『オーバー・フェンス』感想

佐藤泰志原作映画化・三部作最終章、山下敦弘『オーバー・フェンス』。

これまで色んな映画やTVで山ほど観てきたオダギリジョーだけど、今作で初めて「すごい俳優じゃね?」と実感した。ルックスがこれなので何ともなのだけど、観ている自分の眼には、もっさい別の顔をした男が、映画の中で確かに実在し動いていた。それ位圧倒的な説得力。見事。

蒼井優、「あ、これは惚れてまうわ」な最初の振るまいに続いて、「あ、これはハマるとヤバいわ」なキレ感。あるある過ぎて胸が痛くなる。で、蒼井優じゃなきゃここまで惹かれるキャラ造形にはできなかったと思う。

職業訓練校の中のゴタゴタとか、先生との揉めごととか、あの何ともならない感じ。
『そこのみて光輝く』ほどハードではないけど、絶望の中をほのかに照らす彼らへの、愛おしい感情。いい映画観たよ。

『万引き家族』感想

『万引き家族』観たよ…。すごいよすごい。役者が皆本当にすごい。リリーさんに安藤サクラちゃんに希林さんは勿論松岡美優は勿論二人の子役もどっちもどっちも、主役家族が皆、ド級にすごい。きっと可能にしたのは是枝神演出。美術も撮影も。細野晴臣の音楽も、すべてで持って行かれる。後をひく。でも決してイヤな気持ちではない。

でも音楽は前の晩に『海街diary』の5回目位の再見してて、相変わらず菅野よう子にぞっこんだから、もし菅野さんだったらどうしてたかなぁ〜という期待を捨てきれなかった。

是枝監督の映画は、子供関係で辛そうで観てないのも結構あるし、役者としての福山雅治が超苦手なので途中で挫折したのもある(なんでなんだろう。福山氏個人が嫌いな訳じゃ決してないのに)。でも今作は大丈夫。安心して観ていられる。あと前情報あまり入れない方が良いよ。「聞くと観るとは大違いだなぁ」と思った。

#アトロク のムービーウォッチメンも、是枝監督が出てる次週の子役演出の回(めちゃくちゃ面白い)も、観た後に聴くことをオススメします。で、また観に行きたくなるね、きっと。

ど級にすごい主役陣の中でも、改めてすごいなぁと思ったのがリリーフランキー。田中邦衛を何回も思い出した。パンフレットを読んでもリリーさんとサクラちゃんの「感じ」は神がかってる。松岡美優もそんなこと言ってたね。映画館で観るのをお薦めします。

『ギフテッド』感想

『ギフテッド』をiTunesレンタルで鑑賞。
映画館で観なくて良かった。クライマックスでは号泣どころか声を上げて嗚咽しそうだ。
こんな可愛くて魅力的な子役見たことない。天才。これこそ「ギフテッド」。

【あらすじ】フロリダの海辺の街で、ボートの修理をして生計を立てている独り身のフランク。彼は、天才数学者だったが志半ばで自殺してしまった姉の一人娘、メアリーを養っている。彼女は、先天的な数学の天才児“ギフテッド”であり、周りは特別な教育を受けることを勧めるが、フランクは「メアリーを普通に育てる」という姉との約束を守っていた。しかし、天才児にはそれ相応の教育を望むフランクの母イブリンが現れ、フランクとメアリーの仲を裂く親権問題にまで発展していく――。(公式サイトより)

(以下ちょっとネタバレ有り)
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『タクシー運転手』感想

シネ・ウィンドで鑑賞。
上半期ギリギリで飛び込んできた大傑作。シネ・ウィンドさんが夜間上映やってくれたおかげで観れた!

人情コメディと報道ドキュメントとマッドマックス的アクションが一緒になったシリアスエンターテインメント。前評判がとにかく絶賛onlyだったけど、それも納得の出来です。個人的に韓国映画にたまに見る少し過剰なセリフ回しの演出がちょっと気になる位で、今年ベストに入るのは間違いなしの愛しい作品。

行く予定がある人は、できるだけネタバレを見ずに(これも読まずに)まっさらな状態で観ることをオススメしたい。何度も泣きました。出てくる俳優皆素晴らしい。ソン・ガンホは勿論、広州市タクシー運転手のユ・ヘジン、大学生のリュ・ジュンヨルらの笑顔ときたら。

ノンポリで政治などまったく興味なく、学生のデモにいつも文句言ってる、いわゆる「小市民」の代表・タクシー運転手ソン・ガンホが、目の前にいきなり展開するどうしようもない現実を前にして変わっていく様に、自分に何が出来るのかを葛藤し行動していくその芯の強さに、熱くなる。

ドイツ人ジャーナリストをなんとか無事に脱出させようと手を尽くす光州市民にも泣かされるけど、大事なのは「多分この人たちは、デモがなくても、普段から困っている人がいれば助け、おかしいと思うことがあれば自然に声を上げているんだろうな」と思える描写で、そこが自分的には1番のポイントだったように思う。顧みて自分はどうなんだろう。

決して他人事でない、このような状況になったら自分はどう動くのだろう。娘のために、将来のために、何ができるんだろう。考えさせられた2時間弱。間違いなくこの主人公達のようには動けない。平気で多数に従い人を殺す側になると思う。「小市民」?よく言えたもんだ。

それが分かっているから、そういう未来にならないよう、せめて少しでも手を尽くす。目を疑うような政府や軍の弾圧も、まさに俺のような人間が沢山いるから実現される。端からは狂ってるように見えても、その中にいる「俺」にとっては何の不思議もない当たり前の世界。一旦そうなったらもうひっくり返せない。

さて自分は映画を観ただけではどうしても理解し切れないところもいくつかあって、それらはパンフレットや町山智浩さんのたまむすび解説などを聴くと分かります。

1番気になったのは「軍が何故ここまで非情になれたか」。一つには光州市のある全羅道(チョルラド)への全国的な地域差別感情。もう一つは、当時の北朝鮮が学生の民主化デモを操っているといたという認識、なんだとか。当初は「北朝鮮の手先である全羅道の非国民アカ学生をつぶせ!」だったのが、軍の対応を見て味方になったノンポリの市民達もすべてまとめて同じ対象になってしまい、ここまでの惨劇になってしまったと。(町山さんのラジオ要約)

パンフの全体的な出来はあまり良くないけど(特に翻訳が気に入らない)知識面のサポートがなるほどなので買っておくと良いかも。

シネ・ウィンドでの上映も半分を超えたと思います。この機会は見逃さない方がいい。劇場で、この空気と気持ちを共有しながら観るのが、意味のあることのように思えました。半分以上笑いながら観れる楽しい作品ですからね!(でもそこはかとなく漂う不穏な空気は最初から感じていて、これはストーリーを知っていたからなのかどうなのか、知りたい)

あ、あと主人公のタクシーがめっちゃカワイイ!カリオストロの城に出てくるパトカーとか、あんな感じ。ちょうど同じ頃の作品だからね…。あの緑色も理想のマッチングを目指して何度も何度も塗り直し試行錯誤したらしい(パンフレットより)。高速道路を通る多数の車もみんな当時のもの。すげえなぁ…さすが韓国。

映画を観て思うことがあり光州に行ったというウィンドの井上支配人。劇場には市の地図が貼ってあり、チャンスがあれば支配人の現地解説が聞ける。「今の」光州市の話や、主人公の2人のその後の話、特に映画にもパンフにも出てこないタクシー運転手のその後の話に…(;。;)

2018年初夏の花粉症メモ

今年はまず4月の後半から急にひどくなった…気がしたのだけど恐らくアレは風邪だったみたい。GW中の旅行も花粉症(ぽいの)すごかった。
ホントのヤツはきっと5/15頃から始まってます。
5/22絶好調。ホントにやばい。
5/26薬(タリオン)を切らせなくなった。飲まずに夜寝ようもんなら花粉症で起きてしまう。鼻は垂れるだけでかむ効果ゼロ。同様にマスクも外せない。だけど肌があれるので24時間は無理…
5/29〜30 急に軽くなった。薬無くてもOK。終わったか…?
6/01 と思ったら復活。でもマスクなくてもギリギリ大丈夫。
6/05 およそ完治かな。

『スイス・アーミー・マン』感想

Amazonレンタルで。字幕。

(あらすじ)無人島に一人流れ着いた主人公の青年。絶望している中、同世代の青年の死体が流れ着く。見捨てることができず連れ歩くうちに、死体がゾンビのごとく喋り始め、サバイバル生活に役立つ便利な特技(飲み水を湧き出すとか屁で火を炊くとか)を発揮しはじめる。ゾンビ君に生前の楽しかった記憶を思い出させるための珍妙な演劇ごっこを挟みながら、町へ戻る二人の旅が始まる。

すごくへんてこな映画。見ている間も「俺は今何を見ているんだろう」とクラクラする感情さえ湧いてくる。基本コメディーでもあって、爆笑シーンも数々。だけどそのうち、二人の関係に共感しはじめ、ずっとこのまま見ていたい…とさえ思い始めてくる。ラストはもう、涙、涙。

@huucohuuco さんのTwitter激推しを読まなければ、まず自分では観ない類いの映画だと思う。感謝です。ポール・ダノ演じる優しい主人公がすっごくいいの。美しいし、なんかもう神。ゾンビ君はハリポタのダニエル・ラドクリフ。一見おばかなゾンビ君を渋く演じきってます。

この後味の良さ、どっかで覚えがあると思ったらアレだよ。『宇宙人ポール』だ!あの関係性に似てるのかも知れない。ちょっとおかしな異界の人と旅をすることで、自分自身や本当の自分を取り戻す。その異界の人は実は誰よりも「人間らしい」存在だった。…だけど当作のポール・ダノはそんなところには収まらない器かも。この感じは俺ごときがどーやっても表現できません。おふざけをある程度許せる人ならオススメ。観て。

6/1〜のにいがた国際映画祭でも上映されるそうなので、劇場で観るチャンスも!ぜひぜひ。
同映画祭の紹介文を引用

「ハリー・ポッター」役でおなじみのダニエル・ラドクリフが死体を演じ、ポール・ダノ扮する青年が、死体を使って無人島からの脱出を試みる様を描いた異色のサバイバル劇が新潟初上陸。サンダンス映画祭ではその奇抜さについていけなかった観客が途中退席してしまうなど賛否両論の本作だが、同映画祭では最優秀監督賞を受賞。またシッチェス・カタロニア国際映画祭では作品賞と主演男優賞をW受賞するなど数々の映画祭で注目を浴びた。未だかつて見たことの無い物語にあなたはきっと、涙する(?)

『スリー・ビルボード』感想

iTunesレンタルで。
最初っからずっと荒んだストーリーなのに、最後には出ているすべての人が愛おしくなる。
自分にとって「これぞ映画の醍醐味!」を体現している一本かも。脚本が素晴らしい。
忘れられないシーンは沢山あるけど、花を植えてる場面と、病室のシーンはホント好き。
映画館で観逃したのは大失敗でした。

不惑ニ非ズ

『40にして惑わず』どころか「50近くにしていっそう迷いまくり」な人生。どんどん、どんどん自分には自信がなくなっていく。世の中のことで断言できることなんて殆どなくなっちゃうので、相談されても「○○もあるし、△△って方法もあるよね、いや□□かも…」と何とも歯切れの悪い答え方しかできなくなる。多分30歳前後の頃の方が、よほど色んなことに自信をもって答えられたし、その頃書いた文章の方が、今読んでもずっと面白い。

自分の良いところが見つけられず、歳をとるにつれ悪いところばかりに気付くようになる。

あーまさか
歳をとるってことが
こんな様子だとは思わなかったな。

『ビリギャル』感想

『ビリギャル』をiTunesレンタルで。
前評判以上に素晴らしい作品!何度も泣いた。娘を持つ親は必見かと。ちょうど勉強にハマってる長女のツボにもどんぴしゃだったみたい。

塾に通いながら慶応大合格を目指す話なのだけど、主人公の家族、弟やお父さんとの葛藤や、その決着の付け方が、イチイチちゃんとしていて完璧。ヤスケン演じるイヤ〜な学校の先生も見事で、エンディングロールで彼が一気に泣き笑いを持っていく。ギャル仲間まで泣かせる!最後までめっちゃ気持ちいい!

音楽の使い方も印象的なんだよね〜。全然タイプは違うけど『100円の恋』みたいな、日本語ポップロックのうまーい使い方だと思う。太一(ちはやふる)もいい役。
気持ちがあったかくなる楽しい映画をお求めの方、オススメ。また観たい。

休暇が楽しい

特に何する訳でもなく何処かに出掛ける訳でもないけど、週末がホントに楽しく、シヤワセだ。イヤ平日の夜でさえも。要するに家族の時間が何より楽しみ。上の子も下の子もホントに「良い時期」だからなんだろうなー。

『レディ・プレイヤー・ワン』感想

『レディ・プレイヤー・ワン』感想。というかゲームの想い出話です。‬

‪この映画はシュガーラッシュと違い、自分が青春を捧げた80年代(主にアーケード)ゲームよりも、その後の、自分はほぼ経験無いMMORPG的な世界観とカタルシスに注力しているので、そこら辺やってる世代の方がドンピシャだと思う。一方で古い方のネタはファミコン前のATARIだったりするのでそっちも知らないし。‬

映画は、ゲーム(ワールド)に隠されてるイースターエッグ=鍵を見つけることででその創造主の遺産をすべて引き継ぐことができるというストーリー。観てると思い出すのは、ゲーマー時代の「裏技至上主義」。クリヤする、スコアを上げるのは勿論だけど、1番燃えるのは裏技探しだった。

「イースターエッグ」なんて言葉はMacで仕事を始めるまで知らなかったけど、画面の中で、クリヤ以外のあらゆる可能性を探るのがくせになってた。だから映画最初の鍵とか「あの頃の俺達だったら瞬時に発見してるけどな」と思っちゃった。

裏技を求める果てのない、でもすごく楽しかった旅の思い出。ゼビウスの最初、必ず右に寄って出すEVEZOO ENDOのメッセージ。あの頃はENDOさんが神で、この映画でいうハリデーそのものだった。彼の創り出す世界に夢中だった。その世界は16×16とかのドットで描かれていたけど、確かに住人がいて、言語があった。

さて映画の方は、とても劇場で一度観ただけでは登場キャラを把握しきれないくらい色んな奴らがテンコ盛り。後でディスク買うなりしてゆっくり観ようと思います。主人公の2人がすっげー可愛くて魅力的。リアルとバーチャルのどちらの美術もいい(マトリックスってリアルワールドに戻るとガッカリしちゃったよなー)。アバターを駆る中の人が実は…っていういつものアレとか、リアルとバーチャルをいったり来たりするアレは細胞が反応する大好きSFプロットなので、それだけでも満足です。
さてどこで再見するかのう。

そうそう、Twitterで知り合いも書いてたけど、正しくは

READY
PLAYER
ONE

ですからね。知らない人には何のことか、ってアレだろうけど、日本版の表記には最初っからすげー違和感あった。ゲームの最初に出てくる、アレのことです。
写真は秀逸なパロディポスター群などなど。

『ペンタゴン・ペーパーズ』感想

シネコンで字幕
トム映画に外れなし。他にも名優揃い踏みの、スピルバーグ「こっち路線」映画・最新作。

内容。ベトナム戦争前の(これは勝てない戦争だという)内部調査文書を政府が握りつぶし、公開しようとしたマスコミにも大統領が圧力をかけるような状況の中、掲載を決断したワシントンポスト紙の実話(原題は『The Post』)。トランプ政権下の今まさにつくられるべき映画で、「手遅れにならないうちに」公開するため、発想から僅か9ヶ月で完成されたそうですよ。すげえなぁ、アメリカ。

まぁどこかで聴いた話ってゆうか、まさに今の日本もおんなじ。てかもっと酷い。で、多分この映画とは違って、最終的には公表せずに影に埋もれていき、嗚呼もしこう出来てたら…、という夢を見るドラマ。って感じ。今観といた方が良いよ。絶対。

まぁ日本はあからさまに圧力に屈したとしても、それを「空気を読む」みたいに言って絶対悪とされない素敵な文化があるので、アメリカのようにフェイクニュース戦略ってそこまで力入ってないけど。アメリカは自由の国でそこんトコだけはちゃんとしているので、トランプは対抗してフェイクニュースばらまきにめっちゃお金かけてる訳です。で、自分を批判するマスコミを逆に「フェイクだ!」って言い張って。明らかにおかしいのに段々と皆慣れてきちゃう。

町山智浩さんの「たまむすび」解説によれば、スピルバーグ監督はこう語ってるそうです。
「この『ペンタゴン・ペーパーズ』という映画はフェイクニュースに対する解毒剤である」
「この映画を作ったのは、いまマスコミやマスメディア、新聞社、テレビがやらなければならないことを思い出させるためだ」
あと、この映画の主人公になったW・ポスト紙社長キャサリンさんの名言。
「大事なニュースというのは、それを圧力で潰そうとするものがいるニュースです」
今まさに思い返すべきでしょう。

1971年、偶然だけど『半分、青い』の主人公が生まれた年に、ニクソンという暴君が生んだスキャンダルがこの物語。

そして翌年にはあのウォーターゲート事件。この事件をすっぱ抜くのが、このトムが演じた編集長ベン・ブラッドリーなんだって!これ自分的にはすっごい「へぇ〜!」案件なんだけど、残念ながらこの映画のラストではちょっと分かりにくかったなー。『ザ・シークレットマン』という映画で語られているそうです。未見。

映画の話がさっぱりでした。並び立つ名優の名演に酔いしれることができますが、個人的には演出次第でもっと緊迫感が出せたんじゃないかと思ってちょっと不満。要するに「ヒリヒリ感」がもっと欲しかった。

新聞社を舞台にした「載せる・載せない」のドラマなら『クライマーズ・ハイ』映画版の方が遙かに緊迫感あったし、トム映画は最近『ブリッジ・オブ・スパイ』や『ハドソン川の奇跡』てゆう実話ベースの超名作が続いてて、どっちもそのヒリヒリ感たるやって感じで、正直観ている間もそっちを思い出してしまった。期待感高すぎた。主役メリル・ストリープの扱いも、もう少しメリハリが欲しかったな。でも安心して楽しめる1作だし、最後も勿論気持ち良い。あ、ニクソンとウォーターゲートのこと位は知って置いてから観た方が良いかも。

あとこの当時の(アメリカの?)新聞は自動で活版を組むような機械があったんですね。全然知らなかった。活版好きと、あと黒電話越しに大事な話がすべて進むので、「電話ドラマ」好きな人にも(笑)、お薦め。

『ちはやふる 〜結び〜』感想

『ちはやふる〜結び〜』小5長女と2人で鑑賞。ネタバレなし感想。

2016年の衝撃だった上の句をさらに超える傑作。見事に、結ばれました。
言及したい箇所があまりに多すぎて具体的には1つも出てこない今の心境はちょっと経験したことがない位だけど、この作品を現すとしたらやっぱり「奇跡」だと思う。

当時既にいくつもの奇跡を生んだ小泉版『ちはやふる』が、上下完結の予定を変更してまで生まれた三作目の完結編で、これだけの結果を残すって、それは一体どんな巡り合わせと、努力があってできることなのか。俳優とスタッフの青春すべてかけました、というパンフレットのコメントも本当にその通りなんだろう。このくそったれな世の中で、光は確かにここに存在する。だからあえて奇跡と呼びたい。

前2作からここまでのタイムラグに合わせ、主人公達を高校三年生に再設定。俳優達自身の成長とドラマがシンクロして、半分ドキュメンタリーのような凄みも生まれている。彼らのもう一つの青春、撮影のバックステージが観ていてすごく面白いから、ディスクはまた買っちゃうんだろうなぁ。

言うても所詮少女マンガ原作の青春映画で、まぁ「映画館で」観る必要はないだろうな〜って思っちゃってるそこのあなた。今作に限って言えば大間違い。

前作から更に深化した音響効果は、まず普通の家庭では再現できない。今回特に静と動のコントラストが強烈で、特に無音部分の必然性。あの瞬間、劇場の全員が固唾を呑んで見守っている臨場感は忘れられない。

パンフレットによれば、そもそも映画館でしか流せない超低音を使い、そのリズムを変えることで心拍を変えていくという効果が最後の最後ED前で使われているそう。

ちはやふるは皆そうだけど、今回のエンディングへの一連の流れは特にもう、泣きすぎて目が痛い。映画ちはやふるが好きだった人はタオル必須だと思う。一作目の冒頭で「これは傑作に違いない」と予感させるタイトル周りの美麗なグラフィックデザインも健在。

今回は特に音楽、劇伴が良い仕事をしていたなー。ベタな使い方だけど、これもやっぱり静動のコントラストがちゃんとしていることで効いているんだと思う。だから本当、映画館で観るべし。

原作もすべて読み映画も観てきた長女と、このタイミングで一緒に行けたのも幸せ過ぎる幸運。あと何度こんなことができるんだろう。

凄すぎて1回では消化仕切れてない。もう1回観たいけど他にも沢山みたいのあるからな〜。嬉しい悲鳴。

『アンナチュラル』最終回メモ

遂に最終回。
この日が来て欲しくはなかったけど。でも期待に違わぬ素晴らしいクライマックスだった。今年、これ以上のドラマが果たして登場するだろうか。中盤以降は、毎シーン涙なしには見れない。野木脚本が見事過ぎるのは勿論、名優達の演技、あと今回は特に編集の良さが印象深かった。これまで9回分のありとあらゆる伏線を回収しつつ、シーンやモチーフを対で見せていく、最高の回でした。

ぐっとキたポイントをメモ。
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無題

『アンナチュラル』あと2話って!もうお別れって!寂しすぎるよ~。ミコト&東海林コンビも、中堂&坂本も、中堂&葬儀屋も、重版出来!に引き続きデスク役の所長も、みんなみんな大好き。石原さとみ、どこまでチャーミングなんだアンタは。

個人的にいわゆる「謎解き」カテゴリってあまり好きじゃ無い。このドラマ、表面上は謎解き要素が取り沙汰されそうだけど、実は謎解きを通じて見えてくる「人」を語ることこそがメインだから、最後にはもう…必ず泣かされるよね…。

重版出来も逃げ恥にもハマり過ぎて「やっぱり原作モノは野木さんだ!」などと思っていたら、初のオリジナル脚本でこのハッチャケ具合ですよ。今の世の中に対する物申し加減も実にキレが良くて、気持ちいい。涙出る。俺もう野木教に入ります。

中堂ことARATA君は、大学時代にサークルの後輩でした。と言っても彼は二部生だしモデル活動が当時から忙しくて殆ど逢ってないけど、勿論中堂とは似ても似つかない優しくて本当の人格者で誰からの評判も良く、皆に好かれていたのですよ。しゅっとしてて。それがまーアンタ、こんなドス声の中年おっさん役まで見事にこなすようになって…。おいちゃん嬉しいよ。皆太るんだよ。

どっかに当時の写真ないかな~と思ったけど、あの時代は皆プリントなのです。探すの超面倒。デジカメのデの字もなかった。そりゃお互い歳も取るわな。

『ブラックパンサー』

『ブラックパンサー』吹替2D
開始してから間違って吹替に入ったことに気付く。あー失敗!まいったなぁ…没頭できるかな…などとウジウジ思っていたのは最初の数分だけで、あっという間に忘れて夢中になった。以下ネタバレ無し感想。

何回も書いてるけど自分はアメコミ原作映画が苦手な方で、いつも満点で80点位。例外は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』かな。
いくら良いこと言ったって、その変なマスク一体何なのよ。という突っ込みが頭から離れない。

ブラックパンサーも、予告見る限りは、また自分の知らないアメコミヒーローが登場して、例の感じで悩んだり闘ったりだけなんだろうと思えて全く興味をそそられなかったけど、実際観た印象は全然違う。

素晴らしい「王道映画」であり「アフリカ映画」。王道は王たる道の王道。そういう意味では『バーフバリ』と双璧をなす、王子が王となっていく映画。さらにこの王を守ってるのが側近の女性達で、王様よりよほど強く格好いい。

もしアフリカが列強の支配をはねのけることができていたら今はどうなっていたか、を夢想するユートピアが描かれてる。この仮想の国ワガンダがあまりに魅力的で涙が出てくる。アフリカ系の人達や文化の素敵さがこれでもかと詰め込まれ、何度でも観たくなる。

広告のコピーが
「国王として守るか?
ヒーローとして戦うか?」
なんだけど、予告編同様これまたピンとこない。主人公がどこかでヒーローに「なる」訳でもなく、無理矢理そのような立場に立たされる訳でもないので、最後まで「ヒーロー」という単語は頭に浮かばない。

この映画の主人公はあくまで
「自分の国を守るか、世界を守るために国を開くか」
の葛藤に悩む若き「国王」であり、(ちょっと苦手な)ヒーローたるものにアルアルの葛藤はそもそも持っていないように見える。「ヒーローもの」と感じる瞬間がないのは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』もそうで、2はまだしも1では、行きがかり上世界を救うことになってしまった、タダのろくでなし達のチームであって、決して常に世界を救うことを求められている「ヒーロー」でない。どちらの作品も、「ヒーロー」とは無関係に楽しめるところが好きなんだと思う。

今まで見たことのない並行世界の近未来アフリカや韓国を舞台にした、超絶面白いアクションが繰り広げられて飽きることがない。出てくるキャラの魅力的なこと。とくに女性は皆知性的で超強い。王の妹は天才研究者で、兄の装備をどんどんグレードアップさせていくJKギャルだけど土壇場では自作のパワーグローブを付けて肉体戦も厭わない。悪役たちも魅力的で思わず肩入れしてしまう。

全然書き切れてないけど、マーベルとかDCとか苦手な人でもSFファン・アクション映画ファンならお薦めしたい映画です。字幕版をすぐに観に行きたかったのに、この後恐ろしい傑作『ちはやふる〜結び〜』が出てその機会を逸してしまった。早く配信始まらないかな〜。
あとパンフのデザインすげえかっこいい。

『シェイプ・オブ・ウォーター』

すごく良く分かる。


のちほど詳しく書きます。取り急ぎアカデミー作品賞受賞、おめでとうございます!!

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