映画『運び屋』感想

『運び屋』をユナイテッド・シネマで。2D字幕。

恐そうなビジュアルや、予告編の緊張感溢れるイメージに騙されないで!
80過ぎてもお盛んなチャラ男じいさん(クリント・イーストウッド)が主役の、明るく楽しいコメディだよ!(ドキドキするところは、あまりない)

ただこのアールじいさん、すごくチャーミングで愛らしい人なんだけど、家族にとってみたら基本どーしよーもないダメ男なので、そのあたり割り切れないでずっとイライラしちゃう人は結構いそう。

自分的には「まぁしゃあねえなぁ…」と苦笑いしながら楽しんで…でもやっぱりホロッとさせられました。なんか気持ち的には『ジャージー・ボーイズ』あたりになる?イーストウッド佳作。

どうしようもない過去を背負った人生。そんな人生の晩年でも、まだやり直すことはできる。鍵は「価値観をちゃんとアップデートすること」。
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そんなイーストウッドの想いが込められた主人公アールは、「ニグロ」の呼び名をたしなめれらた時も、レズビアンバイカーズの集団に出会った時も、そうか、今はそんな時代なんだな。とあっさり受け入れる。このあたりも「許しちゃう」ツボなんだろう。
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『グラン・トリノ』の主人公とは正反対のようでいて、どちらもきっとイーストウッド。彼自信の老いを通じて人生の後半期を考えさせられる。前向きなのがいい。

あの歳で、あれだけ多作で、今の世の中に大切なメッセージを素早く見抜き、タイミングを外さない早撮りでリリースする。圧倒的存在感。あと何作か分からないけど見守り続けたい。
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●イーストウッド自身の現在は、この「アール」程には老いていないそう。背を丸め足を引きずった様子はあくまで演技で、本人はずっとしゃんとしているそうだ。女性遍歴については言わずもがなで、アールよりもよっぽどお盛んらしい。
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●劇中、中年期になるまでアールとほぼ断絶状態だった娘を、イーストウッドの実際の娘が演じている。その娘も生まれてからほとんどイーストウッドには育てられていないそうだ。何の罪滅ぼしだ。

急な頭痛と飲酒の関係

日曜日のお昼、子供会・六送一迎会の打ち上げで、お店で相当量の食べ物と、生ビールをジョッキ3〜4杯ほど吞む。

次女と自転車でお店に行った際に軽装過ぎて、帰り道がとんでもなく寒い。もうこれだけで病気になるだろうって位、寒い。

帰宅後は次女の補助輪無し自転車練習に付き合って、相当走る。その後疲れて少しだけ昼寝。

家の中にいても、夕方から少し寒気がする。寒気と寒いのどっちか分からない。

19:30、少しの頭痛が急激に痛みを増す。あまりにも痛くて吐き気を伴う。全身悪寒。ついに吐く。夕飯は殆ど食べられなかった。熱は無い。

21:00、『いだてん』も殆ど頭に入らなかった。どんどん増す頭痛と吐き気。妻に救急病院に連れていってもらう。

診断。
お酒を吞んで拡張した血管が寒さできゅーーと収縮し血が止まっちゃっていて、
それが家で急に開放されて、血が頭に押し寄せたことによる頭痛だと説明される。
あとお酒吞んでいると脱水症状になりがちだということで、吐いたこともあり点滴を受ける。

点滴後は頭痛も吐き気も悪寒も収まり、翌日も問題なく出勤できた。
飲酒の後の温度変化には要注意、ということだろうか。

先生の最後の一言
「病名は『急性アルコール中毒』ですね(笑)」
だそうです。

映画『ROMA』感想

『ROMA』をNetflixで。

アート系映画だよ〜とさんざん聞いていたので退屈するのかな、と思いきや。
退屈なのは冒頭のオープニングクレジットだけだった(面白いカットなんだけど、いかんせん長い!)。 アルフォンス・キュアロン監督の幼少期を映画化。メキシコのコロニア・ローマ地区の裕福な白人家庭でお手伝いとして働く先住民女性・クレアの日常を描く。
存命の本人に徹底的にヒアリングして構成したので、9割以上本当の話だとか。

観たことのない撮影の連続で飽きるヒマなんてなかった。全編モノクロで映像の密度が超高い。地味で驚きのカメラワーク。

見たことのない、人の演技とゆっくりパンのマッチングにまず驚く。これが町中に出るとドリー移動で同じことをやっていて、70年の背景美術にまた驚く。2回目は可能なら映画館で観たい。

もともと素人だという主役をはじめ、何故こんなナチュラルな演技が可能なんだろう。どこまで計算してどこまで仕込めばこんな映画が可能になるんだろう。自分にとって新しい世界を確かに垣間見た。クライマックスほか忘れられないカットがいくつもある。

テーマはここでも差別。人種差別や男女差別。恋人のクソっぷりがもはや笑ってしまうレベルだけど、残る。

キュアロンが実の母と同じように慕っていた家政婦クレア。彼女や、実の母が当時どれだけの女性差別、人種差別の中にいたのか幼少期のキュアロンには分かるはずもなく、この映画はその罪ほろぼしのために製作したそうだ。

カメラがパンかドリーの横移動しかなく、アップもあまりないこの構成は、監督曰く
「過去にタイムスリップした僕が、魂だけなので人に触れなくてただ見ているしかないカンジ」
を表現しているそう。だから最後の最後にカメラが別の動きを見せると否が応でも目立つ効果がある。ちなみに今作は監督・脚本に加え撮影もキュアロン。

できるだけ大きな画面で、そして音響がすごく良いでのサラウンドを体感できる環境で観た方が良いと思う(ちなみに劇伴は無し)。あと今はイオンシネマ西で1日3回も上映やってるよ!イオンシネマ西の音響はユナイテッドや万代からすると好きになれないけど、自宅よりは良いしね。

映画『グリーンブック』感想

『グリーンブック』をユナイテッド・シネマで。

小学生後半なら一緒に観ても大丈夫。素晴らしいエンターテインメント作。『ドリーム』が好きな人には特にお薦めしたい。できればクリスマスに観ると最高。

最初に企画を聞いてからこの日まで期待していた内容を、見事にすべて100%以上で返してくれた。満足しかない。デブまっちょなイタリア系チンピラのトニー(ヴィゴ・モーテンセン)と、知的でおぼっちゃん育ちの黒人天才ピアニスト・シャーリー(マハーシャラ・アリ)の珍道中。と聞いただけで、そりゃ絶対面白いでしょ。

流行りの実話ベースで、脚本はヴィゴ演じるトニー・リップの実の息子と監督が、共同で書いている。パンフレットにある、実際のトニーの家族と、この映画の深い関わり(実際の親戚が役者で出ていたり)を読めば映画のあのシーンが思い出されてニヤニヤすること請け合い。パンフのボリュームはそれ程ないけど、どの記事もぐっとくるのでお薦め。

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黒人差別が法的に許されていた最後の時代、60年代初期の南部をコンサートツアーで廻る訳だから、メインテーマは黒人差別。いや黒人に限らず「差別は無意識化で行われる」という『ドリーム』のあのテーマ。世界的に有名なピアニストが、コンサートでは白人富裕層にちやほやされながら、「いや黒人はここでは食事ができないんです。ほんとすんません」と同じ会場で食事をすることさえ拒まれる。

エグゼクティブ・プロデューサー陣には、あのオクタヴィア・スペンサーが名を連ねている。脚本を企画初期の段階から関わり、彼女独自の差別に対する考察がとても貴重だったと監督コメントにあった。

ずっと押し黙り反暴力で貫くシャーリー(アリ)と、ついつい口や手が出るトニー(ヴィゴ)のやり取りを通じて、異なる環境の人間同士の繋がりと理解について、セリフではなく脚本とその演技・表情で観客に考えさせる。しかも基本はギャグだ。

ここまではまだ想像できたけど、本作はすばらしい音楽映画でもある!シャーリーの演奏シーンがどれもこれもいい。しかもすべて違う曲ってのがポイント。いくら良い曲でも映画の中で被ることで「またこの曲?」って少し冷めちゃうことあるじゃない(『アリースター誕生』はそれでちょっと残念だった)。

家に帰ってから実際のシャーリーの曲聞いたけど、格好良かったなぁ。でも映画全体を貫くBGMはこのシャーリーの曲じゃなくて、60年代ならこれでしょ!なリズム&ブルース。このミクスチャがすごく気持ちいい。当時、黒人の曲は大好きなクセに自然体で人種差別している白人達。そのリアルな様子を音楽が浮かび上がらせている。

すべてのアクションが対になっているかのような構成力にも、ほんと褒めるところしかない。最初から最後までずっと好き。本当のエンターテインメントってこういうやつ。

以下ネタバレ含むかも━−━−━−━−━−━−━−━
続きを読む

映画『焼き肉ドラゴン』感想

『焼き肉ドラゴン』をiTunesレンタルで。

大泉洋の役が、途中までは本当に許せないダメ男で、途中のクライマックスシーンも全然「はぁ?」って冷めちゃうんだけど、その後どんどん思い入れが強くなって、最後は結局泣かされました。結果オーライ。

真木よう子、井上真央、桜庭ななみというまったくあり得ない美人3姉妹が住む、戦後大阪・バラック韓国人街のホルモン焼き屋が舞台。

白眉は韓国人の両親で、この二人に最初から最後まで持って行かれる。すばらしいキャスティングだった。後半「アボジ、私はまだまだ元気だから…」のセリフが最高。泣き笑い。

真木よう子は当然としても、井上真央のなにやっとんじゃワレ演技は見物。この路線もっとやって欲しいな。

そしてコレこそを書きたくてアップしたのだけど、
(片足を引きずる)真木よう子のシャツ姿シルエットが、ハチクロのリカさんそのものだった!頭のカタチ、首から肩のライン、みごとそのまま。

WOWOWぷらすと「ぷらすと的2018年ベスト映画」を観る

今日の総移動時間はおよそ6時間くらい…
道中のお供はWOWOWぷらすとの「ぷらすと的2018年ベスト映画」公開収録3時間弱。楽しかった〜。時には大声で賛同し、時にはブーイングしながら最後まで。『ペンタゴン・ペーパーズ』そこまでじゃないよ!とかw。傑作と言われてるものでも6人の中で結構賛否が分かれてた。合議制ベスト10ってのは面白いね。

映画ってつくづく思うけど、人によって全然違う「どうしてもひっかかる(嫌な)ポイント」がある。それは致し方ない。この「ひっかかり」が各作品の賛否を大きく分ける原因になってることって結構あるな〜って、見ながら思いました。

YouTube面白かったけど「3時間も観れない!」って人は、plus.paravi.jpの中で記事になっているので興味ある方は検索してみてください。

改めて今後の私的TO DOリスト
(2018で観のがして今後絶対観なきゃいけないリスト)
『若おかみは小学生!』
『A Ghost Story』
『ワンダー君は太陽』
『ダウンサイズ』
『ブリグズビー・ベア』

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【ぷらすと的2018年ベスト映画 ベストテン】
結果は以下の通り

1位:ペンタゴン・ペーパーズ

2位:君の名前で僕を呼んで

3位:ブリグズビー・ベア

4位:きみの鳥はうたえる

5位:万引き家族

6位:菊とギロチン

7位:孤狼の血

8位:タクシー運転手
約束は海を越えて

9位:ブラック・パンサー

10位:カメラを止めるな!

【ぷらすと的2018年ベスト映画 個人賞】

西寺:ファントム・スレッド

宇野:15時17分、パリ行き

添野:ランペイジ巨獣大乱闘

松崎健夫:ワンダー 君は太陽

花くま:ザ・プレデター

矢田部:顔たち、ところどころ

松崎まこと:カランコエの花

池田:若おかみは小学生!

映画『スモール・フット』感想

『スモール・フット』をiTunesレンタルで。

やっと配信になった!お薦めです。

雲の上の山奥で暮らす心優しいイエティたち。若いミーゴはある日、伝説の小さな足を持つ「スモール・フット」に出会うが、誰もその話を信じてはくれない。スモールフットを探しに村を飛び出るミーゴはついに、彼らの住む町へと辿り着く。

そう、我々が「ビッグフット」と呼んでいた連中から、人間を見た物語。全編ギャグ満載で、笑いっぱなしなんだけど、中盤以降、彼らの目を通した人間達の行動を見るにつけ、笑いながら考えさせられる…でもピクサーディズニーみたいに説教臭くないんだ。その加減が見事。イルミネーション作品との間くらいのバランス。すっげー楽しかった〜!
【お子様OK】

映画『バッド・ジーニアス』感想

タイ映画『バッド・ジーニアス』をiTunesレンタルで。内容は『ザ・カンニング』。(って50近くじゃないと分かんないか)

予想と違って結構ヘビー。エンタメ映画としてのクオリティは文句無し。どうしてもモラル的にひっかかる箇所、心情的に理解しかねる箇所がいくつかあるので手放しで大好き!とは言えないけど、でも多分殆どの人は気にもならないのかな。

主人公の貧乏天才学生役の女の子(モデル出身らしい)、どんなにダサい格好をしても誤魔化せないスタイルの良さ。めちゃくちゃカッコいい。激カワイイお金持ちおばかヒロインちゃん(憎めない天然キャラ)と良いコンビ。

まぁちょっと、その計画じゃうまくいかないでしょ、という設定の甘さを、超緊迫した編集と演出で見せる見せる。いやーこんな映画どんどん作って欲しい。今後もタイ映画期待大。

映画『はやぶさHAYABUSA』感想など

毎年、1・2月は結構なペースで映画を観ている気がする。正月休みの流れがあるんだろうな。 『はやぶさHAYABUSA』を観たのは、別に今日のタッチダウンを事前に知っていたからじゃなくて単なる気まぐれとか偶然だったか。よく覚えていない。竹内結子が見たかったのかな。

ラストはちょっとアレだったけど結構いいじゃんこれ!専門用語を余計な説明なく淡々と呟いていくプロフェッショナル系映画、好きです。竹内結子の他も、映画を観ない層ウケだけを狙ってキャスティングされたであろう面々も、皆良い仕事をしていたと思う。

類似作(全部で4つくらい同じネタの映画がある)を調べようと検索したら、この映画、どこでもぼろくそのけちょんけちょんにけなされていた。そういえば当時もこのバッシングの嵐で観る気をなくしていたんだった。色々思い出した。そもそも監督の名前だけで普段ならまず観ることはなかったと思う。自分の物忘れのひどさに、こんな時は感謝。聞くと観るとは大違いだ。

今日のお昼はJAXAのアーカイブ動画をずっと流していた。分かりやすい技術解説も驚きの画も出てきたりで飽きない。インパクターも無事動いて14年前の雪辱を果たした面々の笑顔も、PMの説明も、皆嬉し楽しや。よいタイミングで映画を観れて良かった。

映画『ファースト・マン』感想

『ファースト・マン』字幕2Dをユナイテッド・シネマで。ほぼネタバレ無し感想。ってみんな知ってるアレですから。

人類で初めて月面を歩いたニール・アームストロングと宇宙飛行士の物語。

賛否分かれるかも知れないけど自分はすごく良かった。この作品は映画館での上映を観逃さない方がいいです絶対。

当時の技術で月に達するまで飛行することのあまりのリスクに驚く。やはり今とは違う。誰もが知るあの「小さな1歩」に至るまでに、どれだけの犠牲があったかを、改めて知って考え込んでしまう。

次々に訓練中の事故でなくなる同僚。彼らを支え家で待ち続ける妻。感情を表に出さず、常に冷静で、家族にさえもあまり心を開かなかったニール。彼にとって月に行くことはどういう意味があったのか。

冒頭の衝撃的な悲劇から、彼にはずっと大切な人達の喪失が続く。それだけの悲しみを抱え、何故あそこまでの成果を残せたのか。あの危険とリスクの中で生還することができたのか。

その理由を、技術ではなく「人」で見せる。アームストロングとその周りの人たちを。宇宙を扱う映画でありながら、徹底的に「人」を描写し続ける。しかも主人公がほとんど喋らないのに(笑)これだけ心に訴えてくる、その演出と演技が素晴らしい。

ライアンにはいつもどこか空虚さを感じるけど、そんなところもニール役にははまったように思う。大好きな演者じゃないけど、納得です。『ブレードランナー2049』に続く名演。

これまでの宇宙映画でメインになったようなプロットが、意外なほどあっけなく省かれたりするが、かと言って蔑ろにされている訳ではない。むしろ映画の白眉は、時間こそ短いけれど宇宙の「画」だ。打ち上げシークエンスも宇宙でのシーンも、観たことのない臨場感。 『ゼロ・グラビティ』よりも息苦しい宇宙「体験」だった。

延々とジェミニやアポロの小さい窓からの光景だけを映し続けたり、ヘルメットに写る反射だけで宇宙の時の流れを見せたり。『ラ・ラ・ランド』でアカデミー撮影賞を撮ったリヌス・サンドグレン撮影監督がまたまた超絶いい仕事をしている。今回はノミネートされてないようだけど。

当時の空気を再現するためにすべてがフィルム撮影。CG合成無し。バックに巨大なLEDモニターで背景を写し撮っている。ロケット類も実物大かミニチュアを製作。映像の質感がハンパない。

月以外は16&35mm、月面では65mmIMAXフィルム撮影。さらに月の無音部分が加わることで、この「地球」←→「月」の対比が凄く効果的に見える。
ああ、これが宇宙に行くということなのか。

自分がその時(俺の生まれる1年前だけど)その場にいて、一緒に宇宙船に乗っているという圧倒的な現場感。

音声面でも、テルミン、アナログのテープディレイ装置、当時のシンセ、ぐるぐる回るレスリースピーカーを通して録音したトレモロ効果、など、あくまで当時の技術で作ることに徹しているらしい。勿論説明を聞かなければそんなことは分からないけれども、この映画に「音」が果たした役割はとても大きい。映画館で体験できて良かった。

感情を表に出さず、あまり喋らず、家族にさえ心を開かない、「1番冷静だった宇宙飛行士」が主人公。

熱い感動も、『オデッセイ』のようなザ・アメリカンな盛り上がりもない。明るさもない。ずっと不穏な映画。ずっと揺れてる(笑)。 だけどすごく魅力的。SF映画の新しい境地を少し垣間見た気がする。やっぱチャゼル監督すごいわ!

いやーすごかった。今んとこ今年観た16本の中でナンバーワン。

映画『パワーレンジャー』感想

『パワーレンジャー』吹替をNetflixで。(何で字幕版がない?)

日本初の戦隊モノがアメリカに行って、映画化して逆輸入。その辺まったく詳しくないけども、『ジュウレンジャー』が元ネタらしい。まず自分では観るジャンルではないけども、あまりに評価が面白くてつられてしまった。

実際この映画が「戦隊モノ」になるのは、後半1/4くらいになってから。

それまではずっと「変身できずに皆で訓練する高校生ドラマ」なので、どちらかと言うと『ジュマンジ・ウェルカムトゥザジャングル』とか『ブレックファストクラブ』とか高校生版グーニーズとか、そんなカンジで、実に楽しい!

どうしようもないイジメや、裏切りや、イヤな奴が全然出てこなくてサクサク進むし、その分多少薄っぺらい嫌いはあるにせよ、その明るさパワーで持って行かれる!
ただ全員のキャラがちゃんと丁寧に描かれているかと言ったら、かなり雑。そのあたりは前述の傑作達とは並ぶべくもない。

んで戦隊ものパートは正直興味ないのでどうでも良かったです。そもそも戦隊ものったって、ショッカー達とちょっと戦った後は、ずーっと巨大ロボのコクピットに座ってるだけじゃん。え?そういうもんなの?

戦隊ものが特にお好きな人以外は、前半のみお薦めします。前半楽しい!

『素敵なダイナマイトスキャンダル』感想

『素敵なダイナマイトスキャンダル』をiTunesレンタルで。

元白夜書房の編集者・末井昭さんのはちゃめちゃ人生を描いた自伝を映画化。原作未読。西原理恵子さんをデビュー作から読んでいる自分としては、「倍々プッシュ・先物取引で毎回大失敗・億単位で借金の末井どん」でお馴染みの人。以前働いてた会社では白夜書房の仕事を専門に請け負うセクションもあった。

70年代の美術と撮影と音楽が素晴らしくて、これだけでも観る価値がある。当時の喫茶店のやり取り、煙草で煙ったあの空気。匂いまで漂ってくるよう。

関係ないけど今年の弊社の年賀状はちょうど1960年後期の社内の写真を使っていて、末井さんが最初働いていたグラフィックデザインの会社とうまいこと被ってて色々興味深かった。

その後エロ本編集時代がずっと続くのだけど、ギャンブルや女で破滅的な生活を送っているのに、「会社では落ち着かないから」と自宅で相変わらず版下貼ってるその編集者根性が憎めない(イヤ他にも理由はあるのだろうけど)。業界覗き見的な意味でも面白い。

菊地成孔劇伴の不穏な空気がこの美術にぴったり。菊池本人はアラーキー役で出ていて、これも良かった。

柄本佑、熱演。劇中ではまるっきり末井さんに見える。
原作が出たのが少し前なので最近の様子が入っていないのが少し残念か。

『はじまりのうた』感想

『はじまりのうた』をNetflixで。

やっぱり良かった。今後ジョン・カーニー監督作品はすべて観ることに決定。

同監督の日本公開作品は
『ONCE ダブリンの街角で』『はじまりのうた』『シング・ストリート』の3作。Wikiによればまだ4作あって、特に前2作の間に作られた『Zonad』が気になるなぁ。

『フロリダ・プロジェクト』感想


『フロリダ・プロジェクト』をAmazonレンタルで。

フロリダ・ディズニーワールドの隣の安モーテルで暮らす若いシングルマザー・ヘイリーと5歳の娘ムーニー。毎月の家賃も払えず、母親はディズニーに来た観光客相手にパチモンの化粧品を売ったり体を売ったりして暮らしている。厳しく抜け出せない貧困層のリアル。

主人公母子も、周りの住民達の暮らしぶりも、子供やママ友とのやりとりりも、客観的に観たら相当なろくでなし。モラル的にアウト!なこと連発。悲惨に描こうと思えばいくらでもできるシチュエーション。

そんな底辺の暮らしを、この映画は子供の目線からユートピアのように描く。子供の目から見た、カラフルでワクワクに満ちた世界。遊びの基地となる何棟ものモーテルや廃屋、パンケーキの貰えるダイナー、観光客を騙して小銭を稼ぎ、仲間と舐め合うソフトクリーム、雨の後の虹、向こうの世界で上がっている美しい花火。

母ヘイリーはロクデナシだけど、娘を間違いなく愛していて、常に優しく、子供の目線で一緒になって遊ぶ。こちらからの「カワイソウ」なんて目線はどこ吹く風、常に笑顔の絶えない、本当に愛おしい日々。

だけどそんな生活はいつまでも続かず、終焉が刻々と近づいていく。

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●ムーニーを演じる子役がとんでもなく素晴らしい。町山智浩さんが『ギフテッド』の主役の子と並べていたけど納得。きっとこれからどんどん有名になるだろう。吐く言葉はろくでもないけど、あまりのキュートさと愛くるしさ、だからこその最後のある瞬間の表情に、胸を裂かれた。

●美人の母親ヘイリーを演じたブリア・ヴィネイトはきっと名のある女優なんだろうと思っていたけど、監督がインスタで発掘したデザイナーだそう。この映画の演技が認められて、次々と大作出演が決まっているようだ。

●この母子2人のシーンはどれもすごく幸せで、やってることは褒められたもんじゃないのに、できればこのまま続いて欲しいのになぁと自然と願っている自分に気付く。苦しく抜け出せない貧困暮らしで、周りからみたら相当に大変な状況だとしても、徹底的に「ジャッジしない目線((C)宇多丸)」で描くというこのやり方自体が、この映画の最大のメッセージだと思う。

●描かれているものと、描かれていない(ように見える)もの、その構造が巧み。最初観た時は普通の1シーンが、あとで考えると、胸が苦しくなるような破滅の予兆だったり。

●母子を見つめる、ウィリアム・デフォー演じるモーテル管理人の渋い演技もいい。一見何でもない場面に見えるけど、彼の動きを通じて、実はいつも危険と隣り合わせだということを思い出させたり。ここの演出すごい。

●射貫かれるような一瞬の「目」の演技が何回かあって、強烈に印象に残った。

●最初観た時には呆然となったラストシーン。でも観終わった直後に思い出しただけで打ち震える。これは歴代ベスト5くらいに入りそうなラスト。それまでまったく見えなかったアレが、最後の最後で初めて急に姿を見せる。まわりに居る観光客達が、主人公2人に比べなんと空虚に見えることか。

●全編通して圧倒的なビジュアルセンス!

まだ書きたいことはあるけど、とても自分の語彙では表現できない。あちこち見事!な一作だった。また見直したいな。『ギフテッド』とこの2本、最強・天才・カワイイ子役映画。

『ビフォア・サンセット』感想

『ビフォア・サンセット』はビフォアシリーズ3部作の2作目。少し前に書いた「2作目より3作目を先に観てしまった」アレです。Amazonプライム。

1作目『ビフォア・サンライズ』から9年後。パリの書店で再会した2人が、その2時間後くらいに再び別れるまでの物語。なのでほぼリアルタイム進行。延々と街を歩きながら2人で話し続けるだけの映画。すごいよ。これがずっと面白いんだもの。主役2人も一緒になって考えた、練りに練られた脚本らしい。たびたび出てくるウンチク話がイチイチ面白くて、聴き入ってしまう。

前回の感想では倦怠期夫婦モノみたいな印象を書いたけど、それはあくまで3作目の後半だけ。3部作のほとんどは、誰もがラブラブ恋気分を味わえる筈。センスが良くウィットに富み「へー!」なウンチク連発、時にすごく考えさせられるこの会話の妙!パリの町並みも楽しめる。気持ち良かった。

マンガの新規開拓

「マンガとうまく付き合えなくなって」と、
『フリースタイル』誌に宇田智子さんが書いてた。「このマンガを読め!2019」特集号。
掲載されている皆さんが、どうやって毎年、新しく面白いマンガと出会っているのか、分からないと。

そう、おれもここ数年は、続刊やよほど好きな作家の新作しか買っていない。付き合い方が分からないというより、もう少しなんとかしたい。昔はこんなじゃなかったのに。

今は書店でちら見ができないのが決定的に駄目だ。シュリンクは論外だが(これも外すのが本当にイヤ)、シュリンク無しの本でも「立ち読み防止」ビニール紐のせいで、自分好みの作品を開拓することが不可能になった。

ごくごく限られた激推し作品だけは抜き刷りを置いているけど、話にもならない数だ。書店は良い作品をお客様に紹介することを諦めているのか。ネットで評判を調べてから、買うのはAmazonじゃなくお店に来てくれとでも?

(近くの大規模書店(某パチ資本)のレジでは、立ち読み防止の黄色いビニール紐を「外しても良いですか?」と聞いてくる。そのたびに
「な・ん・で・お・た・く・の・ゴ・ミ・を・わたくしが引き取るかどうか、お聞きになるのですか?」
と思いながら、ぶち切れそうなのを抑えて「はい」と答えるのだ。
(最初のうちは少しでも改善してもらいたくて店員に伝えていたけど。もう何も変わらないのでやめました。)

店頭の新規開拓ができない、そんなこんなの状況を打破するために『フリースタイル』なんかのマンガ特集を買って、そこから試しに買ってみたりしている。あとはやっぱSNS情報が一番多いかも。

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写真はそんなやって買った新規開拓に加え、好きな作家の新作旧作。

フリースタイルで推されていたマンガ3冊、確かにみんな面白い!
面白いんだけど…多分ほとんどのマンガ好きに「面白い」と言ってもらえるような作品なんだろうけど、自分的に「これは一生つきあっていきたい!」までではなかった(上から3冊)。

●泰三子『ハコヅメ』:交番勤務女子の業界・人情もの。続刊はもっと盛り上がるのかも知れないけど、買うほどでない…かな。

●吉本浩二『ルーザーズ』:漫画アクション誌を創刊した編集者たちのノンフィクション。漫画的表現スキルがあまりに稚拙だけど題材が面白すぎるので、これはきっと続きを買う。モンキー・パンチの若き時代とか出てきます。自信もなく絶望寸前の若き彼。

●森田るい『我らコンタクティ』:こっそりロケットを作る内気青年とそれに絡む世間ズレした女子。1巻完結。これは面白かった!

●清原なつの『じゃあまたね』:高校大学とずっと大好きだった作家さん。その少女期を描く自伝。ドラマ仕立てではなく当時の流行ややっていたことを淡々と日記風に描いてる。う〜ん、なつのさんはやっぱり昔のSFやファンタジーが好きです。

●瀬野反人『ヘテロゲニア リンギディスコ』:「魔界」に入り魔物たちの言葉を解析しようとする言語学者の弟子の話。表紙から何から『ダンジョン飯』の二番煎じっぽくて、荻上チキさんが激推ししていなければまず買わなかったと思う。内容は…確かにオリジナリティはあれど、主人公のルックスから性格から『ダンジョン飯』の主人公と似ていて、もうスピンオフみたいな気分で読んでしまってた。続刊は…買う…かな

●九井諒子『竜の学校は山の上』:作者初めての作品集らしい。ダンジョン飯以前の中短編はそこそこ読んでるけど、自分の中ではそこまでの位置になかった。この短編集はそれらより一段上だった。忘れられない魅力がある。

まだまだ積ん読あるのでここらへんで。

#readinglist_dsm

NHK『いだてん』感想

『いだてん』最高!
毎回何も考えず45分間、家族で満喫しています。楽しい!楽しい!夢を見ているのかと思う位、期待に溢れる今年No.1ドラマ(予想)。 クドカン、大友良英、井上ディレクターの『あまちゃん』ドリームチーム!あまちゃんのキャスト、大好きな俳優達がたくさん。脇役がいない。皆が活き活きしてる。

特に好きなのは中村獅童演ずる四三の兄。他にもミシマ家のシマ、森山未來演ずる(大好きだった澪つくし料理帖を思い出す…)若き志ん生、峯田、キョンキョン、活躍は未だないけど神木君、いつもは嫌いなビートたけしでさえ、1人のおっさん芸人として面白いよ…!山本美月ちゃんまで!

オープニングは横尾忠則に山口晃(そう、うちの子供達はみずつち企画で山口先生に直接教えていただいたことがある)。そして大友さんのまた大傑作のOP曲!早くサントラが欲しい。
あと我が家ではいつも誰かが「逢〜いたかば〜ってん逢われ〜んた〜い♪」を謳っている。

おちゃらけているようで、全てのセリフに説得力がある。今のこの時期にオリンピックドラマをやることの稔侍をしっかりと抱き、2020をただ礼賛するなんてことがある筈もなく、当時のオリンピックと国内事情を(ギャグの皮を被せて)丁寧に描写することで、表向きバンザーイ!裏では2020周辺の今のモロモロへの皮肉になっているこの構図。クドカン先生、ほんと見事っす。す・べ・てが気持ちいい。

主人公の四三が毎回毎回チャーミング過ぎる。何なのこのベストキャスティング。
綾瀬はるかに「良かったね」と声をかけてあげたい気分。
今いちばん楽しみなTVドラマです。

『ONCE ダブリンの街角で』感想

『ONCE ダブリンの街角で』をAmazonプライムで。2007年公開映画。

「アイルランド・ダブリンを舞台に、ストリートで出会った地元の男とチェコ系移民の女が音楽を通して心を通わせていくラブストーリーで、自然主義俳優およびミュージシャンのグレン・ハンサードとマルケタ・イルグロヴァが主演している。映画撮影以前より2人は「ザ・スウェル・シーズン」の名で音楽活動をしており、映画のオリジナル曲全ての作曲および演奏を行った。」(Wiki)

「ある日、ダブリンの街角で、男と女が出会う。男は、穴の空いたギターを抱えたストリートミュージシャン。女は、楽器店でピアノを弾くのを楽しみにしているチェコからの移民。そんな2人を音楽が結びつけた。彼が書いた曲で初めてのセッションに臨み、意気投合する2人。次第に惹かれあうものの、彼らは互いに断ち切れぬ過去のしがらみを抱えていた。もどかしさを胸に秘めたまま、2人の気持ちが揺れ動いていく…。」(Amazon)

このあらすじそのままってくらいシンプルな話。主人公二人は「名もなきふたり」。劇中で名前は出てこなくて、エンドクレジットではただ「GUY」「 GIRL」とのみ紹介される。ただ音楽が生まれる時、寄り添うときの気持ちよさが、全編を通して伝わってくる。

『シング・ストリート』のジョン・カーニー監督の手によるアイルランド舞台の音楽モノ。外れる訳ない!と思って観たらその通りで、すごく好きだ。2人の微妙な関係が最後どうなっていくのか。それを見守る目線が優しくてもう……この辺は『ビフォア・ミッドナイト』にも通じるところがある。二人のやっている音楽はそんなに好みじゃないけど、問題ではなかった。

『ザ・コミットメンツ』『シング・ストリート』『ONCE』…どれも大好きなアイルランド音楽映画たち。次はカーニー監督の『はじまりのうた』(菊地成孔先生激推し)を観なくては。舞台はNYに移るらしいけど。楽しみ。

※今検索して初めて知った事実。この主役男性は『ザ・コミットメンツ』のギターの人だったらしい…。全然気付かなかったよ。

『ビフォア・サンライズ』『ビフォア・ミッドナイト』感想

『ビフォア・サンライズ(1995)』『ビフォア・ミッドナイト(2013)』をAmazonプライムで。

パリへ向かう長距離列車の中で意気投合した20代の男女が、ウィーンの街中を歩きながら一夜を過ごす。その様子だけを淡々と描いた『ビフォア・サンライズ』が一作目で、1995年公開。

その後、主役のアメリカ人男性役イーサン・ホークとフランス人女性役ジュリー・デルピーのキャストをそのままに、9年後に2作目、さらに9年後に3作目と、劇中の時間そのままに歳を取った二人の関係を描いた連作になっているのが、この「ビフォア…」シリーズ。監督はリチャード・リンクレイター。3作通じての特徴は、その殆どすべてが会話劇だけで進むこと(らしい)。 はいはいはい、皆さんご注意です。
私は2作目だと思い込んで、間違って3作目を先に観てしまったよ。しかも終わってから気付くという、体たらく。順番は
1『ビフォア・サンライズ』
2『ビフォア・サンセット』
3『ビフォア・ミッドナイト』
です。ややこしいですけど間違わずに。

男女2人の恋愛もので、しかも会話劇オンリーって、普段自分からは絶対に観ないようなジャンル。宇多丸さんのラジオで紹介されていなければ、まず観ることはなかった。

さてその「会話劇」なんだけど、これが見事に飽きさせず最後まで観てしまった。喋っている内容は、男女のこと、仕事のこと、生き甲斐のこと、家族のこと。等など。これらの会話が映画の殆どを占める。それで飽きさせない。何故だろう。

思うに、
1)話している内容が超リアルでツボをついている。脚本は俳優2人も一緒になってディスカッションしながら決めているそう。同じ俳優で役と同じ歳を重ねてきたリアルが、そのまま反映されている。
2)少し突拍子もない話でも「なるほどそうなのか?」と思わせるプレゼン力・説得力がある。
3)「普段からこれだけ2人の間で色々なことを話していたら、それはきっと楽しいかも知れない。無理だけど」という、人種違いのカルチャーギャップが楽しめる
などではないか。

特に3作目『…ミッドナイト』は40代2人の、まさに中年夫婦あるあるあるあるあるある話が満載。クライマックスの喧嘩なんてもう、劇中の2人がそのまま自分達に見えてしまう位。(セクシャルな話題はこっちは全然ないけど)

えと、結婚されてない皆さん。この『…ミッドナイト』の最後の喧嘩をぜひ見ていただきたい。これが夫婦の、いや一緒に暮らす男女のすれ違いの原点です。このやり取りにすべてが含まれていると言っていい。

さて、自分は普段ならこういう「世の中にあると分かっている避けられないイヤな話を、敢えて映画やドラマの中で観たくない」性分なのに、何故このシリーズは許せるのか。

それは、避けられない男女のイヤな話をしながらも、その中で2人が懸命になんとか生きていこうともがき、試行錯誤している、その試行錯誤のスキルが観ている自分達よりも時には少し上手で、結果、わずかでも希望が見えるからなんです。絶望だけで終わらない。

併せて2人の会話の背景に見える欧州の町並みがとても美しく、一緒に観光旅行しているかのような気分を味わえるのもいい。聖地巡りをする人も多いんだろうな。

オススメです。果たして2作目を観るのかどうかは、分からない。

『グリンチ』感想

町内会のイベントで『グリンチ』を観ました。イオンシネマで吹替。

冒頭10分くらいで紹介される、映画の舞台「フー村」の描写が、もう夢のように素晴らしくて、全編通してこの村のあれやこれやを見ているだけでもオッケー!と思っちゃう位でした。フー村の近く、崖の洞窟にあるグリンチの住処も別の意味ですんごく素敵。

原作は未読だけど、とにかく美術と映像(ウォークスルーというかフライングスルーというか、村中を駆け巡る視点)が最高。ヒックとドラゴンみたい。つまり映画館で観るのがオススメ。テンポも良い。この世界にずっといたくなる。最後はちょっというか随分納得いかないけど、全体のイキオイで持って行かれてしまう。

この「フー村」とグリンチの住処を再現したテーマパークがあったら最高だと思う。夢のような場所。

さて大のイルミネーションファンのくせにここまで観ていなかったのは、主人公グリンチのぼやきキャラだけが予告編で強調され、いつもの良さが伝わってこなかったから。ピクサーディズニーのような「でき過ぎる子」でもなく、説教臭もなく、最高の音楽と映像・ギャグで語られるひたすら楽しいあのイルミネーション作品の良さが、どうしてもグリンチの予告編からは想像できなかった。

ファンでさえこれだから、興業は大丈夫かしらと不安になる。 (初期のイルミネーション作でグリンチと同じ原作者の『ロラックスおじさんの秘密の種』、これ自分的には結構な駄作で(子供は喜んでたけど)、この作品にも同じようなぼやきキャラが出てくるんだよね。その影響も強かった。『ロラックス…』はもう途中で観るのやめたくなった位だ)

いろいろ観る前に懸念のあった『グリンチ』だけど、実際は想像と違っていて、まずグリンチと対極にある、フー村の住人たちの描写のボリュームが同じ位あって、ダブル主役みたいなかんじ。

で、グリンチには愛犬マックスやトナカイのフレッドという愛するしかないカワイイキャラがいつも一緒だから、そのやり取りだけでずっと笑わせられたりきゅーんとしたり。この巧さは『ロラックスおじさん…』とはずいぶん違う印象。

全体としてイルミネーションに期待する「音楽」「映像」「ギャグ」「バカバカしさ」はちゃんと楽しめると思う。だけどちょっと最後が説教臭く…。 オリジナルのキャストはグリンチがカンバーバッチ(彼の声キャストは傑作揃い)だし、ナレーションがファレル・ウィリアムスなんだよね(今作ではたまに入る長めのナレーションも印象的だった)。字幕版をどこかで観たいけど劇場では無理なんだろうなぁ。こういう子供向けは吹替ばっかりで…。今回も音楽最高だったのでファレルかと思ったけど、音楽はやってません。

そしてイルミネーションとピクサーディズニーで相当な差が出ていると思うのは、日本語ローカライズのクオリティ。劇中で出てくる看板やちらしのデザイン(フォントなど)が、グリンチもグルーもちゃんとしていて違和感がない。

大好きな『シュガー・ラッシュ1』はもうそこだけwordで打ったみたいで、酷かったもんなぁ。2はちゃんとしているのかしら。 (ローカライズと言えば『SING』の吹替の、原語版を上回るかというクオリティ!そこまでもってきた日本語版スタッフとイルミネーションスタジオのやり取りの話には心から感服しました。)

前座の短編ミニオンの吹替キャストクレジットでまた笑っちゃう。山ちゃんサイコー!(イルミネーションの前座短編はピクサーみたいなクオリティを期待しちゃ駄目よん)あとNetflixでオレンジ・イズ・ザ…知ってる人はタイトル観ただけで(笑)

グリンチ、ぜひクリスマス前に観るのがお薦め!

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