映画『ロボット・ドリームス』感想

『ロボット・ドリームス』をシネ・ウインドで。
監督:パブロ・ベルガー

【あらすじ】
マンハッタンに住むドッグは、孤独に疲れ果てていました。ある日、彼はロボットを自作し、仲間にしようと決意します。80年代のニューヨークのリズムにのせて、二人の友情は芽生え、やがて離れられない存在へと変わっていきます。
ある夏の夜、DOG は悲しみのあまり、ROBOT を浜辺に置き去りにせざるを得なくなります。 彼らはまた会うことになるのでしょうか?
(カンヌ公式サイトより)

【感想】
すべてが最高。最後は号泣。
とにかく見逃さない方が良い!
シネ・ウインドで4/18まで。

※最近ことあるごとに書いている「洋画で歌詞字幕が出ない問題」。今作は基本サイレントなのでしょうがない部分もあるかもだけど、自分は残念だった。EW&Fの『September』は鑑賞前に対訳を憶えていくと良いかも…。

小指『偶偶放浪記』

小指『偶偶(たまたま)放浪記』(白水社)読み途中。


矢萩多聞さんの「本とこラジオ」に作者の方が出ていたのがきっかけ。

めっちゃめちゃ好き!!!!
漫画7割、エッセイ3割くらい(感覚)の旅行記。と言っても観光地的な行き先はどこにもなく、ふとしたきっかけ(寝過ごしとか笑)で訪れた、なんていうことの無い町が多い。

現実なのかどうか分からない位にファンタジックで、歴史の落とし穴に入ったようなまちを探検するレポート。すべての店が閉店しているかに見えるいにしえのアーケード街、その中でちゃんと営業していた、素敵な佇まい、素敵な看板の喫茶店。しかもとっても美味しい。趣を同じくする人なら1度はこういう経験をしたことがある筈。そんな話があったり、あまりの寂しさにせつなくなって帰ってきたり。

古い商店街や、地方の素敵な佇まいの看板に心躍り、でもやっぱりとうの昔に閉店したりしてる時の、あの身勝手なガッカリ感。でもそんな中で、たまに夢のように「まだやってるんだ!」てお店があった時の、あの高揚感。所詮よそ者が1回だけ…ていう罪悪感。いろいろ入り交じった気持ち。楽しいだけじゃなく切ないも含めて、1冊に詰まってる。

古モノ好きの自分にとって隅から隅まで好みドンピシャだし、小指さんが「行きたくなる・入りたくなる気持ち」がすごく自分と共通しているから気持ちいい。なんかこういう場所を見たり体験したりして残りの人生を過ごしたいとか夢見ちゃう。

書かれてる場所にはすべて行ってみたくなるね…(もう既になくなっている場所も結構あるけど)。
書籍は1800円と高価ですがボリューム・内容ともに後悔させない充実感。

panpanyaが好きな人は、あれの実話版を想像してもらいたい。
それ位夢と現実の境界線がゆらぎます。ぞくぞく楽しい一冊。

zineを本棚でどう整理するか問題

12月の中頃に投稿した
「zineの整理どうする問題」

背表紙もなく判型も小さい大量のzineをどうやって整理する?見やすくする?
という悩み。

その時思いついた「レコードのように箱に入れて上からペラペラめくって見る」方法を
実践してみたよ。

問題は箱の調達なのだけど、(何故か我が家には)山ほどある小抽斗の抽斗を使ったらちょうど良かった。

B6にちょうど良い箱に、B6と最小のA6その他を入れて。
結構多いA5サイズにもぴったりの箱がありました。

この2つを本棚に入れて、適宜出して、上からペラペラする。
箱の高さも、ペラペラするには程よい感じ。
暫定zine棚完成!まだ結構入るよ。

他の人のzine棚も見てみたい。

野口理恵『自分のお葬式ハンドブック〜私が私らしく死ぬために』

野口理恵『自分のお葬式ハンドブック〜私が私らしく死ぬために』(rn press)読了。

葬儀への参列経験が多く、終活ライフケアプランナーの資格も持つ著者が、「自分らしい死に方を選ぶ」方法について書いているzine。(zineだということは読了後知った)

死にまつわるハウツーが端的に書かれていて便利なだけでなく、多くはエッセイで、読後感は能町みね子やメレ山メレ子に似てる。何だか分からないままに慣例で進められる葬儀のアレコレにちゃんと疑問を感じる姿が信じられるし、それでいて人の感じ方や選択の多様性を決して奪わない書き方で安心できる。あっという間に読めちゃうボリュームながら、得られるものは大きく、しかも気持ち良かった。

つまりお得で楽しくてさくっと読めて、自分の終活に対し気付きも与えてくる素晴らしい一冊。

途中で明かされるののだが著者が「葬式参列経験が多い」のは、家族を2人も自死で失っているということ。でもその壮絶な過去は作中でほぼ語られない。その上で自分の希望する死に方については淡泊に語られるところがなんとも不思議で、信頼できて、心地良い。軽やかでいて鋭い。

気になって調べたら出版社「rn press」を主宰されている方。家族の話も書かれたという新刊自伝エッセイ『生きる力が湧いてくる』(百万年書房)も気になる。


今作は冬のアカミチフルホンイチで久平文庫の兄弟にお勧めされて買った。彼らのレコメンドはいつも間違いないな…。


ちょうど併読していたカレー沢薫の『ひとりでしにたい』にも通じるところがあって(想像を超えるトンデモ傑作漫画なので後述)、あと同じく兄弟に勧められて勝った須原一秀『自死という生き方』(未読)を並べると、完全に
「死にたくてしかたのない人の本棚だね(by奥さん)」
なのだった。
(そんなことはありません)

首痛に次ぐ首痛

11月から4か月続いた首痛は先月いったん収まったのだけど、2週間ほどで別の痛みが始まった。前回は上を向いて、戻る際に「ごりっ」と痛くなるんだけど、今回は通常時に前を向いているだけでみちみちと痛い。首痛はどうしても頭痛に繋がるので結構まいってる。

11月からの数ヶ月で首痛が怖いあまりに一層身体を動かさなくなって、ただでさえ日本イチ身体の固い男が、油を差してないブリキ人形みたいに、少し動かすだけでギシギシ言うようになった。これは10月までとは明らかに違う。

知り合いのアドバイスで始めた毎日のラジオ体操1-2がちょうどいい。もうYogaとかは動かなすぎて無理感ハンパないのだ。ちゃんとやると疲れることで有名なラジオ体操は、疲れるどころか体中がギシギシ痛い。これでギリ、って感じ笑。チョコザップは再開した。

映画『MICKEY 17』感想

『MICKEY 17』をユナイテッドシネマで。
監督:ポン・ジュノ(殺人の追憶、オクジャ、パラサイト)

【あらすじ】
主人公は、人生失敗だらけの男「ミッキー」 (ロバート・パティンソン)。一発逆転のため申し込んだのは、何度でも生まれ変われる “夢の仕事 ”
のはずが ……。
よく読まずにサインした契約書は、過酷な任務で命を落としては何度も生き返る、まさにどん底の “ 死にゲー” への入口だった!現代からひとつの進化も無く、労慟が搾取される近未来の社会。だが使い捨てワーカー・ミッキーの前にある日、 手違いで自分のコピーが同時に現れ、事態は一変。予想を超えたミッキーの反撃がはじまる!(公式サイト)

【ネタバレ無し感想】

面白かった〜!

ポンジュノ映画って自分は大抵、「心から愛せる映画」ではないのだけど好き。今作も同じ。めちゃ面白いブラックコメディーSFでした。
SFとして超一流。俳優達も美術デザインも設定も、すっげー良かったなぁ。

主人公は『tenet』の謎イケメン、ロバート・パティンソン(大好き)。彼の魅力だけで全部観れる!

相方となるナオミ・アッキー、もう一人の主役とも言える悪の親玉がマーク・ラファロ(大好き)とトニ・コレット。皆が見事に適役。フランス&ルーマニア国籍のアナマリア・ヴァルトロメイもエロい名脇役でお気に入り!


【以下ちょっとネタバレあり】

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『リンダリンダリンダ オフィシャルブック』

『リンダリンダリンダ オフィシャルブック』(太田出版)

書庫整理をしていて久しぶりに出て来た。山下敦弘監督のロングインタビューを中心に、描かれなかったアナザーストーリー等。

冒頭にたっぷりページを割いた東野翠れんによるキメ過ぎてないスチルが良い〜!

没になったプロットと経緯を読んでいると、(多数の人が関わる映画は特に)ほんの、ちょっと!の運や出会いなんかの違いで、傑作とそれ以外が分かれてしまうんだなぁ…と実感できる。

ジブリ以外に3〜4回以上も観てる映画って滅多にないし、長女は多分それ以上観てる、大好きな映画。ペ・ドゥナと香椎由宇、周りの皆キャストが素晴らしい。映画ファンで見たい方いたら是非。かめかし文庫にて。
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橘もも『透明なゆりかご』

橘もも『透明なゆりかご(上下)』読了。

沖田×華の原作漫画を安達奈緒子(『きのう何食べた?』『おかえりモネ』)脚本によりドラマ化。その脚本を橘ももがノベライズ。

原作未読。ドラマも1話の半分しか観ていない。

すごく良かった。

清原果耶が産婦人科で働くドラマ、とだけ聞いて、勝手に生命の誕生・感動ドラマ系をイメージしていたら思ったより全然辛い話ばっかり。生まれるよりも病気や死んじゃう話ばかり。でも読後感は悪くない。
文体は多少ラノベ的というか何やらであまり自分向きではないが、やっぱ脚本が素晴らしいよ…

上巻は医院にやってくる女性達のエピソードが続くが、下巻になると主人公の生い立ちやスタッフさん達の背景に話が進んでいって話がどんどん加速していく。止められなくなりました。

しかし、ドラマから入れば良かった。
本書を少し読んでから中途半端にドラマを見始めたら、何だか劣化版の後追いみたいな印象になってしまい、結局ドラマは観ないまま途中で終わってる。小説は非常に良かったが、やはりこういうケースはドラマから入った方がおよそ加点法になって良いんだよなぁ。経験上。

この文庫は、冬のアカミチフルホンイチ で、POPがとても良くて買ったのでした。お店の名前は忘れちゃったけど、御喋り楽しかったな〜。またお店でお会いできるのが楽しみ。


安達奈緒子と言えば2027年松坂桃李主演で初の大河ドラマ『逆賊の幕臣』が決まった。大河はなんか体内時計と合わないというか、観続けられることがあまりないのだけど、これはちょっと楽しみ。現大河は、やっぱり吉原を取り上げるいうことに(1〜2話では)覚悟が見られなくて、ドラマはとっても素晴らしいのに、どうしても気が乗らなくなってしまった。


『あんぱん』見てます。久しぶりにリアル朝ドラ!

ドラマ『妻、小学生になる』感想を改めて

平日。夕方から急に、すべてのやる気が失せた…

こんな時に見るべきエンタメは、いったい何だろう、と考え
Netflixで『妻、小学生になる』を一話から見始めた。二回目の鑑賞。

最後にどうなっているか分かっている上での再見は、ちょっとヤバい位に、1話から泣けてしまって、というか変な声が出てしまい絶対誰とも一緒に観れない状態で。そんなこんなで、2日間で全10話見直してしまった。

インスタ投稿では1話の感想しか残ってないけど、最後まで完璧に好きだった。2回目の鑑賞でその思いを新たにした。


【あらすじ】

10年前に愛する妻(石田ゆり子)を失い、生きる意味を失った夫(堤真一)とその娘(蒔田彩珠)。彼らが思わぬ形で妻と奇跡の再会をするところから物語は始まる。なんと妻は生まれ変わって、10歳の小学生の女の子マリカ(毎田暖乃)になっていた! 夫と娘はそんな妻の姿に戸惑いながらも、10年ぶりに彼女に尻を叩かれ叱咤激励される。この物語は、彼らのみならず、一家に関わる周りの人々が「生きること」に再び向き合おうとするちょっと変わったホームドラマである。

【感想】

あらためて、奇跡のようなドラマだと思った。ちょっと信じられない位に色々なものが巧く噛み合わさっていて。

最初にこのタイトルを見た時の、鼻白んだ第一印象を憶えている。
「よくある転生もの?妻との恋愛を小学生に変えてなんか胸キュン?みたいな?
あーーー。見なくていいかな。」
大好きな毎田暖乃主演にも関わらず、この勝手な思い込みのせいで、観るのがなんと遅れたことか。

だから、このドラマの数少ない、そして最大の弱点は「タイトル」じゃないだろうか。(ちなみに漫画原作なのでタイトルの変更はあり得ない)

観てよかった。出会えてよかった。自分にとって本当に大切なドラマになった。

【以下ネタバレあります】
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フェミのイベント企画会議

亀貝のバリスタカフェで、ご近所のとってもワクワクする話と、フェミニズム放談で数時間。
久しぶりに、周りのお客さんがどんどん入れ替わって、知らないうちに全員いなくなってるあの感じを味わった笑。

自分はどんな話を読んだとき、どんなエンタメに出会った時、知り合いのこんな言葉に出会った時に、エンパワメントされるみたい…て話をしたかったのと、ブックライト含め、これから関わっていきたいイベントとは…みたいな相談。じんわり良い時間だった。

センシティブな話題、政治的な話題を含めこんな風に安心して話せることって、実は稀少で大切で。またこうやって少しずつアイデア生まれていくといいなぁ。たとえばイベントで実際に集って話したいけど、話しきれないこと多いよね。からの素敵なアイデアとか、皆さんやっぱ凄い。

そんな貴重な時間に、資料として持って行くつもりだった本の詰まった鞄を、丸ごと忘れてしまっていた。笑

昨日話に出した本たちです。

最近自分の買ったzineを整理してて、結構な冊数になってることに驚いた。zineってオススメしてもされてもその時は既に入手しづらかったり送料のかかる通販しかなかったりして、それを少しでも解決するのが貸したりその場で読んでもらうことだったり、なのかな。

今までzineを貸すことは気持ち的に少し落ち着かなかったのだけど、読んで知られて続刊を買ってもらえるなら(現在入手困難な場合は)良いことじゃないかと勝手に納得させた。今なら著者に対して簡単にリアクションも送れるし。
だから、作るだけでなくzineを読むテーマで沈思黙読会やっても面白いのかも、って思った。

そうそう、4/20(日)開催の「本の海に潜る日(新潟版沈思黙読会)」も、まだ若干名大丈夫受け付けてます。興味ある方は私までDMください。



あと『仕事文脈 vol.25』の第2特集「ふつうに複業」は色んなケースの働き方や時間の取り方が書かれててめっちゃ面白いよ。皆興味がある内容だと思う。こんな風に今!な題材をキャッチアップするのがいつも上手で大好きな雑誌です。

NHKアナザーストーリーズ 『「侍タイムスリッパー」超低予算時代劇はこうして誕生した』

NHKアナザーストーリーズ
『「侍タイムスリッパー」超低予算時代劇はこうして誕生した』

めちゃくちゃ良かった。

3/28(金)11:15〜12:00
NHK-BSで再放送!お見逃しなく!

1)監督周りのエピソード
2)低予算の中支えた太秦の職人たち
3)指南役の予定で撮影直前に亡くなった故・福本清三さん。


自主製作で作られたこの映画が、単館から口コミで全国へ公開が広がり、日本アカデミー賞作品賞受賞に至るサクセスストーリー。どこをとったって面白くない筈ないし、監督によるzineのようなパンフレットを買った人は既にこれを疑似体験してもいるのだけど、この番組も、進むにしたがってこれでもかと盛り上げていく見事な3部構成だった!全40分。

・あのラストシーン、真剣らしさを感じさせるための殺陣の指導に痺れた…

・代役で指南役になった峰さん、50年も一緒に福本さんを敬愛して殺陣をやってきた。彼を失い目標を失った彼が…。ああもう涙涙。

・真田広之の指名でSHOGUNにも呼ばれている衣装の古賀氏。コストを抑えるために新規製作を行わず有りものから流用するのだが、監督のワガママにもめげず「Googleのように(安田監督)」衣装を何度でも引っ張り出してくるその意地。

・主人公が最初に有名になるシーンの衣装は福本氏のもの。京都の皆は誰もが知っている有名な衣装らしい。あのシーンの海老反りとは。

・みんな好き過ぎる山口馬木也氏のコメントも、真摯に演技に向かうその姿も堪能!

オンデマンド入ってなかったら220円で単品購入も可。「侍タイムスリッパー」のファンで、あのパンフレットにしびれた方はぜひ!

ドラマ『晩餐ブルース』がいい

今期ドラマの投稿で、ひとつ抜けてた。

『晩餐ブルース』(テレ東)

【あらすじ】
人生や仕事に悩む20代男性3人。TVディレクター、料理人、離婚したての元同級生が、ふとしたきっかけで料理人の家で、一緒に晩ご飯を作り食べる「晩活」 をはじめることに。美味しい食事の時間を通じ、お互いの弱さに触れ合っていくようになる。

【感想】

TVerでしか観ることができず(後でNetflix配信も始まった)何話か見逃しています。その上での感想。

テレ東の30分ドラマ、『きのう何食べた?』『コタキ兄弟の四苦八苦』『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』他にもあったと思うけど、この30分しかない枠でさくっと観られる名作を作るのが、上手だよねぇ…。

主役は井之脇海演じるTV局のドラマ新人監督。この彼の仕事風景が、いかにも業界ものドラマにありがちな派手な感じじゃなくて、仕事内容も悩みも、とってもリアル。

たとえばシナリオのプロット会議、キャスティングの方法、ロケハン、「良い作品を作るために」休みなくやってくる事務仕事の煩雑さ。同僚とのちょっとしたセリフのやり取りを通じて、実際何が大変なのか、ちゃんとリアルな「仕事」として伝わってくる。

ありがちなTV業界ドラマって
「監督になった・なれなかった」
「スポンサーの○○とトラブった」
「役者の誰がおろされた」
とか、分かりやすくしようとして、こんなプロットばっかりになりがちだよね…。特に観ている自分達が馬鹿にされているような気さえする。

主人公でTV局勤務の彼は、真面目で人のことを気遣うこともできて、きっと仕事もできるタイプだろうに、日常の細かで膨大な業務とクリエイティブな現場ゆえの気苦労でどんどんすり減っていく。清潔そうな見かけと裏腹に部屋は相当な汚部屋。じわじわと観てるこっちにも迫ってくる。

料理人の彼も、離婚した彼も、そう。若いこの時期の生きづらさと痛みがとにかくリアルで、地についてて、まずそこに惹かれた。TV局の同僚の穂志もえか(SHOGUN受賞で有名になったあの人)はもう最高です。降参です。


3人の会話は、元同級生と言うには結構なぎこちなさだし、皆の演技が決して「巧い」とは言えないのだけど、そのあたり全部含め、自分には分からない世代のリアルさに見えなくもなくて。。

特筆すべきはOPとEDのカッコ良さ。OP曲レトロリロン『カテゴライズ』は今一番のヘビロテ。今期ドラマで一番かっこいいOP-EDだと思うのだけど、そもそもどちらも無いのが世界の主流よね(ホットスポットなどはどっちもなかった)。

別に主役3人の今後をこれから追っていこう、て気になる訳でもなく推しにもならなかったけど、とっても良いドラマ。次回で最終回!
(フードスタイリングは飯島奈美さん)

自主朝ドラ『虎に翼』2度目の最終回

自主朝ドラ『虎に翼』が、今朝最終回を迎えた。

※自主朝ドラとは…
現行放映の朝ドラがNot for meな場合に、過去の名作をオンデマンドで毎朝同じ時間に観ること。
これまでに『おかえりモネ』『あまちゃん』『ひよっこ(途中まで)』などを実施済み。
1日1話にしたいところだが、やめられずに2話3話続けて観てしまうことが多い。週イチ程度Threadsで感想を書いてきた。

最終週を含む数週間の
見どころ満載ぷりったらなかった。

それこそ初見時は、最後までどうなるか分からないので
「え?この間際にこんな難問ぶつけてくるの?」
「え?最終週にみさえ問題か!!」
など、ちゃんと終わるのかどうかハラハラしっぱなしで、その分ゆっくり楽しめていなかったようにも思う。これは再見したからこそ分かったこと。

2回目は、最後の終わり方も、そこまでの展開も分かっているので、落ち着いて、一つ一つのトピック(あっという間に過ぎ去る位テンポが速い)を、漏らさないように噛み締めて、楽しんでいた。

毎日感想を書きたいが、とてもじゃないけど追っつかない位、見どころ、名セリフ、名シーンのオンパレード。

特に最終週は「エンパワメントされる」とう言葉が、自然に頭の中に浮かんできた。この気持ちこそ、毎朝放映の特殊なこの枠にぴったりだよなぁ。

ここまでの朝ドラはなかった。

ちなみに自分の歴代TOP3は

カーネーション
あまちゃん
おかえりモネ

この中で『虎に翼』はちょっと別枠…。本当に特別で特殊。時代ものなのに現代の問題がそのまま盛り込まれていて、こんな作り方が可能だっていうことを1度知ってしまうと、この後の時代モノ新作をちゃんと楽しめるのかどうか、少し不安になる位。

何ならこの後また最初から始めても全然良いってくらい。
シナリオ本が未だに高価で入手できてないけど、いつか無理なく手に入るようになったら嬉しいなぁ。

「とらつばナイト」の第2弾やりたいね〜みたいな話も去年あったけど、何人か集まれば「ナイト」でも昼のお茶会とかでも良いし、考えますので。コメントやメッセージください〜

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NHKオンデマンドは月1000円。『虎に翼』を2000円=映画1本分で、2か月かけて観るだけでも充分に元はとれると思う…。その他にもオススメドラマがてんこもりです。別にNHKの回しものではないけど、ドラマ以外のドキュメンタリーもすごく面白いので、超お薦めのサブスク!NHKオンデマンド独自の契約でも、AmazonプライムやU-NEXTのチャンネル登録でも可能。

TVドラマ『東京サラダボウル』『御上先生』『秘密』『ホットスポット』

1シーズンに4本もドラマを追うことなんて最近あり得なかったので記録を残しておきたい。
他にも夜ドラとか気になるのはあったのだけど…これくらいが追っかける限界よね。

1)東京サラダボウル(NHK)
外人ゲスト俳優が毎回凄かった。奈緒の良さが全面に推せる素晴らしい脚本。松田龍平にこんなに泣かされたのは初めて。そもそものプロデューサーの製作動機が
「不可視化されてる在日外国人をちゃんとドラマに出すこと」
だったこともあって(パートナーも外国の方らしい)、脚本はもちろん、演出も画も素晴らしかったー。後半の三上博史出演がなかったら今年俺内ベストドラマをあっという間にかっさらっていっただろう。三上以外のキャスティングは全員150点。

2)御上先生(TBS)
丁寧な学園ドラマ+政治陰謀もの。学園ドラマの気持ち良さを思い出させてくれる。教育問題の要因を社会構造に繋げるのはこの世の中では当然のことだ。それをしっかりやってるだけでも気持ちいい。推しの蒔田彩珠も珍しく明るめの役柄で快演。窪塚洋介の息子が出ていることは長女に教わった。良い役だったよ。

3)秘密(カンテレ)
日本資本では絶対にまともな映像化は無理だと思っていた(現に映画は大失敗)清水玲子の大傑作ハードコア漫画を、その真髄を、ちゃんと脚本・映像化している。驚いた。すげえ、参った、すみませんでした。でも何度でも言うけど、清水玲子のSFに早く気付いた方がいいぞハリウッド&Netflix。


4)ホットスポット(日テレ)
説明不要。ヒットメーカー:バカリズム脚本による今期一番熱かった大・大人気ドラマ。ぜひ彼には朝ドラをやって欲しい。キャスト全員良すぎ。楽しかった〜。そして衣装ね!毎回の見どころだった。バカリズム、次のドラマも超期待。

スタジオジブリ『熱風』3月号より、歴史建物保存の意義について

スタジオジブリ『熱風』最新3月号


塚原あゆ子監督ロングインタビューはネタバレ全開なので(冒頭の鈴木Pとのやり取りは面白かった)鑑賞後にとっといて。

前川國夫設計・神奈川県立図書館の改修(’27完了)についての記事が読み応えあった。

1)役所の担当者
2)BACHの幅氏
3)彼のディレクションで改修前の撮影を担当した潮田登久子&サポートの島尾伸三(しまおまほさんのご両親)

それぞれのロングインタビュー。藤森照信氏も前川國夫の打ちっぱなしに関した短いコラムを寄稿。

この図書館でしか買えない図書館の写真集は是非見てみたい(幅氏がヴィネスパでもやってる一連のサイトスペシフィックなプロジェクト)。

しかし色々思うところが多かったのが、いかに前川建築であっても取り壊されてしまうことが多いという話。そして「経済的に計れない価値を説明して理解してもらうこと」がいかに難しいかと語る担当者。

そうか…そうなのか…。2度と作れない魅力のある建築物を残す意義を分かってもらうことは、やっぱりそんなに難しいことなのか。世界の別の場所に行けば当たり前でくどくど説明する必要もないほどの「意義」。が、伝わらない。これが地域性、国民性ってやつなんだろうけど。


旧齋藤家別邸の保存活動に参加した時を思い出す。恐らく少なくない人が保存には賛成してくれるが、予算を通せるほどまでに表面化されないというか実効化されないというか。
だからこそ、啓蒙の前段階で、子供の頃から当たり前に価値を知ってもらおうと、当時は「保存が叶ったら子供向けのイベントをやりたい!」と息巻いていたものだったね…全然できてないや。

政党の広報の方と話をしていてもつくづく思う。草の根の大切さ。これを忘れちゃいけないんだよな。

同記事では、図書館の意義、それも中央館(県立など)と市町村立のそれぞれの役割の違い、的な話になるほど〜。
ちなみに前川國夫氏は学校町出身だそう。

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毎号楽しみな青木理の「日本人と戦後80年」。今回は角川歴彦氏。所謂「人質司法」にまつわる問題。
彼が東京五輪スポンサー選定を巡る賄賂容疑で7か月も長期拘留され、命に関わる持病の薬も飲めず、診断もされず、まさに「国による殺人」といっても全然過言ではない扱いを受けた、その内情。凄まじいですよ。え?これが本当に近代国家?と信じられない思い。

ウィシュマさん他、外国人の入管・留置での扱いは言語道断で今すぐになんとかしないといけない話だけど、これもう国全体の問題なんだね。

角川氏はこの件で国会賠償請求訴訟を起こしていて、ある意味遺言代わりに戦っていきたいそうだ。

『総特集 佐藤史生 〜少女マンガが夢見た未来』

『総特集 佐藤史生 〜少女マンガが夢見た未来』(河出書房新社)

2010年に59歳で亡くなったSF漫画家・佐藤史生。
著作も少ないのでほぼ全部持っている。唯一無二の世界観。大好き。

坂田靖子、萩尾望都、木原敏江らの語る、描く佐藤史生。あの大泉サロン時代の話もいろいろ(これ書く人によって色々見方違ってて、最近のドラマの流行りみたいで面白い。ドラマ化して欲しいけど、難しいだろうなぁ)。

さらに本人の手書きの手紙やインタビューなど、とんでもなく!充実した内容。

これ一体いつの刊行?と思いきや、2024年6月初版なのです。確かそのきっかけが中のどこかに書かれていた筈。

今になってこういう本が出るのは本当に嬉しいし、素晴らしい仕事に心から感謝です。
関係者の皆さま、ありがとうございました!!

映画『憐れみの三章』感想

『憐れみの三章』をAmazonレンタルで。
監督:ヨルゴス・ランティモス(『ロブスター』『女王陛下のお気に入り』)
主演:エマ・ストーン/ジェシー・プレモンス/ウィレム・デフォー

【あらすじ】
選択肢を奪われながらも自分の人生を取り戻そうと奮闘する男、海難事故から生還したものの別人のようになってしまった妻に恐怖心を抱く警察官、卓越した教祖になることが定められた特別な人物を必死で探す女が繰り広げる3つの奇想天外な物語を、不穏さを漂わせながらもユーモラスに描き出す。
「哀れなるものたち」にも出演したウィレム・デフォーやマーガレット・クアリーのほか、「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のジェシー・プレモンス、「ザ・ホエール」のホン・チャウ、「女王陛下のお気に入り」のジョー・アルウィンが共演。3つの物語の中で同じキャストがそれぞれ異なる役柄を演じる。
(映画ドットコム)

【感想】
正直さっぱりストーリーの意味は分からない。全然分からない。え?なんで?の答えは劇中ではやってこない。三章の繋がりも良く分からない。

なのに、最後まで飽きずにきっちりと楽しめる。楽しむ…?いや間違いなく映画として楽しんでる。

こういうのを観ちゃうと、脚本至上主義の自分の信念が多いに揺らぐわ。
引き寄せられる魅力は『ツイン・ピークス』の新シリーズを観てる時の気持ちにも似ていた。あれはリンチ的お楽しみが想像できたりしたけど、こっちはもっと五里霧中。なにこれ?でも観ちゃう。

自分が観たランティモス作品の中でも断トツに、ワケワカ。でも面白い。

こういう時は他の人の感想を聴くのが楽しみなのだけど、Podcast『映画雑談』はさすがの面白さでした。良かった!
結論「監督はこの映画で「選挙に行け」と言ってる!」って笑。
なにそれ?と思った人は聴いて欲しい。
セットでオススメです。

●完全にジェシー・プレモンス案件!!!
エマ・ストーンも良かったけど、全部彼が持って行った感じ。あとウィレム・デフォー。スタイリングもめっちゃいい。エマ・ストーンの狂気演技がこの2人の中ではぜんぜん普通。馴染んでる感じ。


●自分の中では今作で完全にジェシー・プレモンスは(デイモンそっくりさんではなく)めちゃ推し役者になった。
彼の顔演技が存分に、堪能できる。それだけとっても劇場で観たかった…。


●そもそも『哀れなるものたち』を観ずにこっちを先にって、どうなんと思うが、あまりに秀逸過ぎるポスタービジュアル故に、なんだろうと思う。凄い。

映画『ラストマイル』と子供への甘えについて

沖映社による、映画『ラストマイル』にまつわる話。とってもとっても満足です。あちこちで溜飲下げまくり。めちゃくちゃ良かったので『ラストマイル』観た人、野木亜紀子ファンの人、オススメします。

なんかこう、映画としては絶賛でき…ないもやっとした理由がいくつも、解像度高く解説されていて納得!
同時に、やっぱり人によって許せないジャンルって全然違うんだなぁ、って。改めて思う。

たとえばここで語られる「爆弾の規模が違い過ぎてありえない」話って、言われるとあーそうだなーって思うけど、映画観てる時は1つもひっかからなかった。正直「へぇ〜」って印象。

あとこの映画での爆弾の仕込み方って、正直全然分かってなかった。代行出荷を云々ってやつ。これもそもそも穴がある設定らしいのだけど、ひっかかるより前に理解できてなかったので笑。これもへぇ〜だったな。


このかんじ、俺がMIU404や、こないだ見た『ウィキッド』に対しての話をして、聞いてる人の気持ちなんだろうなーって。
自分の場合は、沖映社のような解像度高いひっかかりと言うよりも、「ここでそんなこと言うか?」「この流れでそんなこと思う?」「プロとしてこの場でそれはないでしょう」的な話ばかりで、これ共有できる人って多分少ないし、共有できるかどうかをちゃんとアタリをつけてから話すべき。



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…なのに。先日長女と一緒に『ウィキッド』を観た帰りに、相当持論をぶちまけて、「これがちょっとどうなん」「これありえんでしょ」を、大してアタリもつけずに話してしまって、大失敗。

これさぁ…。多分友人だったらこんなことしないと思うんだよね。事前にもっと慎重に、この話をしたら傷つけないか、感情を害さないか、を測ってから話す筈(足りずに傷つけてしまっている人も絶対いると思うけど。ごめんなさい)。

家族だから、あと最悪なのが自分の子供だからって、甘えて、我慢をしなかった。
いやもう観てる間からめちゃめちゃ溜まってたの。なんなら不快で納得できない展開がすごく多くて。
※多分に自分の不理解故のことなのでそれこそこの件は省きます。

その「話したい」欲求を、我慢できなかった。醜悪です。反省しています。
という謝罪を、未だちゃんと話せていない。いくら考えても伝えなきゃゼロ。

沖映社や映画雑談の人たちのような、ちゃんと伝えられる気持ちや経験や技量を持った人達、しかも自分の過ちをちゃんと反省して次に活かせる人達を尊敬するし、こうやってさまざまな話が聴けてマジ嬉しい。自分ごとにできる。

映画『トワイライト・ウォリアーズ』感想

この映画については @ninnymoa が激推ししていたので前から知ってたのだけど、新潟の上映はTジョイの真っ昼間だけで「ああこれは劇場逃すパターンだな…」と思い、まずは『九龍城探訪』を買って九龍城熱をなんとかしよう、と思った。

九龍城と聞いただけで身体の奥が熱くなってくる…あの手の廃墟のような入り組んだ建物に、無条件にヤられちゃう人、いるよね?自分はそう。#士郎正宗 のマンガもまさに九龍城好きの流れだな。

『九龍城探訪 魔窟で暮らす人々 – City of Darkness』(イースト・プレス 2004)

九龍城のリアルな写真集としても勿論のこと、そこに住むさまざまな職種の人達に普段の生活のことを詳しく聞き語りしていて、これが本当に面白い。まさに『九龍城の生活史(by岸政彦)』といった趣。高価な本だが文章量も相当で、充分に元がとれる。

この面白本を中盤まで読んだ頃に、急に映画を観に行けるチャンスがやってきて、観てきましたよ『トワイライト・ウォリアーズ』。(2月13日頃の話。だけどまだTジョイ新潟万代では上映中)

自分は1970年生まれ、ジャッキー・チェンの香港映画が子ども時代にめちゃくちゃオンタイム。とは言えあの手の格闘ものにそんなに心動くタイプではなかったので、それなりに「観てはいる」位の関わり。

そんな自分でも、ちょっとあの頃の気持ちを思いだした。なんというか、あの時代の空気というか。前向きしかないあの気持ち?
間違いなく今でしかできないクオリティの映画だけど、昔に作られたかのようなポジティブな気持ちを追体験した、と言えばいいのか。

内容はギャングのシマ争い&カタキ討ち、対決して勝つ!みたいなストーリーで、少年マンガそのままの喧嘩ンシーンの連発。しかも九龍城そのままに見える素晴らしいセットを上手に使った、めちゃハイクオリティなアクション。

そのシマ争いもカタキ討ちも、ちゃんと脚本が練られていてツッコミ処が全然無い。王道の内容を王道のままちゃんと丁寧に隙無く作られている、とんでもないレベルのエンターテインメント。

登場人物のキャラ立ちも凄くて、まー魅力的。中でも自分は強いおじいさん達が好きで、龍兄とサモハンはフィギュアが欲しい位だ。最初から最後まで最高だった。

実際の画像が流れるエンディングには泣いてしまうし、『九龍城探訪』には取り壊し近くの様子も書かれてるしで、劇中の物語とは別に、心の中にある「いずれなくなるこの場所」という哀愁がもう、ずっと切ないのですよ。

ただし。
自分は…カンフーが嫌いな訳じゃないけど、この映画、刃物を持って戦うシーンが多くて。そのキャシャンキャシャンてゆう音が、もう痛そ過ぎて苦手でした。生理的に無理なの。なので後半の刃物アクションシーンが相当厳しかった。

ギャング映画とかノワールとか、少年マンガに心がめちゃくちゃ躍るタイプにめちゃオススメです。『九龍城探訪』も、読み終わったら #かめかし文庫 入りする予定。

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