

書庫整理をしていて久しぶりに出て来た。山下敦弘監督のロングインタビューを中心に、描かれなかったアナザーストーリー等。

冒頭にたっぷりページを割いた東野翠れんによるキメ過ぎてないスチルが良い〜!

没になったプロットと経緯を読んでいると、(多数の人が関わる映画は特に)ほんの、ちょっと!の運や出会いなんかの違いで、傑作とそれ以外が分かれてしまうんだなぁ…と実感できる。

ジブリ以外に3〜4回以上も観てる映画って滅多にないし、長女は多分それ以上観てる、大好きな映画。ペ・ドゥナと香椎由宇、周りの皆キャストが素晴らしい。映画ファンで見たい方いたら是非。かめかし文庫にて。
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橘もも『透明なゆりかご』

橘もも『透明なゆりかご(上下)』読了。

沖田×華の原作漫画を安達奈緒子(『きのう何食べた?』『おかえりモネ』)脚本によりドラマ化。その脚本を橘ももがノベライズ。

原作未読。ドラマも1話の半分しか観ていない。

すごく良かった。

清原果耶が産婦人科で働くドラマ、とだけ聞いて、勝手に生命の誕生・感動ドラマ系をイメージしていたら思ったより全然辛い話ばっかり。生まれるよりも病気や死んじゃう話ばかり。でも読後感は悪くない。
文体は多少ラノベ的というか何やらであまり自分向きではないが、やっぱ脚本が素晴らしいよ…

上巻は医院にやってくる女性達のエピソードが続くが、下巻になると主人公の生い立ちやスタッフさん達の背景に話が進んでいって話がどんどん加速していく。止められなくなりました。

しかし、ドラマから入れば良かった。
本書を少し読んでから中途半端にドラマを見始めたら、何だか劣化版の後追いみたいな印象になってしまい、結局ドラマは観ないまま途中で終わってる。小説は非常に良かったが、やはりこういうケースはドラマから入った方がおよそ加点法になって良いんだよなぁ。経験上。

この文庫は、冬のアカミチフルホンイチ で、POPがとても良くて買ったのでした。お店の名前は忘れちゃったけど、御喋り楽しかったな〜。またお店でお会いできるのが楽しみ。


安達奈緒子と言えば2027年松坂桃李主演で初の大河ドラマ『逆賊の幕臣』が決まった。大河はなんか体内時計と合わないというか、観続けられることがあまりないのだけど、これはちょっと楽しみ。現大河は、やっぱり吉原を取り上げるいうことに(1〜2話では)覚悟が見られなくて、ドラマはとっても素晴らしいのに、どうしても気が乗らなくなってしまった。


『あんぱん』見てます。久しぶりにリアル朝ドラ!

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