『聖の青春』感想

iTunesレンタルで。
ずしんと残る。すごく珍しく妻と観たのだけど、終わった後問答無用で「いい映画だった…」と二人で呟く位。『3月のライオン』どころか、もっと地味な作品だということは、最初にお断りしておきます。だけどオススメ。将棋のルール知らないけど全然楽しめる。

わずか29歳で夭逝した天才棋士・村山聖の壮絶な晩年を、松山ケンイチが体型まで変えて挑んだ意欲作。『3月のライオン』の二階堂は彼がモデルだが、脇に弁当を持ってきてくれるじいはいないし、家がお金持ちでもない。「東の羽生、西の村山」と並び称された羽生名人を東出昌大が演じる。

東出昌大君の演技に圧倒された。
ごめんなさい。今まで侮っていました。彼の役者としての印象は、この一作で一気に覆された。東出君の出演作はこれまでも結構な数観てきているけど、今作がダントツのベストアクト。

「全身全霊をかけて羽生役に挑んだ」と言う松山ケンイチ・聖が映えるのは、相手役の東出・羽生名人の存在感があってこそだ。実物の羽生名人をそんなに知っている訳でもないくせに、この役はどこか「名人の神」が降臨しているかのようだった。文字通り神がかっていた。

直前に観た『3月のライオン(前編)』とどうしても比べてしまう。『ライオン』の将棋シーン、棋士達の名演技に圧倒されて素晴らしかったと書いたが、『聖の青春』を観た後に『ライオン』を思い出すと、やはりあちらは「『映画』として圧倒された」という感じ。

何を言ってるのかイマイチだろうけど、要はこれに比べると「ライオン」はやっぱり作り物の世界で、勿論それはそれで問題なくて楽しませてもらったのだけど、『聖の青春』は「映画を観ている」という体験以上の何かが感じられた、ということなのだ。勿論ノンフィクションをベースにしているということもあるのだろうけど、それだけじゃない何かが宿っていたようにも思う。

脇を固める役者達も良い仕事をしている。彼なくしては聖は存在しえなかっただろう師匠役のリリー・フランキー、ハマり役。聖の弟弟子役には『3月のライオン』で特殊メイクにより二階堂を演じた染谷将太が、(どちらかと言えば)「一般人の目線」で聖と向かい合う。

将棋出版社のデスクっぽい役をやっている筒井道隆!ヒゲでメガネの彼は、声でかろうじて分かるものの、俺の知る十数年前の筒井とは別人だった。良い意味で驚いた。

先輩棋士荒崎学(モデルは『3月のライオン』原作の挟み込みコラムでお馴染み先崎学)を演じる柄本時生もいい。吞み打ち買う古風でやんちゃな彼は初対面こそ反発しあったものの、聖の良き理解者であったようだ。彼の最後のカットには容赦なく心打たれた。

最小限に使われる劇伴も、とても良いかんじ。

以下ちょっとネタバレ
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『べっぴんさん』終了

半年間いつも楽しませてもらいました。物づくりや仕事というテーマに対して、セリフだけでなく演出でも美術でもきちんと誠実に応えていた。番組内に出てくる衣服や小道具も素晴らしかった。それだけじゃないけど、だからこそ信じられるし安心して観ていられるドラマになったのだと思う。時々「えっ?」とう展開があっても、その週内には結局納得しちゃうところに毎度落ち着くのもすごい。

これまでハマってきた朝ドラと違い、SNSとの相性の「悪さ」も興味深い。わざわざ書く気になれないんだよね。瞬間の感情の発露がそこまではげしくない、ということなのだろうか。

最終週、ここにきて孫の面倒エピソードから?と思ったけど、あっという間にまとめられて、やっぱり納得させられる。最後の3日間の優しすぎるフィナーレときたら!大きな展開はないけど、その「優しさ」に涙々。

これもあまり目立たないけど、若干20歳の主役:芳根京子ちゃんの名演にも拍手!わずか4歳差の女優との親子役!で学生時代から結局60代まで一人で演じきったその説得力は、よく考えると末恐ろしい。NHK朝ドラはしばしばこうゆう奇跡を起こす。本当にお疲れ様でした。これからの活躍を祈ってるよ!

さて、オンデマンドであさイチプレミアムトーク観ようか!

『キングコング: 髑髏島の巨神』感想


シネコンで2D字幕。
最初から最後まで面白く観れた!でも3日後には忘れてそうだ!

モリモリ沢山であのポスターや予告編のイメージ通り。別に悪いワケじゃなくて、期待通りに楽しめます。ストーリーもほんとどうでもいいかんじで。『シー・オブ・ラブ』で大好きになったジョン・グッドマンだけど、最近の役はどれもこれもイマイチだなぁ。

島のサブキャラ達も、これ事前にネタバレしてなきゃ「すげえ!」て思ったのだろうけど、かと言ってネタバレなかったら映画館に来てなかったかも知れないし…。難しい。このデカい牛とかほんの一瞬しか出てきませんでの期待しないように。色んな巨大キャラの繚乱は、もうなんつか既にファンタジー物ですよ。ネバエンディンストーリー。

ということでまず楽しめるんだけど、もともとそんなに怪獣好きでもない自分は、巨大クリーチャーといえば『クローバーフィールド1』とかのゾクゾク感の方が全然好きなだなぁと改めて実感。あとインパクトやトラウマ度はPジャクソン版『キングコング』の方が上(あっちは映画としてダラダラしすぎだったけど)。せめてケレン味がもっと欲しかったなぁ。でもホント、お好きな人であればまず損はしない映画だと思います。

『たまむすび』赤江さん降板(産休)

TBSラジオ『たまむすび』赤江珠緒さんは今日で一旦お休み(産休)に入った。『キラ☆キラ』から代わって最初に聴いた時の印象は、なんと間の抜けたほんやりした人なんだろう、特に面白いことを話す訳でもなし、マニアックな話題に精通しているワケでもなし、的確な鋭い突っ込みができるでもなし、これで昼オビラジオなんてできるんだろうか?と思ったことを覚えている。

何せそれまでTBSで良く聴いていた番組がみな、大なり小なり結構社会派?だったもので。自分が聴くTBSの番組の良さってそうゆうところにあるんだと、ずっと思いこんでいたようだ。

ところがどっこい。それから五年後の今までずーーーっと聴き続ける最愛の番組になったのだ。なったのだけど、どこがそんなに好きなのか、未だにちゃんと言語化できない。曜日毎に違うパートナーを相手に、あくまでもマイペースを突き通す(ように見える)彼女。どのようななテクニックを使っているのか、聴いていてもいつも笑いが絶えない。

話がうまいワケでもなく、オチのない話でも平気で披露する。そのウケ方がそれぞれパートナー毎に違うのも又見所。あ、そうか。欠点があるからパートナーの力をうまく引き出せているのかも知れない。

一つ、最近よく思うのは、こんな女友達がいたら、きっととっても楽しいだろうなぁということ。

5年間存分に楽しませてもらいました。まさか赤江さんがお母さんになるとは思いもよらなかったけど、いざそうなってみると別に違和感のないところがまた凄い。
赤江さん、ありがとう。大好きだったよ〜!!!

『パッセンジャー』感想


シネコンで2D字幕。
正統派で、出来のいいSF。思ったよりずっと楽しめた。
定番なSFプロットがいくつも入っていてしかも丁寧。途中少しダラけるかと思いきや目の覚める展開になって、一気にクライマックスへ。
SF好きは観逃さない方が良い。

最近はクリス・プラットが出ているというだけで観に行きたくなる位好きになっちゃってるんだけど、この映画も存分にクリス欲を満足させる出来だった。宇宙船でやることなくて段々デブっていくとことか。またかよ!でぶクリスサイコー!一方お相手のジェニファー・ローレンスは今作ではシーン毎に驚くほど顔が変わる。不細工でひどい顔にもなれば、クリス憧れの美人そのままになったり。それもヘアメイクとかだけじゃなく、表情で。

出てくる宇宙船のデザインが美しかったな。外見もインテリアも。宇宙服も。

以下ネタバレあります。
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『クライマーズ・ハイ』コレクターズ・エディションDVD買った

「オトコ達のにじみ出る渋い演技を存分に味わえる映画」といえばこれ!『クライマーズ・ハイ』の映画版。昨日ブックオフで見つけたメイキングとビジュアルブック付デラックス・コレクターズ・エディションDVDが¥1,250!買うでしょ。

どっちかと言えば苦手な方の暗い映画だけど、何度も見返してしまう。これの堺雅人はまさに「鬼気迫る」演技そのもの。必見。ちなみにNHKドラマ版もあり、どっちもすげえオススメです。

映画『3月のライオン 前編』感想

『3月のライオン』をシネコンで鑑賞。
「泣いたり笑ったりのエンターテインメント超大作!」とかでは決してないけど、おっさん達と神木君の、匂い立つような濃厚な演技をじっくりと味わえる良作でした。
ちなみに俺は原作の大ファンです。同時代に生きてて良かったと思う。現代のマンガのの最高傑作の一つだと思ってます。

神木君がすごいことは、もうそろそろ分かったつもりでいたのだけど、まだまだ凄いことを思い知らされた。魅了された。目の演技がすごい。真っ暗なライティングで目だけ光るようなシーンがいくつもあるんだけど、目が大きいのも相まって迫力がすごい。

そして、佐々木蔵之介、加瀬亮、伊藤英明、奥野瑛太、甲本雅裕らが演じる棋士達。事前の予告を観ている時に誰もが思う「俳優の○○が演じているからどうこう」とかそゆこと、一切意識させない。くらいにそのまんま。特に佐々木蔵之介の目!目!島田名人そのまま。「佐々木蔵之介」という単語は観ている間には浮かんでこない。圧倒的。皆がもとから島田で、後藤で、宗谷だった。

将棋シーン。基本的に盤上の駒の動きをすべて映画に流せる訳はないから(そうだとしても分からない人が殆どだろう)、棋士2人のセリフのない演技のみで場面が進むことになる。男同士の、むさっ苦しくて鬱陶しい筈のシーンがとにかく凄い。圧倒的。

とはいえ基本的に大きな動きがない訳で、こんなシーンが後半1/3はあるから、「渋い」映画なのは間違いない。だからこそ、おっちゃんの色気(神木君も時に見せる)にアタられたい方は今すぐ劇場に足を運ぶべき。噛み締めると煮汁がじゅっと出る、厚揚げの煮物のような演技だ。

そんな映画だから、きっと大ウケはしないと思う。後編はまだ少し派手になりそうだけど、前編あってこそだからなぁ。それもあって、ぜひ、ぜひ興味ある人には前編から劇場で観て欲しい。これだけの作品を創った制作者には、少しでも報われてほしい。

将棋シーンの演出は、全て棋士がついて「何故ここでこう打つのか。こっちを打たずに今こう打つ意味」を役者にレクチャーしていたそう。劇中一瞬しか使われない試合のシーンも、初手から最終手までがすべて設定されていたらしい(『QJスペシャル 3月のライオンと羽海野チカの世界』より)。こういうバックがあってこそ俳優の力が存分に出せてるんだろうな。

二階堂も良かった。染谷将太が特殊メイクで太って演じている。つい数日前に実写版『寄生獣』を観たばかりで、映画も良かったけど主役の染谷君も見直していたところだった。だけどその染谷将太と、今作の二階堂とは全然結びつかない。それ位、必死で生きる二階堂を見事に演じていた。

だけど二階堂のプロットは、もうちょっと、ほんのちょっと工夫したり丁寧に演出して欲しかった。そしたら彼のあの言動の理由、零が心を許す理由ももっと浮き彫りになったのになぁ。

予告編で零が「将棋しかねえんだよお!」と叫ぶあのシーン、実はその前にまだセリフがあるんだけど、ああやって一部だけ抜き出すのは良くないよなーと思った。実際原作ファンのいくらかは、予告編のあのカットでちょっとひいちゃってる筈。その前のやり取り込みで聞けば、盛り上がりも含めビンビンに納得するシーンなのだけど。勿体ない。

あと神木君をやたらと走らせるのも個人的に好きじゃない。セーシュン映画は主人公が走らなきゃ、みたいなウンザリを感じるのも一因。神木君は走り一つとってもその人物を入念に研究し「桐島」でも今作でも見事にキャラ通りの「走り方」を見せているんだけど。それはすごいんだけど。蛇足に思えたのは確か。動きがないから仕方ないのかな。『ハチクロ』も『3月のライオン』も、セーシュン物なんかじゃない。俺の中では徹底して「仕事マンガ」だ。

原作の楽しげで笑えるところは殆ど今回の映画には感じられない。およそシリアスで暗く、淡々としている。これは思い切った判断だと思うしどっぷり浸かるには良いのだろうけど、でももう少し、たとえ前編であっても、もう少しヨロコビが欲しかったかもな。

【後編の感想は>こちら

『モアナと伝説の海』感想

長女と二人で吹替版を鑑賞。すごく面白かった!!

日本版予告編の印象とは違う、全編通して痛快な海洋アクション映画。まったく飽きさせない。脚本・演出みごとです。

主人公モアナが本当にカッコ良くて、正義感や正直さやモチベーションの頃合いが絶妙、嫌みがない。一体どれだけ計算してどれだけテストした結果の造形なんだろう。ポイントポイントでの彼女の「自主的な行動」が物語をドライブさせ、説得力を生む。その都度ぐっときちゃう。

ある1シーンではまんま『マッドマックス』のパロディが出てきて大爆笑。『ロード・オブ・ザ・リング』もそうだし、色んな映画の名シーンを思わせ、しかも嫌みがない「良いとこ取り」のアクションシーンの数々。

欧米系のルックをした登場人物が出てこない。すべてポリネシアン系(アフリカ系?)のキャラデザインで構成され、皆がすごく魅力的に、美しく、カッコ良く描かれている。昔のように「黒いだけの欧米系」も一切ない。気持ちいい。

この映画がディズニープリンセス・シリーズに位置づけられるのかどうか知らないけど、アナ雪の「王子様不在」を通り超して、男女の恋愛とか、結婚しなきゃとか、跡継ぎだからお婿さんを探さなきゃとか、そうゆう話が一切ない。潔くて最高。気持ちいい。

アナ雪なんかと同じミュージカルです。歌の吸引力はアナ雪に劣るけども、それでもハワイ?ポリネシアン系?のセンスを採り入れた歌と踊りが美しく楽しい。長女は帰ってからずっと主題歌聞いてて、あっという間に歌詞を覚えてた。すごいなぁ。

ジャンルはまーったく違うのでアレだけど、ディズニーピクサーの中で言えば『ベイマックス』の快感に近いのでは、と思う(いいとこ取りが上手くいってる感じも)。それくらいアクションが気持ちいいのでそゆのが好きな人は観た方が良いよ。あ、ドリームワークスだけど『カンフーパンダ』のアクションの気持ち良さにも似てる?

家族で『SING』とコレでどっち観るか揉めて、結局長女と父は『モアナ』チーム、次女と母は『SING』チームで分かれて観ることになった。

『SING』もすごく面白かったって。イルミネーションは我が家におけるギャグ映画のトップブランド。『SING』のサントラがこれまた父のツボで、帰り道からずっと二つのサントラを交互にかけている。早く観に行きたい。けど今月末はもう面白そうな映画の公開が目白押しだからなぁ…。
(→後日『SING』の感想へ)

『龍の歯医者』感想


『龍の歯医者』をAmazonプライムで観ました。
前後編でそれぞれ45分の、もとはNHK-BSプレミアムで放送されていた作品。スタジオカラー制作・鶴巻和哉監督作品。

とてもテレビ番組とは思えない。いきなり度肝を抜かれることを保証します。全編通して映画『ヱヴァンゲリヲン』ばりの超絶クオリティ作画な上に、ガイナックスあるある、宮崎駿あるある要素をこれでもかと詰め込んだ渾身のファンタジー映画。前編だけでいえば満点だと思う。龍が一切出てこないアヴァンの戦艦戦闘シーンも凄まじい。カラーすごいよ…。

残念なのは最後。どうしてもエヴァを思い起こさせるなんかみんな溶けちゃって系なアレで「ああまたこうなっちゃうのか」という気持ちに。そして結構暗い話。別にセカイ系ではないと思うのよ。ただビジュアルが。

そうそう「ジブリ」でなく「宮崎駿」と書いたのは、コナンや「ルパン三世・アルバトロスの翼」をはじめとするあくまで昔の「駿・漫画映画」のオマージュに見えたから。後編なんてほんとにアルバトロスとすっごく似てるシークエンスやカット割りがあってニヤニヤしちゃう。

庵野秀明氏が監督してる音響、特にSEが素晴らしいので大音量orヘッドフォンで観た方がいい。

『トップをねらえ!』や『ヱヴァンゲリヲン』や宮崎駿で観たシーンがあちこち出てくるし、巨大な龍の上に通天閣が乗って人が暮らしてるそのデザインは山口晃を思わせる。そんなこんなを今風アニメにぶち込みセンス良く料理した当作、特に前編はオススメですよ!3/20(月)にBSプレミアムで再放送されるそうです。

『石井ぜんじを右に!』感想

元ゲーメスト編集中石井ぜんじがさまざまな媒体に書いたコラムを集めたもの。正直特に文章が上手い訳でもなく本文組版も読む気を全然盛り上げないが、一度ハマると悪くない。特にゲーメストの版元・新声社の倒産、そして廃刊に至る経緯の話はリアルで面白い。と言ったらアレですけど。

おれのココロの本拠地はきっと80年代のゲーセン。当時24時間営業だったので、夜中にも家を抜け出て行っていた。その前のアニメ時代よりもずっと深く突っ込んでたかも知れない。と思うのは、当時のすべてのゲームを目録にした『ARCADE GAMER’S白書』の’90年までの全タイトルを知っていたから。我ながら驚いた。勿論『ベーマガ』も『ゲーメスト』も愛読書だった。

なんでか表紙デザインが大塚康生『作画汗まみれ(←名著!)』を思い起こさせるなぁと思って引っ張り出し並べてみたけど…まぁそれほどでもなかったな、という写真でした。

べっぴんさん #126

125のことを書いたばかりだけど、3/3(金)の126、親心のツボ押されまくり。新製品プレゼンのさくらの発表とその言葉に、堪えきれず涙ぐむすみれ。

すみれとさくらの親子感が本当に好きだった上京前の先週→一気に年が経った今週→さくらにイライラさせられっぱなし→昨日今日でまた良い関係になって→すみれの涙にガッデムもらい泣きな今日。

細かい突っ込み所は色々あるけど、べっぴんさんはその後すぐ気にならなくなるんだよな〜。不思議。

あと序盤心許なかった紀夫(のりお)さんが最近良いね。特にご飯食べた後がいいね。こないだ机君のハンバーガー食べた後の「これうまいな」とか最高だった。

インスタの #べっぴんさん タグを見ると、自分達の持ってる、もしくはプレゼントしてもらったファミリアの製品アップして想い出語ってるのがいくつかあって、それでまたじ〜ん…。劇中の製品の扱いも、語られる想いも、それを説明するための具体的な解説もいつも丁寧で、ホントそういうところ大事だよなぁと思います。何度も書くけどね。

べっぴんさん #125

『 べっぴんさん 』さくらとけんちゃんへのイライラが続く今週はなかなかに厳しかったけど、3/2(木)125はすごい回だった。

まずOP。
「自己満足やと思うてる?」
「職業病とか?」
の直後にテーマINする、あの入りはすごかった。なーんかな、ぐっとキました。

その後、さくらとけんちゃんがキアリスのこだわりの根源にあるものを感じていくビジネスとしても大切なプロット、万博への盛り上がり、と同時に動き出す日本社会への不安、イコール今の我々の現状への暗示、最後に板東家の食卓での会話、と15分の中にめっちゃ詰め込んで、まるであまちゃんを思い出す盛り盛りぶり。色んな不安を解消しつつ、同時にいくつかの伏線も張られてる。(そのうちどれだけ回収されるのか分からないけど)

そういえばテスト店舗が大成功した後にお父さん達が「けんちゃんのリーダーシップがすごかったなぁ」言ってるけど、アレ同期のアベ君が居たからだよ。彼の「やめませんか」だよ。彼有望だよ。今週のMVPだよ。溜飲を下げる訳だよ。

あまちゃんやあさが来たみたいにTwitterで盛り上がることはあまりない『べっぴんさん』。でも静かに、いつも楽しませてもらってます。感謝を込めてのインスタ初ポスト。

『ラ・ラ・ランド』

『ラ・ラ・ランド』字幕を公開初日の夜にシネコンで鑑賞。6〜7割は入ってたかな?

圧倒的に絶賛されてる前評判のことを思い出すと「え?これってそんな作品?」と思っちゃうけど、フラットな気分で観れば純粋に「ああ!いい映画だった!」という感想。

ベタな恋愛ストーリーにこれまたベタなミュージカルシーンを乗せてる映画なので、「ミュージカル?ちょっとなぁ…」という人はどうかと思う。だけど、そのベタの内容が、クオリティが、演技が歌が踊りが衣装が作曲が素晴らしい。メインテーマと劇伴全体で使われる共通の旋律が二つあるんだけど、それがどちらもほんと良くて、何回も何回もサントラを聴き直しちゃう(映画に行った帰り道にサントラが聴けるのがAppleMusicの素晴らしいところ)。

撮影は35ミリフィルム(冒頭でシネマスコープの表示が出るところの仕組み最高!)。CGは極力使わず、長回しで魅せるミュージカルシークエンス。そのいくつかはアフレコではなく同録を使っていて、より「自然」な演技を指向している。ということを知らないと、普通に「どうせこれCGなんだろうな…」と思いがちで勿体ないかも知れない。

でも一方で思う。たとえこういった面倒なアナログ手法や同録のことを知らなくとも、それらの苦労は映画全体の基礎力というか地の力というか、そういった地盤へと確実に染み渡り、一種の魔法のように我々の気分に作用して、高揚させているんじゃないかと。

監督の夢は古き佳きミュージカル映画の復興。脚本や演出は現代に合わせブラッシュアップさせつつ、技法は原点回帰。この方法と絶妙なバランス感覚によって、確かにこのジャンルに何の思い入れもない俺でも、「ミュージカル、すごいじゃん」と思わせられてしまった。

エマ・ストーンの、時にCLARA Cを思わせるハスキーボイスがとてもいい。ライアン・ゴズリングは歌はまぁアレだけど、ジャズピアノの吹き替えを拒み3ヶ月の猛特訓で自ら弾いたという話は驚愕。俳優は時にこうゆう奇跡を起こすね。

ところで。
「これは良さそう」と思う映画は、できる限り早く観に行けるように今後も努力しようと思う。ネタバレを気にする期間も極力短くなるし、行きそびれた挙げ句、周りで盛り上がり過ぎて行きづらくなるなんてこともない。とにかく最初に観ちゃった方がスッキリする。

以下ネタバレ&言いたいことなど。
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『悲しみの秘義』『コンビニ人間』 『ビニール傘』

若松英輔『悲しみの秘義』読了。
文章としてはおそらく1〜2時間程度で読め終える量なんだけど、本当に読むには随分と時間のかかる本だった。いちいち咀嚼に時間をかけたくなるので、一気に読み切ることができない。しかも途中どこかに行方不明になっていて(私あるある)、結局ここまで1ヶ月くらい経った。途中北書店で上越出身の作者による読書会もあったが、恐れ多くて行けなかった。

作家が自分と2歳しか違わないと知った時も驚きだったが、終盤に衝撃の事実が判明。その瞬間に、作家がこの連載を物した理由を理解し、打ちのめされる。「書く」ことと「想い」の関係を痛烈に、しかし直接的でなく、優しく伝えてくれた一冊。


村田沙耶香『コンビニ人間』読了。
きっとこの本は一箱古本市でYさん(「本と雑談ラジオ」好き)が出すだろうから待っておこう。と思ってたら本当に出してたのでまんまとゲット。となりの『ちくま』は、ラジオで紹介されていた村田さんのおかしなコラムが掲載されている号。至れり尽くせりだ!

『コンビニ人間』についてはぜひ枡野浩一&古泉智浩「本と雑談ラジオ」第14回を聞いて欲しい!ポッドキャスト配信もやってます。すごく読みたくなるよ。本も面白いけど、これ読むとラジオが一層面白く聴ける。とあるおかしな男女の行動を通じて、「おかしくない」はずの、その他大勢の我々のふるまいのおかしさを見事に!あぶり出していく。その表現のオリジナリティときたら!

ちくまのコラムも面白かった。高校時代に同級生2人と先生3人の見分けがつかなかったとか、仲良くなりたいと思っていた女の子が、実は別のクラスだったことにある日気付くとか。怖い物見たさも含めながら村田さん、もっと知りたくなる。ラジオにでも出てるらしいので今度探してみよう。

『コンビニ人間』は大体二時間ほどで読めます。


岸政彦さんが小説を出していたなんて知らなかった。
うん、期待通りといえば期待通り。かなり入ってくるものがあったし忘れられないし、岸さんでしかできないような組立だと思うし、すごく映画的。でももう一つ、欲しかったなぁ。

『ユリイカ臨時増刊号 東村アキコ』

ユリイカ東村アキコさん臨時増刊号。知っている書き手さんやインタビュー、トークを先に読了。めちゃくちゃ面白い。名言のオンパレードで、自分は本の気になる所、後で見返したいところのページの、下の端を折る癖があるのだけど、この本のインタビューや対談はほぼ全部のページが折られてしまって、役に立たない。「ええ!」て驚く所も、笑えるところも、泣けるところも沢山あって、とても全部覚えていない。

以下メモ。

『雪虎』の最初の取材で一泊二日の上越旅行に行く。その翌日の夜にはもうネームが60ページできていた。普通はプロットもできていないだろう。(各出版社の編集担当座談会で、お互いの「打ち合わせ」のことについて聞いた時のエピソード。基本的に長い打ち合わせがない)

ネームに迷いがない。なにか他のことを話していても仕事がめちゃくちゃ早い。その上直しにも柔軟に即対応する。

普通の漫画家であれば一度に指示できるアシスタントはせいぜい4〜5人。東村アキコは10人以上を扱い定時に仕事を終わらせる。原稿は決して送らせない。徹夜はありえない。素早く的確で気配りのある指示。とにかく褒めて育てる。まずい所を直す場合の言い方の気遣い。見事。

アシスタント達が姉御肌の彼女のことを描くエピソード、いちいち泣ける。ここだけの読みものとしても『ユリイカ』買う価値あり。

アキコさんはユートピアが好き。原風景は宮崎の高校時代。ヤンキーも、オタクっぽい子も、渋谷系のお洒落な子も、みんな共存して仲が良かった。それがすごく好きだった。ヤンキーがオタクを馬鹿にするようなこともなく「アイツんち、マンガがいっぱいあるらしいから借りに行こうぜ」くらいの感じで。

作者本人をして『「私はこの作品を描くために漫画家になったんだな」と思った』と語らせる『BARAKURA』、ソッコー注文しました。

WEBラジオ「身も蓋もナイト」聞かなきゃ。

「ファンにやって欲しいこと」と聞かれた答えも、彼女ならでは。

表紙のおばちゃん絵はアキコさんご本人によるもの。必見。

引用:(「オタク女子の初恋」「アラサー女の恋愛」など)大きなテーマにしか興味を示さない読者の数は想像以上に多くて…。特に地方にその傾向が強く、7:3くらいの割合だと実感しています。物語を二重構造にしないと、作品自体が残らなくなってしまっているのがマンガ業界の現状です。

しかし思うんだ。彼女の活躍見て西原理恵子さんが一番焦ってるんじゃないかと。西原さんは良く漫画中で○○がにくい〜!羨ましい〜!とネタで描くけど、彼女が開拓し切り開いたその道を、きらびやかなオープンカーに多くの業界人をぎゅうぎゅうに載せ「いやいやいや…」と謙遜しながら今まさに通らんとしているのが、東村アキコその人だとおれは思う。人生相談のキレの良さ(しかも好感度高い)とかもね〜。

アキコさんが『ぶ〜け』育ちで、中でも逢坂みえこさんが大好きというエピソードを聞くのがいつもすっごく嬉しくて。おれ大好きな作家さん(『永遠の野原』当時はナンバーワンだったかも)だけど、周りにファンがあまりいないから。『かくかくしかじか』で、まだ見ぬ東京の担当さんが、いちいちぶ〜けの登場キャラになって出てくるところは爆笑した。『ぶ〜け』は一冊通しての世界観が他にはない居心地の良さだった。掛け替えがないとはあのこと。

アキコさんの作品はごっちゃんとかくしかが頂点であまり熱心なファンとは言えなかったけど、ユリイカを参考に過去作も読んでみようと思いました。

砂田麻美『一瞬の雲の切れ間に』

映画『エンディングノート』の監督が書いた小説、2作目。彼女の映画の作り方と、世界の捉え方がずっと気になっていた。
「喪失」が大きなテーマで、子供も絡むので自分にとっては正直辛い気持ちにもなったけど、期待に応えてくれた一冊。スタイルとしては木皿泉『昨日のカレー、明日のパン』に似ているけど、当然空気感も読後感もかなり違う。

交通事故で子供を失った家族、その加害者となった家族、両家族に関わる男女の物語が別々に語られる。ある事象を通じた双方のまったく違う心境を交互に読む訳だけど、そこから感じる作者の人間観に恐れ入った。傑作です。少々つらいけど、お奨め。

本と関係ない話。自分はこれまで本当に薄情者で、肉親含めこの世で失って困るものなど何もないと思っていた。だけど結婚して相方と一緒になり、子供も生まれ、初めて「絶対に失いたくないもの」ができた。もし失ったら、自分が存在しえるとは思えない。すると今度はそこから喪失の恐怖がはじまった。忘れたようでいても、その恐怖は常に静かにつきまとっている。

何か大きな災害や事故で大切な人を失ったとする。人は「その事故の前の瞬間に戻れるものなら、何でもする。悪魔にだって魂を売ってやる。戻れるものなら、何でも」と思う。でも戻れない。1秒前であっても。0.5秒前であっても。彼や彼女が存在していた「あの時」には決して戻れない。

いま自分は、
「事件後の世界」から見た、
「すべてのものを捧げても戻りたい、魂を売ってでも戻りたい、『あの頃』」
に、生きているんだと思う。そう自分に言い聞かせている訳ではない。自然と感じる。時にどこか夢のように思う。いや、毎日毎日が夢のようだ。

  

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1999年のWEB日記時代から始めた個人サイト。ブログ移行にあたって過去記事も抜粋してアーカイブしています。
(HTMLサイト→SereneBachブログ→WORDPRESSブログと転移)

好きな漫画(2014年版)はこの記事の最後に。

最近は(インスタ)でアップしているTV・映画感想の投稿を、半年に1回くらい一気に転載しています。

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